今年一年振り返り④「袴DE☆アンビシャス」「12人の私と路地裏のセナ」

今年一年振り返りラスト

公演中止、来年に延期となった2作品を少しだけ振り返ります。ネタバレにならないよう気をつけないと汗。

8月
UDA☆MAP
「袴DE☆アンビシャス」

11月
劇団6番シード
「12人の私と路地裏のセナ」

8月はコロナで、11月は怪我での公演中止となりました。改めて楽しみにしてくださっていた皆様、ごめんなさい。関係各位にも多大なご迷惑をおかけしました。私自身公演中止を、しかも1年で2回も経験するとは思ってませんでした(当たり前です)。8月のあとは、もう演劇ができないんじゃないか、しばらくはやれないんじゃないかというくらい落ち込みました。本当は10月のペパカンも降板させてもらおうかと思ったくらいです。でもそれを救ってくれたのは、来年楽しみにしてます、と応援し続けてくれた皆様、来年の公演でやってやりましょう、と言ってくれたキャストやスタッフの皆様でした。本当に感謝しています。骨折した樋口靖洋は手術を終え、少しずつリハビリが始まり、前を向いています。袴DEは7月、12セナは8月に再上演日程が決まりました。どちらも新作書き下ろしの両作品、ぜひ楽しみにしててください!

という訳でネタバレに触れない程度に軽く振り返ります。

「袴DE☆アンビシャス」
時は大正、女性のスポーツ界への進出が始まった頃、女学生のカヲル(若林倫香)は、学校の銅像(宇田川美樹)の導きにより、謎のスポーツ「スカッピー」でオリンピックを目指すが…。

というイントロで始まるドドドドドスポ根コメディです。ボールは紙風船、円形のコート、使用する道具は、薙刀、タンバリン、羽子板、団扇、と、全てオリジナルで一つのスポーツを作り上げました。これは脚本も大変だったし、稽古場でキャスト達と模擬試合を重ねながら、細かいルール作りをしていきました。そこまでやる演劇ないやろ笑。いや、ないですよ。本当にスカッピーがどこかのなにかの正式競技にならんかなと思ってます。
お客さんはまさに観劇というより観戦という気持ちを味わえると思います。ボールが紙風船なので、ライブ感がすごいのです。キャストは本当に紙風船と格闘しながら、試合シーンを作り上げてくれました。

この作品は少年ジャンプならぬ、少女ジャンプですよ。

UDA☆MAPはいつからかジャンプテイストが強くなった気がしますが笑、まさに今作も友情努力正義をとことん楽しんでもらえると思います。

来年の上演日程は、
2022年7月13日(水)〜18日(月)です。
劇場は変わらずシアターグリーン ビックツリーシアターです。

告知動画がこちら

「12人の私と路地裏のセナ」
日雇い労働者の田島修(樋口靖洋)は、タップダンサーになる夢を持つ、こともなく日々労働に勤しんでいる。しかし彼の中には11人の人格があり、入れ替わり立ち代り彼の人生を彩っている。ある日田島は路地裏で、セナ、と名乗る謎の少女と出会い、彼の運命が動き始める…。

松本陽一の野心作!という触れ込みで書き上げた新作です。本当に不思議な肌触りで、早くお客さんに観てもらいたい欲が強い作品。12人の人格と聞くと、ちょっとサイコなのかなと思いがちで、私もそうならないようにと腐心して脚本を進めたのですが、樋口の持つ独特の雰囲気、路地裏のカコを演じるエリザベス・マリーの透明感などが相まって、感動のヒューマンドラマ、に仕上がったんじゃないかと思っています。もちろん仕上がるのは来年の8月です笑。キャスト同士が休憩時間にひたすら考察し合うような、それでいてそんなに難解に感じない、まさに不思議な手触りの作品になる予定です。宇田川や椎名などの劇団員もちょっといつもと違う立ち位置にいて、センターは樋口。6cの新しい形もお見せできるようなそんな作品になると思います。

来年の上演日程は、
8月10日(水)〜16日(火)
劇場はこちらも変わらず、中野テアトルBONBONです。

これにて今年一年の振り返りは終わり!来年はこの再上演作品2作もあるので盛りだくさんな一年になりそうです。オミクロンで終わってくれコロナ!!

