今年一年振り返りラスト「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」

さて振り返りラスト!

11月
6番シード「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」

今年の頭の段階では連ドラ演劇「ウィキペディアな男、ヤフーニュースの女、炎上トランスジェンダー」という企画を2021年春まで連続でやる予定だったのですが、コロナになり、流石にこの企画はエッジが立ちすぎて今やれないだろうと思って演目変更しました。この企画は必ず今後やりますのでお待ちくださいね。

そして選んだのがこの演目。再演はもう4度目となる劇団の大人気作品です。ミキシングを終える頃、演目を何にしようかなと思った時に、今年はとにかくコメディで笑ってもらいたい、生の舞台の面白さが実感できる作品(まあなんでもそうですが、ワンシチュエーションコメディとかノンストップ感とか)にしようと思いました。元々また再演はしようと思っていて(コロナがなければ2021年とかにやってたかも)、アニメ編の主人公を藤堂にしたら面白いだろう、そして宇田川美樹の真骨頂を見せつけてやろうというような想いもありました。

まずね、キャストがすごくよかった。実は上に書いた連ドラでオファーしていた方も何人かいたのですが、もうアニメもオンラインもハマりまくった印象。
アニメはまずマネージャー矢理田に七海とろろ君を配置したこと。藤堂とのコンビが良かったですね。高橋明日香さんのヒロインも良かった。

藤堂はあんな破天荒なキャラなのに(パンイチになるくらいなのに)なんかいそうなんだよなあ。ああいう俳優。藤堂とはリアリティも共生するキャラを作りたいといった話をしましたが、いるんだよなあ、ああいう人(2度目)。過去小沢、土屋と演じてきましたが、一番良かったかもしれない。

意外というか想像以上によかったのが、真野未華さんとオオダイラ隆生君の原作者と脚本家のコンビ。まのみかは本当にコメディエンヌとしての才能を今後どんどん伸ばして欲しいと思ってる。もちろん彼女シリアスもいけますけどね、あの独特の度胸と愛嬌。一人でドリブルして必ず点を取ろうとする姿勢といいいますか、なかなか周りにいないと思うんですよね。たみしょうさんとか中野さんとかを抜いていって欲しい笑。
オオダイラ君演じた魚来という役は実は台詞はめちゃくちゃ少ないのですよ。でもすごく印象に残ってるでしょ?あのオタク感あるあると細かい芝居の積み重ねがよかったなあ。

そしてオンラインではやっぱり黒船でしょうね。兵頭さん演じるディレクターとよっちさん(平山佳延)演じるプログラマー、そして身体能力鬼高の松藤君はモーションアクター。屈強でした。ええ屈強でした。僕はキャスティングの時に兵頭さん演じた祐天寺(元は男性キャスト)を女性に変更し、よっちさんと組ませました。vs宇田川美樹というこの役者バトルが絶対すごいことになると思ったから。そしてすごいことになったと思います。
そしてそれらを支えた仕事人たちがまたよかったのです。まずwボランチと呼んでいた椎名松木ペア。これは文章化本当にしずらい。本当にボランチの仕事を完璧にやってくれた印象。サッカー知らない人ごめんなさい。俺もにわかだけど。
その後ろに土屋や小沢がさらに多重層を奏でるといった構図が本当にこの作品の圧倒的な評価につながったと思います。土屋はいい仕事してたなあ。
そしてオンラインの浮谷君も超絶ツッコミマシーンと化してましたね笑。そう思ってオファーしたのですが、彼はただツッコむではない、というかそっちから始めてない感じ、なんて言えばいいのかな、ツッコミの前の部分や奥の部分を大事にしてるのですよ、そこに技術が乗るから面白いのです。ツッコミは本当に技術だけでやると鼻につく芸なんですよね。それがわかってる彼はすごいなと思った。

オンラインの宇田川と工藤夢心さんの師弟ペア。女優宇田川ここにあり!といった作品で、まさにそれを体現してくれた宇田川さんですが、夢心君のピュアな輝きと共にそれが際立ったように思います。夢心くんはこれがラストステージ(キャスティング後に知りました)。潔く「やりきった」と語っていた彼女のカーテンコールはカッコよかったな。お疲れ様でした!

