細川博司×扇田賢×佐藤修幸×松本陽一 前編(4)
演劇人口を削っているのは?
- 松本
- 僕も細川さんも割と巻き込まれ型でスタートしてますね。
- 細川
- 巻き込まれ型ですね。そもそも、自分がお芝居に関わると思ってなかった。
- 松本
- ちなみに僕は、舞台を見たことなかったですよ。
- 細川
- 俺もそう。
- 扇田
- 僕も一回もない。
- 佐藤
- えー!?
- 松本
- 子ども劇場みたいなのしかないですよ。
- 佐藤
- ああ、デパートの屋上でやってるショーみたいな。
- 細川
- なんやったら、高校の演劇部の舞台とかが、なんか痛くて。
- 佐藤
- 分かります。あと、芸術鑑賞会とかで、つまんない芝居を見させるのはやめたほうがいい。
- 細川
- なんやちょっと、思想の入ったような内容のやつね。あれは良くないですよね。
- 佐藤
- あれで、演劇人口が絶対削られてる。
- 細川
- 削られてますよね。
- 松本
- 僕、『注文の多い料理店』を5回ぐらい見ましたよ。
- 一同
- (笑)
- 佐藤
- 『注文の多い料理店』は面白いからいいじゃないですか。
- 松本
- まあ面白かったですけどね。
- 佐藤
- そうじゃなくて、なんか思想の入ったやつを見させられるとね。
- 細川
- 最後に急におじさんが出てきて「戦争とは……」って語り出すみたいな。
- 佐藤
- そうそうそう! 分かりますけど。
- 細川
- わかるけど、「それなんとかなんない?お客さんに向かって前で喋るのやめて~!」みたいな。
- 扇田
- そうですよね。俺も最初『ウエストサイドストーリー』を見た時に、「何で歌ってんの?」「キモッ、こいつら!」って思ったんですよ。
- 一同
- (笑)
- 佐藤
- 時代が違うから受け入れがたいんですよね。
- 扇田
- そんなもんですよね~。
- 佐藤
- あの芸術鑑賞会はちょっと変えた方が良いわ…。偉い人、何とかしてくんないかな~。
- 扇田
- いやいやいやいや(笑)。
細川スタイルの場面転換
- 細川
- 僕は演劇の勉強なんかせずに、横で聞いてて「こうせい、ああせい」ってやってきたし、脚本も映画の脚本しか勉強してなかったから、未だに演劇の脚本の書き方をよく分かってないんですよ。
未だに映画の脚本でやって、それを無理やり演劇にしてるんですよ。
- 扇田
- あー、なるほどね。
- 細川
- そしたらそれを面白がられて。
- 佐藤
- 個性になった。
- 細川
- そうそうそう。場面転換どうすんのやろ?って後から考えるんです。
こんなんできるわけないやん。じゃあ、転換も見せたれ!それもかっこよくしたれ!ってなったのが今の形。
- 佐藤
- あ~、なるほど。
- 扇田
- それが今の細川スタイルに 。
- 松本
- 細川さんの転換はかっこいいですよね。
- 扇田
- かっこいい、かっこいい。
- 細川
- 嬉しいですね。
- 松本
- 話変わりますけど、いつかどこかで言おうと思ってたことがあるんです。
細川さんの転換って、最初からビシッと決まって超かっこいいなって思うんですけど、必ず一時間半ぐらいでちょっと苦しくなる時間ってありません?
- 細川
- 苦しくなるってのは?
- 松本
- 場転 のバリエーションが終わっちゃう時間。
- 細川
- あ!あるある。
- 佐藤
- へぇ~。
- 細川
- そうそう。だから、最近はつまんない場転も入れます。
- 一同
- (笑)
- 佐藤
- 何ですかそれ。
- 細川
- なんだろうな~。
- 扇田
- 捨て場転みたいな。
- 細川
- そうそう。
- 松本
- 最初からキメキメで行くと最後まで持たないから、途中でちょっとゆるめのやつを。
- 細川
- そうそう。
- 佐藤
- へぇ~。
- 細川
- ここは椅子を持ってガーっと出て行って、わざわざクルっと回って…とかいう見せる場転と、
- 佐藤
- 面白い場転もあれば…
- 細川
- そうそう。面白い場転もあれば、普通の「スンッ」ってした場転もある。
- 松本
- そこは ブルーになってるだけっていう。
- 細川
- そう、とりあえずブルーみたいなのも挟む。そういう調整をするようになったね。
あと、最近僕、上演時間が劇的に短くなったんで、そんな辛くなくなりましたね。
東京に来た頃 、まだ2時間超えてたんですけど、最近90分~100分になってきたんで。
- 松本
- 僕も最初は長かったです。初期の作品は全部2時間超えでしたね。ある瞬間、1時間40分 が書けて、それ以来調整ができるようになりました。
- 細川
- うん。
- 佐藤
- うーん、上演時間ですね。
上演時間は短い方がいい!?