劇団6番シードは毎年恒例に元旦21時に今年のラインナップをホームページで発表しています。そして今年は重大発表もあります!!!!!あ、悪いやつじゃないから期待してくださいね☺️

松本個人も来年は新たな企画を立ち上げたりとアグレッシブな一年にしたいな。そちらも1月4日あたりに情報解禁します!

今年一年も大変ありがとうございました。
来年もどうぞご贔屓に。
劇場でお会いしましょう。

松本陽一

今年一年振り返り③「ペーパーカンパニーゴーストカンパニー」

今年一年を振り返っています。

10月
BE WOOD LIVE主催
「ペーパーカンパニーゴーストカンパニー」

6番シードで2回、OILAGEという東西の役者を集めたユニットで1回上演され、大阪公演も何度かやっている初期松本の代表作の再演です。初演が劇団10周年の演目だったので、ええと、約20年前のホンになるのか。20年前!!あれ、15周年だったかな?記憶が曖昧、ちょっと調べますね。

調べました。

あ、やっぱりあってました!2003年の10周年記念公演、劇場は東京芸術劇場ですね。おお、歴史あるホンだなあ。

この演目を劇団員であり、女優であり、舞台プロデューサーでもある宇田川美樹が「ぜひまた上演したい」ということで実現しました。今作は宇田川はPに徹しているので、冠もUDA☆MAPではないんですね。

まずはその宇田川のキャスティングが素晴らしかった。主人公は妻を亡くしてちょっとやさぐれている新聞記者、陵(藤堂瞬)とその死んでしまった妻の幽霊・春子(高橋明日香)。宇田川が「とにかく身長差が大事」と熱弁をふるっていたのですが、まさしくその通りで、ラストシーンのコントラストたるや。他にも宇田川は結構身長(つまり見栄え)にこだわってましたね。図師くんやダイラくんのスーツ男子とか、クシダさん演じるデスク(副編集長みたいなポジ)とかわのをとやさん演じる局長との対比など。

そして作品の要である、幽霊が見える記者、楓役に栞菜さん。この栞菜が非常に素晴らしかった!過去宇田川や椎名が演じてきたスーパーハードな役ですが、栞菜さんの持つコミカルさにしなやかさとかドSな感じ?とかが加わって素晴らしいトップ下でした(サッカー例え)。

基本的にみんな良かったので役者褒めちぎり振り返りになりそうですが笑、主演の藤堂瞬の大人の色気、ヒロイン高橋明日香の最後の涙で泣かなかった人いないんじゃないかな。この演目はやっぱりラストシーンが決め手と言いますか、最後の陵と春子の別れのシーンですね。あらゆる手を使って陵に気持ちを伝える春子。しかし陵には声も聞こえなければ姿も見えない。そこで起こる奇跡…。これは初演の時に「天に召される別れって舞台では難しいなあ。ほんと映画みたいにCGで消えてくれないかな」と大いに悩んだ結果思いついたのが「腕の中に抱かれて消える」だったのです。あのシーンがあるから今でも上演し続けられている普遍的な物語になったんじゃないかなあと思ってます。

