今年一年振り返り⑤「また逢おうあの空の下で」

今年一年を振り返っています。

7月4日、5日
Re:piod PROJECT「また逢おうあの空の下で」
浅草花劇場

栗生みな、遠藤瑠香による二人芝居。第一部1時間の芝居、第二部は歌のライブという構成の公演で、第一部の脚本・演出を担当しました。

栗生みなは元劇団員で、遠藤さんもかなり初期のアリスインデッドリースクールでご一緒してからだから、結構歴史ある女優さん。その二人と久々に芝居が作れたのは楽しかったですね。
ある日、栗生から(正確にはマネージャーさんから)「ナナステシリーズのスピンオフ作品を書き下ろして演出してほしい」と連絡がありました。栗生とは映画ディープロジック以来くらいで、最近は配信ですごい活躍してるんだなくらいで疎遠になっていました。後に本人から聞いたのですが「ヒューマンドラマなら松本さん」と直々にラブコールしてくれたようです。シンプルに久しぶりだなあというのと、依頼の内容が面白かったのと、今年は新しい出会いと過去にお世話になった人に恩返しを大事にしたいと年初の目標に書いたので、二つ返事で引き受けました。

とはいえ、ナナステシリーズ知らない、というところから始まりまして、シリーズの世界観に、栗生が言っていた「ヒューマンドラマ」を足していくことになります。
ざっくり知らない方向けに説明しますと、栗生演じる「りいの」という役がナナステシリーズにずっと出ているキャラで、ざっくり言えば「不老不死」のキャラクターで、いろんな時代に出会ったざっくり言えば妹の子孫的な女の子と、世界を歌で救えないかと葛藤する世界観ですざっくり。

本来はS Fベースのナナステなんですが、今回選ばれた世界が「昭和」で「ヒューマンドラマ」なので、私は「激動の時代を生きた二人の女性の物語」に全振りしました。
昭和33年、東京タワー完成の年から始まり、高度成長期、バブル期を経て、1999年に終わる昭和オムニバスストーリー。写真のビジュアルの髪型が古い感じなのはそのためです。栗生演じるりいのは不老不死、つまり歳を取らない設定で、遠藤さん演じる明日歌は普通の人、つまり歳を取る設定なので、これどちらも演じるの激ムズのやつです。遠藤さんは確か、16歳で始まって58歳で終わるんじゃなかったかな。そしてラストシーンは明日歌が死んで終わるので、S Fゼロどころか、鬼すごヒューマンドラマとなりました。でも、二人の人生をきっちり描けたかなと思います。

浅草花やしきの中にある劇場で、人生初花やしきに入りました。いわゆる乗り打ちという入った日に幕が開くスケジュールで、スタッフさんは凄かったな。いつそんな照明作ったの?って感じで幕が開きました。2階席3階席もあって面白い劇場でした。

昔、東大の安田講堂で芝居をやったことがあるんですが、こういう普段やらない場所、やらない形の公演は刺激的でいいですね。

やべ、ペース上げないとあと5作あった!次回は、

UDA☆MAP「袴DE☆アンビシャス!」です。

今年一年振り返り④「CUBE〜6C春の大感謝祭&新劇団員お披露目公演〜」B公演

今年一年を振り返っています。「CUBE」の後編。

B公演
「浪人街の左利き」
脚本家トークショーなんかでも話したのですが、この作品が新作では一番苦労しました。実にわかりやすいベタな時代劇なんですが、やっぱりベタこそ難しいを痛感。

浪人街でくすぶる三人の浪人は、賞金首の女の子と出会い、やがてその女の子を救う為、武家屋敷に乗り込むが…。

といったあらすじ。オオダイラ演じる主人公の左平次は左利きで普段から刀を右に差している(通常は左)という変わり者。樋口演じる権三、小沢演じる煮右衛門、そして七海とろろ演じる下女の傘奈の4人のぐずぐず底辺の人間たちが世直しを行うという、まさに痛快時代劇って感じ。最近時代劇なんて大河くらいしか見ないですね。僕が子供の頃に見ていた水戸黄門とか銭形平次とか、そういうテイストは入っていたような気もします。

