今年一年振り返り③最後の1フィート

今年一年を振り返っています。
振り返りその③

3月
犀の穴プロデュース
「最後の1フィート〜一篇の映画を巡る3つの物語〜」

よく「キャスティングは松本さんが全部決めてるんですか?」と聞かれることがありますが、劇団公演はほとんど私が決めます。それ以外のプロデュース公演とか外部でお仕事頂く場合は、ほとんど口を出しません。もちろん少しは助言や演出の意向を伝えることもありますが、口を出さないほうが面白いからそうしています。新しい人との出会いにもなりますし、意外なキャスティングで面白くなったり、逆に苦労したり、苦労したからこそまた面白くなったり。

前置きが長くなりました。まさしくこの公演はそういう新しい出会いに溢れた公演でした。蜂巣和紀君と清水凜さん以外はすべて初めてという俳優陣。後に劇シナに出演して頂くこととなる古本新之輔さん、石田太一さんもこの現場で出会いました。

しばらくはマイ脚本お気に入りランキング第一位だったこの物語はどこかで再演したいと思ってたんですよね〜。「北風のアルペジオ」という地味な映画に関わることとなった3組の人々のオムニバス。

映画を急遽宣伝することとなったお笑い芸人達と新人助監督。
映画の撮影許可を巡って、警察の会議室で、フィルムコミッショナーと交通課課長がバチバチ火花を散らす後日譚。
その映画の上映最終日に小さな映画館の映写室で起こった小さな奇跡。

映画に関わってるんだけど、本編の映画の内容はまったく描写せず(会話の中で出てくるだけ)、その断片がそれぞれの人生を照らす的な物語。後に「ふたりカオス」に繋がるような構成ですね。

まあゴリゴリの会話劇ですわ。第2話のフィルムコミッショナーを演じたSetsukoさんはマジてんぱってたなー。凄まじい台詞量なんです。

この物語を語る時必ず言ってるんですが、この第2話が凄く気に入ってるんです。地方都市の祭(どんどんじゃ祭りという名前)の風景を撮影しようと誘致したフィルムコミッショナーが、それを妨害したかのような警察の横柄な態度に激怒するけど、実は警察は撮影クルーを暴走族から守る為に先回りしていたというどんでん返し。女2人のまさに魂のバトルです。Setsukoさんと高宗歩未さんという初めての女優さんと作り上げた苦悩と喜びは記憶に残ってますね。高宗さんよかったなー。

あと久々(というか2度目)の3面舞台にしました。劇シナは2面でしたが、さらに奥に客席がある感じ。ミザンスと呼ばれる立ち位置調整はカオスでした。どの面からも大事なシーンや台詞がストレスなく見えるよう、実はまさにミリ単位で調整しましたね。感情表現が大事な作品でしたが、一方で「凜ちゃん、あと5センチ後ろで泣いて」みたいな。

この作品は私的にはかなりやり切った感があるので、他の演出家さんとかで観る機会ができたら嬉しいなあ。

本番の写真なかった。

次回は
4月「Dプロジェクト上映会〜最終章クリュウ編シーナ編〜」です。

トムコラム