今年一年振り返り③「SIX-DOORS」

今年一年を振り返っています。

4月〜5月
6Cオンライン「SIX-DOORS」
リモートオンライン作品

さて(前回参照)4月に緊急事態宣言が出て、公演中止となり、途方に暮れた私。いや、暮れる暇はそんなになく、すぐ「オンラインでなんかやろう」と劇団員に呼びかけました。その頃リモート演劇が盛んに作られるようになり、その先駆けになりたい!と思ったのでした。
が…所詮アナログ劇団、とわし。企画書は確か宣言後直後に出来上がり、zoomも有料のやつをすぐ申し込み、さあ、と思ったのですが、なかなかうまくいかない。その頃出ていたリモート演劇を見て、生で観るよりどうしても面白さが落ちるよね、を実感していたのでそうならないようにと試行錯誤が始まります。
初稿は劇団員6人によるコメディ。ちょっとzoomで稽古もしましたが、まあ面白くない。コメディの生命線である、会話のテンポがまるで見えてこないのです。通信のラグってやつですね。樋口に至っては10回に9回は映像が止まり、それはそれ自体がコメディにはなっていたのですが、どうすれば面白くなくか見えません。早速暗礁に乗り上げ、ステイホームの中悶々とした日々が続きます。
そして本読みすらしていない劇団員6人のミステリーバージョンを経て、現在公開している二人芝居バージョンで企画が動き始めました。先駆けどころか、かなり後発になってしまったわけです汗。

ポイントは二つ。
・画面に二人だけだから内容が濃くなるはずだ。
・いろいろ大変そうな生配信をやめて、収録編集型にして、クオリティを上げる。

でした。後者は、舞台人としてなんとしても生にこだわりたいという最初の理念をさっさと捨てました。結果、編集が鬼大変になりましたが、編集の腕は鬼上がりました。ギラしか使えなかったやつがベギラゴン使えるくらいにまではなった気がする。いや、ベギラマくらいかな。

劇団員×ゲストという形も面白かったですね。稽古も収録も(ほぼ)全てリモートで行いました。第2話のラストと3話の冒頭のみ、ロケで撮影しました。各話実質3日くらいで稽古本番。合間にずっと続きを書き続けて、出来上がったものを編集して公開して、実質今年一番忙しかったのはこの時期かも知れない。結果全話繋げると2時間の超大作になりました。全部終わった時、当分zoomはしたくないと思いました笑。

第一話「UFOに願いを」
土屋兼久×松木わかは
ベランダと窓を挟んだリビングでの夫婦喧嘩。場所設定が面白いなと思って書きました。実は松木さんはかなり遠方のご実家からリモート。東京の土屋君とまさに遠隔の面白さでしたね。撮影場所がベランダなのでご近所迷惑にならないように、かなり短時間での撮影でした。あとマヨネーズを頭からかぶるので一発勝負感もあったな笑。UFOのCGは山岸監督にお願いしました。

第一話前半

第一話後半

第二話「青空ドロップ」
小沢和之×池澤汐音
タイトルが好評でしたね。幼い雰囲気の池澤さんと味が出てきた小沢さんがいい組み合わせで味わい深い作品になりました。池澤さんとはこれが初でしたが稽古2日目くらいだったか、スイッチが入るとぐんぐん面白くなりますね彼女。ラスト付近は我が家の近くで撮影しました。この辺りからもう演劇じゃなくて映画なんじゃないかと思い始めた。

第二話前半

第二話後半

第三話「婚活詐欺にご注意」
藤堂瞬×佐藤圭佑×古野あきほ
コメディタッチのミステリー?ちょっとジャンル不明な感じとか、松本作品っぽい感じのようでそうでもない感じとか。ちょっと面白い立ち位置の作品になりましたね。圭佑さんは画面の下に台本を忍ばせていたようですが、編集してみるとけっこうバレてた笑。主人公が実は犯人だった、しかもちょっと同情の余地があった、みたいなテイストが松本作品ぽそうでそうでなさそうな所以かも。ちょっとシニカルなんですよね読後感とかも。

第三話前半

第三話後半

第四話「誤差118秒」
宇田川美樹×平野勲人
平野さんも一緒に作品作るの初めてで(そういえばゲスト陣はほぼ初6C)宇田川さんとのコラボが楽しみでした。今度はコメディな二人でもやってみたいなあ。というわけでけっこうなシリアス劇。ホンのポイントはタイトル通り118秒の誤差がある通信で、脚本もだけど、稽古がめちゃくちゃ苦労した。松木さんや神谷さんに代役参加してもらって、宇田川さんの誤差の声を入れてもらいながら稽古しました。編集で声を全部はめ直すって形です。全6話中一番気に入ってる話ですかね。

第四話前半

第四話後半

第五話「マヨネーズの神様」
椎名亜音×平山佳延×鈴木智晴
感想に「何を見せられてるんだ笑!」というのがあり、まさしくそんなおバカな物語。実力派俳優3人が、大の大人がふざけまくるとこうなるよっていう例。いわゆる深夜のノリで書いたような脚本。実際は稽古と編集に追われ、実はけっこう難産だった話でした。この「SIX-DOORS」は全6話が最終話で繋がるみたいなイメージで、ラス前のこの話の立ち位置がずっと見えなかった笑。だからあんま気にせず楽しくやろうかって開き直って書いたのがこの有様でした笑。

第五話前半

第五話後半

第六話「或る夜の出来事」
樋口靖洋×神谷未来紘
拘置所にいる容疑者と弁護士のリモート接見という最終話。男の話の中にこれまでの各話のエピソードがちりばめられ…という流れ。ユージュアルサスペクツ感といいますか、語りだけで物語が立体になる感じ、やりたかったんですよね。バッチリ仕上げてきている神谷さんと、台詞量と電波に苦戦し続ける樋口。稽古は予定より増量して、完成に時間をかけました。収録を終えた時はなんだか清々しい気持ちでしたね。リモート画面でしたが3人で抱き合ったような感覚笑。
確か結局、ミキシングレディオの稽古が始まった頃に収録を終えたのでした。

