年一年振り返り②松本プロデュース「ザ・コメディショー」

今年一年を振り返っています。

3月11日〜13日
松本プロデュース「ザ・コメディショー」
下北沢亭

セルフプロデュースで公演をやってみようと思い立った第一弾。劇団で代表をやってはいますが、きちんと「プロデューサー」と名乗って自分でやってみようと思ったのは初めての公演でした。劇団員のありがたさが身に沁みたぜ。

なんでわざわざ劇団公演ではなくセルフプロデュースにしたかと言うと、そんなに深い意図はないのですが、なんとなく、

そろそろ一人でやろう。

とか、

自由に好きなことをやってみよう。

と思ったからかな。例えば劇団公演だと劇団員が出演するわけで、外部の脚本や演出も同様になんらかの決まった形や要望や枠組みがあります。もちろんその枠組みは時にとてもありがたいし、その中で作家、演出家として最高のパフォーマンスが出来たら無上の喜びとなります。

ということから一つ外れるとどうなるのかなという好奇心かも知れません。今回で言えば少ない4人のキャストと私でコメディやろう、というなかなか劇団や外部で作れないような枠組みから始まりました。企画書にも最初から4人の名前を記載して、スケジュールが合うところを探すという順番逆な形でキャスティングしました。

前説なんかでも話しましたが、この「ザ・コメディショー」というタイトルはえぐいですよね。笑ってください前提のプレッシャー。まずすぐに思いついたのが、

図師光博。

劇団で図師君を呼ぶと僕はどうやらシリアス班にすることが多いらしく(詳しくはこのサイトの対談企画でどうぞ)、思いっきりコメディベースで組んでみたい!と思ったのでした。

そして女優陣ではまず高橋明日香。ぴーさんとの歴史は長いので信頼のプレイヤーでした(あすぴーとの対談もあるよ)。そして栞菜。昨年秋のペーパカンパニーゴーストカンパニーでキャラ強いままツッコミや回しをやっているのを見て、面白い、と思ったのです。

4人目は浮谷泰史。この人イメージ的にツッコミだったり、場をまとめるようなイメージが強いと思いますが、そしてそれはものすごくハイセンスなのですが、案外に芝居となるとツッコミよりはサイドアタッカーのようなキャラでボケも繰り出すんですよね。割とクセを出してくるというか。ということでまとめ役と共に、そのアタッカーぶりを発揮してもらいたいなと思いました。それが「絶望のカレー」とかにも出ていたかな。

作品ごとに振り返ります。

「FOUR KILLERS」
幕開きの3分くらいの芝居。食前酒みたいなイメージで、出演者達が全員免疫細胞で、笑いが世界を救うよ的なスタート。

「出禁ちゃん」
図師×栞菜
男女のオタクが握手会列に並ぶとどうなる?っていうキャラ系コメディ。女性のオタクと男性のオタクのバトルは面白いなと思ったのと「ガチお姉ちゃん勢」って言葉が思い付いたから。栞菜の妄想のシーンは台本ではト書きだけで、彼女のオリジナルアドリブです。

「絶望のカレー」
浮谷×高橋
これ一番好きかも。キャバクラに黙って行ったことでカチカチに凍ったカレーを出された夫とその妻の喧嘩バトル。「長年サザエさんを支えた企業」とかワードチョイスも良かったかな。好きなツッコミは「赤ちゃんが出来たんかい!」です。

「楽屋騒動」
ほぼ図師光博。
落語のように座布団の上で喋るのに、芝居になっているという構成のアイデアから生まれた作品。楽屋での落語の練習に邪魔が入り、それがそのまま落語のブラッシュアップになってい木、それがそのまま落語になるという。図師君苦労してたなあ。落語ってやっぱむずいんだな。次回コメディショーあるなら普通に古典落語の新作を書いてみたい。

「復讐の予習」
高橋明日香一人芝居。
実は他作品よりも長い15分尺をずっとあすぴーが喋り続けるという超高難易度の作品。結婚詐欺師に騙された女が復讐を誓って完全犯罪の予習を始めるというもの。あすぴーお見事でした!今後もいろんな女優さんで観てみたい演目。

「花魁喜譚」
栞菜一人芝居。
コメディショーですが、笑い少なめの感動作にしました。でも枠からは外れてないと思うぞ。売れ残った遊女が街に出て大変な目に遭い、子供を助けることによっていい花魁になれたという風吹けば桶屋的な寓話。栞菜にハマり役って感じのイメージで書きましたが、この演目も気に入ってて、今後いろんな女優さんで観てみたいな。

