今年一年振り返り⑦「最果ての星」

今年一年を振り返っています。あと4作品!

振り返り⑦
8月
アリスインプロジェクト
「最果ての星〜アリスインデッドリースクール外伝〜」

脚本と演出を担当しました。過去3回演出したアリスインデッドリースクールのスピンオフ的な後日譚。原作は麻草郁さんで、今作は私がけっこう自由に新作書き下ろししました。

実はこのホンかなり気に入ってるんですよね〜。毎年年末にやってる「俺アカデミー賞」で脚本賞をあげたいくらい。

元のデッドリースクール(本編と呼びますね)はゾンビでおかしくなり始めた世界の学校の屋上での少女達の物語。今作はそこから3か月後。舞台は郊外の美術館の屋上。本編と今作の1ヶ月ロングラン(2週間ずつ)は最初から決まっていたので、違う屋上での物語が面白いなと思い設定。舞台美術は、入れ替え仕込み日に床を塗り直し、SOSの文字を大きく書きました。

サバイバル生活3ヶ月目っていうリアリティを脚本でも演出でもずっと考えてた気がします。水道どうなってんのとか。電気は早々止まりそうですよね。今作では発電機でわずかばかりの電力はあるという設定にしました。ガスはプロパンガスを調達。後に爆弾となります。このあたりは早くからイメージしていたのですが、地味に水道とかトイレとか、描かない部分も全部イメージしないとなんかモヤモヤして、考えだしたら止まらないという笑。新しい世界を作る面白さがありました。ちょっと例えが違うけどシムシティみたいな。

たとえば地下ショッピングモールで生き延びたステルラ学園女子の辛さってハンパないでしょ。3ヶ月日の光も浴びず、おそらく風呂にも入れず(方法は分からないけど一度くらいは入れたような気がする。その時の喜びたるや)周りの大人は皆死んで、地下ショッピングモールを飛び出して屋上に人を見つける。とか。もうすごいでしょ。これは脚本より演出のほうが大変でしたね。なにより演じたキャストが一番大変だったろうなあ。でも、そんな世界観を描けたのは楽しかったです。

脚本として気に入ってるのは、冒頭の設定です。メインとなる北洋高校の生徒達は他県から来た学生で、主人公倫が唯一この街で生き残った(と思われてた)生徒だったいう設定。制服もひとりだけ違うし、冒頭で主人公の謎が分かりやすく提示されていきます。逆でも全然いけたんですけど、この設定がけっこう決め手になったかなあと。倫のキャラ設定はいわゆるダークヒロインというか、だからこその天才性とか、面白いキャラになりました。とはいえ演じるのは激ムズだと思います。倫を演じた酒井さんもその難しさを、いろんなコメントで言ったり書いたりしてましたが、よく演じでくれたと思います。酒井さんのパーソナルな力強さがあのキャラの推進力や天才性に繋がったと思います。

八坂さん演じる生徒会長にものすごく感情移入しました笑。そうだよね、リーダーって辛いよね、って。頑張ってるのに文句言われるよね、それが悪い歯車になっていろいろ裏目に出るよねって笑。演出家とか劇団主宰あるある笑。だからなのか、ゆーのさん演じるバト部部長との夜の二人の会話シーンはすごく気に入ってます。毎ステージ泣いてた。リーダーシップ取ってるやつが素直に見せる弱みっていいよね。

今作の肝は、舞台の上で生徒がノースマイル(ゾンビを今作ではこう呼んでました)になるという描写。攻めたホンだとは思いますが最初からやろうと思ってました。最初に稽古場でやった時、キャストのみんながガチで辛くなってて、いい座組だなと思いました。そのまま段取りじゃなくて「毎回心を動かして演じね。辛いだろうけどね」と言いました。最初のプロットでは八坂さん演じる生徒会長の八剣がその子を終わらせる(殺す)設定だったのですが、書き進めたら彼女には殺せませんでした。「無理よ、だってみんなで(頑張って生きてきた)…」って台詞は、劇シナでいうところの、キャラが勝手に喋り出した台詞でした。そしてその子を終わらせたのは栗生演じるベニシ、あ、違う、金属バットの女でした。初演から様々な人が演じてきたこのキャラ。僕も大好きなキャラクターです。彼女に大きな十字架を背負わせたなあと思いました。でも彼女ならああしただろうなという信頼?のシーンでもありました。
死んでいく実来を演じた梅原さんそらるるさんはいい芝居しましたね。Wキャストにこういう役所っていいんじゃないかな。

その重いシーンもあってか、その後、がーなさん演じるキリ、いやビデオカメラの女が会長を励ますシーンがとても好き。麻草さんにもそのシーンのキリ略の心情などを相談したなあ。この子、過去の記録を見せてって言われたらどうしますかね?とか。
麻草さんのアンサーは「街の景色を記録するだけでも意味がある」みたいな話でした。そのままキリ略の台詞に使わせてもらいました。

2010年(だったかな)にアリスインデッドリースクールを演出した時は、ゾンビものに1ミリの興味のなかった私が、まさかそんな世界観の話を書き下ろすことになるとは。

そしてそれは、めちゃくちゃ楽しかったです。
舞台写真全然撮ってなかった。
写真のパスタは私が自作したシェフの気まぐれ野草パスタです。作品中ではめちゃくちゃマズいという設定でしたが、

めちゃくちゃうまいです笑

トムコラム