第六話前半

第六話後半

今でも無料で公開してますので、各話のリンクからお楽しみくださいね。
DVDも販売してますよ。本編(2時間)とメイキングとあります。

6Cオンラインショップ
https://6banceed.thebase.in/

遠い先、コロナって時代があったなあって振り返るようなことがあれば、この作品と、次回のミキシングレディオを思い出すと思います。
大変でしたが、よき経験と出会いでした。

次回振り返りは、いよいよ緊急事態宣言が明けたぞ!
6月
6番シード「ミキシングレディオ2020」です。

今年一年振り返り②「MIX UP!!」「唯一度だけ」

今年一年を振り返っています。

4月
6バンjackNG「MIX UP!!」

先に結果を書いておきますと、公演中止となった公演です。
6番シード×バンタムクラスステージ×Bobjack Theater×ENG
4団体合同のコラボ公演。一年くらい前からコツコツと準備してきました。確か3月23日が顔合わせ。1週間くらい稽古して、3月31日に公演中止を決断。4月1日に解散式をして、7日に緊急事態宣言が発出されました。やけに具体的に日付覚えてるなあ。

ええと10作品だったかな。脚本は私、細川さん、ボブジャの守山さん、麻草さん。演出は、私、扇田さん、細川さん、福地君の4人でした。演出助手さんがパズルのように組んだスケジュールを元にいよいよ稽古がスタート。スケジュールの都合で、作品によって完成度合いがまちまちで、私脚本演出の「アンダーライン〜図書館司書探偵の事件簿〜」私脚本細川さん演出の「天気と戦わない男」あたりはもう明日から通し稽古、といったところで中止となりました。キャストさんの参加日数もまちまちで、劇団員で言うと、藤堂や土屋あたりはかなり稽古が進んでて、宇田川さんや小沢さんはいよいよ初稽古、の翌日に中止の発表、とかだったと思います。

私の作品群でいうと
「アンダーライン〜図書館司書探偵の事件簿〜」はまさしく通し稽古を予定していた日に中止の発表がありました。この作品は未来切符という公演の短編の続編的な物語で、けっこう自信があったので、マジで悔しかった。別れ際に「また同じメンツでやりたいね」と藤堂が言っていたように記憶していますし、多分他の作品の人たちも皆そういう思いだったんじゃないかな。それくらいベストキャスティングでした。前島流瀬役の水崎綾さん、保育士の美郷役(漢字合ってるかな)の栞菜さん、あと園長役の信國さんもすごいいい味出してた。

あ〜こうやって書いていくと懐かしくもあり、切なくもなってくるな。やはり公演中止、作品が世に出なかったというのは、つらいんだなあ。なんか泣きそう。泣かないよ。
この公演は希望を込めてのぶさんが「無期限延期」としました。なかなかすぐにまたこの規模のコラボ公演はできない現状ですし、まずは自分の団体で精一杯の日々でしょう。そして無理だとわかっていても、上に書いたように同じメンツを集めてやりたいねという思いもありますね〜。でもこの図書館司書も「天気と戦わない男」も同じ形でなくなっても必ず世に出したいと思っています。

すごく個人的に気になっていた私脚本の再演「バスケットボールダイアリーズ」確か稽古は1回だけで終わってしまい幻のチームとなりましたが、その稽古がめっちゃ面白かったんだよなあ。宇田川キャプテンに梅田エース、たみしょうの副キャプテン、演出は扇田さん、稽古初日で勝ちが見えましたね、みたいな話をのぶさんとしたような気がする。

そしてこの年末に守山さん脚本、私演出の予定だった「唯一度だけ」がボブジャ公演で無事上演されました!!粋な計らいというか扇田さんがわざわざ私に演出を依頼してくださり、この公演の演目では最初に日の目を浴びた作品になるのかな?

この時は稽古は1回だけで、まだ台本が数ページしかなく笑(リアルにボブオムニバスのあのシーンのようでした笑)あすぴー梅ちゃんなどが面白くコラボして、続きを待ちましょう、と稽古を終えた記憶があります。12月の演出でも使った鳩時計のネタはこの時生まれました。稽古に余裕があったので笑。

12月の上演では、出演者は変わりましたが、守山さんらしい、女性4人のセンチメンタルな物語になったのではないかと思います。
ということで12月の「唯一度だけ」を振り返っておこう。

12月
ボブ宴「唯一度だけ」演出

稽古は非常に順調でした。ボブジャのみんなは他作品の仕上がりの遅さと比べて戦々恐々してたな。それくらい順調でした。
池澤さんの壁は28歳という年齢でしたが、あまりそこに囚われず彼女の感性を大事にしてほしいなと思いそう伝えました。ああいう28歳いるし。
一村さんは初めてでしたが、彼女も感度と勘がいいですね。でもお行儀よくなりすぎないなんかアニマル感もあって好きです。どこかでがっつりやってみたいなと思った女優さんでした。
長橋さんは今回が一旦ラストだったんですね。この二湖という役が実は一番難しいねと稽古場で話していて、どこにでもいそうな柔らかい人物を作り上げてくれましたね。
この3人と作品の流れの塩梅を作るのが椎名くんの仕事で、まさにきっちりいい仕事をしてくれました。
クセモノばかりのボブジャに爽やかな風が吹いたんじゃないかな笑。

