今年一年振り返り①「ボイルド・シュリンプ&クラブ」

今年一年振り返り。

毎年年末に、自分自身の備忘録的な意味も込めて、今年一年で上演した舞台などの活動を振り返っています。
今年の作品群は、
5月「ボイルド・シュリンプ&クラブ」
6月「ガールズトークアパートメント2020」
8月「袴DE☆アンビシャス」
10月「ペーパーカンパニーゴーストカンパニー」
11月「12人の私と路地裏のセナ」

でした。このうち2作品 
#袴DE
#12セナ 
が公演中止、来年に延期となりました。それについては最後に振り返るとして、まずは、今年一発目の
#シュリクラ
から振り返りスタート!

4月〜5月
劇団6番シード第72回公演
「ボイルド・シュリンプ&クラブ」
シアターKASSAI

藤堂瞬演じる御堂筋海老蔵と、椎名亜音演じる諏訪蟹子の探偵コンビが事件を解決するミステリーコメディ。
まさにテレビドラマのような1時間×4話というスタイルで、1話2話がA公演、3話4話がB公演、全部一気に上演する一気公演もやりました。一気公演は評判が良かったですねえ。13時に開演して、途中長い休憩は入れましたが、終演は18時半という、なんと5時間半の公演!!!どうせマチネソワレで2公演とも観るのなら一気公演の方がいい、という声をたくさん頂きました。またこういう2バージョン公演とかあったらやりたいと思います。というかすぐ来年にある予定です笑。

この作品は「倒叙ミステリー」と言って、観客は犯人が最初から分かってる状態で始まるミステリーの形のことを言います。古畑任三郎がまさにこの形です。最近古畑知らない世代が出始めてるのには驚いた笑。
CASE1「地下鉄ジャックを阻止せよ」
CASE2「イタリアンの罠」
は2012年に初演(10年前かっ!)した台本に加筆したもので、
CASE3「ピエロの逃避行」
CASE4「浮気調査は世界を救う」
は新作でした。全4時間は演出も大変でしたが、探偵の二人、とりわけ謎解きを担当する藤堂は台詞の海に溺れておりました。しかし、しっかり間に合わせてくるのが信頼の劇団員って感じで頼もしかったな。各話ごとに振り返ります。

CASE1「地下鉄ジャックを阻止せよ」
松木わかはさん演じる普通のOLが犯人。冒頭で「半蔵門線をジャックします」と警察に予告電話するシーンから始まります。この何の変哲も無い会社員がなぜ地下鉄をジャックするの?という謎を、探偵達が解いていく流れ。
松木vs藤堂のやりとりが脚本家的にも好きで、稽古場でもずっと二人で台詞合わせしてましたね。こういう心理戦がやりたくてこの倒叙形式にしたというのは大いにありましたし、それを存分に表現してくれました。
一方椎名演じる蟹子は、冷静に考えるとかなりのイカレキャラクターで、初演時が6ヶ月連続公演のラストで新作だったので、なかなかの遊びテンションで描いた感が月日を経てやってみたら思ったこと。ちなみに再演のA公演と、新作のB公演では、同じ作家(わし)が書いた同じキャラとは言え、やっぱり熱量が違うなと思いました。シリーズもので作家が何人がいるみたいな。それは主演の二人にも伝えて、蟹子のパーソナルはこのイカレ1話でよろしく、という話をしました。
ラストは、失踪した恋人と再会するというなかなか素敵なホンだと思います。駅員演じた遊佐邦博さんと慶洲君のコンビもいい味出してたな。川上献心君演じたサラリーマンの末路がちょっと可愛そう。

