高橋明日香×松本陽一(5)
私こんなんじゃいい芝居できません!
- 松本
- そのあたりから、相当忙しく舞台をやるようになったんですよね。
- 高橋
- あ、そうです。ほぼ毎月、ずーっと出てましたね。2年から3年間ぐらい。
- 松本
- 3年間、月1で。どうですか、その忙しさは。
- 高橋
- なんか、最初はどんどん決まって、周りも「おー、すごいな」みたいな感じになってくれて、私も必死に追いつくって感じだったんですよ、時の流れに(笑)。
- 松本
- ひとつひとつを、っていう。
- 高橋
- そうなんです。
そのうち、何がいいのかとか、何が面白いのかとかわかんなくなってきて。そういう低迷時期があったんですよ。
- 松本
- キャリアを重ねたからこその壁だ。
- 高橋
- 褒められたりもするけど、自分的には全然納得いってなかったりとか。
あと、また同じことしてるな、っていうのがあって、私自身が全然成長してない、って思っちゃったんですよ。
- 松本
- 自分自身が?
- 高橋
- ええ。
それで、マネージャーさんと大きいケンカをした気がします。その時期ぐらいに。
- 松本
- それ、詳しく聞いていいですか。
- 高橋
- なんかもう、時の流れについていけなくなっちゃったんです。
2週間おきに本番、みたいなときがあって。台本を常に2、3冊持ってて。
- 松本
- 稽古は時にかけもちで。
- 高橋
- そう。両方行くみたいな。
- 松本
- そうなりますね。
- 高橋
- その頃まだ実家通いなんですよ。なので1時間半以上かけて通ってて。
- 松本
- あー、小田原ですよね。
- 高橋
- はい。もうそれで、頭おかしくなっちゃって。
常に何かに追われている感じが。時間が足りない。休みもない。
- 松本
- 単純に忙しさと疲労があるでしょうね。
- 高橋
- 「私こんなんじゃいい芝居できません!」
- 松本
- アハハハハ!
- 高橋
- 泣きながら電話で「休みをください…」って(爆笑)。
- 松本
- (爆笑)。へえー。
- 高橋
「忙しい人たちってこんなもんじゃないんだよ」みたいな話をされて。「売れたらこんなもんじゃないよ、忙しいっていうのは。」って。
困ってて。休みくださいとか言われるの初めてだからなあ、って。
- 松本
- まあね。
- 高橋
- そんなこと言われたら、私何も言えないけど。「売れてないくせに忙しいとか言ってすいません」って(笑)。
- 松本
- (笑)。
- 高橋
- そう思うけど、「ただ、すべて納得いかないんです最近。ただこなして終わる。その状況が私今もう耐えられないです。」って。
- 松本
- ちょうどその頃かな。『セブンフレンズセブンミニッツ』 で。
- 高橋
- はいはい、『ナナフレ』ですね。
- 松本
- かなり遅れて合流で。でも高橋さんなら一緒にやってきたから、2週間とかでも大丈夫か、と思ってたら、合流して2日後に過労で倒れて(笑)。
- 高橋
- そう(笑)!そうです。
- 松本
- 鉄人あすぴーもついに来たか、みたいな(笑)。
- 高橋
- 私もびっくりしました。その頃あんまり疲れてるっていう意識がなかったんですよ、自分の中では。
でも、支度してたら急にお腹痛くなって。その後吐き気がして、ずっと吐いてて。診てもらったら、過労ですね、みたいな感じで。急性胃腸炎だったかな。白血球がめちゃめちゃ増えてて、このまま無理したらたぶんまた倒れますよって言われて。あわわわわ、ってなって(笑)。ヤバい、ヤバい、って(笑)。
ウチのお母さんも、休んだ方がいいってその頃毎日言ってたから、「だから言ったじゃない!」って言われたり。その頃初めていろんな仕事をキャンセルしました。それで、体調管理っていうか、自分の体は自分が一番分かってるんだからちゃんとコントロールしなきゃいけないんだなって思って。
- 松本
- そうですね。難しいところですよね。
忙しさと、仕事のクオリティと、自分のメンタリティと、みたいな。でもそういう経験するとタフになりますよね。
- 高橋
- なりますね。
- 松本
- 僕もしんどい時期を越えると、どんなにしんどさが来ても大丈夫に思えて。
- 高橋
- あれを乗り越えられたから(笑)。
- 松本
- そう。それはそれでアレなのかもしれないけど(笑)。
松本さんがすごい優しかった
- 高橋
- その頃、多分アリスインアリスの活動が重なって、忙しかったんですよね。
- 松本
- そうですよね。
- 高橋
- 松本さんがすごい優しかったのを覚えてます。
- 松本
- 現場ででしょ?
- 高橋
- そう、現場で。めっちゃ体調を気遣ってくれて。
- 松本
- 本番中に、マチネとソワレの間にアリスインアリスのライブがあるっていう日があって…
- 高橋
- 無料ライブがね。
- 松本
- ただでさえ過労で倒れて、急ピッチで仕上げて、2時間出ずっぱりの作品だったから。
- 高橋
- なんかすっごい疲れる舞台でしたね。
- 松本
- あれ、すごい疲れますよね。ちょっとピンポイントで出てくるような舞台だったら良かったんだけど、みんな出ずっぱりで7分間をずっと繰り返すっていう…
- 高橋
- すっごい舞台でしたね。
- 松本
- まぁ、僕の脚本らしいハードさだったんで、アリスインアリスのライブの日は、マネージャーみたいになってましたね。
- 高橋
- アハハッ(笑)。
- 松本
- 取材は何分までで、これで楽屋に上がらせて休憩取らせますから!って。ちょっと半ギレで、「客出し遅くないすかー!?」みたいな(笑)。「言ってた時間と違いますよ!」って。
- 高橋
- あはは(笑)。
- 松本
- で、楽屋に上がって、次の開演前くらいに遅れて弁当食ってたんですよね。
- 高橋
- はい。
- 松本
- けっこうな顔で弁当食ってたんで、「大丈夫?」って声掛けた記憶があります。あ、「お疲れ〜」って言ったのかな。そしたら、「そう、お疲れです」って顔をしてましたね(笑)。
- 高橋
- 冗談でも返せない感じだったんですよね(笑)。
- 松本
- それは覚えてますね。
- 高橋
- いろんな人がマッサージとかしてくれて。その頃、梅ちゃん とすごい仲良くなったんですよね。同い年っていうのもあって。うちらけっこう歳を食っちゃったから疲れてるのかな?みたいな話になったんです。わりと座組で上の方、一番上だったのかな?それで、「頑張ろう、同い年同士」って強い絆が生まれて、今でも仲良くしてるんですけど。ほんと、そこが始まりでした。
- 松本
- あれ、梅田さんも大変な役で、最後の最後に間違えたんだ(笑)。
- 高橋
- (笑)。噛むし、間違えるし、みたいな感じだった。
- 松本
- 7分間ループして、全部セリフが変わっていくから間違えないようにってみんな袖で台本持ってたぐらいで。
- 高橋
- そうそうそうそう!
- 松本
- 千秋楽で、2つ前のループのセリフを言い始めて、初舞台の子に修正されるっていう。
- 高橋
- あはははは(笑)。そうでしたねー。
- 松本
- そっかー。あの頃、ちょうど忙しい時期だったんですね。
- 高橋
- アリスインアリスが軌道に乗り始めた時だったので…
(つづく)