あ〜また絶対やりたいな短編公演やコラボ公演。眠った作品たちよ、それまで待っててね。

次回は緊急事態宣言下に完全リモートで作った
6Cオンライン「SIX-DOORS」です。今日はここまで。

今年一年振り返り①「KAIRO」

やっべ、もう28日だ!
毎年年末に、備忘録も兼ねて今年一年の作品を振り返るコラムをやってますが、やっべ、間に合うかしら汗。

今年はまあコロナな一年でしたね。来年もまだ続きそうなので、なんとなくまだコロナについては総括できない感じですね。そんな中、おかげさまでこれだけ沢山の作品をやることが出来ました。奇跡。感謝。

2月
UDA☆MAP NEXT「KAIRO」演出
4月
6バンjackNG「MIX UP!!」公演中止
5月
6Cオンライン「SIX-DOORS」脚本・演出・編集
6月
6番シード「ミキシングレディオ2020」脚本・演出
8月
UDA☆MAP Plus「ホテルニューパンプシャー206」
9月
マルガリータ企画「ホームセンターズピリオド」短編脚本提供
UDA☆MAP10周年記念公演「新宿アタッカーズseason3〜孤島の洋館殺人事件〜」脚本・演出
11月
6番シード「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」脚本・演出
12月
Bobjack Theater ボブ宴「唯一度だけ」短編演出

その他
6Cイベント「六番寄席」
映画「ディープロジック」全国上映
6Cイベント「24時間TV」

おお、なかなかの本数ですな。公演中止になった公演、オンラインでやった作品、緊急事態宣言明けに必死の思いでやった公演、いやあ大変な一年だったなあ。これはもう、本当に。

さあて、ガシガシ振り返ろう。
まず一発目は、

2月
UDA☆MAP NEXT「KAIRO」
大塚萬劇場

演出を担当しました。宇田川さんプロデュースのUDA☆MAPの新しい形というふれこみで、脚本は細川博司さんのゴリゴリのSFものでした。

遠い未来の管理された砂漠都市に、起きるはずのない殺人事件が発生。事件解決に派遣されたのは、教会と大寺院の特命の使者。
そうらもうゴリゴリだろう。宗教観も絡んできて、改めて細川さんの知識はすごいなあと思いました語彙力。栞菜さん、小林亜実さんのw主演を中心に全員女性という座組み。確かに新たな試み感がビンビンにありました。

演出は面白かったですね。絶対私は書かない作品。攻めた公演コンセプト。屈強な女優陣。と「演出」の仕事がここまで面白いものなのかと実感するくらい面白かった記憶しかない。

これまでやってきた本数は少ないのですがね、僕演出だけの仕事もわりと定評ある気がする。こないだ終えた「唯一度だけ」も地味?だけどいい仕事したなあって思ってるし笑。
確か扇田さんと24時間TVで話したのかな?演出って結構最初はざつ〜にホンを読むんです。その後しっかり落とし込んでいく。このざつ〜に読むが結構大事な気がしていて、それはきっと最初に観客が観た感覚に近いのかも知れない。
だからKAIROは、超難解な設定やセリフのオンパレードなんだけど、そこは一旦気にしないで笑、ざつ〜に読んだ感覚を大事にしました。単純にこのシーンワクワクする、とか、ここ長いなあ、とか。そうすると演出にメリハリが出て、シンプルに見やすくなっていくんですよね。僕の演出はわかりやすいという評価を頂けてるとしたらこの部分かなと思います。そして今作は、わかりやすさをけっこうブレンドすることでちょうどいいだろうなとこれも最初にざつ〜に読んだ時に直感しました。細川テイストを生かした難解気味な演出も考えたのですが、わりとすぐやめました笑。

その後キャストと一緒に細部を練っていく作業に入ります。これはかなり根気よくやりました。栞菜さんなんかはかなり細かいところまでこだわって作り上げていってましたね。自分の脚本作品でもありますが、わかんない部分は「わかんない」って言ってキャストに知恵を借りることがあります。これがまた面白い作業でもある。今回は毎日それでした。休憩時間にキャスト同士がずっと話し合ってた気がする笑。

僕がざつ〜に読んで面白いなと思っていた序盤の流れに、実が時系列に齟齬があることがわかり、細川さんも巻き込んでえっちらこっちら直したりもしました。整合性は必要ですが、ざつ〜に面白いと思った感覚は変えたくない。それで何度も作っては壊し、みたいなことをやりましたね。

演出として気に入ってるのは、やっぱりあの光の演出でしょうな。「全灯」と呼んでいた舞台美術の蛍光管(LED)が一斉点灯するシーンは何度見ても楽しかった。

作品の象徴ともいうべき長女ザインを演じた那海さんがよかったなあ。狂気と品格、人間味と無知覚な感じ、の対比といいますか。DVDは彼女のラストの笑顔を生かした編集にしてみました。

コロナはというと、この頃「どうやらやばいのが来てるぞ」とちょうど始まった頃、警戒が強まってきた頃でした。まだ即座に公演中止というほどではなく、面会の時キャストがマスクをして出ます、というアナウンスが出ていたくらいの時期でした。この公演を終えたあたりから一気に社会は大変なことになっていったように覚えています。

ちなみに稽古序盤に私は数年ぶり2度目のインフルエンザにかかりました笑。熱が下がっても1週間稽古お休み頂いて(多分今ならリモートで演出とかしてたかも)シーンごとのアクティングエリア、立ち位置や移動などをミザンスを図に書いてそれを宇田川さんに預け、絵作りを進めてもらいました。

この作品は続編化の構想もあるみたいですね。細川さん曰く、続編は小林さん演じた「乾ディーヴァ」が主人公の物語らしい。実現したら面白そうだなあ。楽しみに待ちたいと思います。