役者さんのことばかり書きましたが、それくらいこの座組は屈強でした。今年を締めくくるのにこの演目でよかったなと心から思います。

あと久々にやった終演後イベントは盛り上がったなあ。神回でした。

さて、これで全作品振り返ったぞ!お疲れ俺!
来年もね、まだまだ大変な世界が続きそうですが、ベタですけど、前を向いて、想像力を忘れず、頑張っていきましょうね。
これも恒例ですが、元旦に6番シードホームページで来年一年のラインナップを発表します。お楽しみに!

それでは皆さま、よいお年をお迎えください。

松本陽一

今年一年振り返り⑦「六番寄席」「24時間TV」「ディープロジック全国上映」

大晦日になりましたが、おせち作りが終わったので、今年一年振り返りを終わらせるぞ!
あとは「ザ・ボイスアクター」だけなのですが、その前に…

今年一年にやったイベントなどを。

3月「六番寄席」
なんか久々にイベント公演したいねという話からだったかな、あのに2デイ3バージョン公演という超ボリューミーなやつになりました笑。盛り込んでいったらこうなった笑。

初日は演芸。椎名&浮谷の漫才は秀逸すぎて、本当に来年はMー1を目指してみるといいと思うんだけどなあ。Wツッコミっていうジャンルを開拓して欲しいなあ。
私は落語をやりました。結構練習しましたね。古典落語の「粗忽長屋(そこつながや)」以前にyoutubeの立川談志師匠のを見てすごいと感嘆し、他の落語家さんの粗忽長屋も見ましたが、談志さんの完コピにしようと思いました。無茶無茶難しかったけど、落語好きの山岸監督やお客様から談志の粗忽長屋がよく出てたと言われて嬉しかった。ちなみに最終日に創作落語「ドーハの喜劇」という私が結核病棟に入院した時のエピソードを漫談風に語りました。これは良い出来だったと思います。落語はね、楽しかった。せっかく和服もちゃんと新調(中古ですが)したので、落語会とかやりたいなあ。ずっと勉強していきたいジャンル。

二日目はマチネが歌のライブ。ソワレが樋口デビュー脚本他でした。

歌ライブはほぼ劇団員にお任せでプランしてもらいました。宮島家、Setsuko宇田川ライブ、あと樋口と平井さんのタップも構成含めよかったなあ。

樋口の脚本デビュー作はかなりしっかりしていて、終わった後に「今後も描いてみれば?」と勧めたくらいです。実体験をベースにしているそうですが、母の死のシーンに鳩時計を鳴らすなど、これまでの知識や物語作りの意識がしっかりと出ていましたね。映画好きの彼らしい作品なのかも知れません。そして24時間TVで短いですが第二作を発表しました。

その24時間TV。
12月の頭に、今年はファンクラブイベントなどが全然できなかったので、何か代わりに楽しんでもらえるものをと思って考えました。でもただ配信番組やっても代替えにはならんだろう、ということで、24時間です。最近あたおか劇団と呼ばれています。

色々技術的なこととかwi-fi電波の上限をギリギリさまよってハラハラしたとかありましたが、大変盛り上がった企画になったんじゃないかなあ。ゲストで来てくださった皆さん、ありがとうございました!結局私は1時間くらいしか寝てない笑。一応睡眠シフトを組んだのですが、やっぱ神経が上がってるんで、間違って早く起きてしまいました(早朝かず散歩のあたり)。
私としては、格付けの舞台平面図当てクイズがいい企画だったな。かず散歩も早朝に空いてる居酒屋に小沢さんが飛び込みロケなど面白かった笑。あと椎名が作成したFCテーマソング、名曲ですよね?なんか今後もこの歌広がっていけばいいなあと思います。

あとは、映画「ディープロジック」が全国公開となりました!7都市だったかな、予想以上の映画館で上映して頂けました。コロナ渦で客足が伸びなかったのはやっぱり寂しいですね。もうタイミングとしか言いようがない。でも大阪や京都で初めて観た方の感想などが聞けて嬉しかったです。今後も山岸監督とは色々企んでいきたいなと一方的に思っています笑。