稽古は基本サッカー戦術の落とし込みのような様相でした笑。この人上がったら君はポジションチェンジ、役割も当然変わるから臨機応変にね、といった具合です。その中で図師くんがとてもいい仕事をしてたなあ。ボランチのポジションなのですが、周りを見ながら自分の位置を取り(それは舞台の立ち位置という意味よりもそのシーンの役の立ち位置といった意味合いが強い)、前に出て行く結城や栞菜のフォローに入り、そしてすきあらば自分で点を取りに行くという素晴らしい匠の仕事をしていました。
オオダイラ君にはよく稽古場で「ポンコツ!」って怒ってましたね笑。そういえばOILAGEの時もベテラン俳優さんがポンコツ呼ばれてたなあ笑。この脚本は超高速で「え」「あ」「楓」「そんな」「おい」といった3文字以内のセリフが20行続くような超高速パス回しなのです。ダイラ君演じる記者菱沼はそういうセリフも多く、セリフが抜けたら「ボールロスト!」なんて言ってました。ダイラ君もイケメンからコメディ班まで幅広い役者だなあと思っています。同じようにクシダさんも相当の素振りを行ったんじゃないかな。元々不器用ではない俳優さん達をもってしてもこのホンはえぐかった。

ベテラン陣の存在感はやっぱりすごいです。局長役のかわのをとやさん、ホームレスの幽霊、二郎さん役の佐藤正宏さん。小劇場でご両名が揃う舞台なんてそうそう無いと思います。それでお二人ともストイックなんですよね。お二人の背中は若いキャストには得難い経験だったと思います。

あとは出番はピンポイントだったけど、抗議する人権団体のリーダーを演じた阿部博明は地味にいい仕事をしましたね。決して悪役と思わず演じてほしい、世の中に普通にいる人で演じてほしい、とだけお願いしましたが、絶妙なリアリティだったと思います。

総じてキャストの印象ばかり書いてしまいましたが、当初宇田川は「毎年やっていきたい演目」と言っていました。しかし終わってみると「来年同じクオリティ、それを超えるクオリティを出せる役者が簡単には見つからない」という理由で毎年公演は断念したそうです。それくらいこのキャストはハマっていて、そして屈強でした。とはいえ何年か後にはまた上演できるのではないかと思っています。幽霊が見える見えない、死んだ妻の幽霊と夫との別れ、などベタ要素かなり強いのですが、だからこそ普遍的にお客様の心に響くのかもしれません。
このホンを別の人の演出で見てみたい、とも思ったのですが、これだけの高速感のある脚本は、演出で新味をそうそう出せるものではないんだろうなあとも思ってます。

個人的には公演中止となった公演の次の公演だったので、落ち込んでいたところから、作品や座組みに力をもらって、やっぱ演劇っていいなあと思わせてくれる公演でした。

さて、これにて今年の公演振り返りは終わりなのですが、次回、公演中止(延期)となった「袴DE☆アンビシャス」と「12人の私と路地裏のセナ」をネタバレにならないよう少しだけ振り返ります。

今年一年振り返り②「ガールズトークアパートメント2020」

今年一年を振り返っています。

6月
UDA☆MAP vol.10
「ガールズトークアパートメント2020」
シアターKASSAI


UDA☆MAPの旗揚げ作品のシリーズ作。祖師ヶ谷大蔵にある古い一軒家のシェアハウス「やえがしのいえ」で暮らす女子達を描いた青春?グズグズコメディです。初演が2010年、5年後に2010年バージョン再演と2015年バージョン新作、そして今回の2020年バージョン。毎回暮らしてる人達が変わり春夏秋冬いろんなことが起こります。元々特に2010とか2015に強い意味はなくて、5年に一度って面白いねくらいのノリで、現代劇ですがそこまで時事ネタを扱う訳でもなかったのです。ところが今上演するとなると2020か2021がつく訳で。そうなるとコロナが日常にある状態の脚本になるのです。これは最初に宇田川Pと悩みました。コロナがない体の世界観にする手も普通にあったし。結局上演は2021年ですが、みんなが経験した2020年(つまり一年前)を描くことにしました。

コロナ関連の出来事を面白おかしく描けたかなと思ってます。でも今観返してみるとコロナ関連を入れすぎでちょっと説教臭く感じるなあと脚本家反省。日常会話の中にコロナがらみが多すぎる笑

