高橋明日香×松本陽一(9)
滅多なことって起きるんだな
- 松本
- あ、そういえば『傭兵ども』って、近々再演したいんですよ。
- 高橋
- えっ、そうなんですか!
- 松本
- だからまたやりましょう。
- 高橋
- はっ !ガクレキっ!
- 松本
- そ、ガクレキ。
- 高橋
- 今度は、男女交ぜますか?また分かれますか?
- 松本
- また分かれて、シャッフル公演やってもいいかな。
- 高橋
- シャッフル公演面白かったですね〜。
- 松本
- 来年25周年なので、劇場が良いとこ取れれば。
- 高橋
- 面白かったですね、あれ。一ヶ月間公演やってましたからね。
- 松本
- そうだよね。
- 高橋
- すごい覚えてます。一週間半くらいやったところで、終わんないな、って思って(笑)。
- 松本
- 長かったね〜。
- 高橋
- そう、何かを超えますよね。精神的な何かを。
- 松本
- 普通の生活の一部だった。36ステージあったはずで、さすがに僕も32ステージ目ぐらいで飽きたんですけど、
- 高橋
- あ、飽きたんだ(笑)
- 松本
- よく持ったと思いました。
- 高橋
- そうですね、32ステージよく持ちましたね。
- 松本
- 持った、持った。
- 高橋
- 稽古含めると、相当な量を見てるじゃないですか。
- 松本
- たぶん刺激が強かった…周りに危険も多かったので。そういう意味で、袖幕開いたらすぐに銃持って入ってとか、ずっと安心できなかった。
- 高橋
- ありましたもんね、ハプニングも。
- 松本
- そうそう、幕が開いたらジープが居ない(笑)。
- 高橋
- 舞台上に誰も居ない(笑)。焦ったな〜。
- 松本
- ちょうど油断し始める頃にそれがあって。やっぱり、舞台って大変だ…って。
- 高橋
- 舞台って本当いろいろありますね。
- 松本
- 何か強いハプニングってありましたか?
- 高橋
- 公演中止になったのが…一番強いですかね…。
- 松本
- ボク団さんの『今だけが 戻らない』の初日ですよね。
- 高橋
- そうです。びっっっくりしましたね。こんなことあるんだ…って。それを目の当たりにした時、やっぱりショックが大きくて。作り上げてきたものをお客さんに最後まで見せられないことってこんなにショックなんだ、っていうのを感じたので。
- 松本
- 初めてですか?公演中止って。
- 高橋
- 初めてでした。泣きましたね、思わず。
- 松本
- 僕はかろうじてまだ経験してないんですよ。ちょっと中断とか開演が遅れるとかはあっても、ステージを飛ばしたことはまだ無いので。
- 高橋
- そうなんですよ、滅多なことが無い限り、公演って中止にならないって思ってたけど、滅多なことって起きるんだなって。
- 松本
- 最近多いよね。
- 高橋
- 多いです。
- 松本
- その時期本当に様々な形で公演中止のお知らせを見聞きして、その頃今年の1月にやった『真・まなつ』 の公演があったんです。もう、インフルエンザだの、ノロだの、怪我だのって、予防策は徹底的にやりましたよね。人の行動で防げるものは。
- 高橋
- 私は、その次にやったシザーブリッツの公演でも、暗転しないっていうトラブルがあって。
- 松本
- それしんどいね。
- 高橋
- 私、最初が暗転板付きM0 が流れるじゃないですか、バーって。でも暗転しなくて。M0のレべルもガンガンに上がってるんですよ。でも、ずっと照明が点いてて、これは出るべきで、そのまま気にせず続けるべきなのか…?って判断が全然分からなくて。ひたすら袖で待ってました。その時は照明トラブルで何も機能しなくなっちゃってて一回シャットダウンしたら復活したんですけど。 だったんです。
- 松本
- その時は出なくて正解だったってこと?