当初は会話劇というか、チャンバラは想定してなかったのですが、やはり左利きの剣士の魅力は刀を抜いてなんぼだろうとなって、急遽、四面四角之助役(この名前いいよね)の名倉君に殺陣指導をお願いして、左利きならではの刀捌きを作ってもらいました。感謝。

オオダイラの魅力ってちょっと変わっていて(と僕は思っていて)、華があるようでない、ないようである、存在感がないようである、あるようでない、って印象なんだよなあ。伝わるかなあ。絶妙にイケメンのようでイケメンじゃないし笑。いやイケメンか。とにかくいろいろ絶妙で独特なんだよな。キャッチコピーをつけるとしたら「クセ強透明人間」とかどう?

そのオオダイラの新劇団員お披露目公演の主演と考えた時に、すぐにふっと、樋口と小沢と3人でつるんでる絵のイメージが出て、ネタ帳にメモしてあった「左利きの鮭」という謎タイトルを使って時代劇に発展しました。隠し砦の三悪人のリスペクトもあったかな。そんなこんなもあって、オオダイラには「とにかくど真ん中(主演)の演技を意識しろ」と演出しました。彼の魅力は引き出せたんじゃないかな。

傘奈役の七海とろろさんが良かったですね。樋口あたりが言ってたと思うが彼女の陽キャラは鉄板です。あの料理歌なんだよ笑。

「ジャガーノート」
細川博司脚本。バンタムクラスステージの細川さんの短編を、以前コラボした時に「同時会話」という演出で「シカゴ新喜劇」にしたのが自分でも衝撃で、短編集やるならまたやりたいと思っていた演目。藤堂瞬、石田太一、高宗歩未、平野隆士の4人芝居。

最初に本を読んだ時にスタイリッシュなのに登場人物たちが滑稽で、でも普通にやるとスタイリッシュ勝ちして、どうやったら僕の感じた滑稽さが出せるのかなと考えた時に、

「ずっと口論」

という同時会話演出を思いついたのでした。これは演じるのは激ムズいのと、凄まじいチームワークというか阿吽の呼吸が必要になる演出です。太一君は唸りながら果敢にチャレンジしてくれてましたね。同時に入れていくセリフはもちろんアドリブなのですが、ある時高宗が、高宗は娼婦でボスの女という役なのですが、

「この○○カ○野郎!」

とさすがに舞台でもピーが入るような言葉で罵って、太一君をノックアウトするという稽古もありました。

稽古もジャズセッションのように、メインの楽譜(台本)はあるんだけど、残りのアレンジは全てキャスト同士のセッションで作っていきました。なので本番でも毎回違う空気感と観客の反応になる演目でしたね。

「巨匠と三毛猫パスタ」
新作書き下ろし。可愛らしい三毛猫と、プライドの高い料理界の巨匠が二人。この設定だけでもう漫画。これをできるだけ漫画漫画するのが目標でした。なんで三毛猫と会話できるのとか、あの実況の人何、とかを気にせず楽しんでもらいたいライトコメディです。

夢麻呂さんがA公演の「アンダーライン」では超薄リアリティ演技だったので、こちらではそれはもう伸び伸びと演じておりました。小沢さんと夢麻呂さんってこれまでも何度か共演してると思いますが、こんなにどシンプルに絡んだのは初めてなんじゃないかな。最初と最後のシンプルダンスをつけてくれたのも夢麻呂さんだったと思います。史上最速で振り入れが終わったって笑ってました。

ストーリーとしては、三毛猫を巡って店の権利書をかけたフレンチの巨匠とイタリアンの巨匠が、料理対決するというもの。つまりストーリーとしては勝つか負けるか引き分けとかそれ以外かというスポーツものの構造と同じシンプルなもの。第一試合どっちを勝ちにするか(他の選択肢もありました。没収試合とか)はとても迷いました。