こうやって並べてみると、コロナと言いつつ、かなり忙しく色々やった一年だったんだなあ。まだまだ厳しい現状で、舞台公演がまず第一になりますが、落ち着いてきたら色々企画していきたいですね。
まず単純に上映会やりたい!いろんな作品の。もちろんシックスドアーズもね。気長にお待ちください。

さて今度こそラスト。
次回は「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」です。

今年一年振り返り⑥「新宿アタッカーズ3〜孤島の洋館殺人事件〜」

今年一年を振り返っています。

さあ、今年の天王山がやってきました。
9月
UDA☆MAP10周年「新宿アタッカーズseason3〜孤島の洋館殺人事件〜」

宇田川美樹がプロデュースするユニットUDA☆MAPも10周年。まさにその祭りにふさわしい超豪華ゲストが集結しました。
まずはそのキャスト表を見た時に宇田川さんに真っ先に言ったのは「2時間では絶対おさまらない。休憩ありの2時間半にしてくれ」これだけの女優陣が集まり、10周年で色々盛り込んでいったらまず2hには入らないなと直感で思いました。そして休憩ありで書き始めたのですが、出来上がってみたら本編2時間50分休憩10分の合計3時間のガチガチ超大作になりましたてへ。千秋楽はマチネが終わり、休憩0分ですぐ集合して円陣を組んでソワレへという凄まじいスケジュールでした。出演者は「あれ、デジャブ?世界はループしてる?」とか言ってました笑。脚本家松本よ。全セクションに謝れ笑。

この新アタは人気のシリーズもの。江戸時代とミステリーとグズグズコメディがまさにいい塩梅で混ざり込んでるアニメみたいな世界観が、やっぱ描いてて、見ていて楽しくなります。主演の三姉妹、宇田川さん、石井陽菜さん、若林倫香さん。このシリーズものは代替わりシステムで、同じキャラを代替わりしながら進んできました。三女夢或は今回から若林さん。これまで福田真夕さんがやっていた乳首かゆいでお馴染みの獏露の親分は七海とろろさんに代替わりしました。初代次女琵輪を演じていた高橋明日香さんが別の役で、しかも容疑者役で、最後は真犯人で、戻ってくるのもなんか面白い縁ですね。シーズン2から琵輪役の石井さんがお休みの時にあすぴーに琵輪の代役をやってもらったのは楽しかった笑。

ミステリー部分はいつも唸るほど苦労します。新アタは毎回ネタ帳が二冊になります(普通の作品はだいたい一冊)。真犯人があすぴー演じるキャロライン留とは最初から決めていたのですが、容疑者7人いるとマジでしんどかった。せいぜい5人だなと思った。または絶対犯人じゃないだろ的な、モブ的な容疑者(金田一君だといるよね)が必要なんだと思った。7人全員にドラマがあったら、そりゃあもう3時間になりますわな。感想で「松本さんはコロナ対策で休憩が入るのをいいことに、好きなだけ書き切った」みたいなのを頂戴しまして、はい、まさしくその通りです。

舞台美術もここ数年やってないスケール!そしてあんな巨大セットを出演者だけで、しかもほとんど女性の座組でやるという鬼畜の所業。稽古場では「ゲネプロ(本番直前の通しリハーサル)やろうぜ!」を合言葉に、相当な時間を場面転換に割いた気がします。そして分量といい、物語尺といい、演出家としては常に「押して」いる気持ちで毎日稽古したなあ。だいたい本番直前になるとその時計は元に戻るんだけど、今回はずっと最終日まで、いや、初日まで、この感覚でした。よく場当たり(劇場でのテクリハ)は戦場だなんて言いますが、マジで戦場でした。キャストスタッフに感謝。

しかしキャストは豪華でしたし、真摯でしたし、素晴らしい座組でした。第一回のUDA☆MAPに出ていただいた大竹えりさん、第二回からの中川えりかさんというベテランから、石井さん、栞菜さんといった沼田世代(今作った造語「沼田⭐︎フォーエバー」)、そして新木さん、結城さんと言った若手まで(二人は場面転換で凄まじい働きをしてくれました)が切磋琢磨するよき現場だった。

