今年一年振り返り②「ある日僕らは夢の中で出会う」

今年一年振り返り②

2月
島崎翼プロデュース6C番外公演
「ある日僕らは夢の中で出会う」

高橋いさをさんの名作戯曲(30年くらい前)を松本が演出したらどうなるか、というコンセプトで島崎が企画した番外公演でした。
菅野英樹主演、宇田川美樹、土屋兼久、椎名亜音出演

いやー苦労しました!!ほんっと苦労しました!!原作はいわゆる不条理劇、メタフィクションというジャンルらしく、僕が得意とする明確なストーリーラインに沿っていない脚本。いや実はちゃんとあるんですよ。でもそういうのを壊そうぜ、みたいな当時の演劇界の機運とかあったのかな。その最先鋒だったんだと思うんです。高橋いさをさん。それで私は一周か2周回って「ベタっていいよね」みたいな境地にいた作家だったので、もっかい言いますが、ほんっと苦労しました。演出がなかなかはっきり道を示さないので、椎名亜音と何回かモメました笑

だから悩み悩み演出をして、膨大な試行錯誤を繰り返しました。盆舞台(回転舞台)にするというアイデアは面白かったと思います。演出って一言で言うと足し算なんですよね。面白い(にもいろいろありますが)を足す作業。盆舞台、奇抜な衣装、ユニゾンがやがや、などなどとにかく日々足すことを意識したと思います。

そして最終的にたどり着いた境地は「難解劇をきちんとわかりやすく難解に届ける」という考えでした。禅問答みたいですが「スーパーわかりやすい難解劇」を目指し、そしてそれが出来たかなあと思っています。足すだけ足して最後にいい引き算ができたかな。

この作品から「わかりやすさの面白さ」と「わかりにくさの面白さ」を考えるようになったかも。今書いてて思ったのですが「劇シナ」に少し影響が出てるかも?
とにかく絶対やらない世界観の演出にチャレンジ出来て、大変だったけど収穫もあった公演でした。

出演の菅野英樹はナイスキャスティングだったと思います。彼は熱とスマートとバカがちょうどいい。宇田川さんの最後の熱い長台詞(熱く早くやってくれとお願いしました)を聞いて、つかさんの熱海に出てる宇田川さんを観てみたいなと思いました。

演じ継がれる戯曲っていいですね。

次回は
「最後の1フィート〜一編の映画を巡る3つの物語〜」です。

今年一年振り返り①「ゼロヨンヨンの終電車」

今年一年振り返り①

1月
アリスインプロジェクト
「ゼロヨンヨンの終電車2018」

脚本と演出を担当しました。

まあ毎年振り返り一発目に思うこと。

これ今年かー!!!!

まあ12月から稽古して年明け早々の公演だったので、半分昨年の実績。

これまで沢山の芝居を一緒に作ってきた盟友?高橋明日香主演ということでわりと急遽の依頼だったのですが、劇団過去作をあすぴー主演でやったら面白いなと思い引き受けました。

原作の劇団公演は10年前くらいかな。小沢和之演じる主人公のサラリーマンが新宿駅で痴漢と間違えられたところから物語が始まり、別の事件で逃げていた風俗嬢と逃避行をするというサスペンスもの。

という大枠だけ残して、すべて書き直した完全新作ですね。高橋明日香演じる高校教師黄彩花と、梅田悠演じる男装ホストMISAKIの逃避行のドラマとなりました。

アリスインプロジェクトですから出演者は全員女性。初演の探偵コンビも舞川&中塚の女性デコボココンビに。このコンビよかったなあ。
ボーダーズと呼ばれる廃屋を寝ぐらにした不良少女グループなど、スワロウテイル大好きな私としては本当に好きな世界観で楽しく書きました。いや新宿ダークすぎだろ笑

なかでも悪役刑事の宇田川美樹と花奈澪が良かったなあ。キャラクター設定が嘘しかない笑。若い女の子がひしめくアリスさんに宇田川がアホみたいに怖い役で出て、物語の真ん中で北野映画ばりの殺戮シーンがあるとか。

いやあ、楽しかったです。その時殺されたホストを演じていた喜屋武蓮ちゃんは、宇田川さんの舎弟みたいになり、その後のUDA☆MAPでもすぐ死ぬ役になりました笑

花奈さんがボーダーズの足を撃つシーン、針谷さん演じたホストリーダーを宇田川さんがボコるシーンなど、アリスさんで自由にチャレンジさせてもらいました。

高橋明日香と梅田悠のコンビ感や役者同士のシンパシーも作品を底上げしたひとつの要因だったと思います。

最終的にお客様には見えない(でも感じる?)部分なのですが、高橋明日香だから集まったキャストもいたり、私もあすぴー主演ならこんなことやらせたい、といった思いが最終的に響いた作品かなと思います。