「シークレットナンバー1643」
新作書き下ろし。劇団員だけの演目と最初から決めていて、新劇団員2人の入った劇団の色はどんな感じになるのか楽しみだった演目でもあります。結果、拍子抜けってくらいオオダイラと高宗が馴染んでいて、もちろんそれはそれでとても良いのですが、あれ、前からずっとこのメンバーだっけ?って思うくらいでした。いや、ほんと。
この脚本の構造は変わっていて(観客には変わってるかどうかなんてどうでもいいくらいおバカな話ですが)、割と高速で物語が展開して行きます。35分くらいの話で、15分の段階で全員デスゲームに参加し、そして全員デスられたところまで進んでいます。その後、それもデスゲームのシナリオのうちだったと推理し、必死で脱出し、それもシナリオだったと分かり、実はそこにゲームの命題の「ハッピーになれる」要素が隠れてて、そんでもって主催者は宇田川演じる近所のおばさんだったというオチ。小気味良
い短編になったかなと思います。劇団座付き作家としての反省は、キャラがどこかで見たような感じになってしまったことかなと。長く劇団をやっていく課題でもありますが、どっかで見たキャラの幅を超えていくのは俳優だけでなく脚本演出としても意識していかなくてはいけないですね。

というわけで、全7作品、盛りだくさんの公演になったかなと思います。

公演のキャッチフレーズ「さあ、演劇を楽しもう」
そこまで強い意識を持ってつけた訳ではないのですが、時勢と相まってキャストスタッフ、そしてお客様にも響いた言葉になったのかなと思います。

次回は、7月

Re:piod PROJECT「また逢おうあの空の下で」

です。お楽しみに。

今年一年振り返り③「CUBE〜6C春の大感謝祭&新劇団員お披露目公演〜」A公演

M1のさや香のファーストラウンドの漫才、何回見直してもホンが完璧だな〜。リアリティと飛躍とマッチアップの切れ味よ。

今年一年を振り返っています。

5月19日〜29日
劇団6番シード第73回公演
「CUBE〜6C春の大感謝祭&新劇団員お披露目公演〜」
池袋シアターKASSAI

昨年から短編集をやりたいなと思っていて、きっとコロナももう落ち着いてるだろうと思い、お祭りみたいな公演にしたいなと思い、そして新劇団員が入ったのでそのお披露目も入れて、賑やかにやろうと思った公演です。コロナは全然落ち着いてなくて、昔シアターKASSAIで客席で流しそうめんしたような、本当はもっともっとお祭りにしたかったんですけどね、でも全7作品一気公演をやったり、賑やかな公演にはなったんじゃないかな。

新劇団員は俳優のオオダイラ隆生、高宗歩未、そして演出助手の増野美由紀です。実に10年ぶりくらいの新劇団員加入で、かなり明るくなりました笑。劇団というか、私の信条というか、劇団公演の主演は劇団員が担うべきと思ってずっと劇団活動を続けてきました。その思いもあって、オオダイラと高宗には短編ですが主演を張ってもらい、お披露目公演としました。

作品ごとに振り返ります。

A公演

「アンダーライン〜図書館司書探偵の事件簿〜」


藤堂瞬主演。過去作の「未来切符」の中で誕生した図書館司書探偵が古本に引かれたアンダーラインの謎に迫るというヒューマンミステリー。図書館司書の素人探偵って面白そうでしょ?(劇団ショップでDVD発売中!)
その第2作を2020年に無期限延期となった「6バンjackNG」という4団体合同公演で上演する予定だった今作をついに上演することとなった訳ですややこしい。
つまり脚本は2年前に書き上げていて、稽古もかなり進んでいて、次回通し稽古だ、みたいな日に公演の中止(延期)が決まったのでした。
その時に出演予定だったキャストは、藤堂、栞菜、浮谷、名倉、の皆さんで、それぞれがこの作品に残していた想いなどを持って稽古に臨んでくれました。
なのでとっても順調だったチームだと思います(7作品なので修羅場のようなチームもあった)。藤堂はシュリクラに続いての探偵役。ちょっとニヒルな感じは彼によく合う。栞菜さん演じる保育士は2020年段階で栞菜の新しい雰囲気が見れるかなと思って書いた役。6C初参戦だったようですね。