真犯人の高橋明日香さん。台本は稽古しながら書き進めるパターンで、実は本人にだけ最初から「犯人だよ」と伝えてました。他の人は新着台本が配られるたび「誰々が怪しい」などと推理を巡らせます。実はそんなキャストの様子をリサーチしながら「ふむふむ、お客さんはこういう推理思考になるのか」」など思いながら参考にしていました。でも最初からずっと留さんは真犯人人気ナンバーワンでした笑。そして後半に差し掛かったある日、もう隠せないと思って「そうです、真犯人は留です」と皆に伝えました。全く予想してなかった人もいて、的中させた人もいて、その反応は楽しかったですね。そういう犯人クイズの間あすぴーはずっと「犯人は私」と稽古場で思いながら隠していたわけです。ごめんよ。
しかし最後は留さんと水野さん演じるマチルダさんの愛の物語にしたかったので、それはうまくいったかなと思います。それぞれの思惑が本当に交錯するので、稽古場では質問の嵐でした。やっぱミステリーは難しい。

栞菜さん演じる歴史学者の梵著が大好きすぎて、続編登場を匂わすラストにしてしまいました。コミカルなのにミステリアス。そして実はFBI的な幕府最高機密方だったというオチです。ほんと続編に出る前からスピンオフが書きたいキャラですわ。

振付は新アタ2から引き続き松本稽古さん。メインテーマは、シリーズの振り(前回の)と新しい振りの融合が面白かった。同じ振りというのもシリーズものの醍醐味なんだなと思いました(その辺のチョイスはお任せしてました)。

中アクト(いまだいい名称決まらず)は平義隆さんの書き下ろし楽曲「花火」。この曲のデモを聞いて、ラストシーンや花火師辰次の物語が生まれました。このアクトの終わりごろ、死んだマチルダとその手を握る留、そして他の人物たちが儚い花火を作る。あそこは絶品に好きです。人って、ダンスって、花火を表現できるんだな(もっと細く言えば散り際の儚さ)と感動。

とにかくハードな公演で、コロナもそうですが、怪我なく事故なく終わったことに安堵感がすごかった。
でも10周年の花火はあげられたんじゃないかなと思っています。
そしてこの大変な年に3作品のプロデュース作品を送り出した宇田川さんのバイタリティはシンプルにすごいんじゃなかろうか。

新アタシリーズはまだまだ続きます(の予定)。少なくともシーズン5までの構想はある。三姉妹の出生の秘密はいい加減描いていかないと怒られそうですね笑。

さて振り返りはあと1作品!大晦日に書きます。
次回はいよいよ今年ラストの公演「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」です。

今年一年振り返り⑤「ホテルニューパンプシャー206」

今年一年を振り返っています。

8月
UDA☆MAP Plus「ホテルニューパンプシャー206」

ここからまさにコロナ対策が日常になっていくいわゆるwithコロナになっていきます。油断は全くずっとできませんが、ノウハウがある分気が楽になってきました。それでも一年を振り返ったら、このパンプが一番大変な時期だったんじゃないかな。第二波ど真ん中で、社会的な雰囲気としてはミキシングよりも難しかったように思います。稽古場が変わり、床がリノリウムになったので、床を1時間ごとに雑巾掛けするのが新たな日常になりました。でも稽古場が常に清潔であるというのは、当たり前のようですが1番の感染症対策だと思いますね。だいたい稽古が佳境になる頃に掃除してても埃が溜まってきたりするのですが、常にクリーンだったこの稽古場で、そして8人という少人数の座組みだったので、絶対(感染は)出ないんじゃないかという自信がありましたね。

コロナ話はこれくらいにして、この作品は私のデビュー作。初演は2000年でした。ラブホテルの一夜を描いたシチュエーションコメディの現代劇ですが、20年も経つとなんか古典の匂いがしてくるんですよね。あれ何だったんだろう。古い、って訳でもないんだけど、なんか勝手に味が出ちゃってる、そんな脚本でした。

主演はKAIROに続いて小林亜実さん。高宗歩未さん、梅田悠さんの3人の訳あり女達の物語。これはよく覚えてるんだけど、デビュー作として女性を男性目線で綺麗に描きたくないという想いがあったんですよね。女達のグズグズを描きたかった。これはやっぱりその後も私作品の根底にどうやらあるようです。なんかそっちのほうがカッコいい人物に思えるんだよなあ。