ほぼ新作だった今作ですが、初演で反省した部分を改良して書き直せたので作家としては非常に満足している作品です。音楽は初演と同じく空感さんの楽曲を使わせて頂きました。

中盤アクトの「Monster blast」の鬼振り付けは松本稽古さん。彼女のアグレッシブな振りは好きだなあ。
ラストシーンの「儚〜HANA0:44〜」も名曲ですよね。もう一度この曲でラストシーンを書けて幸せでした。ラストに渡辺菜友の何気ない台詞で終わるのも気に入ってます。

次回は
「ある日僕らは夢の中で出会う」
です。お楽しみに!

今年一年振り返り。の目次

さあ毎年恒例の今年一年振り返りです。自分の備忘録的にもいいんですよね。今年一年で携わった全作品のあれやこれやを書いていきます。

まずは書き出してみよう。
1月
アリスインプロジェクト
「ゼロヨンヨンの終電車」脚本・演出
2月
6C番外公演
「ある日僕らは夢の中で出会う」演出
3月
犀の穴プロデュース
「最後の1フィート〜一編の映画を巡る3つの物語〜」脚本・演出
4月
映画Dプロジェクト上映会
「最終章クリュウ編シーナ編」
5月
6番シード結成25周年記念公演第1弾
「TRUSH!」脚本・演出
7月
UDA☆MAP
「沼田☆フォーエバー」脚本・演出
8月
アリスインプロジェクト
「最果ての星〜アリスインデッドリースクール外伝〜」脚本・演出
9月
6番シード結成25周年記念公演第2弾
「傭兵ども!砂漠を走れ!」脚本・演出
10月
劇団文化祭in大阪
「天気と戦う女」脚本・演出
11月〜12月
「劇作家と小説家とシナリオライター」脚本・演出

嘘でしょ。めちゃくちゃ忙しい一年じゃないですか。ほぼ毎月なんかやってたんだなあ。
舞台演出が9本。脚本はほぼ新作に書き直したゼロヨンヨンとTRUSH合わせて、5本書き下ろし。

いやあ、すごい一年だったなあ。反動なのか来年のスケジュール帳はガラガラだよ(笑)ホント笑っちゃうくらい。まあでも今年の夏あたりの忙しさ最大瞬間風速中は「来年は休む!」って思ってたもんなあ。という訳で来年は少しゆっくり始めます。

あ、いや来年の話じゃない。今年の振り返りでした。書き出しただけで疲れたので、次コラムから行きますね笑

まずは
アリスインプロジェクト
「ゼロヨンヨンの終電車」
からスタート。年内に絶対終わらせる!

結婚してました、のご報告

「劇作家と小説家とシナリオライター」全33ステージが終演しました!たくさんの方々に支えられ、応援して頂いて走り切ることができました。ただただ感謝です。

作品の振り返りは年末に今年演出した全作品を振り返るという企画をやってますのでそちらで近々に。

最後のイベントで世にも珍しい笑発表をさせて頂きました。

私松本陽一は宇田川美樹と結婚していました。

発表が過去形!笑

あ、今もですよ。離婚したとかじゃなく。

15年になります。結婚当時はSNSなどもなく、テレビ出てる芸能人でもないし、ということで別に発表もせず月日が流れ、気づけばタイミングがわからなくなったという笑
もーそろそろいいだろと考えていたタイミングで土屋君の結婚おめでたのニュースが来てカブるという笑

ただ同じ劇団員ですし、演出家と女優ですし、昨今はUDA☆MAPでプロデューサーと演出家として仕事してますし、あんまりそういう目で見られたくないなという思いはありました。演出家の妻でしょ、とか、あの二人夫婦だからごにょごにょ、みたいな。

私は彼女を女優としてもクリエイターとしても尊敬しています。だからこそいつもバチバチに火花を散らしながら仕事をしています。今後もそれは変わらないでしょうし、夫婦の部分以外での私達の仕事はこれまでもそしてこれからも変わりません。これからも二人の活動にご声援頂けたら嬉しいです。

という15年越しの結婚発表でした。
愛犬ちくわと散歩する動画とか上げるかな笑

「TRUSH」終演しました&歌詞公開

6番シード結成25周年記念公演第一弾「TRUSH!」無事終演しました。千秋楽はスタンディングオベーションも頂き、六行会ホールでスタンディングといえば「メイツ!」またあの景色を見ることが出来ました。たくさんのご来場ありがとうございました。