次回振り返りは、公演中止となった
4月 6バンjackNG「MIX UP!!」です。

ミキシングレディオ2020 振り返り〜コロナ対策劇場編〜

「ミキシングレディオ2020」〜コロナ対策劇場編〜

これから演劇を再開する方へ何か参考になればと思い、今公演で行ったコロナ対策を書いています。今回は劇場編です。

もう一度書きますが、コロナへの価値観や考え方は様々です。やれることやれないこと(お金とかも含めてね)、対策の良し悪しなども様々な意見があるかと思います。これからもうしばらくは続くであろうこの時代で、わりとトップバッター的に公演を行った者の備忘録として参考にしてもらえたらと思います。今回は出来るだけ明日使えそうなことを書いていきます。

・舞台と客席の間に飛沫防止シートを設置
・客席と客席の間に飛沫防止シートを設置
・お客様には検温、アルコール消毒、マスク着用でのご観劇
・チケットはすべて前売り、グッズもネット販売
・換気休憩
・終演後の面会はなし
・フェイスシールド着用公演

大きくはこの7つです。上記6つは公演開催発表と一緒に告知。フェイスシールド着用は、試行錯誤(役者の安全性含め)が必要だったので、後ほどの告知となりました。これらはすべて、劇場の方針や構造、団体の都合、予算の都合、などなど様々な事情が絡んできます。これももう一度書きますが、緊急事態宣言明けすぐの公演だったので「やれることは全部やろう」をモットーにしています。今後情勢の変化やここまでやらなくていいorもっとやらなくてはいけないなどの変化は大いにあると思っています。あくまで2020年6月の出来事として読んでくださいね。

《舞台と客席の間に飛沫防止シートを設置》
ラジオ局の生放送という物語設定に合わせてアクリルパネルとなりました。これは素材がどうであれ、舞台美術の一部のようになるんじゃないかなという目論見は最初からありました。そして舞台美術の青木さんがまさしくそのようなプランニングをしてくださいました。
アクリルパネルは6ミリの厚さのもので、舞台用語のいわゆるサブロク(90センチ×180センチ)を6枚並べました。舞台面ではなく客席面に下から設置。その段差分で高さ165センチくらいの壁となりました。背の高い菅野くんが舞台挨拶の時に少しはみ出してたな笑。照明が反射しないように今回はシーリングという前から当てる照明を使っていません。照明の話をすると、フェイスシールドの反射防止も含めてかなり数を減らした形での灯り作りとなっています。
飛沫防止対策としては100点だと思います。舞台上の飛沫が客席に流れることはまずほとんどないだろうと言えるくらいの遮断感があります。透明度も高く、視覚的な問題はほとんどなかったと思います。一部の席からはパネルのつなぎ目でキャストの顔が曲がって見えるという現象が起きました。出来るだけそうならないようにスタッフさんが頑張って設営してくれましたが、アクリルパネルのクセと劇場床面のフラット誤差で少し曲がってしまう箇所が出ました。それを解消するにはパネルを厚くするというものですが、8ミリにすると予算が爆上がりします笑。6ミリ以下だと多分ゆらゆらするだろうという話でした。
セリフ(音声)が聞き取りづらくなるのは当初から想定していて、舞台前面にフットマイク(大きめの劇場でよく使うもの)、舞台美術にピンマイク(ブースとサブを仕切る低いパネルに仕込んでありました)を仕込んでキャストの声を拡声しています。
問題はこの一点ですね。「ライブ感」かなと思います。遮断が完璧であるということはそれだけ客席と舞台が分離されるということです。演劇、特に小劇場が持つライブ感は弱まるのはどうしてもあるかなと思います。今回の劇場ではひな壇3段目くらいから後ろがむしろ生声が聞こえているライブ感があったように思います。とはいえ最前列のお客様はアクリル越しでも役者のライブ感を楽しんでもらえたようなので、これも観客の受ける印象次第といったところかなと思います。
前説で「まあまあ(お金)がかかった」みたいな笑い話にしましたが、本当にアクリルパネルが品薄で入手するのに大変苦労されたみたいです。本来は1枚1万円くらい?で、その1.5〜2倍くらいの金額がかかりました。これ劇団の持ち物として残してありますので、もし使いたいという方がいたらこのサイトの問い合わせフォームからご連絡ください。格安で貸し出します!(切実)
アクリルパネルのメンテナンスはアルコール系だとクラック(ひび)が入るそうなのでご注意。ハイターを薄めたやつ(塩素系?)を使っていたようです。

《客席と客席の間に飛沫防止シートを設置》
制作の島崎がこのアイデアを提案してくれた時に、これなら公演がやれるかも、と思ったアイデアでした。説明むずいので写真で見てもらう方がわかりやすいかと。こちらです。

このように、客席の椅子をパイプで作った枠で囲い、ビニールシートで覆って、完全に個室状態にしました。これは私も座ってみましたが、快適です。めちゃ快適です。一蘭は偉大だなあと思いました笑。これはすべて手作りです。材料はすべてホームセンターで揃います。枠は塩ビパイプで、水道管用だったかな。島崎曰く「水道管というシールを剥がすのが一番面倒な作業だった」とのこと。これらを組み合わせて椅子に結束バンドで固定します。枠の高さは後ろや隣のお客様の視線の妨げにならないよう、座席の位置によって微妙に変えてあります。僕もチェックしましたが、どの席から見ても舞台が見えなくなるということはありませんでした。匠の技ですね。ビニールシートは市販されているビニール袋です。元々はビニールを貼って、公演毎にすべて消毒作業をするというプランだったのですが、このビニール袋をかぶせるという形になったおかげで、すべて廃棄して取り替えるだけという安全面でも作業面でも画期的に楽になりました。とはいえ私も手伝ったのですが、全席にビニールをはめる作業…なかなか大変です。音の聞こえにはほとんど影響ありません。

