高橋明日香×松本陽一(3)
「終わったな」って思った
- 松本
- それからちょっとして、ウチの劇団の『関ケ原でダンス』に出てもらったんですよね。
- 高橋
- そうですね。わりとほどなくですね。
- 松本
- たぶん『デッドリースクール』で、ちょっと、お!って思ったからなんですよね。
- 高橋
- いや、ほんっとにありがたくて。『デッドリースクール』で私はすごい端っこの役でやってたのに、劇団の公演に呼んでくれるっていうのは信じられなくて。
- 松本
- はいはい。
- 高橋
- そんなに上手く出来た自負もないし。
で、その後6番シードさんの『ドライビングエンゼルフィッシュ』を東京芸術劇場に観に行かせてもらって。
- 松本
- え、時系列は?
- 高橋
- あれ『デッドリースクール』の前かな?
- 松本
- 前じゃないですか?
- 高橋
- 前か。そうか。
『デッドリースクール』の演出を6番シードの演出の方がやるって聞いて、 鈴木さんと観に行ったんですよ。
「この人だよ」みたいな。
- 松本
- 決まった後に。
- 高橋
- ええ。それを観た時に、マジで圧倒されたんですよ。あぁぁぁー、って。
- 松本
- あれはねぇ、すごい赤字だったんですよ(笑)。
- 高橋
- (爆笑)。そうなんだ(笑)。
- 松本
- 大セットが回るし動くし出るし、ってすごかったんですよ。
- 高橋
- そう。すごかったんですよ。
- 松本
- 飛び出す絵本みたいなことをしたんで。
- 高橋
- そう、そう、そう。
- 松本
- あの後、存続の危機レベルの赤字が出ましたね(笑)。
- 高橋
- (笑)。私にはすごい衝撃で。
あと、私が全力の大きい声って思って出してた声より10倍以上の圧が来て、人間ってこんなに大きい声出るもんなんだって。それだけでもう圧倒されて。ものすごい劇団だっていう印象だったんですよ。
だから、本公演の『関ケ原でダンス』に呼んでもらった時に、 「大丈夫ですか…」みたいな状態だった(笑)。
- 松本
- めちゃめちゃ固かったですねー。今だから笑って話せますけど、ほんとにATフィールド っていうか、殻を閉ざしてましたよね(笑)。
- 高橋
- 閉ざしてました(笑)。
- 松本
- あの、これがまた歴史が似てる面白さなんですけど、劇団でそういういわゆるアイドル的な人とか、タレント事務所の人と、あんまりやってきてなかったので、ほぼ初めてなんですよ。
なので、劇団のみんなもちょっと「なんかアイドルみたいなやつが来るらしいぞ」って(笑)。
- 高橋
- ざわざわと(笑)。
- 松本
- で、あすぴーもガチガチになってて、なんかものすごい壁を感じたよね(笑)。
- 高橋
- なじめなかったですねー(笑)。
- 松本
- で、またその共演相手が樋口 で。
- 高橋
- (笑)。
- 松本
- もともとコミュニケーションしないやつじゃないですか。
- 高橋
- うん、うん、うん。
- 松本
- 樋口との歴史も長くて面白いですね。
- 高橋
- そうですね。
- 松本
- こないだのDプロ といい。
- 高橋
- ほんとに。面白いですね。出会いが夫婦役だったという。
- 松本
- だから、結構ハラハラしながらやってた。人数が多い舞台だったから。
- 高橋
- 多かったですね。私もこれでヘマしちゃいけない、っていうのがあって、必死でやってたけど、その分周りも全然見えてなくて。
- 松本
- さっき言ってたように、あの中に入ると声小っちゃいなって感じて、「もっと大きく」とか、色々やってましたよね?
- 高橋
- やってました。「足りねえなあ」ってずっと言われてて。
- 松本
- なので『関ケ原でダンス』が終わって、ほんと正直に、こういう“殻”感もあったから、やっぱ劇団でこういう子を呼ぶのは難しいのかな、って感じて「もう高橋さん呼ばないかも」っていう話を劇団員にした覚えがあります。
- 高橋
- (笑)。そうですよねー。
- 松本
- だから、結構いい出会いをしたけど、そこで一回途切れたわけですよね。
- 高橋
- そう、落ちましたよね。途切れた。私も「終わったな」って思いました(笑)。
- 松本
- (笑)。
『関ケ原でダンス』(2011年)
ダブルキャストから主役へ
- 松本
- で、その後、『まなつの銀河』 の初演で会って、久しぶりですね、みたいな。
- 高橋
- はい。
- 松本
- その間も結構舞台には出てましたよね?
- 高橋
- はい、何個か出てましたね。
- 松本
- 活躍してるなあ、っていうのはなんとなく知ってて。
で、こんな話ばっかりしてもあれなんですけど、『まなつ』に来たときも、まだダブルキャストだったんですよね。
- 高橋
- ダブルキャストでした。
- 松本
- ほんと、結構キャリアも積んで、芝居も上手いと思うし、そういう意味ではもうちょっと上の役を、って思ったら、「あ、まだなんだ」って。
- 高橋
- そうなんです。厳しかったんですよね。「シングルは無理です」ってずっと言われてて。
- 松本
- で、昔はどうだったか知らないんであれなんですけど、ちょうど高橋さんが歩んできた道が、今の演劇界の変化の時期に合ってるんじゃないかと思ったんですよ。
- 高橋
- へぇー。
- 松本
- その時はまだダブルキャストで、最終的にはアリスインプロジェクトの主演まで行ったじゃないですか。
- 高橋
- 行きましたね。
- 松本
- 今は、なんかそういう道ができてる感じがするんですよ。アリスインプロジェクトに限らず。
- 高橋
- はい。
- 松本
- 例えばアイドル演劇って言われるところでも、知名度頼りでキャスティングされて、その枠からずっと変わらなかったのが『まなつの銀河』のその時かな、って僕は今思うんですけど。
そこから実力だったり、舞台をやることでファンの人を増やしたり、知名度を上げたりして、どんどん上に行っている人、例えば宮島小百合さんとかもそうですけど。
- 高橋
- あー、そうですね。
- 松本
- そういう人たちの、ある意味先駆けだったんじゃないかな、とは思いますね。
- 高橋
- ほぉー。ほんとにコツコツとしかできなかったから。
- 松本
- だから今でも、アリスインプロジェクトの演出とかやるときに、名前は出さないんですけど、あ、でも対談で言ったらあれだね…(笑)。
- 高橋
- アハハハ、出ちゃった(笑)。
- 松本
- ダブルキャストの子たちに、「率先して代役をやったり、いっぱい勉強して作品を良くするために頑張っていったら、ダブルがシングルに、シングルが準主役だったり主役になった人を僕は知ってるよ」って。
- 高橋
- おぉ、ヤバ!伝説の人じゃないですか(笑)。
- 松本
- 伝説の人扱いで。
- 高橋
- ヤバ(笑)。嬉しい。
- 松本
- だから、鶴田さん とかは、知ってるから「あすぴーのこと話してるんだろうな」って分かると思いますけど。ちょいちょい話してます。
- 高橋
- やー、ありがたいですね。
(つづく)