主人公の恋人、流瀬役の沢田美佳さん。僕この役好きなんだよなあ。ワトソンというか、こっちがホームズというか。そして園長役の夢麻呂さんには「夢麻呂史上最薄の芝居をしてください」とお願いしました笑。
お気に入りのシーンは浮谷演じる昔の図書館司書仲間と主人公のバッティングセンターのシーン。昔「Life is Numbers」でバッティングセンターのシーンをやってみて、めちゃくちゃいいなって思ったので今回も登場させました。そういえばその時も藤堂がバット振ってたな。

演劇表現とバッティングセンターは合う。覚えておきましょう笑。

「女流作家達の備忘録」

新作書き下ろし。宇田川美樹主演。宇田川美樹×椎名亜音×栞菜×七海とろろの4女優の共演を楽しみたいなと思ってこのタイトルを思いつく。そこに最年少の渡邉結衣をハブ役で入れて、小気味よいお洒落な恋愛短編が出来ました。
4人の女流作家をそれぞれ異なるタイプにして、宇田川演じる南條が純文学の芥川賞作家、椎名の北川が少女漫画の原作者、七海の東山がミステリー作家の卵、そして栞菜の南実がラノベ作家。そうそう、名前に東西南北を入れたんですけど、稽古初日に冒頭のシーンの絵を作ったら、本当に東西南北の配置になっていたというミラクルもありました。
その4人の作家が偶然にも「萌音」という登場人物を作り、自分の過去や現在を投影する小説(備忘録)を書いていくという展開。劇中劇と現在、自分達と萌音が入れ替わり交差しながら進む構成。一番演じるのが大変なのは萌音を演じた渡邉さんのはずなのだが、彼女は本当に大器というか涼しい顔して4役を演じ分けてましたね。

これまで書いた作品で一番「恋愛」が強い物語となりました。なんでしょうね、年をとって恥ずかしくなくなってきたのかな?今は恋愛もののセリフを書くのが楽しい。でも映画やドラマって恋愛もので溢れてますが、演劇で恋愛ものってあんま見なくないですか?どうかな?
どの組みも好きなのだが、栞菜×オオダイラのとこいいな。姉の夫を好きになるという超重設定のくせに、なんか軽やかで、ラストもこの二人だけは絶対うまくいかないって分かってるのに、サラリと爽やかに終われたし。ずっとこの先もあの感じなのかなとかね。案外あっさり忘れたりするような気もするね。
七海×石田太一の作家編集者コンビも良かったな。太一くんああいう役やるといい仕事するよね、って感じのハマり方だったな。

あと全体的に男が天然ボケ要素が強いことになったと後で気づきました。羽根川くん演じた天助はその最たるもので、稽古しながら「こいつムカつくわ〜」ってよく言ってました笑。

「天気と戦う女」

高宗歩未主演。過去5回(!)椎名亜音が演じてきたスーパー雨女雲間ひかるを新劇団員の高宗が演じました。短編集、お披露目公演、ならでは。僕も椎名?もこの演目がどれほど大変かもう麻痺しちゃってるようなところがあったけど、やっぱすげえやこれ。舞台を縦横無尽に走り回る新劇団員を見て、頼もしくなりました。
高宗は五角形が非常にバランスの良い役者さんだと思っていて、だからこそ劇団員になって、どこか一点でも突き抜ける女優さんになって欲しいなと思い、この役を託しました。
そしてライバルの豪徳寺乱子を椎名亜音が演じたのですが、これはすごかった!ため息が出るくらい面白かったな。ガスマスクを手を使わずにかぶり直すとかもう。漫画のキャラを漫画のまま実写化したような、実写が漫画の上行ってるというか、そもそもこの作品漫画原作じゃないんだけどね笑。