《開場、換気休憩》
基本フローはこんな感じです。
開場は15分前。事前に行列を作らないようお願いしてあり、開場の直前から、
整理番号順に並ぶ→チケットをお客様自身でもぎってもらう→検温→アルコール消毒をしてご入場

みなさま本当に協力的で、毎ステージスムーズに開場できました。私も検温やアルコール消毒を担当したのですが、嫌な顔をされる方はおらず、むしろ「ありがとう」とお声かけ頂いた方も多数いて驚きました。開演前に泣きそうになったのはここだけの話。検温って経験した方は分かると思いますがちょっと緊張しますよね。私が検温器を銃を持つように(両手で)構えていたのは反省しております笑。マスク着用率も99.9パーセントでした(お一人だけタクシーに忘れた方がいて、その方にマスクをお渡ししたらお金を出して買いますと言ってくださいました)。開場時間が15分しかないので、お手洗いのみ30分前から解放しました。その後私の前説があって、開演となります。前説は何気にいつも緊張した笑。

換気休憩を上演の間に10分程度入れました。それ用に舞台中央のパネルを固定しない形で作成してもらい、パネルをずらして劇場奥の扉(外)を開けて換気しました。その休憩中にも舞台面の消毒作業を行いました。舞台監督さん、私、音響さん、声の出演真由美役のL山田さん、R古梨さんで行いました。これがいつも稽古場でやっていた風景です。
換気休憩はこの物語はむしろキャストにとってはありがたかっただろうなと思います(くっそハードな芝居なので)。あと昨今は上演時間が2時間でも「長い」と言われるような風潮もあり、1時間で休憩はちょうど良かったかも知れないですね。演出としては、完全なノンストップ1幕劇なので、その雰囲気が損なわれてないように、休憩明けに少し前から始めて(前回までのあらすじ的な)スムーズに後半に入っていけるようにしました。宮古田役の大島くんの絶叫が後半の始まりなので、彼は通常の倍絶叫したことになります笑。
今後換気休憩も当たり前になるようなら、脚本家や演出家は少し意識すると面白いかなと思います。ここで休憩!?気になる!?みたいなやり方とか、逆に前半後半が綺麗に分かれている感じとか。これは逆に面白みを増す為という意味のアイデアです。
上演中もマスク着用でのご観劇をお願いしました。水分はこまめにとってくださいとアナウンスしました。咳エチケットも前説でお伝えしました。前説でジョークで言った「笑いエチケット」はそこそこウケました笑。

《フェイスシールド着用公演》
フェイスシールドの試行錯誤のあれこれは前回の稽古場編を読んで頂くとして、最後まで悩んだのがこの項目です。アクリルパネルを設置したので、キャストの飛沫がお客様に飛ぶことはなくなりました。つまり今公演の本番中のフェイスシールド着用の意義は「キャスト間の本番中の感染予防」ということになります。一方でキャストは本番で最高のパフォーマンスをするというのが最大の目的でありそれが仕事です。それくらいフェイスシールドはキャストへの負担が大きなものでもありました。映像の現場だとリハーサルまでシールドをつけて、本番で外すという話も聞きました。今再開したサッカーも試合中に(おそらく相当)接触がありますが、試合中はマスクもシールドも着用してません。そのかわりに2週間ごと全選手がPCR検査を受けているそうです。このように、最後のパフォーマンスの部分で感染対策をどこまでやるか、どのようにやるか、というのは本当に難しい部分だと思います。ガイドラインには「演出上支障がなければマスク着用」と言った文章にとどまっています。ちょっとツイッターで大喜利みたいになってたし。最初から書いているように、この公演は「やれることを全部やろう」から始まっています。なのでまずはキャストが安心して全力で芝居ができるということを考えてフェイスシールド着用公演としました。そしてご覧になった方はわかると思いますが、それはもう飛沫が飛びまくる演目です。作品のカラーだったり、舞台上でそれなりに距離が取れる演出だったり、今後は舞台美術の中でアクリルやシートを使ってみたりと、対策のやり方は様々できると思います。前回書いたようにマスクも使いようで面白くなると思うし。今私が思う1番のポイントは「キャストが安心して演じられるか」ということだと思います。キャストやスタッフ、脚本家演出家の知恵と工夫によって色々な上演の形が生まれてくると思います。今マスク公演やシールド公演がいくつか上演しているという話を聞きました。どちらもつけずにやる公演もきっとたくさんあると思います。そこには主催者や演出家、そして出演者の様々な判断があってのことだと思います。

前回照明のテカリが、と書きましたが、主にテカるのは上を向いた時、横を向いた時でした。すべてのシーンでテカらないようにするのは無理ですが、できる限り「このシーンのここテカってる」とキャストに伝え、テカらない顔の向きなどをキャストは微調整しました(なかなか大変だったろうなと思う)。場当たりというリハーサルがあるのですが、そこでキャストさんは照明の当たり具合などを確認しますが、今回はテカリにかなり時間をさきましたね。

《その他》
あとは、忙しいスタッフさんにお弁当やケータリングを出すのが現場では普通にありますが、今回は各自で買って頂く形にしました。松本ケ長でおなじみのケータリングも今回は行ってません。平井がすごく残念がっていたな笑。私も作りたかった笑。楽屋は2チーム公演なので、Wキャストの席をうまく配置して間隔を出来るだけ取りました。とはいえ楽屋はどの劇場も基本狭いですからね。ここは別場所を借りるわけにも行かないし、小屋入りまで、そして千秋楽までのキャストの感染予防意識を高めておくのが重要かと思います。楽屋をビニールシートで分ける案もありましたが、逆にリスクが上がる(飛沫残りなど)気がしてやめました。換気は常に行いました。公演初日からはキャストは客席に立ち入らず、舞台に上がる靴はキャストは衣装靴、スタッフは舞台面用の靴に履き替えて移動していました。
キャストスタッフ、関係者などもすべて検温を毎日行いました。

そして演劇恒例の本番前の気合い入れもソーシャルな形で。普段なら肩を組んで円陣なんですけどね、今回は大きな広い輪を作って、拳を上に突き上げる形でした。
「ミキシングレディオ、オンエア!!」

とりあえず今公演のコロナ対策編は以上です。「初めての試みだよ」と笑いながら舞台客席空間を作ってくれたスタッフ陣に、様々な制約をポジティブに立ち向かってくれたキャスト陣に改めて感謝です。なんか忘れてるものがあったら追記します。演出面でもいくつかあるのですが、それは作品振り返りと一緒に次回!