CASE2「イタリアンの罠」
神谷未来紘さん演じるイタリアンレストランのオーナーシェフが、ワインセラーでスポンサーである会社社長を殺害するところから物語が始まります。この回が一番正統派ミステリーという感想が多かった気がします。殺人事件ですしね、レストランが舞台のワンシチュエーション感もあるし、オーナーがいかに厨房を抜け出して殺害し5分で戻ってきたか、という密室&時間差トリック的な要素がそうさせたのでしょうね。これも再演作ですが、当時マジで死ぬほど苦労して書きましたよ。「不思議なものは何もない」というミステリーを書く勉強にもなった話です。
その分、コメディ色が弱まるので、宇田川さん演じる大家のバアさんがシェフに恋するサイドエピーソードなんかを入れました。樋口演じる村田刑事もコメディリリーフ的な位置で登場するのですが、それが一番活躍するのがこの話かな。その相方として台本上はほとんど記載のない「ファンファン」というホステス?嬢、1話で女子高生を演じていた花実優さんをモブ的に配役したのですが、面白かったのでめでたくCASE4で再登場することに。こういうのもシリーズ物の面白さですね。
ラストは、オーナーが味覚障害になって、それを隠す為に野口オリジナルさんが演じる副料理長が…という謎解き二重構造は良かったなと思っています。殺人事件ですからね、犯人のその後を想像すると結構辛いものがあるのですが「この店を頼んだぞ」という最後のオーナーの台詞は気に入っています。

そしてこの1話2話に登場するのが舞川みやこさん演じるメイドカフェ店員と、西澤翔君演じる繁華街で客引きをしているフリーター?の二人。舞川さんのゆるい接客最高でしたね、その発想はなかった!と稽古場で唸りましたわ。西澤くんの素を生かしたというか何と言葉にすればいいかの西澤ワールドと相まって、いい癖キャラになりましたねえ。こういう情報屋ポジっていいですよね、僕も大好きなジャンル。ジャンル?。CASE3CASE4では別の情報屋が出てきます。探偵+情報屋っつーのがたまらないのよ。今後もシリーズ続くなら新しい情報屋も増やしたくなる。でもこの人たちもまだ出て欲しいから悩む。

CASE3「ピエロの逃避行」
図師光博君演じる風俗店のサンドイッチマンのバイトをしているピエロと、七海とろろさん演じる恋人の風俗嬢の逃避行のドラマ。図師君呼ぶとシリアス班にしたくなるんだよなあ。あ、このホームページの対談企画に図師君との対談があってそのタイトルが「ピエロの葛藤」です。この対談からインスパイアされた部分はあったかも。お時間あればご覧ください。
連ドラで言うと異色回ってやつです。あんまりミステリー要素ないし、ロードムービー的な展開だし。恋人を守る為に風俗店の店長を殺害してしまったピエロ。真相はもう少し深いところにあって、そこに小沢さん演じる今は落ちぶれてしまった大道芸の師匠との歴史が絡み合っていきます。短編なので少し描き足りないな感はありますが、小沢さんにはとにかく薄い薄い演技を要求しました。「何もしないでそこにいるだけでいい」的な。
情報屋がCASE1、2とは変わって、ちょっとダークサイド方面な人々。花奈澪さん演じる偽造パスポートを売る裏社会の女リョウと、門野翔君演じる窃盗団のリーダー、タケルが探偵達に協力していきます。リョウは面白いキャラだったな。かっこいいのにコミカル要素もいけるし、なんかファニーな魅力はなみおさんのキャラ造形の賜物。CASE4で弁護士になるのとかもう。かどしょーは伸び伸び演じてましたね。普段のあいつに近いのかな、どうかな。本当にああいう奴としか見えない笑。あとアクションのキレえぐい。
宇田川さん演じる悪徳刑事・香水華はシュリクラの元になった作品「0:44の終電車」に登場したキャラクターでした。2018年にその作品を女性版としてアリスインプロジェクトで上演したのですが、その感じがもうすごく良くて、再登場させました。0:44に興味ある方は劇団のホームページで初演のDVDを販売してたと思います。みんな若いよ笑。
ラストの感動のデビルスティック。ラストにピエロがなんか大道芸をやって泣かせる、というイメージは早くからあったのですが、お手玉とかシガーボックスじゃちょっと絵が弱いなと思い、きっと難易度は鬼高いだろうと思ってたけど、顔合わせの日に図師くんの席にデビルスティックをそっと置きました。その後の奮闘はメイキングでぜひ。