この物語はシリーズ通して、春夏秋冬の4話のオムニバスと、その間の長い長ーい場面転換が恒例でした。今作もその通りなのですが、今回はこのシェアハウスの管理人(家主)のやえがしさん(宇田川美樹)が失踪しているところから物語が始まるという新しい形。代わりに栞菜さん演じる姪の八重樫柚子(ゆず)が新管理になるところから物語が始まります。

春は岡田花梨さん演じるマスク女子の話。夏は稲葉麻由子さん演じる看護師のオフのひとこま。秋は大盛り上がりの恋バナでした笑。葉月智子さん演じる理系大学生が大学教授(恥ずかしながら私が映像出演させて頂きました)に恋をする話。冬はずっとリモート(映像)で出ていた持田千妃来さん演じるビジネス留学生が帰国してやえがしさん(失踪していた宇田川美樹のほう)と喧嘩する話。

ガールズトークアパートメントってあらすじが書きづらいんですよね。ガールズトークって言うくらいだから日常会話の延長に物語がある感じだしね。

夏のあらすじ
100日ぶりに休暇が取れた看護師の麦子。大好きなドーナツとビールを同居人達に取られブチ切れ。そこに職場から電話がかかってきて…。

なんてつまらなそうなあらすじなんだ!!笑笑

でもこの夏の話が一番好きなんですよねえ。特になんもないところから物語が始まって、特にめちゃくちゃ大きなことも起きないけどちょっとだけ主人公すっきりした、みたいな塩梅。主人公麦子を演じた稲葉さんも雰囲気ぴったりでしたね。あのテロンとしたトレーナー上下とかね。あのなんとも言えない脇役と主役の間の演技と言いますか、稲葉さんにしか出来ない主人公像が描けたかなと思ってます。
あと医療従事者あるある?とか「感謝だけして終わるなー!」って台詞が実際の看護師の方から面白かったって言ってもらえて嬉しかった。

秋は松本稽古無双でした笑。鶴田葵さん演じる蛇目(じゃのめ)さんの不倫の噂と、葉月智子さん演じる納豆女子と呼ばれてる理系女子の恋の告白。松本稽古さんが演じたトッコさんは秋の冒頭で合コンをドタキャンされて用済みなはずが笑、何故から最後まで主人公感があると言う笑。
この話は稽古してて楽しかったですね。恋の話は実はガールズトークとタイトルにつけておきながら初かも(2015でゲイカップルの結婚てのがありましたが)。その恋バナに松本コメディのかけ違い系?のテンポが重なって面白い話になりました。
松本、高宗、渡邉の恋バナトリオはなんかキャラクター化したいくらい笑。

春夏秋冬全話に登場する女子高生陽瑠を演じたのは、実際も高校1年生(だったと思う)の渡邉結衣さん。彼女はね、すごくよかったです。15であの貫禄、度胸、視野の広さ、脇でもいい仕事できる15歳なんて見たことない。天才だと思います。宇田川も彼女が中学生の時の芝居を見てこの子はすげーって思ったらしい。今後がめちゃくちゃ楽しみです^_^

冬は喧嘩して仲直りするだけの話なんですが、喧嘩して仲直りするのが世の中のドラマで一番難しいんじゃないかと思いました笑。しようもない喧嘩ってそうだよね。解決もしょうもないか、気づいたら時間が解決してたとか、とにかくしょうもない笑。このしょうもなさをしょうもないまま面白く観せるのがガールズトークの面白いとこであり、難しいところです。宇田川美樹はこの話しか出ないのですが、やはり出てくると空気を変える女優だなと思いました。

全話登場の胡桃役、今川宇宙さんも良かったな〜。いわゆる回し、ツッコミポジなんだけど、ガールズトークのこのポジって、そこに留まらないボケ要素なんかも混ざって面白くなるんだよね。そして冷蔵庫の張り紙など作品を彩ってくれたイラストの数々はイラストレーターである彼女の作です。