ミキシングレディオ振り返り〜コロナ対策稽古場編〜

「ミキシングレディオ2020」が無事昨日幕を降ろしました。
たくさんの方にご来場頂き、千秋楽はスタンディングオベーションを頂きました。緊急事態宣言解除から稽古を始め、短期間で芝居を作り上げてくれたキャスト陣、新たなチャレンジに挑んでくれたスタッフの皆様、そしてご来場くださった皆様、ご来場が難しくても応援してくださった方々など、感謝してもしきれない思いです。やはり特別な時期の特別な公演だったと思います。

本来なら作品についてのあれこれを、振り返りコラムするのですが、取り急ぎこれから演劇を再開する方達へ向けて、何か少しでも参考になればと思い、今回行ったコロナ対策について出来るだけ具体的に書いて行こうと思います。たぶん長くなります。

そしてコロナへの価値観や考え方は様々です。やれることやれないこと(お金とかも含めてね)、対策の良し悪しなども様々な意見があるかと思います。これからもうしばらくは続くであろうこの時代で、わりとトップバッター的に公演を行った者の備忘録として参考にしてもらえたらと思います。公演を行うか中止かなど、劇団員とともにものすごく考え悩み、精神的な苦労もありましたが、そういったメンタル方面の話は今後どこかでゆっくり振り返りますね。今回は出来るだけ明日使えそうなことを書いていきます。

まず大前提に「出来ることは全部やろう」の精神で臨みました。今後効率化だったり、そこまでしなくてもいいorもっとやらなければいけないといった認識の変化、情勢の変化もあるでしょう。あくまで2020年6月の出来事として読んでくださいね。

《稽古場編》
・毎日の検温
・一時間おきの換気、消毒、手洗い、うがい
・マスクまたはフェイスシールド着用稽古
・リモート稽古
・稽古時間の短縮

が大きな対策ですかね。まず一番リスクが高いのが稽古場と参加するキャストだというのを念頭に置きました。今回恵まれていたのは稽古場さんも空き部屋が多い時期で、稽古する場所と別に空き部屋をキャスト控え室として無償で貸してくださいました。これによりかなりソーシャルディスタンスに余裕ができました。もし団体さんやスペースに余裕があれば2部屋あるととてもいいですよ。でもそれは厳しいだろうなあお金とか色々な意味で。区民館などを使ってる団体さんならもう一部屋押さえておくとかいいかもです。

基本フローはこんな感じです。
・キャスト着到→手洗い、うがい→控え室で検温→稽古着に着替えて、稽古場へ。稽古場の入口にもアルコール消毒を設置しました。
・一時間おきに換気休憩、その都度、稽古場のテーブルや小道具なども全て消毒。
・今回2チーム公演だったので、入れ替え時は稽古をしていたキャストが消毒を終え、次チームと交代といったスパンで稽古が進みました。稽古場に入るときに稽古靴に履き替えています(これは普段からもそうですが、たまに外履きオッケーの稽古場もありますので)。

「検温器」
検温器は劇場でも使うので少し値段高め?の良いものを買いました。1台7000円くらい。おでこで測るやつ。2秒で測れます。なんか安いやつは精度や時間がイマイチらしい。劇場でお客様に使ったものと同じものです。

「消毒」
・過去掃除のアルバイトをしていて、食品衛生責任者の資格も持ってる宇田川さんが色々調べてくれて、消毒隊長と呼ばれていました。
テーブルや小道具の消毒はコロナ対策に有効とされている「界面活性剤」の成分が入っている洗剤を使いました。キュキュットとか食器洗い洗剤などに入っている成分で(同じ銘柄の洗剤でも入ってるのと入ってないのがあるらしいからご注意)、経済産業省のホームページに製品一覧が載っているそうです。次亜塩素酸水は(当時)効果が不明という話が出ていたので、メインは界面活性剤入りの洗剤を使いました。この辺りの最新情報は色々調べてみてください。アルコール、エタノール系は少し値段が高いので、手指、フェイスガード、音響機材、で使いました。後で書きますが、アクリルパネルはアルコールNGです(ヒビが入るらしい)。
・すべて消毒と聞くと「大変だなあ」「めんどくさそうだなあ」と思いがちですが、みんなでやれば5分かからないです。本番中の換気休憩中に私とスタッフがやっていたのを見た方はわかるかと思います。そんなに手間ではないです。あとは「みんなでやる」というのが大事だったのかなと思います。全キャストのコロナ対策の意識が共有されるし、皆楽しんでやってました。メイキングのキャストインタビューでこの消毒作業が思い出に残ってると語っていたキャストがたくさんいました。演出助手さんがやるとか、若手だけでやるとかではなく「全員」でやるというのは大事な気がしますね。