CASE4「浮気調査は世界を救う」
土屋兼久演じる潔癖症のエリート刑事が特殊詐欺に加担していたというドラマ。まず殺人事件はやめようと思ったのです。古畑は全部殺人の倒叙ミステリーですが、探偵なので、殺人以外の事件も(ていうか殺人の方が稀であってほしい)解決したいなと思って思いついたのがオレオレ詐欺(特殊詐欺)でした。謎解きを組んでいくと案外、というか相当難しく、殺人の方が物語のフォーマットがあってある意味楽なんだなあと思いました。最終的に犯人が「参りました」となる論理の積み上げと、もう一つは情緒の完結ですかね。倒叙ものはこの二つの要素で「参りました」にならないと面白くないんだなあとこれまた勉強になりました。この話では、海老蔵が推理したパーツを最後に高宗歩未さん演じる部下が涙ながらに「警視の指紋が検出されました」という言葉で、エリート警視が観念します。ラストの野球場が古畑のラストシーン(スペシャル版除く)と同じだったのは狙いではありません。が、偶然でもないかもなあ。
土屋はこの公演をもって劇団を退団することになりました。まあひとり立ちと言いますが、その後の今年の彼の活躍を見ていると私も嬉しくなります。ラストに警視と海老蔵がピッチャーとバッターとして対峙する絵でこの物語は終わります。長らく一緒に舞台を作り、土屋のことを尊敬?信頼?していた藤堂とのラストシーンは、今思えばなんだか印象的ですね。なんてね。

この公演は山岸謙太郎監督にオープニングムービーを作ってもらい、主題歌もオリジナルで作成し(KIHOWさんの歌声たまんないよね。音楽配信サイトで購入できますよ。youtubeも貼っときますね)、準備から気合い入れて臨んだ公演でした。今振り返ると、3たびの緊急事態宣言中の公演となり、大変なこともいっぱいありましたが、37人という大人数の座組み(オーディションも久々にやりました)で駆け抜けられたこと、今頃しみじみしちゃうな。超沢山の人が関わってくれた一大プロジェクトと言ってもいいのかもしれませんね。ありがとうございました。
このシュリクラは絶賛シリーズ化の予定です。映像化も企みたい。次は誰を犯人にしようかなと想像するだけで、ワクワクが止まらないのですよ。ご期待ください。

初日から超長文になった!まあそれくらい規模感ある公演だったしね。
次回は、
UDA☆MAP「ガールズトーク☆アパートメント2020」
です。

今年一年振り返りラスト「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」

さて振り返りラスト!

11月
6番シード「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」

今年の頭の段階では連ドラ演劇「ウィキペディアな男、ヤフーニュースの女、炎上トランスジェンダー」という企画を2021年春まで連続でやる予定だったのですが、コロナになり、流石にこの企画はエッジが立ちすぎて今やれないだろうと思って演目変更しました。この企画は必ず今後やりますのでお待ちくださいね。

そして選んだのがこの演目。再演はもう4度目となる劇団の大人気作品です。ミキシングを終える頃、演目を何にしようかなと思った時に、今年はとにかくコメディで笑ってもらいたい、生の舞台の面白さが実感できる作品(まあなんでもそうですが、ワンシチュエーションコメディとかノンストップ感とか)にしようと思いました。元々また再演はしようと思っていて(コロナがなければ2021年とかにやってたかも)、アニメ編の主人公を藤堂にしたら面白いだろう、そして宇田川美樹の真骨頂を見せつけてやろうというような想いもありました。

まずね、キャストがすごくよかった。実は上に書いた連ドラでオファーしていた方も何人かいたのですが、もうアニメもオンラインもハマりまくった印象。
アニメはまずマネージャー矢理田に七海とろろ君を配置したこと。藤堂とのコンビが良かったですね。高橋明日香さんのヒロインも良かった。

藤堂はあんな破天荒なキャラなのに(パンイチになるくらいなのに)なんかいそうなんだよなあ。ああいう俳優。藤堂とはリアリティも共生するキャラを作りたいといった話をしましたが、いるんだよなあ、ああいう人(2度目)。過去小沢、土屋と演じてきましたが、一番良かったかもしれない。

意外というか想像以上によかったのが、真野未華さんとオオダイラ隆生君の原作者と脚本家のコンビ。まのみかは本当にコメディエンヌとしての才能を今後どんどん伸ばして欲しいと思ってる。もちろん彼女シリアスもいけますけどね、あの独特の度胸と愛嬌。一人でドリブルして必ず点を取ろうとする姿勢といいいますか、なかなか周りにいないと思うんですよね。たみしょうさんとか中野さんとかを抜いていって欲しい笑。
オオダイラ君演じた魚来という役は実は台詞はめちゃくちゃ少ないのですよ。でもすごく印象に残ってるでしょ?あのオタク感あるあると細かい芝居の積み重ねがよかったなあ。