舞台美術は若い美術家の西山美咲さんが担当。みんな思ったと思うけど、あの家、

住みたいよね。

美術出来上がった時感動しました。これならみんなシェアハウスするよって。

そんな感じでこのシリーズはまた5年後なのかな?2025年はどんな年なんでしょうね。

次回振り返りは
10月
「ペーパーカンパニーゴーストカンパニー」です。

今年一年振り返り①「ボイルド・シュリンプ&クラブ」

今年一年振り返り。

毎年年末に、自分自身の備忘録的な意味も込めて、今年一年で上演した舞台などの活動を振り返っています。
今年の作品群は、
5月「ボイルド・シュリンプ&クラブ」
6月「ガールズトークアパートメント2020」
8月「袴DE☆アンビシャス」
10月「ペーパーカンパニーゴーストカンパニー」
11月「12人の私と路地裏のセナ」

でした。このうち2作品 
#袴DE
#12セナ 
が公演中止、来年に延期となりました。それについては最後に振り返るとして、まずは、今年一発目の
#シュリクラ
から振り返りスタート!

4月〜5月
劇団6番シード第72回公演
「ボイルド・シュリンプ&クラブ」
シアターKASSAI

藤堂瞬演じる御堂筋海老蔵と、椎名亜音演じる諏訪蟹子の探偵コンビが事件を解決するミステリーコメディ。
まさにテレビドラマのような1時間×4話というスタイルで、1話2話がA公演、3話4話がB公演、全部一気に上演する一気公演もやりました。一気公演は評判が良かったですねえ。13時に開演して、途中長い休憩は入れましたが、終演は18時半という、なんと5時間半の公演!!!どうせマチネソワレで2公演とも観るのなら一気公演の方がいい、という声をたくさん頂きました。またこういう2バージョン公演とかあったらやりたいと思います。というかすぐ来年にある予定です笑。

この作品は「倒叙ミステリー」と言って、観客は犯人が最初から分かってる状態で始まるミステリーの形のことを言います。古畑任三郎がまさにこの形です。最近古畑知らない世代が出始めてるのには驚いた笑。
CASE1「地下鉄ジャックを阻止せよ」
CASE2「イタリアンの罠」
は2012年に初演(10年前かっ!)した台本に加筆したもので、
CASE3「ピエロの逃避行」
CASE4「浮気調査は世界を救う」
は新作でした。全4時間は演出も大変でしたが、探偵の二人、とりわけ謎解きを担当する藤堂は台詞の海に溺れておりました。しかし、しっかり間に合わせてくるのが信頼の劇団員って感じで頼もしかったな。各話ごとに振り返ります。

CASE1「地下鉄ジャックを阻止せよ」
松木わかはさん演じる普通のOLが犯人。冒頭で「半蔵門線をジャックします」と警察に予告電話するシーンから始まります。この何の変哲も無い会社員がなぜ地下鉄をジャックするの?という謎を、探偵達が解いていく流れ。
松木vs藤堂のやりとりが脚本家的にも好きで、稽古場でもずっと二人で台詞合わせしてましたね。こういう心理戦がやりたくてこの倒叙形式にしたというのは大いにありましたし、それを存分に表現してくれました。
一方椎名演じる蟹子は、冷静に考えるとかなりのイカレキャラクターで、初演時が6ヶ月連続公演のラストで新作だったので、なかなかの遊びテンションで描いた感が月日を経てやってみたら思ったこと。ちなみに再演のA公演と、新作のB公演では、同じ作家(わし)が書いた同じキャラとは言え、やっぱり熱量が違うなと思いました。シリーズもので作家が何人がいるみたいな。それは主演の二人にも伝えて、蟹子のパーソナルはこのイカレ1話でよろしく、という話をしました。
ラストは、失踪した恋人と再会するというなかなか素敵なホンだと思います。駅員演じた遊佐邦博さんと慶洲君のコンビもいい味出してたな。川上献心君演じたサラリーマンの末路がちょっと可愛そう。