「一時間おきの換気・消毒休憩」
演出家としては稽古がブツ切れになってリズムが作れないんじゃないかといった不安はありましたが、これもそういうリズムになっていけば普通になりますね。むしろキャストさんはマスク着用稽古で負荷がかかっているので、ちょうどよかったくらいの気すらします。なので学校みたいな感じかな。1時間やって10分休憩のリズム。よく演出しててノリノリになって時間忘れるというのがあるので(演出家あるある)劇団員にそうなったら止めて、と伝えてました笑。実際何度か止められた笑。
4時間の稽古だとすると30分くらいは今までより稽古時間が短くなるので、演出や演出助手さんはそのあたりは計算して進める必要があります。

「マスク着用稽古」
基本稽古中は「マスク」か「フェイスシールド」のどちらかを必ず着用した状態で稽古しました。フェイスシールドは色々手間がかかるので、マスク着用稽古の方が主流でした。もちろん演出もキャスト同士も最初は表情が見えない難しさがありましたが、すぐ慣れます。きっと今平井杏奈は面白い顔をしてるんだろうなと想像できるようになる笑。音のこもりもすぐ慣れます。ピッタだっけ?通気性のいいマスクを役者さんはよく使ってて、音の響きも良いです。マスク公演をするならこれかなってくらい。稽古初日レベルで慣れます。僕は作風的に微妙ですが、顔が見えない面白さ(ミステリーとかアングラ系とか)を利点にした演出もあるんじゃないかなあと思ったくらいです。能のようにお面文化もあるしね。つくづく演劇は偉大だな笑。
マスクで気をつけなければいけないのは熱中症や呼吸困難などのキャスト負担です。マラソンでマスクトレーニングみたいなのがあるのかな?そういう高地トレーニング状態になってますので、皆疲労感は強かったはずです。一度椎名くんがのぼせたような状態になり、外の空気を吸って元気を取り戻すといったこともありました。その時私のハードなコメディではマスク公演は無理だなと判断しました。
あとマスクでセリフをガンガン喋るとマスクがずれてくるというストレスとキャストは戦ってましたね。土屋は早い段階でフェイスシールドメインの稽古スタイルにしていたように思います。

「フェイスシールド」
これはひたすら試行錯誤したので長いぞ。メガネ型のフレームにシートをつけるタイプを購入し、それを元に使いやすさ、見やすさなど、様々な試行を重ねました。元となったものは、メガネ30個、シート60枚で3万円くらいだったかと。価格は5月下旬の頃のものなので今は変わってるかもですね。シートは丁寧に洗わないとすぐ傷がつきますが、基本1枚を本番まで使用しています。傷などで換えた人でも2〜3枚程度ですね。
試行錯誤は
・着用方法
・固定方法
・通気や見栄えのためのカッティング
の順番ですかね。飛沫や口の大きさを確認しながら、最後にカッティング作業をしました。半仁田さんが口を大きく開けた時の伸び幅がすごくて(ジムキャリーばりにめちゃくちゃ開く)、普通にカッティングしたけど絶叫シーンではみ出し、もう一度カッティングするということがありました。シートも安くはないので、使い捨てという訳にはいかないので、最後のカッティングは結構繊細な作業です。
いろんなキャストさんがとにかく知恵を出してくれたので、採用されたモデルにキャストの名前がついています笑。

《土屋モデル》
通常のメガネフレーム(透明)に着色して衣装メガネ風にして装着。これ一番作業的にも楽なやつです。目の部分と顎サイドあたりをカッティング。
フェイスシールドでの演技はシートとキャストの口の距離が結構肝で(喋りやすい、音がこもらない、曇らないなど)このモデルはその不安要素がなく、安定感もあります。弱点は照明のテカリ。

《名倉モデル》
土屋モデルを転じて、普通のメガネに結束バンドでシートだけをメガネに直接つけたもの。メガネキャラに使用(御手洗、橋口、清川)。メガネにも個性が出せるし、土屋モデルと利点、弱点は同じです。名倉君はボツになったストローで胸に固定するバージョンなど様々アイデアを出してくれました。

《藤堂モデル》
ネック装着で下からつけるタイプ(古田、社長、典子、シゲさん、宮古田など)。見栄えの良さや照明のテカリなどをほぼ完全に防げるので、当初はこのモデルを中心にひたすら試行錯誤しました。問題は装着時の安定感です。それを解消するのに、スポンジ、耳かけ紐など様々足されています。まず元々のメガネフレームを逆にしてシートと装着します。メガネの突起部分が下(首側)になるので、そこにスポンジを挟み胸(喉元)に置けるようにします。それでも固定はしないので、透明な輪ゴムで耳掛けし、メガネのフレーム部分にもスポンジをボンドで接着し、首部分での安定感を足しました。すべてのフェイスシールドに言えますが、キャストの顔の大きさ、首の長さなどでそれぞれカスタマイズが必要です。この藤堂モデルは首が長いキャストには向かない形かも(首の短い樋口の安定感たるや)。
とにかく見栄えが一番よく、照明テカリも一切ないので、このネック式はキャストの演じやすさが一番の課題です。樋口や工藤さんは衣装として首にタオルを巻いて安定感を増していました。小沢さんはネクタイの下にスポンジを入れ、ネクタイを盛り上げることで安定感を作っていました。

《新井モデル》
そして稽古最終盤に生まれたのがこの形(真希、カッキーなど)。元々のメガネフレームを反対に頭につけてメガネの縁の部分に結束バンドで止める形。当初は「逆名倉モデル」と呼ばれていて、様々な人の英知が結集したかのようなモデル笑。今後もシールド公演があるとしたらこれが主流になるだろうなって感じ。メガネキャラでなくてもいけるし、安定感は半端ないです。頭の後ろにあるメガネ部分は髪型などで隠せます。弱点はやはり照明のテカリ一点のみ。あと女性の髪型に制約が出るかもしれない。今回女性でこの形は真希役の椎名と、L加奈役の柳瀬さんでした。結ばない系の髪型だとどうなるのかな。とにかくひたすら喋る主人公椎名がこのモデルで通し稽古をした時の喜びようったらすごかった。多分ダンスなどの激しい動きも大丈夫です。