小林さん、よかったなあ。顔がもうね、ヨゴレな感じをね、しっかりコメディでやってくれましたね。KAIROではクールな役で、ちょいちょい稽古場で変顔を見てて、コメディで組んだら絶対面白いだろうなと思ってたのでまさにって感じ。高宗さんもKAIROではシリアス班でしたが、ぶっ壊れてましたね。あの里子という役はイカレプリティなので、プリティな部分も必要なんです。あれだけイカレててもね。それをよく体現してくれたと思います。
梅田さんは場末のホテトル嬢という設定。たみしょうさん(民本しょうこ)が敏腕刑事役で、最初ここ逆でしょ、と思ったのですが、宇田川から意外性のキャスト配置が面白いと聞き、確かにそうだなと思い、そして確かにそうでした。梅ちゃんのホテトル嬢理香は案外回し役というかしっかりした部分も必要である意味影座長って感じをよくやってくれました。あ、そうだ、お客様からどうやって作ったの?ってけっこう感想頂いたあのオープニングは、暗転フラッシュでダイジェストやりたいって言った私のアイデアを梅ちゃんがすべてカウントに落としてアドバイスしてくれた賜物でひた。

男性陣だと髙木の聡ちゃんはあのポジションだと出色に輝きますね。はまり役だと思います。あの隠し部屋は劇場にあったスペースで、下見に行った時に「ここパンプやるための劇場やん!」とテンションが上がりました。

このホンは、古典的な雰囲気すら出てきたので、いろんな女優達で今後も見てみたいなと思いました。
初めて使ったキーノートシアターはこじんまりとしたいい劇場だなと思いました。小作品をやるにはぴったりですね。大人数芝居は向かないけど。
あとあのカラフルなラブホのセットは若き女性美術家の西山さんがデザイン。デビュー作だと思います。あの熊のぬいぐるみは今はうちのソファーに「パンプくん」として鎮座しています。犬のちくわとは仲が悪いです笑。

こんなポスターも今年ならでは。

そしてUDA☆MAP二連発。今年最大の山場と言ってもいいこの作品。
次回は「新宿アタッカーズseason3〜孤島の洋館殺人事件〜」です。

今年一年振り返り④「ミキシングレディオ2020」

6月
6番シード「ミキシングレディオ2020」
脚本・演出

ホームである6Cの本公演です。本公演は第70回だそうです。すごいな。
さて、この公演は本当に紆余曲折がありました。まず開催できるかが瀬戸際の公演でした。結果から言うと開催できたのですが、他の演劇や団体が軒並み公演中止を発表する中、緊急事態宣言が明けてから、ほぼ一発目的な、トップバッター的な、ジャンヌダルク的な?立ち位置での公演となりました。
開催できたのは色々な幸運も重なっていました。
・ビジュアル撮影が3月末に終わっていたこと
・緊急事態宣言明けから稽古してもギリ間に合う公演日程(1週早ければ断念してたと思います)
・再演だった
・中止する場合の金銭的な損失は、いつ判断しても変わらなかった。だから決断をギリギリまで引っ張れた。

などがあります。最後の項目はけっこう切実に大事で、早めに中止を判断することでキャンセル料の減少や製作費の損失を抑えることが出来ます。そういった理由で早めに中止を判断した団体さんはたくさんあると思います。うちの場合は美術を作り出すかどうかの判断すら宣言明けまで待ってもらったので(演劇界全セクション止まっていたので)、ギリ待ちが出来た訳です。

劇団ではミーティングを何回だろ、5〜6回は重ねましたかね。リモートでね。4月末にミーティングしたら緊急事態が5月まで延長になり、そこで一度中止に傾きました。チケット発売日を遅らせて社会の様子を見守る日々。4月5月の演劇公演はほぼ全中止だったんじゃないかな。感染者数も順調に減り、どうやら6月には解除されそうだとなり、最後のミーティングを開きました。
6月に解除される前提(されなければ中止)で話し合いましたね。お客様のこと、出演者のこと、自分たちのこと。僕が開催できるかなと思ったのは、すごく具体的ですが制作島崎が考案した「客席と客席の間に仕切りをつける」と私が提案した「舞台前面に飛沫防止シートを張る(その後アクリルパネルになります)」でした。シンプルにコンビニや飲食店を見ていて、これで感染リスクはかなりなくせるという自信が生まれたのです。最終的にはキャストはフェイスシールドを着用して上演しました。その後わりとスタンダートとなっていく演劇界の感染予防策です。アクリルパネルも何件か貸し出しました。ミキシングのコロナ対策のあれこれはこのコラムを遡ってもらうと当時書き残したものがあるのでご覧ください。

