細川博司×扇田賢×佐藤修幸×松本陽一 前編(2)
「おかん、俺、劇団入るから大学辞めるわ」
- 細川
- じゃあ、僕。僕は演劇始めたのが22歳から23歳の時期なんですよ。
大阪芸大 に行ってたんですけど、ずっと遊んでて全く単位が足りなかったんですよ。
俺、高校まではハトみたいに学校行ってたんですけどね。
- 扇田
- どういうことですか、ハトって。
- 一同
- (笑)
- 細川
- もう毎日、決まった時間に行って、帰って。
- 佐藤
- ああ、伝書鳩みたいに。
- 細川
- そう。ハトみたいに真面目に行ってたんですけど、大学に入って一人暮らし始めてから、急にウェーイってなって、全然授業行かなくて遊んでばっかりいたんですよ。
- 佐藤
- 大学デビュー的な。
- 細川
- そう。映像学科やったんで、一応映画の勉強とかしてたんですけど、4年経ったときに全然単位が取れてないんですよ。
もちろん全然卒業できなくて。5年目の授業を組みなさいって言われて、5年目の授業を組んだらキツキツなんですよ。もう土曜日までキツキツなんですよ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 細川
- こんなん無理やわー、と思ったときに、1年の時に寮で一緒やった友達が「細川、オレ劇団始めたんやけどさあ、入らへん?」って。
- 佐藤
- へぇー。
- 細川
- 言われて入ったのがきっかけなんです。だから大学の4年目。それで俺…、これ自分でも笑ろてまうぐらいクズエピソードなんですけど、親に「おかん、俺、劇団入るから大学辞めるわ」いうたんですよ。
- 扇田
- ほぉ。
- 細川
- そんときから親は俺になんも言わなくなったんですけど(笑)。
- 佐藤
- へえー、言わないんですか。
- 細川
- こいつマジでガチであかんやつや、ってなったんでしょうね。
「ああそうか」言うて。もう好きにしたらみたいな感じになって、それでだいぶ好きに生きてるんですけど(笑)。
- 一同
- (笑)
- 細川
- まあ、入った当初は、僕お芝居を全然見てなくて。
大阪のシアターシンクタンク万化っていう劇団だったんですけど、すごいちっちゃい劇場にそこの芝居を観に行ったんですよ。席も座布団だったから「マジで?」「お金払ろて座布団座るんや」みたいな感じだったんですよ。観たら面白かったんですけど、そこで使ってる音楽が聴いたことのあるアニメの音楽ばっかやったんですよ。せっかくええ芝居してんのにカッコ悪っ、と思って、こういうのはやめさせようと。
- 佐藤
- うん。
- 細川
- あと、チラシもなんか抽象的なデザインで、今思うと第三舞台さん とかの人気劇団が、劇団のネームバリューだけで客が来るから、抽象的なチラシやったんですよ。色彩構成だけ、みたいな。
- 扇田
- あー、はいはい。
- 細川
- それを、全然売れてへん若い奴らが真似しよったわけですよ。
それは違う、チラシはもっと映画のチラシみたいに分かりやすくせなあかん、みたいなことを言いたくて、「分かった、俺入る」ってなったんですよ。
- 佐藤
- あー、なるほどね。
- 細川
- 入ったら、その劇団がプロジェクターで映像を流してたので、その映像を作ってくれ、って言われて。
- 佐藤
- うんうん。
- 細川
- 指示が無いんで、特撮みたいなことをやって、ミニチュアのビル作って、くるくる回して、前でこうやってデロリアン飛ばして…。そんな映像とかをHi8 で撮って。
- 扇田
- あー、当時、Hi8ありましたね。
- 松本
- 懐かしい(笑)。
- 細川
- 客席の真ん中に家庭用のプロジェクターを置いて、そこにカメラをつないで、カメラを操作しながら、プロジェクターのふたをパカーッと開けて、映像が終わったら、パカーッと閉めて。
- 佐藤
- はいはいはい。
- 細川
- そういうのをやってたんですけど、それだけだと割とヒマで。でも稽古場に行きたかったんですよね。劇団の女の子とも仲良くなりたかったし(笑)。
ものすごい、下心を丸出しで稽古場で見てたら、演出家が…、まぁ友達なんですけど、役者になんか言うてるんですよ。「そこ、もっとこう」とか。
- 佐藤
- そりゃ言うでしょ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 細川
- でもそれも、舞台と縁が無かった人間からすると、
- 佐藤
- 新鮮だったんですね。
- 細川
- 映画は撮ってたけど、映画ってあんまり役者の演技に対して、深く言わない。「ここ見て」とか「目線はここ」とか「このタイミングでこう行って」とか、指示は出すけど、「この芝居は…」とか「この場面は…」とか、
- 扇田
- 根本的な話はしないですよね。
- 細川
- そうそうそうそう。
だから、劇団で「ここの気持ちはこうで」とか言ってるのを見て、「すげえ!そんなん言うんや」みたいな、っていうか演技にそんな方法論があるんやみたいなのが。
- 佐藤
- メソッドが。
- 細川
- それで面白いと思ったから、演出家の言葉をノートに書いてたんですよ。
そしたら、役者が「細川さん、さっき僕なんて言われてました?」って 。
- 一同
- (笑)
- 細川
- 「ああ、お前こう言われてたで」って言ってるうちに、だんだんノートがなくなってって、「うん、お前はこうや」って。
- 佐藤
- 進化の過程みたいですごい(笑)。
- 松本
- 自然と演出ノートがなくなっていって、まもなく演出に。
- 細川
- それで「次は2本立ての公演をやるから、細川1本演出して」って言われたのが演出家のデビューだったんですよ。
- 佐藤
- 脚本は?