「エロ本の行方」
タイトルからしてもう笑。一番書くのも演出するのも楽しみで、予想通りおバカに書き上げて、楽しく稽古できました。昭和世代の私としては、エロ本を題材にくだらない物語が書けて幸せです。とはいえ不思議な感動が残る作品なんですよね。停学食らって同級生が丸坊主になって戻ってきた時、若干ヒーローに見えたのは僕の中学の頃の実体験です。

「スタンダップコメディって」
浮谷泰史一人芝居。
ホンとしては大変苦労して、浮谷にジョークを考えてもらいながら、それをどうやれば生かせるかずっと悩んでました。結果どシリアス方面に舵を切ったのですが、それが浮谷の哀愁と共にうまく行ったかなと思っています。あとコメディショーといいつつ、枠から外れなければ全て爆笑を狙わなくていいという全体構成の舵も切りました。これも良きアクセントとメリハリになったんじゃないかな。全てのジョークを考えてくれた浮谷には頭が上がりません。 

「白身魚のアクアパッツア〜諭吉風小銭を添えて〜」
ラストの4人芝居は本当に脚本に苦労して、小屋入りの3日前くらいに配りました。ごめんよみんな。シンプルに9作品書き下ろしが多すぎたのと、得意?のキッチンものだからぱぱっといけるだろと思ってたら案外むずかった。ラストの長台詞を見た時の栞菜の表情たるや笑。でも手伝ってくれた宇田川が「これがラストで全体が締まる」と言っていて、この4人で4人芝居書けて良かったなって思いました。

評判も大変によく、松本プロデュースも、このコメディーショーも来年どこかでVOL.2が出来たらなと思っています。にしてもキャスト陣の千秋楽挨拶の終わった安堵感たるやすごかった。そしてもう2度とごめんだ感がビンビンに出てた笑。でも安心して。またやるにしても違う4人で「お、今回のコメディショーはこの4人か」みたいに楽しんでもらえるようなパッケージになるといいなと思ってるので。たぶんね。

あと、照明、音響、配信、を一手に引き受けてくれた山下哲平氏に最大級の感謝を。ありがとうございました。

次回は、
6番シード「CUBE」です。お楽しみに!

今年一年振り返り①「星の少年と月の姫」

今年一年を振り返っています。

1月12日〜16日
ILLUMINUS「星の少年と月の姫」
シアターKASSAI
演出

毎年書くけどね、これ今年か〜。

演出を担当しました。初めての団体さんILLUMINUSさんで人気を博した作品の再演とのこと。こういうので演出として呼ばれるのって、プレッシャーもありますが、楽しみの方が強いですね。評判を得た作品をさらに面白くするにはどうすればいいんだろうというワクワク感。プレッシャーよりワクワクが勝つ。私の場合特に「演出のみ」の仕事はとても楽しいし、絶好調のことが多い笑。脚本(新作)となるともう、ワクワクをしんどさが軽々と上回っていくので。

という訳で、絶好調モードで稽古を始めた私。女優のみの座組でほとんどが初めましての方々。久々のガールズ現場でちょっと調子を戻すのに時間がかかりました。絶好調じゃなかったんかい!

僕は演出だけの時は、あえて最初は脚本を雑に読むようにしています。それはそれくらいの感覚が観客の最初の印象と近いんじゃないかと思うからです。つまり読めてなかった部分は、観客が最初に観た時はそれくらいの感覚なんじゃないかという理論。その後演者さんと一緒に丁寧に読み込み、どんどん深掘りしていって、最後にまた視点を観客に戻す、そんな演出を心がけています。

脚本は初演は演出もされていた吉田武寛さん。この本はなかなかに深く読み込み甲斐のあるホンでした。

花火大会の夜に演劇部の部員が水難事故に遭う。調査に入った心理カウンセラーは、演劇部が上演するはずだった「星の少年と月の姫」という物語に興味を示すが…。

といったあらすじで、劇中劇を繰り広げながら事件の謎に迫る構成の物語。ミステリー要素、劇中劇のファンタジー要素、そして演劇部の青春要素、といった感じで多層構造がこの作品の魅力でしょうね。

またどこかで再演されることもあるかもなのでラストのネタバレは伏せておきます。

演出としては劇中劇のファンタジー部分を作り、その後事件の謎に迫るミステリー要素に進み、最後に演劇部の青春感(残酷な部分も含め)を乗せていったように思います。

ファンタジーと言えば、シンプルな舞台セットだったので、あの光るキューブは発明レベルの小道具でした。あれは水に入れると光るパーティグッズで、カクテルグラスに入れたりして飾るものみたい。確か振付の松本稽古さんに「祈るように手を開いたらぽわって光らないかな」といった無理難題をふったところ「こんなんありますよ」とググってくれて出てきた品物だったと思います。安いです。30個で1500円とか。買って試してみるとどうやら人間の汗にも反応して光るぞとなり、部長役の須山さんがパッと手を開いたらキューブが光り、床に落とすと光が消える、という演出をやりました。よく役者さんで「手汗がやばい」という人がいますが、この現場においては重宝されました笑。