でも最後に必要だったのは、勇気です。カッコつけてますかね、でもシンプルにそうです。やるか、やらないか。責任取る腹が決まったかどうか、だったように思います。責任というのは感染者を出さないということでもありますし、お金のことだったりもする。だからその責任をしっかり考えて公演を中止にした団体さんや主宰さんもまた勇気が必要だったと思います。
そう考えるとまあシンプルですね。やる、に舵を切っただけと言ってもいいです。ただタイミングが絶妙に難しい時期だったということです。でも今考えると感染者数など一番少なかった時期なんですよね。皮肉なものです。

さてそうやって決断したら、キャストさんも熱い思いで集まってくれました。そこからはひたすらこれでもかってくらい稽古場でコロナ対策コロナ対策の日々。詳しくはさっき書いたようにこのコラムを遡ってくださいね。
不安は私もキャスト全員も強かったと思いますが、そうやってみんなで徹底的にやる日々を重ねると、だんだん安心や結束に変わっていきました。初めてマスクからフェイスシールドに切り替えてみんなの顔が見える稽古をした時の稽古場のテンションの上がり具合ははっきり覚えています。

幸運だった理由に、再演だった、と書きましたが、それは短い稽古時間、慣れないコロナ対策の中お芝居を作るには本当に助けられた部分でした。椎名は主人公秋山真希を演じるのは2度目。劇団員全員がこの演目を1度以上体験しているという強みは本当に大きかったです。逆にコロナがなければ、あっと言う間に芝居仕上がったんじゃないかなそれはないか笑。今となってはコロナじゃなかった世界で出来たミキシングレディオ2020はどんな作品になったんだろうと思います。ソーシャル対策のひとつとして導入した小道具のスタンガン棒。それで面白いシーンが山ほど生まれたし、こっちの方が断然面白いと思いました(これまでの狂気はシンプルにナイフ)。
キャストは皆ヘロヘロになって稽古してましたね。ただでさえあの熱量の芝居をマスクをつけながらの稽古。もう高地トレーニングですよ。一度椎名くんは箱根駅伝でたすきを渡した後の走者みたいになったこともありました。椎名くんはちょっとあまのじゃくというか変わったやつでしてね、元々脇役好きというのもあるんでしょうが、主演を張ることも多くなり、主演女優らしいわがままさ(褒めてます)を出しつつ、ちょいちょい稽古場で「脇役がいい」と愚痴るのです笑。そんな彼女ですが、見事な主演を張ってくれたと思いますね。

ラストの真希さんの決め台詞
「このスタジオで何が起きたってリスナーには関係ない。それが私たちの仕事、生放送ってもんなのよ」

この脚本は確か2001年が初演だったかな、20代の私が書いたホンです。たぶんその時は演劇とラジオ生放送を重ねたような想いで書いたんだと思いますが(忘れた)、この2020年にこんな形で響く台詞になるなんてね。不覚にも稽古場でその台詞を聞いた時にブワッと涙が出ましたわ。ブワでしたわ。
その後11月のザ・ボイスアクターまで、正確にはこの前終わったボブジャの公演まで、千秋楽が迎えられるかどうかの不安と、迎えられた時の喜びは、まさに言葉にできない一年でした。ミキシングレディオはそれが当たり前ですが一番強い公演だったかな。
これまで人生の様々な局面を、自分のホンや、それを演じる役者、それを喜んでくださるお客様に、何度となく救われてきましたが、このコロナ一色の2020年に、ミキシングレディオの再演を選んでいた私のチョイスはナイスでした。だからタイトルも「ミキシングレディオ2020」です。本当はね、オリンピックにあやかったネーミングだったんですけどね笑。

円陣もソーシャルディスタンス

さて、ここからwithコロナ時代に突入し、UDA☆MAP公演2連続に進んでいきます。
次回は、
8月「ホテルニューパンプシャー206」です。