そしてオンラインではやっぱり黒船でしょうね。兵頭さん演じるディレクターとよっちさん(平山佳延)演じるプログラマー、そして身体能力鬼高の松藤君はモーションアクター。屈強でした。ええ屈強でした。僕はキャスティングの時に兵頭さん演じた祐天寺(元は男性キャスト)を女性に変更し、よっちさんと組ませました。vs宇田川美樹というこの役者バトルが絶対すごいことになると思ったから。そしてすごいことになったと思います。
そしてそれらを支えた仕事人たちがまたよかったのです。まずwボランチと呼んでいた椎名松木ペア。これは文章化本当にしずらい。本当にボランチの仕事を完璧にやってくれた印象。サッカー知らない人ごめんなさい。俺もにわかだけど。
その後ろに土屋や小沢がさらに多重層を奏でるといった構図が本当にこの作品の圧倒的な評価につながったと思います。土屋はいい仕事してたなあ。
そしてオンラインの浮谷君も超絶ツッコミマシーンと化してましたね笑。そう思ってオファーしたのですが、彼はただツッコむではない、というかそっちから始めてない感じ、なんて言えばいいのかな、ツッコミの前の部分や奥の部分を大事にしてるのですよ、そこに技術が乗るから面白いのです。ツッコミは本当に技術だけでやると鼻につく芸なんですよね。それがわかってる彼はすごいなと思った。

オンラインの宇田川と工藤夢心さんの師弟ペア。女優宇田川ここにあり!といった作品で、まさにそれを体現してくれた宇田川さんですが、夢心君のピュアな輝きと共にそれが際立ったように思います。夢心くんはこれがラストステージ(キャスティング後に知りました)。潔く「やりきった」と語っていた彼女のカーテンコールはカッコよかったな。お疲れ様でした!

役者さんのことばかり書きましたが、それくらいこの座組は屈強でした。今年を締めくくるのにこの演目でよかったなと心から思います。

あと久々にやった終演後イベントは盛り上がったなあ。神回でした。

さて、これで全作品振り返ったぞ!お疲れ俺!
来年もね、まだまだ大変な世界が続きそうですが、ベタですけど、前を向いて、想像力を忘れず、頑張っていきましょうね。
これも恒例ですが、元旦に6番シードホームページで来年一年のラインナップを発表します。お楽しみに!

それでは皆さま、よいお年をお迎えください。

松本陽一

今年一年振り返り⑦「六番寄席」「24時間TV」「ディープロジック全国上映」

大晦日になりましたが、おせち作りが終わったので、今年一年振り返りを終わらせるぞ!
あとは「ザ・ボイスアクター」だけなのですが、その前に…

今年一年にやったイベントなどを。

3月「六番寄席」
なんか久々にイベント公演したいねという話からだったかな、あのに2デイ3バージョン公演という超ボリューミーなやつになりました笑。盛り込んでいったらこうなった笑。

初日は演芸。椎名&浮谷の漫才は秀逸すぎて、本当に来年はMー1を目指してみるといいと思うんだけどなあ。Wツッコミっていうジャンルを開拓して欲しいなあ。
私は落語をやりました。結構練習しましたね。古典落語の「粗忽長屋(そこつながや)」以前にyoutubeの立川談志師匠のを見てすごいと感嘆し、他の落語家さんの粗忽長屋も見ましたが、談志さんの完コピにしようと思いました。無茶無茶難しかったけど、落語好きの山岸監督やお客様から談志の粗忽長屋がよく出てたと言われて嬉しかった。ちなみに最終日に創作落語「ドーハの喜劇」という私が結核病棟に入院した時のエピソードを漫談風に語りました。これは良い出来だったと思います。落語はね、楽しかった。せっかく和服もちゃんと新調(中古ですが)したので、落語会とかやりたいなあ。ずっと勉強していきたいジャンル。