- 細川
- 脚本はもう一人の演出家が書いたのをもらってやったんです。その時の主演俳優がが小松利昌 さんって名前の、最近『シン・ゴジラ』や『仮面ライダーアマゾンズ』に出てる役者さんなんですよ。
- 佐藤
- へぇー。
- 細川
- 話、長なりましたけど、それが始まりです。
裏方のつもりが役者に
- 松本
- でも、好きだったんでしょうね。稽古場に行くのが楽しいとか。ちょっと近いものがある気がしますね、僕も。
- 細川
- うん。
- 松本
- じゃあ、僕行っちゃっていいっすか?
僕も映画学校に入ったんですけど、そこで自主映画を撮るときに、学校の近くに女優がいるらしいっていうんで、出てもらったんですよ。それが今の6番シードに最初の頃にいたメンバーだったんですけど。出てもらったお返しになんでもやりますって、その方の舞台を手伝いに行くことにしたんです。僕が22、23の時ですね。当然、裏方の手伝いだと思って行ったら、ほんとにちっちゃい劇団だったんで、役者いないから出てくれって言われて。まあ、なんかの勉強だと思って読み合わせ で読んだんですよ。当然へたくそで。これ本当ですよ、全然脚色してないですよ。いきなり読まされて、すごいダメ出しがきて「なんだよ、これ!」と思って。そしたら役者の座長さんみたいな人が「松本君、たぶん役者は無理だと思うけど、手伝ってくれ」っていうから(笑)。
- 一同
- (爆笑)
- 佐藤
- 知らねえっすよね、そんなこと。
- 松本
- そりゃそうだろ、と思って。
ただその女優さんに恩があったから、「いや当然ですよ。やります」って言ったし、物語を創るっていう刺激があったんで、僕もやっぱり稽古場に行きたかったんですよ。
- 細川
- うん。
- 松本
- でも、また行ったら、また読まされたんですよ。
つまり、その役のキャスティングが決まらなかったんですね。また読ますんか!というターンを何回かやってるとだんだん目覚めてしまって、悔しくなってきて。
- 扇田
- うん。
- 松本
- とにかくこの文句言ってるおじさんをなんとかしたい。
- 一同
- (笑)
- 松本
- バイトが終わった夜中に近所の浄水所に行って一人で長ゼリフの練習したりして。
- 佐藤
- ほー。
- 松本
- やったら、「良くなったね。」って言われて(笑)。
- 一同
- (笑)
- 松本
- そのまま初舞台。
- 細川
- へぇー。
- 扇田
- そっからどう演出に変わったんですか?
- 松本
- もともと演出とか脚本をやりたかったんです。でもちっちゃい劇団だったんで、ちょっとでも大きくしたいから、しばらく制作業務をやって、だいぶお客さんが増えたころに、じゃあそろそろやりたいですって言って、演出と脚本をやらせてもらったっていういきさつです。
- 扇田
- それは、6番シードの前ですか?
- 松本
- いや、6番シードです。
- 扇田
- あ、6番シードなんだ。
- 松本
- だから、前の代表の話ですね。
- 佐藤
- オリジナルメンバーが今いないんですよね?6番シードさんって。
- 松本
- いないです。僕が一番古いですけど、僕も旗揚げメンバーではないので。
- 佐藤
- すごい劇団ですよね。
- 細川
- すごいっすよね。
- 松本
- 4年目ぐらいですかね、僕が入ったのは。
全代替わりしてるんですよ。
- 細川
- 2代目なんですよね?
- 松本
- そういうことですね、代表でいうと。
- 扇田
- すごいですよね。代表が変わるって結構なことですよね。
- 佐藤
- ねえ。
(つづく)