CASE2「イタリアンの罠」
神谷未来紘さん演じるイタリアンレストランのオーナーシェフが、ワインセラーでスポンサーである会社社長を殺害するところから物語が始まります。この回が一番正統派ミステリーという感想が多かった気がします。殺人事件ですしね、レストランが舞台のワンシチュエーション感もあるし、オーナーがいかに厨房を抜け出して殺害し5分で戻ってきたか、という密室&時間差トリック的な要素がそうさせたのでしょうね。これも再演作ですが、当時マジで死ぬほど苦労して書きましたよ。「不思議なものは何もない」というミステリーを書く勉強にもなった話です。
その分、コメディ色が弱まるので、宇田川さん演じる大家のバアさんがシェフに恋するサイドエピーソードなんかを入れました。樋口演じる村田刑事もコメディリリーフ的な位置で登場するのですが、それが一番活躍するのがこの話かな。その相方として台本上はほとんど記載のない「ファンファン」というホステス?嬢、1話で女子高生を演じていた花実優さんをモブ的に配役したのですが、面白かったのでめでたくCASE4で再登場することに。こういうのもシリーズ物の面白さですね。
ラストは、オーナーが味覚障害になって、それを隠す為に野口オリジナルさんが演じる副料理長が…という謎解き二重構造は良かったなと思っています。殺人事件ですからね、犯人のその後を想像すると結構辛いものがあるのですが「この店を頼んだぞ」という最後のオーナーの台詞は気に入っています。

そしてこの1話2話に登場するのが舞川みやこさん演じるメイドカフェ店員と、西澤翔君演じる繁華街で客引きをしているフリーター?の二人。舞川さんのゆるい接客最高でしたね、その発想はなかった!と稽古場で唸りましたわ。西澤くんの素を生かしたというか何と言葉にすればいいかの西澤ワールドと相まって、いい癖キャラになりましたねえ。こういう情報屋ポジっていいですよね、僕も大好きなジャンル。ジャンル?。CASE3CASE4では別の情報屋が出てきます。探偵+情報屋っつーのがたまらないのよ。今後もシリーズ続くなら新しい情報屋も増やしたくなる。でもこの人たちもまだ出て欲しいから悩む。

CASE3「ピエロの逃避行」
図師光博君演じる風俗店のサンドイッチマンのバイトをしているピエロと、七海とろろさん演じる恋人の風俗嬢の逃避行のドラマ。図師君呼ぶとシリアス班にしたくなるんだよなあ。あ、このホームページの対談企画に図師君との対談があってそのタイトルが「ピエロの葛藤」です。この対談からインスパイアされた部分はあったかも。お時間あればご覧ください。
連ドラで言うと異色回ってやつです。あんまりミステリー要素ないし、ロードムービー的な展開だし。恋人を守る為に風俗店の店長を殺害してしまったピエロ。真相はもう少し深いところにあって、そこに小沢さん演じる今は落ちぶれてしまった大道芸の師匠との歴史が絡み合っていきます。短編なので少し描き足りないな感はありますが、小沢さんにはとにかく薄い薄い演技を要求しました。「何もしないでそこにいるだけでいい」的な。
情報屋がCASE1、2とは変わって、ちょっとダークサイド方面な人々。花奈澪さん演じる偽造パスポートを売る裏社会の女リョウと、門野翔君演じる窃盗団のリーダー、タケルが探偵達に協力していきます。リョウは面白いキャラだったな。かっこいいのにコミカル要素もいけるし、なんかファニーな魅力はなみおさんのキャラ造形の賜物。CASE4で弁護士になるのとかもう。かどしょーは伸び伸び演じてましたね。普段のあいつに近いのかな、どうかな。本当にああいう奴としか見えない笑。あとアクションのキレえぐい。
宇田川さん演じる悪徳刑事・香水華はシュリクラの元になった作品「0:44の終電車」に登場したキャラクターでした。2018年にその作品を女性版としてアリスインプロジェクトで上演したのですが、その感じがもうすごく良くて、再登場させました。0:44に興味ある方は劇団のホームページで初演のDVDを販売してたと思います。みんな若いよ笑。
ラストの感動のデビルスティック。ラストにピエロがなんか大道芸をやって泣かせる、というイメージは早くからあったのですが、お手玉とかシガーボックスじゃちょっと絵が弱いなと思い、きっと難易度は鬼高いだろうと思ってたけど、顔合わせの日に図師くんの席にデビルスティックをそっと置きました。その後の奮闘はメイキングでぜひ。