二日目はマチネが歌のライブ。ソワレが樋口デビュー脚本他でした。

歌ライブはほぼ劇団員にお任せでプランしてもらいました。宮島家、Setsuko宇田川ライブ、あと樋口と平井さんのタップも構成含めよかったなあ。

樋口の脚本デビュー作はかなりしっかりしていて、終わった後に「今後も描いてみれば?」と勧めたくらいです。実体験をベースにしているそうですが、母の死のシーンに鳩時計を鳴らすなど、これまでの知識や物語作りの意識がしっかりと出ていましたね。映画好きの彼らしい作品なのかも知れません。そして24時間TVで短いですが第二作を発表しました。

その24時間TV。
12月の頭に、今年はファンクラブイベントなどが全然できなかったので、何か代わりに楽しんでもらえるものをと思って考えました。でもただ配信番組やっても代替えにはならんだろう、ということで、24時間です。最近あたおか劇団と呼ばれています。

色々技術的なこととかwi-fi電波の上限をギリギリさまよってハラハラしたとかありましたが、大変盛り上がった企画になったんじゃないかなあ。ゲストで来てくださった皆さん、ありがとうございました!結局私は1時間くらいしか寝てない笑。一応睡眠シフトを組んだのですが、やっぱ神経が上がってるんで、間違って早く起きてしまいました(早朝かず散歩のあたり)。
私としては、格付けの舞台平面図当てクイズがいい企画だったな。かず散歩も早朝に空いてる居酒屋に小沢さんが飛び込みロケなど面白かった笑。あと椎名が作成したFCテーマソング、名曲ですよね?なんか今後もこの歌広がっていけばいいなあと思います。

あとは、映画「ディープロジック」が全国公開となりました!7都市だったかな、予想以上の映画館で上映して頂けました。コロナ渦で客足が伸びなかったのはやっぱり寂しいですね。もうタイミングとしか言いようがない。でも大阪や京都で初めて観た方の感想などが聞けて嬉しかったです。今後も山岸監督とは色々企んでいきたいなと一方的に思っています笑。

こうやって並べてみると、コロナと言いつつ、かなり忙しく色々やった一年だったんだなあ。まだまだ厳しい現状で、舞台公演がまず第一になりますが、落ち着いてきたら色々企画していきたいですね。
まず単純に上映会やりたい!いろんな作品の。もちろんシックスドアーズもね。気長にお待ちください。

さて今度こそラスト。
次回は「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」です。

今年一年振り返り⑥「新宿アタッカーズ3〜孤島の洋館殺人事件〜」

今年一年を振り返っています。

さあ、今年の天王山がやってきました。
9月
UDA☆MAP10周年「新宿アタッカーズseason3〜孤島の洋館殺人事件〜」

宇田川美樹がプロデュースするユニットUDA☆MAPも10周年。まさにその祭りにふさわしい超豪華ゲストが集結しました。
まずはそのキャスト表を見た時に宇田川さんに真っ先に言ったのは「2時間では絶対おさまらない。休憩ありの2時間半にしてくれ」これだけの女優陣が集まり、10周年で色々盛り込んでいったらまず2hには入らないなと直感で思いました。そして休憩ありで書き始めたのですが、出来上がってみたら本編2時間50分休憩10分の合計3時間のガチガチ超大作になりましたてへ。千秋楽はマチネが終わり、休憩0分ですぐ集合して円陣を組んでソワレへという凄まじいスケジュールでした。出演者は「あれ、デジャブ?世界はループしてる?」とか言ってました笑。脚本家松本よ。全セクションに謝れ笑。

この新アタは人気のシリーズもの。江戸時代とミステリーとグズグズコメディがまさにいい塩梅で混ざり込んでるアニメみたいな世界観が、やっぱ描いてて、見ていて楽しくなります。主演の三姉妹、宇田川さん、石井陽菜さん、若林倫香さん。このシリーズものは代替わりシステムで、同じキャラを代替わりしながら進んできました。三女夢或は今回から若林さん。これまで福田真夕さんがやっていた乳首かゆいでお馴染みの獏露の親分は七海とろろさんに代替わりしました。初代次女琵輪を演じていた高橋明日香さんが別の役で、しかも容疑者役で、最後は真犯人で、戻ってくるのもなんか面白い縁ですね。シーズン2から琵輪役の石井さんがお休みの時にあすぴーに琵輪の代役をやってもらったのは楽しかった笑。