今回の美術はまさにキューブの集合体なのですが、そのブロックを余すことなく使いました。堤防決壊とか。そして6度目にして新しい演出が!ジェットコースターです。まさに遊びまくった演出でした。

さて、長くなったので2回に分けよう。

次回は「CUBE」B公演です。

年一年振り返り②松本プロデュース「ザ・コメディショー」

今年一年を振り返っています。

3月11日〜13日
松本プロデュース「ザ・コメディショー」
下北沢亭

セルフプロデュースで公演をやってみようと思い立った第一弾。劇団で代表をやってはいますが、きちんと「プロデューサー」と名乗って自分でやってみようと思ったのは初めての公演でした。劇団員のありがたさが身に沁みたぜ。

なんでわざわざ劇団公演ではなくセルフプロデュースにしたかと言うと、そんなに深い意図はないのですが、なんとなく、

そろそろ一人でやろう。

とか、

自由に好きなことをやってみよう。

と思ったからかな。例えば劇団公演だと劇団員が出演するわけで、外部の脚本や演出も同様になんらかの決まった形や要望や枠組みがあります。もちろんその枠組みは時にとてもありがたいし、その中で作家、演出家として最高のパフォーマンスが出来たら無上の喜びとなります。

ということから一つ外れるとどうなるのかなという好奇心かも知れません。今回で言えば少ない4人のキャストと私でコメディやろう、というなかなか劇団や外部で作れないような枠組みから始まりました。企画書にも最初から4人の名前を記載して、スケジュールが合うところを探すという順番逆な形でキャスティングしました。

前説なんかでも話しましたが、この「ザ・コメディショー」というタイトルはえぐいですよね。笑ってください前提のプレッシャー。まずすぐに思いついたのが、

図師光博。

劇団で図師君を呼ぶと僕はどうやらシリアス班にすることが多いらしく(詳しくはこのサイトの対談企画でどうぞ)、思いっきりコメディベースで組んでみたい!と思ったのでした。

そして女優陣ではまず高橋明日香。ぴーさんとの歴史は長いので信頼のプレイヤーでした(あすぴーとの対談もあるよ)。そして栞菜。昨年秋のペーパカンパニーゴーストカンパニーでキャラ強いままツッコミや回しをやっているのを見て、面白い、と思ったのです。

4人目は浮谷泰史。この人イメージ的にツッコミだったり、場をまとめるようなイメージが強いと思いますが、そしてそれはものすごくハイセンスなのですが、案外に芝居となるとツッコミよりはサイドアタッカーのようなキャラでボケも繰り出すんですよね。割とクセを出してくるというか。ということでまとめ役と共に、そのアタッカーぶりを発揮してもらいたいなと思いました。それが「絶望のカレー」とかにも出ていたかな。

作品ごとに振り返ります。

「FOUR KILLERS」
幕開きの3分くらいの芝居。食前酒みたいなイメージで、出演者達が全員免疫細胞で、笑いが世界を救うよ的なスタート。

「出禁ちゃん」
図師×栞菜
男女のオタクが握手会列に並ぶとどうなる?っていうキャラ系コメディ。女性のオタクと男性のオタクのバトルは面白いなと思ったのと「ガチお姉ちゃん勢」って言葉が思い付いたから。栞菜の妄想のシーンは台本ではト書きだけで、彼女のオリジナルアドリブです。

「絶望のカレー」
浮谷×高橋
これ一番好きかも。キャバクラに黙って行ったことでカチカチに凍ったカレーを出された夫とその妻の喧嘩バトル。「長年サザエさんを支えた企業」とかワードチョイスも良かったかな。好きなツッコミは「赤ちゃんが出来たんかい!」です。