CASE4「浮気調査は世界を救う」
土屋兼久演じる潔癖症のエリート刑事が特殊詐欺に加担していたというドラマ。まず殺人事件はやめようと思ったのです。古畑は全部殺人の倒叙ミステリーですが、探偵なので、殺人以外の事件も(ていうか殺人の方が稀であってほしい)解決したいなと思って思いついたのがオレオレ詐欺(特殊詐欺)でした。謎解きを組んでいくと案外、というか相当難しく、殺人の方が物語のフォーマットがあってある意味楽なんだなあと思いました。最終的に犯人が「参りました」となる論理の積み上げと、もう一つは情緒の完結ですかね。倒叙ものはこの二つの要素で「参りました」にならないと面白くないんだなあとこれまた勉強になりました。この話では、海老蔵が推理したパーツを最後に高宗歩未さん演じる部下が涙ながらに「警視の指紋が検出されました」という言葉で、エリート警視が観念します。ラストの野球場が古畑のラストシーン(スペシャル版除く)と同じだったのは狙いではありません。が、偶然でもないかもなあ。
土屋はこの公演をもって劇団を退団することになりました。まあひとり立ちと言いますが、その後の今年の彼の活躍を見ていると私も嬉しくなります。ラストに警視と海老蔵がピッチャーとバッターとして対峙する絵でこの物語は終わります。長らく一緒に舞台を作り、土屋のことを尊敬?信頼?していた藤堂とのラストシーンは、今思えばなんだか印象的ですね。なんてね。

この公演は山岸謙太郎監督にオープニングムービーを作ってもらい、主題歌もオリジナルで作成し(KIHOWさんの歌声たまんないよね。音楽配信サイトで購入できますよ。youtubeも貼っときますね)、準備から気合い入れて臨んだ公演でした。今振り返ると、3たびの緊急事態宣言中の公演となり、大変なこともいっぱいありましたが、37人という大人数の座組み(オーディションも久々にやりました)で駆け抜けられたこと、今頃しみじみしちゃうな。超沢山の人が関わってくれた一大プロジェクトと言ってもいいのかもしれませんね。ありがとうございました。
このシュリクラは絶賛シリーズ化の予定です。映像化も企みたい。次は誰を犯人にしようかなと想像するだけで、ワクワクが止まらないのですよ。ご期待ください。

初日から超長文になった!まあそれくらい規模感ある公演だったしね。
次回は、
UDA☆MAP「ガールズトーク☆アパートメント2020」
です。

今年一年振り返りラスト「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」

さて振り返りラスト!

11月
6番シード「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」

今年の頭の段階では連ドラ演劇「ウィキペディアな男、ヤフーニュースの女、炎上トランスジェンダー」という企画を2021年春まで連続でやる予定だったのですが、コロナになり、流石にこの企画はエッジが立ちすぎて今やれないだろうと思って演目変更しました。この企画は必ず今後やりますのでお待ちくださいね。

そして選んだのがこの演目。再演はもう4度目となる劇団の大人気作品です。ミキシングを終える頃、演目を何にしようかなと思った時に、今年はとにかくコメディで笑ってもらいたい、生の舞台の面白さが実感できる作品(まあなんでもそうですが、ワンシチュエーションコメディとかノンストップ感とか)にしようと思いました。元々また再演はしようと思っていて(コロナがなければ2021年とかにやってたかも)、アニメ編の主人公を藤堂にしたら面白いだろう、そして宇田川美樹の真骨頂を見せつけてやろうというような想いもありました。