あとボツになったのが「大島モデル」という、ネック式の安定感を増すためにメガネの突起部分をアゴにつけて固定するという形。同じようにアゴ装着のマウスシールドも試験購入しましたが、やはりセリフを喋る時のストレスが大きいということでボツになりました。セリフが少ないとかダンス公演とかならマウスシールドは使いやすいんじゃないかと思います。囲う面積も少なめにはなりますが、見栄えやテカリもほぼ気にならないでしょう。

あと曇り防止用にメガネクリンビューを吹きかけて本番などをやりました。一定の効果はあったかなと思います。あと曇りは湿度がたぶん関係することが分かってきたところで稽古終了となりました。フェイスシールドと湿度は音の響き含めけっこう関係性がありそうです。
フェイスシールドは飛沫が残るので管理をきちんとしないと逆にリスクが上がると言われています。稽古場でも本番でも自分のシールドは自分で洗浄、消毒し、所定の場所にしか置かない、というのを徹底しました。
マスクでずっと稽古してて、ようやく試行錯誤を終えて全員がフェイスシールドを着用して稽古した時の演出家の視界の広がりはすごく覚えています。みんなの芝居のギアも一段上がったように見えました。豊かな表情の演技も、当然芝居の魅力のひとつです。

《稽古時間など》
通勤リスクを抑える為に、いわゆる時差通勤という時間帯を稽古時間に設定しました。
・11時〜16時
・11時〜19時
です。遅い時間の満員電車もあるなと思いこの時間にしましたが、最近は遅い時間の電車は空いてるから演劇界でよくある13時〜21時は良いかと思います。
稽古時間は緊急事態宣言明けからで3週間、延べ日数17日、延べ稽古時間は100時間でした。これは2チーム公演としては少ないです。通常公演なら足りる量かなと思います(もちろん演出家さんによる)。ダンスや殺陣などがあればまた変わるでしょうしね。稽古時間や日数の短縮は何よりの対策になりますから、作品クオリティと稽古の効率化は今後も進めていくべきでしょう。ただコロナ前までは「効率化が全てじゃないぞ」と思ってたような古い人間でもありますので、演劇の稽古時間というのは引き続きいろんな人が考えていくことなんだろうと思います。
今回、キャスト体力や健康維持のため「3日に1日休みを作る」という形のスケジュールで進めました。これは良かったと思います。だいたい稽古最終週は集中稽古といって7日〜10日連続稽古になるのが普通ですが、そこにも3日置きに休みを置いたので、キャストの休養にもなったし、本番直前のメンテナンス(美容院とか、マッサージとか)が小屋入り3日前にあったのはとても良かったと思います。演出家としても連日ハードになるころなので良かったですね。これはコロナ関係なく今後もやろうと思います。

《リモート併用稽古》
6Cオンラインというリモート演劇でリモート稽古しまくったのでノウハウはありました。なので試験的に導入してみました。稽古場で何人かが稽古し、リモートで何人か参加という併用型です。結果から言うとそこそこ使えて、そこそこ難しいって感じです。脚本や演目にもよるかなと思います。この稽古のコロナ対策の意義は「稽古場の密防止(人数の抑制)」「通勤などの外出リスクの軽減」ということになります。それとともに時間のない中で芝居を仕上げる、出番がなくても(少なくても)稽古場で他のキャストの芝居を見て空気感を感じる、という演劇にとって大事な部分もあります。だから良し悪しですね。使える演目と効率的じゃない演目があるって感じかなと思います。今作はみんな出ずっぱりで全体の空気感が大事な芝居なので後者ですかね。今回は前半声だけの出演となる道路交通情報センター成瀬役の水野さん、朝比奈さんが多くリモート参加しました。
当初はブースの中がメインの芝居の時にサブを全部リモートで、とかその逆とかを考えていたのですが、台本上ずっと交わりあっているのでそこまで区切った形の稽古は(時間的にも)難しいなと思い、大幅なリモート併用(キャスト半分リモートとか)はやめました。稽古場が広かったという理由もあります。今回は最大3名程度のリモート参加でした。
稽古場では当然リモート参加者の声は若干の誤差があって聞こえますが、それはあまり気にならなかったです。なので今後色々使えると思いました。
例えばシーンや出番が分かれているような脚本なら、今日は過去回想チームはリモートで、とか。あとこれ結構あるなと思ったのは、少し体調が悪いけど無理すれば行けるみたいな時って役者さんは無理して来ちゃうことが多いです。なので風邪やインフルエンザ対策とかでも使えそうです。生理痛重い人などにも有効かと。少し体調が悪い時は無理せずリモートで参加はありですね。
今回は通し稽古をリモート中継して、逆サイドのキャストさんやスタッフさんが在宅で稽古見をしました。狭い稽古場で人数多い芝居なら密回避にはとても良いです。
使用したのはzoomで、長時間使うなら有料(無料だと40分まで)です。私は年間2万円のやつに入ってます。

《その他》
あとは食事の時のリスクが高いと思い、食事休憩は皆ソーシャルディスタンスを取って食事しました。みんなでワイワイ話しながらというのができないのは寂しいですけどね。これも皆さん徹底してました。
いわゆる決起集会や打ち上げといった飲み会も開催していません。稽古最終日だったか、初通し稽古の後だったか、みんなで「くう〜ビール飲みてえ!!」って笑ったのも良い思い出です。リモート飲みをやろうかと思ったりもしましたが、リモート疲れしてたので笑、結局やらずじまいでした。本番を終えた打ち上げも10日後を予定しています。

やっぱりめっちゃ長くなったな!!
劇場編は後日にします。
続く。