「楽屋騒動」
ほぼ図師光博。
落語のように座布団の上で喋るのに、芝居になっているという構成のアイデアから生まれた作品。楽屋での落語の練習に邪魔が入り、それがそのまま落語のブラッシュアップになってい木、それがそのまま落語になるという。図師君苦労してたなあ。落語ってやっぱむずいんだな。次回コメディショーあるなら普通に古典落語の新作を書いてみたい。

「復讐の予習」
高橋明日香一人芝居。
実は他作品よりも長い15分尺をずっとあすぴーが喋り続けるという超高難易度の作品。結婚詐欺師に騙された女が復讐を誓って完全犯罪の予習を始めるというもの。あすぴーお見事でした!今後もいろんな女優さんで観てみたい演目。

「花魁喜譚」
栞菜一人芝居。
コメディショーですが、笑い少なめの感動作にしました。でも枠からは外れてないと思うぞ。売れ残った遊女が街に出て大変な目に遭い、子供を助けることによっていい花魁になれたという風吹けば桶屋的な寓話。栞菜にハマり役って感じのイメージで書きましたが、この演目も気に入ってて、今後いろんな女優さんで観てみたいな。

「エロ本の行方」
タイトルからしてもう笑。一番書くのも演出するのも楽しみで、予想通りおバカに書き上げて、楽しく稽古できました。昭和世代の私としては、エロ本を題材にくだらない物語が書けて幸せです。とはいえ不思議な感動が残る作品なんですよね。停学食らって同級生が丸坊主になって戻ってきた時、若干ヒーローに見えたのは僕の中学の頃の実体験です。

「スタンダップコメディって」
浮谷泰史一人芝居。
ホンとしては大変苦労して、浮谷にジョークを考えてもらいながら、それをどうやれば生かせるかずっと悩んでました。結果どシリアス方面に舵を切ったのですが、それが浮谷の哀愁と共にうまく行ったかなと思っています。あとコメディショーといいつつ、枠から外れなければ全て爆笑を狙わなくていいという全体構成の舵も切りました。これも良きアクセントとメリハリになったんじゃないかな。全てのジョークを考えてくれた浮谷には頭が上がりません。 

「白身魚のアクアパッツア〜諭吉風小銭を添えて〜」
ラストの4人芝居は本当に脚本に苦労して、小屋入りの3日前くらいに配りました。ごめんよみんな。シンプルに9作品書き下ろしが多すぎたのと、得意?のキッチンものだからぱぱっといけるだろと思ってたら案外むずかった。ラストの長台詞を見た時の栞菜の表情たるや笑。でも手伝ってくれた宇田川が「これがラストで全体が締まる」と言っていて、この4人で4人芝居書けて良かったなって思いました。

評判も大変によく、松本プロデュースも、このコメディーショーも来年どこかでVOL.2が出来たらなと思っています。にしてもキャスト陣の千秋楽挨拶の終わった安堵感たるやすごかった。そしてもう2度とごめんだ感がビンビンに出てた笑。でも安心して。またやるにしても違う4人で「お、今回のコメディショーはこの4人か」みたいに楽しんでもらえるようなパッケージになるといいなと思ってるので。たぶんね。

あと、照明、音響、配信、を一手に引き受けてくれた山下哲平氏に最大級の感謝を。ありがとうございました。

次回は、
6番シード「CUBE」です。お楽しみに!

今年一年振り返り①「星の少年と月の姫」

今年一年を振り返っています。

1月12日〜16日
ILLUMINUS「星の少年と月の姫」
シアターKASSAI
演出

毎年書くけどね、これ今年か〜。

演出を担当しました。初めての団体さんILLUMINUSさんで人気を博した作品の再演とのこと。こういうので演出として呼ばれるのって、プレッシャーもありますが、楽しみの方が強いですね。評判を得た作品をさらに面白くするにはどうすればいいんだろうというワクワク感。プレッシャーよりワクワクが勝つ。私の場合特に「演出のみ」の仕事はとても楽しいし、絶好調のことが多い笑。脚本(新作)となるともう、ワクワクをしんどさが軽々と上回っていくので。

という訳で、絶好調モードで稽古を始めた私。女優のみの座組でほとんどが初めましての方々。久々のガールズ現場でちょっと調子を戻すのに時間がかかりました。絶好調じゃなかったんかい!

