図師光博×松本陽一(8)

※2017年9月5日、都内某所にて

図師光博×松本陽一(8)

はみ出す心意気

松本
武器なのか分からないですけど、図師くんって声にも特徴がありますよね。
図師
あ、それはね、本当によく言われます。基本的には高いらしいです。
松本
うん、高いですよね。
図師
僕は言われるまで気づかなかったんですけど。
松本
コミカルな場面にしたい時にわかりやすくコミカルな人なんだって認識になるんですよね。
図師
シャカの大熊さん(芸人)に、ものすごい得だって言われて。
松本
あの人も声高いですよね。
図師
確かに。僕たち舞台では違いますけど、お笑いはいかに早く味方にするかが勝負なんですって。要は、あの人面白いなってちょっとでも思った時点で味方になってくれるから笑いやすくなる。声って結構そういうのあるんですよ。
松本
ありますあります。
図師
そういう意味では早いんだろうねって。……全然自分のこと分かってないんですけどね。……売れたいっす。売れたいって書いといてください。あっはっはっは。

松本
あの、さっきのはみ出す話ですけど、
図師
はい。
松本
そこらへんに、いろんな話が集約していくような気がしているんです。『Life is Numbers』で音響が一回トラブルで止まって、その直後のシーンで、10分位待たせて再開ってなった時に、
図師
あーぁ!
松本
図師くんが、稽古場でそれはやりすぎだからやらないようにしようっていう笑いのシーンを持ってきましたよね。
図師
へへっ。
松本
コンビニで店員が寝落ちしているネタを、本番では2回くらいやっているのを、稽古場では膨らませて4回ぐらいやってたんですよね。で、僕が長いよ、と。
図師
それ2回でいいよ、ってね。 あーでも、それ、そうかも。よく僕も例に出すんですよ、若い役者さんに(アドバイスする時に)。稽古場って全てだと思うし。はみ出すっていうのも、稽古場はよく試す場だって言いますし、やりすぎだよって言われなさい、もっとやりなさいはダメだよっていうのはよく聞きますよね。だけど僕は、特に芸人さんにいろいろ教えてもらったんで、稽古はネタ見せぐらいの本番なんです。お客さん(稽古場のキャスト)がいるでしょ、台本もう知ってるでしょ、その人たちを笑わせたら劇場のお客さんは笑うよね。身内ネタじゃなければ。っていう感覚が当然あるから、試すんですよ。だから、それが、『Life is Numbers』の時に、(藤代)海くんと舞台袖で「よしっ、やるよ」って。
松本
かっけーな!

図師
まぁ、中断しちゃってますからね、お客さんの空気も多少アレだし。ちょうどまあ、そのシーンがすぐ来るところだったから。やろう!って。
松本
あれは見えざるファインプレーでしたね。で、そこで思ったのが、さっき言った、ちょっとはみ出す人が好きっていう要件も、気持ちの部分でそういうのもある人だなって思ったし、もう一個、そのはみ出し方がもっと実力的にも粋になりたいんだろうなって思うんですよ、図師くんは。
図師
ああ、うーん。
松本
はみ出す時にどうしてもその、虚像か本当かは置いておいて、図師ワールドが出てきちゃう。
図師
あー、なるほど!
松本
だからお客さんには、図師くんがアドリブで楽しそうにやってたね、って、思わせてるのか思われちゃってるのか。
図師
その部分が…、なるほどね。
松本
タイプっていうと、ちょっと違うんですけど、うちの椎名くん(6番シード椎名亜音さん)が、はみ出す時に役ではみ出すのが上手になってきた気がして。もともとはみ出さない人だったのが、キャリアとかいろんなものを得て、はみ出す力が付いた。つまり、1番や2番が打てたのが、今3番、なんなら4番でもいけるようになったっていう時に、はみ出す時に役ごとはみ出せているから、これは成長したなと思っていて。図師くんがはみ出した時に、そういうはみ出し方になったら、もっと面白くなる。
図師
……なるほど。心掛けてはいる部分ではあるんですけど、まさにそうだなと思いますね。
松本
ちょっとダメ出しみたいになっちゃうかもしれないんですけど、ちょっと楽な方にはみ出しちゃうんですよね。

図師
僕、ちょっと昔、松本さんにそれ言われたことがある気がするな、ダメ出しの時に。
松本
いわゆる、言葉でいうと(自分に)寄せちゃう。寄せると楽だから。だから、役に行ったままはみ出す。
図師
うんうんうん。そう、やっぱ、心掛けてはいるんですけどね~。たぶん、勝手になっちゃってるんですよね~。
松本
その辺、芸人さん始まりのところと繋がるのかもしれないですね。
図師
ほぉ~。確かにそうかも。
松本
だから、独特の位置にいると思うんですよ、図師くんは。
図師
ほほぅ。
松本
それが(今回の対談に)お呼びしたきっかけでもあるんです。
図師
ふぅ~ん。
松本
なんか、悪い意味でわかりやすく言うと中途半端なところにいて、だけど、悪いだけの話では無くて、ちょっと周りにはいないタイプではある。
図師
ははぁ~。
松本
そういうところを観察したいところはある。
図師
へぇ~。
松本
僕が最初に言った、MOSHを見て道化師と感じ、悲哀を感じたのは、その辺りかもしれない。
図師
はぁ~。
松本
ただの道化師とか、ただのコメディアンではなくて、なんだろな、この憂い感とか、脱力感とか……
図師
憂い感はたまに言われるんですよね。
松本
それがあの……踏まれても表情に出さない……
図師
あはははははは!
松本
真の図師、だったり。
図師
なるほどなるほど。そこが、ちょっと出ちゃってるんですね。
松本
明るい道化師の裏から見てる。

(つづく)