今年一年振り返り⑩「劇作家と小説家とシナリオライター」前編

さあいよいよ振り返りラスト!

今年一年振り返り⑩
劇団6番シード結成25周年記念公演第3弾
「劇作家と小説家とシナリオライター」

先日閉幕した1ヶ月ロングラン公演。25周年の締めくくりにかなりの大博打公演でしたが、劇団過去最高動員記録を更新し、大盛況で終えることが出来ました。良い年末です。

この作品は何から語ろうかなー。脚本は最初からチャレンジな作品になるだろうなという予感はありました。タイトルを思いついて(あ、タイトルの評判はすごく良かったですね。タイトルが気になり観に来たという方が多数いましたね)、3人の作家がひとつの物語を作る、それだけじゃつまらないだろうと。あととにかくヒューマンドラマにしたかったんですよね。冒頭で登場人物達が銃を構え「あ、なしです」みたいなことをずっとやっていけばかなりのコメディにすることも出来たと思うのですが、25周年とか、私のこれまでの集大成みたいな意気込みがそうさせたのかなあ。

だから、横軸の作家達のドラマが、縦軸とまったく繋がらない状態でストーリーが進んでいくんですよね。それがチャレンジな部分でもあり、難しいと言われた部分でもあると思います。

他にもいろいろあるとは思いますが、この「難解さ」というのは普段ほとんどやらないので、わかりやすい作家の私のチャレンジはちょうどいい塩梅になったのかなと、感想を読みながら思いました。私はハッピーエンドが好きだし、わかりやすく物語を届けるのを身上としていますが、わかりやすくて難しい、はアリだなと思った次第です。

あと作家達の物語なので、とにかく私小説的にならないようにとは思ってました。松本自己満作品にならないようにと言えばわかりやすいですね。
その心配は杞憂でしたね。まず、ザッツ俺になりそうな劇作家役を土屋にしたこと。そして男中心の劇団、同輩と旗揚げした劇団、熱い物語を書いている、など僕じゃない肉付けをしたら、ホントこの人熱くてかっけーなーみたいに客観視して書けましたね。いろんなところで書いたり言ったりしましたが、土屋はザッツ役者ってやつなので、そういう奴が作家役をある意味研究して役作りしたというのも良かったのではないかと思います。

むしろ私は椎名演じたシナリオライターのほうが近いかなあ。情感型より理詰め型というほうが近いです。そのシナリオライターが宇田川演じるドラマプロデューサーに言われる「時間、なかったのかな。書き直しましょうか」は本当に過去私がドラマプロデューサーさんから言われた台詞です。笑顔でね、優しい口調でね、自分の才能のなさに死にたくなりましたよ笑。本番では慣れましたけど、稽古場でその台詞を聞くたびに胸がキューってなりました。

その直後の「リサーチで終わりたくない、セカンドで終わりたくない、ママがこの物語を作ったって胸張りたい」という台詞も実際にリサーチからシナリオライターになった方のエピソードを使わせて頂きました。だからシナリオライターの台詞にはけっこう実話的な想いがこもってますね。

逆に私は小説を書いたことがほとんどないので、小沢さん演じた小説家のキャラ造形は苦労しましたね。あとまさに活字の世界なので舞台表現としてやりずらい、もありました。
まずはアルバイトしているという設定。小説家に限らずですが、一度ヒットしたから一生食えるというような世界ではありません。まずはそのリアリティを乗っけました。ただキーアイテムとかと同意語になるのですが、キー台詞、みたいなのが欲しいなと思いました。そこで出たのが「きれいな言葉を使いませんか」という台詞。最初はちょっとベタすぎかなあと思ったものです。小説家イコール言葉、って!みたいな。ただお客様の感想でこの台詞に関してのものがすごく多かったですね。炎上とか、SNS時代の言葉の汚なさ、みたいな時代性がアナログな小説家の雰囲気と相まって響いたのかなあと思います。小沢さんにはけっこう細かく演出した記憶が。「ただ上を向いてうなるのは実は作家っぽくないですよ」とか。この作家役の3人には作家あるあるとか、たくさん言いましたね笑。稽古場で実際演じてみせたらまんま普段のお前やんってなって、この時間何?みたいになりました。

宇田川さん演じたドラマプロデューサーもこだわったキャラクターです。皆さんのイメージでドラマプロデューサーって視聴率とかお金とか六本木で飲んでる、みたいなイメージありません?最後のは余計か笑。僕が一緒に仕事したプロデューサーさんは本当に物語ファーストで、それぞれに独自の研究し尽くしたロジックや信念がある方ばかりでした。ジャニーズの誰それを使うからとか、スポンサーがどうとか、そういった台詞は一度も聞いたことがありません。そして物語に関してめちゃくちゃ厳しくてめちゃくちゃ粘ります。もう勘弁してくらい粘ります。それをあのキャラクターに投影してみました。宇田川さんにも「ただ怖いだけのステレオタイプのPにしないで」と演出しました。いいバランスで演じてくれたなと思います。

藤堂演じた編集者も同様ですね。一度漫画の編集者さんと仕事したのですが、その方もDP同様に物語に関してすごい造詣と意思を持ってる方でしたね。

ええと、一番身近なはずの舞台監督のキャラクターは…

あんな人いません笑

全国舞台監督協会に訴えられるレベルに嘘です笑
まさにコメディリリーフというやつ。しかしピンポイントにリリーフしてくれた樋口や、宇田川藤堂の会話など、劇団員がしっかりとキャラクターやシーン意図をやりきってくれたと思います。

うわー長くなった!後編に続く。

トムコラム