- 高橋
- 出なくて正解でした。
- 松本
- 僕は、昨年9月にやった公演 で、音響トラブルで機材が止まっちゃったんです。音が出るべき所で出なくって。開始から15分くらいだったんですけど、音があってみんなが軽いアクトをして、次のシーンに行くっていう流れだったんですが音が出なくて。栗生のシーンだったかな…音が出ないけどどうした!?って袖がざわっとしてた。前のシーンから舞台上に残ってた藤堂と上田も、音がないと芝居続けられないシーンなんですよ。余命宣告をされるところだったんで。
- 高橋
- クソ重いシーンじゃないですか。
- 松本
- そう、クソ重い。で、どうする?ってなって、宇田川が袖で「出ちゃダメだ。出たら芝居が続くから、その後音が流れなかったら、このまま続けたほうが事故になる。」って判断して。最後にビートルズの曲が流れる演出がメインにあった作品だったから。それで、みんな出ないで舞台を中断したの。それもシャットダウンしたら、復旧したんですけど。
- 高橋
- はぁーーーーー 。その判断って、本当に経験というか、この後も冷静に考えられるかどうかですよね。
- 松本
- 基本的に役者は、芝居を止めるなって言われてるからね。
- 高橋
- そうなんですよ。
- 松本
- そういう風に日頃からやってるからね。話戻るけど、その時のトラブルも出なくて正解だったんだね。
- 高橋
- そう、出たら明かりが何にも変わらないまま、続くことになっちゃうんで。
- 松本
- 怖いねー、舞台って。
- 高橋
- その時は、音響さんに任せる!って思いましたね。M0がフェードアウトして始まる雰囲気だったら、もう出よう!って決めて。
- 松本
- そういうことね。その時は、M0は音量レベルが高いままだったの?
- 高橋
- わりと。1分間くらい、高いままで。さすがに、もうおかしいな?ってなって落ちて、客入れの曲に戻って流し続けてました。その間に袖回って、今のトラブル何ですかね?って確認して。トラブルって起きるんだなぁ…。
どんな現場も無駄にはしたくない
- 松本
- トラブルもそうだけど、やっぱりこれだけ舞台やってると渋い現場もあるでしょ。
- 高橋
- フフフ(笑)。ありますね。
- 松本
- 正直、脚本がつまらないとか…。
- 高橋
- はい〜、…あっ(笑)。
- 松本
- いや、そりゃあるでしょ(笑)。
- 高橋
- ありますね。
- 松本
- そういう時って…もちろんそれと相反してお客さんがすごく良かったって場合もあるんだけど…、きっとお客さんもそれを感じるというか。ありません?そういう経験。
- 高橋
- ま、こういう反応だろうな、みたいな(笑)。
- 松本
- で、やっぱりそういう反応が返ってくる。
- 高橋
- (笑)。
- 松本
- でも役者さんは難しいですよね。もちろん、作品を選んだり、こういうのをやりたい…例えば四人芝居をやりたいとかって思う事はあるにせよ、とはいえ当たり外れもありますから。例えば「松本さんの作品は良い!」って思って出てくれても、百発百中じゃないですからね(笑)。それは役者さんの難しいところ。
- 高橋
- そうですね、やってみなきゃ分からないですからね。
- 松本
- ちなみにそういう渋い現場の時って、どうします?
- 高橋
- あはは、ツッコみますね(笑)。渋い現場の時…、うーん、どうするのかなぁ。無駄にはしたくないんですよ、時間を。
- 松本
- 絶対そうでしょ、役者さんって。
- 高橋
- 例え脚本がつまらなかったとしても、私は私なりに役を追求してやりたいっていうか。
- 松本
- きっとね、役者さん、みんなそうなんですよね。終わった後で、現場が大変だったとか渋かったとか脚本が〜とか、飲み会で愚痴レベルで話をすることがあったとしても、やっている時はやっぱりこの作品を良くしたい!っていう一番先頭に立ってるんですよ。
- 高橋
- 見に来て下さるお客様がいるから、中途半端なものを見せるのは一番良くないじゃないですか。自分が中途半端に思いながらやるっていうのも一番良くないので…
- 松本
- そうですよね。
- 高橋
- やるなら、私はこれを伝えたい!っていうのをバッて出すしかないというか。それに集中しちゃいますね。もし現場が嫌だなって思ったら。
(つづく)