他にも劇中劇に銀河鉄道が出てくるので床にばらまいて星屑のように見せたり。これはキューブの水に反応する部分に湿らせたバンドエイドを貼って、ずっと光ってるようにした演出助手増野くんのアイデアです。途中からもう光るキューブ祭りのようになり、ラストシーンでは演劇部員それぞれの想いの代償のような意味合いで使いました。

そうそう、ラストシーンと言えば主人公の白石まゆみさんと草場愛さんが○○に乗ってる絵を光が包んで終わるのですが、ブラックアウトならぬホワイトアウトがついにやれました。映画とかではよくありますが、演劇では無理かと思ってましたが、機材の発達か、ついにやれたなあと感動しました。本当は真っ白になって、その後暗転してるんですけどね。

逆に人力でアナログなこともたくさんやりました。シンプルな舞台セットを逆手に取って、風、水、穴、などを人が演じる「演劇部メソッド」これは面白かったな。困ったら「演劇部でなんとかして」となんでも人でやってみるという笑。穴は流石にダメだろうと思ったら、案外良かった笑。

主人公の二人の超早着替えは衣装さんも「過去最高速度の依頼です」と苦笑してました。結果、舞台上で一気に左右から引く一瞬早替えとなり、カッコ良かったです。いろんな無茶な依頼をいろんな叡智で叶えてくれてるんですね。感謝。

そんなこんなで、演出としては非常に良い仕事が出来た作品かなと思っています。そうだ、急遽ピンチヒッターで出演となった嶋谷さんは大変そうでしたね。それを座組の皆が支え、とても良い座組みだったと思います。

上演記録サイト

星の少年と月の姫

次回は、
松本プロデュース「ザ・コメディショー」です。お楽しみに!

今年一年振り返り〜目次編〜

毎年備忘録的に今年一年の携わった舞台などの仕事を振り返るというコラムをやっております。というより更新頻度が低すぎて、毎年このコラムだけ更新してるような有様です。これだけはちゃんとやろう笑。

まずは今年一年振り返りの目次を作るぞ!

1月…ILLUMINUS「星の少年と月の姫」
3月…松本プロデュース「ザ・コメディショー」
5月…劇団6番シード「CUBE」
7月…Re:piod PROJECT「また逢おうあの空の下で」
7月…UDA☆MAP「袴DE☆アンビシャス」
8月…劇団6番シード「12人の私と路地裏のセナ」
9月…feathers stage「ショートストーリーズ」
10月…オハ劇「モーニングコール屋」
12月…劇団6番シード「火消しの辰と瓦版屋の娘」

全9本か。今年は昨年中止となった袴DEと12セナを夏に続けて上演したり、初めてセルフプロデュースした「ザ・コメディショー」があったり、元劇団員栗生とやった「また逢おう〜」や、新たに知り合ったILLUMINUSさん、オハ劇さんとやらせて頂いたりと、バラエティに富んでる印象。そしてまたうまいことスケジュールのタイミングがあって、お断りする案件もなくいい感じではまったのでした。

今年の初めに「過去のご縁に恩返し。新しい出会いを大切に」という年始の目標というかスローガンを立てたのですが、まさにそんな一年になりました。

大事だな、元旦の計。

来年も全く同じスローガンで行きたいな笑。

あと個人的には引っ越しして「埼玉県民」になりました。ウォーキングの空が広いよ。
ということで例年よりは早めに書き始めたぞ。次回は、

ILLUMINUS「星の少年と月の姫」

です。

松本プロデュース「ザ・コメディショー」

松本プロデュースVOL.1
「ザ・コメディショー」

2022年3月11日(金)〜13日(日)
下北沢亭

劇作家・松本陽一が「やりたい時にやりたい人とやりたいことをやる」企画ユニット公演『松本プロデュース』がいよいよ始動!
第一回は、演劇界で異彩を放つ4人の俳優を集めたコメディてんこ盛りのオムニバス公演!
図師光博、高橋明日香、栞菜、浮谷泰史が、一人芝居に、スタンダップコメディに、落語風演劇に挑む!
全9作品すべて松本陽一新作書き下ろしによるコメディショー!いざ開幕!

○出演
図師光博
高橋明日香          
栞菜         
浮谷泰史

○お品書き

☆幕開き4人芝居「FOUR-KILLER」
スーツに身を固めた4人の殺し屋。武器は、銃、ナイフ、ナックル、そして…洗面器。 
4人が暗殺を目論むのターゲットは…癌細胞!?

