エリザベス・マリー×松本陽一(2)

※2018年8月20日、都内某所にて

エリザベス・マリー×松本陽一(2)

達成感と儚さが刻まれた初舞台

松本
芸術の世界に入ってくる人って、作家でもそうですけど、凄くネガティブなコンプレックスを持っているか、逆にそういう自信を持っているか、どっちかなんですよね。あと、超ミーハーで入るか、っていうのもあるかな。
リズ
確かに。面白いですね。私はミーハーから入って、それが天性だったみたいな感じかな。
松本
例えば、根暗な人が、ノートにしたためたら、すごくいい物語や台詞になったパターンとか、すごく独特な感情表現しかできないから苛められてる人が、(役者として)演じてみたら凄かったみたいな、天才系のパターンもありますよね。
リズ
役者さんには多いですよね。
松本
何人かいますよね。

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リズ
ダンスを始めてから、ちょっと性格も明るくなって、(自分を)外に出せるようになったのは事実です。その頃、事務所に所属していたんですけど、その時初めてミュージカルのオーディションの話が来て、そこで初めて歌とお芝居に挑戦しました。
松本
それって何歳の時ですか?
リズ
それが12歳ですね。基本的にミュージカルのオーディションだから、ダンスもやるし、歌も歌うし、お芝居の台本を読んだりもするんです。初めてのミュージカルのオーディションで、やったことがないから凄く苦手というか、絶対できないって思っちゃってた部分があったんですよ。実際、オーディションでも、ダンスの時は生き生きしてるんだけど、歌やお芝居になると極端に声が小さくなってたみたいで。
松本
内気なリズさんはおどおどしちゃったんだ。
リズ
そんな感じですね。でも、そのオーディションになぜか合格したんです。
松本
へえ~。
リズ
合格した理由が、礼儀正しかったかららしいんです。ビビってたのもあって、「よろしくお願いします、頑張ります!」みたいな感じのタイプ。セリフとかも、めっちゃガクガクしながら読んでたのが、好感度が良かったみたいです。でも、合格してからのほうが大変でしたね、やっぱり。
松本
勉強しなきゃいけない?
リズ
ダンスは出来るけれども、お芝居も歌も出来ないし、右も左も判らないから。ただ、最初に戴いた役がほとんどセリフもなくて歌もあまりなくて、要はアンサンブルっぽい感じの、女の子4人組の内のメインじゃないほうの2人の役だったので凄い気楽にやってたんです。だけど、その舞台に役付き(役名があって、アンサンブルでない役をもらうこと)だった女の子が降板しちゃって、その枠に私が入ることになっちゃったんですよ。
松本
ちょいちょい(運を)持ってますね。
リズ
セリフも増えて、挙句の果てには歌もちょっとソロがある役になっちゃって、そこからが大変でした。大きい声も出さないといけないし。それでも、その座組の人達に良い人が多くて、しっかりアドバイスして教えてくれて印象的でしたね。小学校6年生の初舞台が、ものすごく周りに助けられたなって思います。
松本
その助けるって、子役の人達が?
リズ
そう、子役の人達が。
松本
中学生とか高校生の人が、お姉さんみたいな感じで?
リズ
あともうちょっと上の、大学生くらいの方もいらっしゃったのもあって、そうやって助けて貰えたのが一番大きかったです。その初舞台の時に、舞台あるあるなんですけど達成感というか、みんなで創って……
松本
一つ創り上げたっていう
リズ
一瞬じゃないですか、公演期間なんて1週間あるかないかだし。一瞬で終わっちゃう、そのなんか儚さみたいのが凄い刻まれたんですよ、その時。

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松本
12歳で?
リズ
12歳で。人生を変えることになるダンス習い始めたのも、舞台を初めてやってみて本当に良い現場だったのも、今を作ってるなぁって思うんですよ。
松本
早々に、(人生の)転機というか礎が出来たんですね。
リズ
本当にそうですね。未だにその初舞台をやったメンバーの人の連絡先を知ってますよ。当時はFAXでお手紙交換とかしてましたね。
松本
ああ、FAXの時代か。
リズ
手紙を書いてFAXでお家に送って、それに返事が来て……。普通に文通もしてたり、そう言う繋がりが凄く尊いな、みたいな感じがありました。