ミステリー部分はいつも唸るほど苦労します。新アタは毎回ネタ帳が二冊になります(普通の作品はだいたい一冊)。真犯人があすぴー演じるキャロライン留とは最初から決めていたのですが、容疑者7人いるとマジでしんどかった。せいぜい5人だなと思った。または絶対犯人じゃないだろ的な、モブ的な容疑者(金田一君だといるよね)が必要なんだと思った。7人全員にドラマがあったら、そりゃあもう3時間になりますわな。感想で「松本さんはコロナ対策で休憩が入るのをいいことに、好きなだけ書き切った」みたいなのを頂戴しまして、はい、まさしくその通りです。

舞台美術もここ数年やってないスケール!そしてあんな巨大セットを出演者だけで、しかもほとんど女性の座組でやるという鬼畜の所業。稽古場では「ゲネプロ(本番直前の通しリハーサル)やろうぜ!」を合言葉に、相当な時間を場面転換に割いた気がします。そして分量といい、物語尺といい、演出家としては常に「押して」いる気持ちで毎日稽古したなあ。だいたい本番直前になるとその時計は元に戻るんだけど、今回はずっと最終日まで、いや、初日まで、この感覚でした。よく場当たり(劇場でのテクリハ)は戦場だなんて言いますが、マジで戦場でした。キャストスタッフに感謝。

しかしキャストは豪華でしたし、真摯でしたし、素晴らしい座組でした。第一回のUDA☆MAPに出ていただいた大竹えりさん、第二回からの中川えりかさんというベテランから、石井さん、栞菜さんといった沼田世代(今作った造語「沼田⭐︎フォーエバー」)、そして新木さん、結城さんと言った若手まで(二人は場面転換で凄まじい働きをしてくれました)が切磋琢磨するよき現場だった。

真犯人の高橋明日香さん。台本は稽古しながら書き進めるパターンで、実は本人にだけ最初から「犯人だよ」と伝えてました。他の人は新着台本が配られるたび「誰々が怪しい」などと推理を巡らせます。実はそんなキャストの様子をリサーチしながら「ふむふむ、お客さんはこういう推理思考になるのか」」など思いながら参考にしていました。でも最初からずっと留さんは真犯人人気ナンバーワンでした笑。そして後半に差し掛かったある日、もう隠せないと思って「そうです、真犯人は留です」と皆に伝えました。全く予想してなかった人もいて、的中させた人もいて、その反応は楽しかったですね。そういう犯人クイズの間あすぴーはずっと「犯人は私」と稽古場で思いながら隠していたわけです。ごめんよ。
しかし最後は留さんと水野さん演じるマチルダさんの愛の物語にしたかったので、それはうまくいったかなと思います。それぞれの思惑が本当に交錯するので、稽古場では質問の嵐でした。やっぱミステリーは難しい。

栞菜さん演じる歴史学者の梵著が大好きすぎて、続編登場を匂わすラストにしてしまいました。コミカルなのにミステリアス。そして実はFBI的な幕府最高機密方だったというオチです。ほんと続編に出る前からスピンオフが書きたいキャラですわ。

振付は新アタ2から引き続き松本稽古さん。メインテーマは、シリーズの振り(前回の)と新しい振りの融合が面白かった。同じ振りというのもシリーズものの醍醐味なんだなと思いました(その辺のチョイスはお任せしてました)。

中アクト(いまだいい名称決まらず)は平義隆さんの書き下ろし楽曲「花火」。この曲のデモを聞いて、ラストシーンや花火師辰次の物語が生まれました。このアクトの終わりごろ、死んだマチルダとその手を握る留、そして他の人物たちが儚い花火を作る。あそこは絶品に好きです。人って、ダンスって、花火を表現できるんだな(もっと細く言えば散り際の儚さ)と感動。

とにかくハードな公演で、コロナもそうですが、怪我なく事故なく終わったことに安堵感がすごかった。
でも10周年の花火はあげられたんじゃないかなと思っています。
そしてこの大変な年に3作品のプロデュース作品を送り出した宇田川さんのバイタリティはシンプルにすごいんじゃなかろうか。

新アタシリーズはまだまだ続きます(の予定)。少なくともシーズン5までの構想はある。三姉妹の出生の秘密はいい加減描いていかないと怒られそうですね笑。

さて振り返りはあと1作品!大晦日に書きます。
次回はいよいよ今年ラストの公演「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」です。