今年一年振り返り⑧傭兵ども!砂漠を走れ!

おせちの仕込みをしながら書いています。

今年一年振り返り⑧

6番シード結成25周年記念公演第2弾
「傭兵ども!砂漠を走れ!」

6年前に初演してずっと再演したかった作品。ついにやれましたおまたせしました。今回は劇場を新宿村LIVEに移し、かつ凸型に張出し、客席通路も使い、まさに劇場を丸ごと戦場にしようというコンセプトで演出しました。キャストも劇団員以外は総入れ替えでまさに新しい傭兵どもになったんじゃないかと思います。

今回はアグレッシブに演出した印象的だなあ。初演に出演していた増野君が演出助手に入ってくれたこともあって、僕は稽古場ではほとんど台本を開くこともなく、ずっと立って演出してました。その方が脳が運動脳になるというか、こういう動きの多い芝居には向いてる演出スタイルかも。ただこの時期は今年最大瞬間風速の忙しさで、何本か稽古を掛け持ちしていたので、ある日ズドンと疲労が僕に襲ってきたのを覚えています。
疲れがピークだった時にずっと立って演出していたわし。その時は集中していたので良い稽古ができたなんて思ってたのですが、「お疲れ様でした!」と終わりの挨拶をした瞬間、地球のGが急に変わったみたいに、ズドンと身体が重くなりました。まさに精神と時の部屋?みたいに。その日はキャストが焼肉に行くという話をしていました。こ、これは、肉しかない。肉を食えば治る、と思って焼肉屋に向かうわし。その道すがらで歯がガタガタ震え、体に悪寒が走りまくる。やべー速度で身体に何か来ていると思いながらも、とにかく肉だ!とほうほうの体で焼肉屋へ。いや、帰るべきだと分かってタンですよ。誤植変換だけどそのままでいいや。まさにタンを一切れ食べてギブアップ。家にかえってひたすら汗をかいたら、翌朝には治りました。あれがまさに過労で倒れるというやつかと実感しました。

話逸れすぎた。今回も原案協力・ガンアクション指導の細川伍長と一緒に凄まじいアクションシーンをつくっていきましたが、初演の時から今や日本一のガンアクション女優となった宇田川(私は本気でそう思っている)を始め、小川大悟君などガンアクションエキスパートがいたので、ガンアクション指導よりは、どうやってさらにダイナミックにみせるかということをずっと考えていたように思います。すごく逆説的な考えですが、その悩みを解決したのが「圧倒的なリアリティを積み上げる」ということでした。初演以上に嘘のない動き、ケレン味を狙わない演出を心がけました。オープニングアクトで派手に動いていますが、すべて細川伍長から教わった動きのみを組み合わせたもの。結果それが一番ダイナミックで迫力ある画になったんですよね〜。そんなリアリティを演者が積み上げる為に、本編では出てこない兵隊の行進練習とかもやりました。

役者さんではサバンナ編では鵜飼主水君が印象に残ってますね。元々華のある芝居をする人だなと思ってましたが、その誠実さというか姿勢というか、まさに良き若武者って感じでしたね。主水君演じるタフガイが伍長とぶつかり合うシーンは、主水タフガイの伍長愛が言外にあふれ出ていたので、元の台本の台詞のニュアンスを変えたり(いい意味ですよ)しました。

オアシス編では、ガクレキを演じた那海さんかな。不思議な佇まいの強さがあった。ゴクツマの小玉さんもよかったな。両バージョンともまさに屈強なメンツが集まってくれたなあと。あと中舘さんの青年海外協力隊リアリティが大好きだった笑

その中で劇団員がしっかりと光った公演だったと思います。サバンナ編では土屋伍長は初演から存在感が大きく変わったと思うし、藤堂には出逢った頃以来くらい厳しい演出をつけ、そしてそれに食らいついてました。
オアシスの宇田川伍長は言うまでもなく、特筆したいのは椎名の存在感の強さでした。私は彼女の芝居の今年ナンバーワンをあげたいかな。それくらいよかった。繊細な感情がダイナミックだった。

ゲリラ隊と呼ばれた若手の面々も頑張ってくれたな。毎度毎度思うことですが、こうやってたくさんの人たちのたくさんの作品の愛で、素敵な座組、公演になっていくのです。

「千葉と埼玉は喧嘩なんかしない」
やっぱり最後の伍長の演説はいいよね。あんなので世界が平和になれば越したことはありませんが、初演の時よりきっと観客はこの物語を身近に、肌触りのあるものとして感じられたんじゃないかと思います。それは世界の状況ですね。中盤の戦闘を終えた後の中舘さん、藤代君には「君の反応が観客の目線だよ」なんて話しました。

戦争のない世界でありますように。

トムコラム