今年一年振り返り⑤アリスインデッドリースクールノクターン

9月

アリスインプロジェクト

「アリスインデッドリースクール ノクターン」

新宿村LIVE

この作品は三度目の演出となりました。アリスインプログレスという冠で映画とアニメと連動するという企画。大変なんだと思いますが面白い企画ですよね。映画のほうは脚本を担当いたしました。だからなんか変な感じがありました。山岸監督はかなり(印象は)舞台版と変えたいと言っていて、それ面白いですねと映画の脚本を書き、その後舞台版の演出をするという。でも、映画撮影を終えたキャスト達はすでにたくましくて、舞台顔合わせの日に、これはすごいことになりそうだ、と自信を持ったものです。なんかタフな感じだった。戦士達が集まったみたいな。

その印象もあってか、かなり戦いのドラマが強くなったかなと思っています。戦いっていうのは外へもそうですが中でも己にも。そのドラマをバシバシ積み上げていったら、もう三度目だから新しいことなんてできないかななんて思ってたのが嘘のようで、どんどん新しい試みや演出をやることが出来ました。一番はやっぱりツイッターの感想で「夢のような地獄」と形容された中塚さん演じる会長が焼却炉に飛び込むシーンですかね。あそこは美しくも儚くも醜くも演出次第でいろんな印象に変わるシーンかなと思います。

そこで私は思いついてしまった。稽古場で中塚さんお休みの日に、相方の静香役の持田さんに、「一緒に絵をイメージしよう、舞台袖に焼却炉があったとして、そこに飛び込んでいく。小さな窓から会長が苦しんでる姿が見えるかも知れない、悲鳴を上げてるかもしれないね」

我ながら言っててしんどいシーンだなと、静香のその後のシーンの心情につながればと思って話していたのですが、

そこで、待てよ、と。「悲鳴?アリかも」

いや、これはきつすぎる演出だ、ガールズ演劇をいよいよ飛び越えていくのか?と、本当に迷いました。演出助手の宇田川さんにも相談したと思います。でも迷った時は行け、倒れるなら前のめり、の精神で入れました。演じてる中塚さんも、それを見届ける持田さんも、しんどかっただろうなあ。

それに代表されるように、栗生さん演じる高森のパニック&追い込みは前回比30パーセント増(笑)。八坂さん演じた氷鏡は八坂さんの怪演にしびれて「行くとこまでマッドサイエンティストになりましょう!氷鏡の為に追加シーンを作ります(柏村にガチで撃たれそうになりユウに助けられる)」とまで言いました。栗野さん演じた舞を生き残らせる設定にしたりと、いやあたくさん演出追加できました。

でもそれは、主人公であるユウとノブ、若林さんと船岡さんのコンビがものすごくよかったからなんです。この物語のテーマのひとつに「笑いと死」があります。この相反するベクトルがこの物語の一番の面白さといってもいい。その笑い部分、言葉を変えれば生(せい)の部分が強く、たくましく、物語の真ん中を貫いたので、私はどんどん死や絶望といった部分を足していったのかも知れません。それくらいこの二人はよかったなあ。

あと実力者が揃ったので、オープニングアクトをほぼ生歌でやるというチャレンジもしました。これは評判よくてよかった。これ、なかなか次もとはいかないんですよねえ。大音量でリードボーカルなしで歌うのはなかなかのチャレンジ。しかも現場で声が聞こえないとなったらすぐに対応できなかったりもします。なので、リードボーカルありとなし、あってもボリューム小さめ、など、音響さんが細かく調整、準備してくれて実現しました。そしてそれにこたえるキャスト陣。あのオープニングの歌声はお客様の心にズシンときたんじゃないかなと思っています。

三度目の演出でしたが今までで一番アグレッシブにやれて、とても楽しい公演でした。映画版はベニシマの「世界の終わりかよ」とか「喜劇だよ」とか、気に入ってる台詞を役者達がワイワイ流行語みたいにしてて面白かったな。

デッドリーは今後もいろいろまだ続いていくんだろうなあ。またどんな形でも関われたら面白いですね。

そうそう、キリコ役の大塚さんのあのキャラとアドリブのツッコミ、好きだったなあ。

トムコラム