「あー楽しかった!」だけで感想が終わるような、そんなお祭り公演を目指しました。それは全アクトの振付を担当したエリザベス・マリーの力や熱が想いがなければ実現しなかったでしょう。彼女が呼んできたダンサーや演奏者たちがいなければ、あんなバケモノみたいな縦横無尽なオープニングアクトはできなかっただろうし、この多ジャンルのプレイアクトにはならなかったでしょう。彼女とはもう長い付き合いになりますが、彼女の代表作になればいいなと思います。

ストーリーひたすらシンプルを目指しました。子供から老人まで楽しめる、愉快痛快な物語。
実はこれ、とっても難しい!!ディズニーやピクサーは偉大ですよまじで。カールじいさんの空飛ぶ家見直したもんなあ。地味にそこでヒントを得て、プロローグの歌で、もう街の過去を出してしまうというのを思いつきました。

働く男はみな死んだ
残った女は未亡人
陽気に暮らす未亡人

ヴァズカビル役の萩野崇さん。いい役者さんですね〜!今となっては萩野さん以外のヴァズカビルが思い浮かばないよ。劇団員では保安官役の土屋兼久がよかったな。大人の色艶を垣間見た気がする。あんなコミカル役だけどね。そうだ!ついに念願のタライ落としがやれました!まさか自分の作品であれがやれるとは。脚本書きながら思いついた時に「これまでもそしてこれからも、タライ落とせるのはこの作品しかない!」と思ったものです。

「決起の宴」と呼ばれた未亡人達による歌アクト。あれいいよね!もうただただいいよね!
アクト動画はどんどんYouTubeに公開していけたらと思ってます。

さあ耳をすませるんだ
聞こえるかい
渓谷で泣く風の音が
聞こえるかい
ごみに隠された悲しみの音が
聞こえるだろ
大地に眠る男達の声が

これ、隠さず言いますけど、バリッバリにグレイテストショーマンに影響を受けました。これやりたい!って。酒場でサーカス団のみんなが立ち上がるあれ。旗は稽古が始まってからアクトで使ったらいいねってなって、ならアールフェスポイのカラーがいいねってなってあの旗振りアクトになりました。あれ大変なんだろうなあ。
井坂茜のシャウトがまだ耳に残ってるよ。

クライマックスのバトルシーンをすべて台詞なしでやれたのは嬉しかった。脚本は全部ト書き。

スーパーヴァズカビルになる。
長老、キマりすぎて宙を舞う。
それはもうすごいタップ。

など(笑)すべてを実現してくれたキャストスタッフに感謝。バイチャ役の田村君がバイオリンで助けに来るシーン。最初はそれまで流れた曲と同じアッパーテイストにしてたのですが、やはりバイオリン生演奏の良さは静かな曲なんじゃね?と気付き、あのキューブ3兄弟が泣いてしまう曲を作ってもらいました。
リズ(エリザベス)もそう思ってるだろうけど、こんな感じでパッと出たアイデアをすぐ具現化してくれる面々がいることでどんどん面白くなっていくような現場でした。

6番シードらしくなさそうで6番シードらしい公演になったんじゃないかなと思います。

次回第2弾は9月。「傭兵ども!砂漠を走れ!」の再演です。こないだちらっと本読み返して泣いたよ(笑)

たくさんのご来場とたくさんの拍手、ありがとうございました。

あー楽しかった!

歌詞公開

《プロローグ〜ごみの街〜》

ア、ロングロングタイムアゴー
荒野の果ての果ての果て
渓谷の狭間の狭間のその狭間
ごみに埋もれた小さな街がありました
昔栄えたその街は
緑に光るエメラルド
ざっくざっくと掘り出され
ゴールドラッシュさながらに
繁栄の花が咲き誇る
しかして今のこの街は
女どもしか暮らしてない
ざくざく掘ったその山は
ある日突然崩れ落ち
働く男は皆死んだ
残った女は未亡人
陽気に暮らす未亡人
酒が好きなら飲めばいい
祭りが好きなら踊りゃいい
男が好きなら接吻を
ある日のある日のまたある日
女だらけのその街に
ひとりの男が迷い込む
 ここは西部の街アルタマルタ
人はこの街をこう呼んだ
ごみの街、トラッシュタウンと

《決起の宴》

さあ耳をすませるんだ
聞こえるかい?渓谷で泣く風の音が
聞こえるかい?ごみに隠された悲しみの音が
聞こえるだろ?大地に眠る男達の声が
 
昔栄えたその街は 
陽気な女達が暮らしてる
悲しみ乗り越え 喜びかみしめ
ごみに埋もれて暮らしてる
人はこの街をこう呼んだ
ごみの街 トラッシュタウンと
 
さあ立ち上がれ女達
さあ立ち上がれ未亡人ども
さあ立ち上がれごみたちよ!