僕は演出だけの時は、あえて最初は脚本を雑に読むようにしています。それはそれくらいの感覚が観客の最初の印象と近いんじゃないかと思うからです。つまり読めてなかった部分は、観客が最初に観た時はそれくらいの感覚なんじゃないかという理論。その後演者さんと一緒に丁寧に読み込み、どんどん深掘りしていって、最後にまた視点を観客に戻す、そんな演出を心がけています。

脚本は初演は演出もされていた吉田武寛さん。この本はなかなかに深く読み込み甲斐のあるホンでした。

花火大会の夜に演劇部の部員が水難事故に遭う。調査に入った心理カウンセラーは、演劇部が上演するはずだった「星の少年と月の姫」という物語に興味を示すが…。

といったあらすじで、劇中劇を繰り広げながら事件の謎に迫る構成の物語。ミステリー要素、劇中劇のファンタジー要素、そして演劇部の青春要素、といった感じで多層構造がこの作品の魅力でしょうね。

またどこかで再演されることもあるかもなのでラストのネタバレは伏せておきます。

演出としては劇中劇のファンタジー部分を作り、その後事件の謎に迫るミステリー要素に進み、最後に演劇部の青春感(残酷な部分も含め)を乗せていったように思います。

ファンタジーと言えば、シンプルな舞台セットだったので、あの光るキューブは発明レベルの小道具でした。あれは水に入れると光るパーティグッズで、カクテルグラスに入れたりして飾るものみたい。確か振付の松本稽古さんに「祈るように手を開いたらぽわって光らないかな」といった無理難題をふったところ「こんなんありますよ」とググってくれて出てきた品物だったと思います。安いです。30個で1500円とか。買って試してみるとどうやら人間の汗にも反応して光るぞとなり、部長役の須山さんがパッと手を開いたらキューブが光り、床に落とすと光が消える、という演出をやりました。よく役者さんで「手汗がやばい」という人がいますが、この現場においては重宝されました笑。

他にも劇中劇に銀河鉄道が出てくるので床にばらまいて星屑のように見せたり。これはキューブの水に反応する部分に湿らせたバンドエイドを貼って、ずっと光ってるようにした演出助手増野くんのアイデアです。途中からもう光るキューブ祭りのようになり、ラストシーンでは演劇部員それぞれの想いの代償のような意味合いで使いました。

そうそう、ラストシーンと言えば主人公の白石まゆみさんと草場愛さんが○○に乗ってる絵を光が包んで終わるのですが、ブラックアウトならぬホワイトアウトがついにやれました。映画とかではよくありますが、演劇では無理かと思ってましたが、機材の発達か、ついにやれたなあと感動しました。本当は真っ白になって、その後暗転してるんですけどね。

逆に人力でアナログなこともたくさんやりました。シンプルな舞台セットを逆手に取って、風、水、穴、などを人が演じる「演劇部メソッド」これは面白かったな。困ったら「演劇部でなんとかして」となんでも人でやってみるという笑。穴は流石にダメだろうと思ったら、案外良かった笑。

主人公の二人の超早着替えは衣装さんも「過去最高速度の依頼です」と苦笑してました。結果、舞台上で一気に左右から引く一瞬早替えとなり、カッコ良かったです。いろんな無茶な依頼をいろんな叡智で叶えてくれてるんですね。感謝。

そんなこんなで、演出としては非常に良い仕事が出来た作品かなと思っています。そうだ、急遽ピンチヒッターで出演となった嶋谷さんは大変そうでしたね。それを座組の皆が支え、とても良い座組みだったと思います。

上演記録サイト

星の少年と月の姫

次回は、
松本プロデュース「ザ・コメディショー」です。お楽しみに!