結構いる◯◯出身

松本
へえ~。それが12歳でしょ。それから何本くらい出たんですか?
リズ
子供の舞台ってあんまり多くなくて、基本的には春休みか夏休みのタイミングに舞台がある。年に一回出てたら多いねって言われるんです。
松本
そうですね、学校行きながらだもんね。

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リズ
12歳から18歳で短大に入るまで夏は毎年1本ずつ出て、その間に大きい舞台『アニー』があったり、他にも地方公演に行くような舞台があったりしているので、子役時代は7本か8本くらいですかね。毎年同じ舞台に出続けたこともありました。高校3年間は毎年夏に『森は生きている』っていう戯曲(サムイル・ヤコヴレヴィチ・マルシャーク作)のミュージカルに出てました。
松本
なんか聞いたことある。
リズ
ありますか。多分、今、アリスインアリスに出てる子たちも、森生き出身がちょいちょいいますよ。
松本
森生き出身みたいな言い方するんだね。
リズ
◯◯出身とか使いますね。良く舞台を一緒にやってる宮島小百合ちゃんとかは『ココ・スマイル』出身です。
松本
子役上がりみたいな人、結構いるんだね。
リズ
結構います。小百合はニアミスしてて「わ~、小百合そこ出てたんだ!?」って話もしましたし、『デッドリー』(『アリスインデッドリースクール 楽園』/2018年8月/演出:扇田賢)に出てた遠藤瑠香ちゃんも子役からです。瑠香も『アニー』とかでニアミスしてて、もの凄く小っちゃい頃から知ってます。『TRUSH!』はいっぱいいましたね。
松本
ほお~。
リズ
平井麗奈も、篠原麻綾も子役上がりで、小学1年生とか5歳位からやってるような子達。両極端ですけどね、生き残るタイプと辞めて行くタイプ。
松本
まあそうですね、子役やって普通に社会人になっていく人もいますから。
リズ
まだやってるって半分くらいかなぁ……。
松本
1/3とか?
リズ
一応半分くらい。ずっとやってて有名になってる人もいるし、声優でやってる子もいるし、普通に女優さんやってる人もいるし、結構いろいろいますね。なんか難しいですね。
松本
話は戻りますけど、『デッドリー』で最初に出会った時は、何歳でしたっけ?
リズ
20いくつだっけ……。
松本
2010年かぁ~。
リズ
2010年……、結構前か。おや?2010年?
松本
確か初演2010年。
リズ
私、初演じゃないや。
松本
あ、再演か!初演のあすぴー(高橋明日香さん)がやった役を再演でやってもらったんだ。[参照:対談企画第2弾]
リズ
そう!そうなんです!
松本
急遽呼ばれたんですよね?
リズ
急遽でしたね。私、高校3年生まではコンスタントに子役ミュージカルに出てたんですけど、短大時代は外部出演があんまり出来なかったんですよ。なぜかと言うと、通っていた短大が、蜷川幸雄さん(演出家)が学長だった桐朋学園芸術短期大学だったからなんです。
松本
芸術学部的なヤツ?
リズ
そうですね。一応、お芝居と歌とダンスを勉強する感じだったんですが、あんまりお芝居の授業をやっていなくて、どっちかというと舞台作ったりする方の授業をよくやってたり……。そんな感じの学校に通っていて、その時は学校以外の公演に出てないんです。20歳で短大を卒業して、さあ行くところがない。フリーター時代の始まりでしたね。
松本
そうなんですね。
リズ
その時にダンスだけは続けようと思って習い続けていたんです。そこで知り合った方が舞台を紹介してくれて、それが久しぶりに出た小劇場でした。その2~3個後に出たのが『デッドリー』なんです。
松本
じゃあ、小劇場の公演もやり始めた頃に出会ってるんだ。

(つづく)