☆高橋明日香×浮谷泰史「絶望のカレー」
冷めきった夫婦の前にあるのは冷めきったカレー。
「カッチカチだな」
「放置するからですよ」
「おい、どっちが食べるんだ?」
「じゃんけんしましょう」

☆図師光博×栞菜「出禁ちゃん」
あるアイドルグループの握手会会場で出会ったオタクの中年男性とオタクの麗しき女性。ルール違反で出禁となるのはどっちだ!?

☆浮谷泰史一人芝居「スタンダップコメディって」
軽やかなジョークで会場を沸かせるコメディアン、と思いきや…。スキャンダルで干された芸人が、海外進出の野望を持つ可笑しくも哀しい練習風景。

☆図師光博ほぼ一人芝居「創作落語風演劇〜楽屋騒動〜」
寄席の楽屋で今日の噺の練習を始めた二つ目の落語家。楽屋を訪れた三人の客を描いた「楽屋騒動」という演目は、やがて現実に楽屋を訪れた人達とリンクして…。

☆高橋明日香一人芝居「復讐の予習」
「入念に予習するのよ。完璧な復讐劇のね」 
結婚詐欺師に騙された冴えないOLは、復讐を誓ってその予習を始めるが、用意した薬剤がおかしな化学変化を起こし始め…。

☆栞菜一人芝居「花魁喜譚」
なぜ売れ残る。誰かあたいを買っておくれよ三文でいいよ。
江戸の吉原でくすぶる一人の遊女。売れっ子花魁になる為に彼女が取った突飛な行動とは…?

☆浮谷泰史×図師光博&高橋明日香×栞菜「エロ本の行方」
男子中学生がふたり。万引きしたエロ本が行方不明になった!もうダメだ!世界の終わりだ!
女子中学生がふたり。あいつに告っちゃいなよ。え、下駄箱にエロ本入ってるんだけど。

☆4人芝居「白身魚のアクアパッツア〜諭吉風小銭を添えて〜」
イタリアンレストランの厨房。4人のシェフやギャルソン達がものすごい形相で対峙している。
「私の財布を煮込んだやつ誰だよ!」
クリスマスの夜に奇跡は起こ…らない。

※演目、上演順は変更になる場合があります。

○タイムテーブル

2022年3月11日(金)〜13日(日) 
3月11日(金)…14時/18時☆
3月12日(土)…14時/18時★
3月13日(日)…13時/17時

※上演時間は90分〜100分を予定しています
※全ステージ生配信を予定しています
※終演後の面会はございません

☆…終演後アフタートークショー「松本陽一×図師光博×浮谷泰史」
★…終演後アフタートークショー「松本陽一×高橋明日香×栞菜」

○チケット
整理番号付き自由席
前売/当日ともに6000円(1ドリンク付き) 
カンフェティにて発売
チケット発売日…1月24日(月)22時〜

【チケット購入はこちらから】

ツイキャスプレミアにて全ステージ配信中

○スタッフ
 脚本・演出・プロデュース…松本陽一
 照明・音響・配信…山下哲平
 ビジュアルディレクター…宇田川美樹
 票券…島崎翼
 制作協力…藤岡真由美

○公演情報・お問い合わせ

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お問い合わせはこのホームページのお問い合わせ欄のフォームからお問い合わせください

○松本陽一コメント

この度「松本プロデュース」という企画公演を立ち上げました。これまで劇団6番シードという団体で代表を務め、多くの舞台公演を行ってきましたが、ひとりで何かやるというのは実はしてこなかったなと思い立ちました。いつも何か箱や枠組みがあって、その中で物語を作ってきました。じゃあまっさらに一から公演を作るとどうなるんだろう、と考えていた時に、頭に浮かんだのがこの4人の俳優でした。そして「ザ・コメディショー」というハードル高めの公演タイトルが思い浮かびました。笑ってください、とばかりのタイトル。

この企画で一番に声をかけたのが図師光博。小劇場界きってのコメディアンを余すところなく使い切りたい。そう思ったのがコメディショーの始まりでした。

過去、私が脚本演出を担当した一人芝居を上演したことのある高橋明日香。彼女の美しさと裏腹な、突き抜けるコメディを久々に見てみたいなと思いました。そこに今回は少々シュール味を添えて。

UDA☆MAPで強烈なキャラクターを生み出してきた栞菜。あまりコメディを演じてもらったという記憶はなく、あくまでストイックに芝居を作った結果と思っています。今回はガッツリ、コメディ全開放を見てみたい。

最高のバランサーであり、稀代のツッコミニストの浮谷泰史。どこか冷静な彼の最高沸点を見てみたい。スプリント勝負の今回の演目で、どんな浮谷が見られるか楽しみです。

それぞれの面白さと、4人の化学反応が存分に楽しめる演目をご用意しました。
「ザ・コメディショー」心ゆくまでご堪能ください。

                  脚本・演出・プロデュース 松本陽一