まずね、キャストがすごくよかった。実は上に書いた連ドラでオファーしていた方も何人かいたのですが、もうアニメもオンラインもハマりまくった印象。
アニメはまずマネージャー矢理田に七海とろろ君を配置したこと。藤堂とのコンビが良かったですね。高橋明日香さんのヒロインも良かった。

藤堂はあんな破天荒なキャラなのに(パンイチになるくらいなのに)なんかいそうなんだよなあ。ああいう俳優。藤堂とはリアリティも共生するキャラを作りたいといった話をしましたが、いるんだよなあ、ああいう人(2度目)。過去小沢、土屋と演じてきましたが、一番良かったかもしれない。

意外というか想像以上によかったのが、真野未華さんとオオダイラ隆生君の原作者と脚本家のコンビ。まのみかは本当にコメディエンヌとしての才能を今後どんどん伸ばして欲しいと思ってる。もちろん彼女シリアスもいけますけどね、あの独特の度胸と愛嬌。一人でドリブルして必ず点を取ろうとする姿勢といいいますか、なかなか周りにいないと思うんですよね。たみしょうさんとか中野さんとかを抜いていって欲しい笑。
オオダイラ君演じた魚来という役は実は台詞はめちゃくちゃ少ないのですよ。でもすごく印象に残ってるでしょ?あのオタク感あるあると細かい芝居の積み重ねがよかったなあ。

そしてオンラインではやっぱり黒船でしょうね。兵頭さん演じるディレクターとよっちさん(平山佳延)演じるプログラマー、そして身体能力鬼高の松藤君はモーションアクター。屈強でした。ええ屈強でした。僕はキャスティングの時に兵頭さん演じた祐天寺(元は男性キャスト)を女性に変更し、よっちさんと組ませました。vs宇田川美樹というこの役者バトルが絶対すごいことになると思ったから。そしてすごいことになったと思います。
そしてそれらを支えた仕事人たちがまたよかったのです。まずwボランチと呼んでいた椎名松木ペア。これは文章化本当にしずらい。本当にボランチの仕事を完璧にやってくれた印象。サッカー知らない人ごめんなさい。俺もにわかだけど。
その後ろに土屋や小沢がさらに多重層を奏でるといった構図が本当にこの作品の圧倒的な評価につながったと思います。土屋はいい仕事してたなあ。
そしてオンラインの浮谷君も超絶ツッコミマシーンと化してましたね笑。そう思ってオファーしたのですが、彼はただツッコむではない、というかそっちから始めてない感じ、なんて言えばいいのかな、ツッコミの前の部分や奥の部分を大事にしてるのですよ、そこに技術が乗るから面白いのです。ツッコミは本当に技術だけでやると鼻につく芸なんですよね。それがわかってる彼はすごいなと思った。

オンラインの宇田川と工藤夢心さんの師弟ペア。女優宇田川ここにあり!といった作品で、まさにそれを体現してくれた宇田川さんですが、夢心君のピュアな輝きと共にそれが際立ったように思います。夢心くんはこれがラストステージ(キャスティング後に知りました)。潔く「やりきった」と語っていた彼女のカーテンコールはカッコよかったな。お疲れ様でした!

役者さんのことばかり書きましたが、それくらいこの座組は屈強でした。今年を締めくくるのにこの演目でよかったなと心から思います。

あと久々にやった終演後イベントは盛り上がったなあ。神回でした。

さて、これで全作品振り返ったぞ!お疲れ俺!
来年もね、まだまだ大変な世界が続きそうですが、ベタですけど、前を向いて、想像力を忘れず、頑張っていきましょうね。
これも恒例ですが、元旦に6番シードホームページで来年一年のラインナップを発表します。お楽しみに!

それでは皆さま、よいお年をお迎えください。

松本陽一