- 松本
- 上演時間トークします?
- 扇田
- いやー、でもね、脚本・演出と……
- 佐藤
- いやー、これはデリケートな問題ですね!
- 扇田
- 言ったら夢がなくなってしまうから……。皆さんの夢を壊してしまうかもしれない。
- 佐藤
- これはデリケートですよ!!!
- 松本
- のぶさんがよく出演している“あの人”の話もしないと。
- 一同
- (笑)
- 佐藤
- いやー、これは…難しい!これは危ない!これ危険だ!長くても面白い話はありますからね。
- 扇田
- でも、ここ
お二人は脚本・演出じゃないですか。自分で書いて自分で作る。
で脳が変わってくるんですよ。
- 松本
- はい。
- 扇田
- 僕は演出をするけれども、脚本を書かない分、プロデュース側の目線を結構持っているので。
- 佐藤
- プロデューサー的な視点で明らかにヤバいのは、劇場が閉まっちゃうこと。
- 細川
- それはやっぱり、短い方がいいですよね?
- 佐藤
- んんっ?
- 一同
- (笑)
- 扇田
- 本当はね、本当は。
- 佐藤
- だから、一応、範囲ですよね、範囲。
- 松本
- 僕はやっぱね、いつも2時間以内に収めたいんですけど、超えることがある。
元々 超えるつもりで書くときはいいんですけど。ちょっと僕は、伸びちゃう傾向にあって。
むしろ演出だけやっていると、切れるものは切ってくれよって思いますよね。
- 扇田
- 思いますね。とにかく僕は2時間以内に収めたいんです。自分の劇団でやるときは特にそうです。なんでかって言うと、
DVDを販売する時に2時間以内か2時間超えるかで、制作費が変わるんですよ。
これ夢無いですよ、皆さん。
- 佐藤
- 変わりますね。これ本当に夢の無い話を始めましたけど。
- 扇田
- 3倍くらいかかるんですよ!本当に。
- 松本
- DVDは2時間15分までですよね。
- 扇田
- 実質2時間5分でも、メニューとか色々入るとダメですね。
- 佐藤
- うん、そうですね。
- 扇田
- なので、そのためになんとか2時間以内に収めようとしてます。
- 佐藤
- そうなんですよね、画質とかも変わるから。あとやっぱり、早く終わるとその後ロビーが…
- 扇田
- 物販が売りやすいですよね。
- 佐藤
- そう、物販が売りやすい。
- 一同
- (笑)
- 扇田
- 夢が無いでしょう?(笑)
- 佐藤
- プロデューサー的には、二時間以内の方がいいんじゃないですかね。
- 松本
- でも今回の『D・ミリガンの客』は2時間15分なので、やっぱり19時開演の時はお客さんもバタバタと帰らなきゃいけない。
- 佐藤
- もう一個夢の無い話をしますけど、
- 松本
- どんどんしましょう。
- 佐藤
- ENGの公演は全員、僕が好きなキャストを呼んでいるんです。
でも、公演時間が短くなればなる程、ストーリーは洗練されるけどキャストの見せ場は減るわけで。
そうすると、 「あっ、ごめんね」って役も出てこないこともないです。脚本が上手ければ捨て役は無いですけど。
- 松本
- この辺でプロデューサーと揉めるのが、じゃあ見せ場全部切っていいんですか?ってケンカをし始めたくなっちゃうんですよね。
- 細川
- そうなんですよね。はいはい、分かります。
- 佐藤
- 「○○くんをもうちょっと出してあげて!」みたいな。
- 細川
- ね~、それな~。
- 佐藤
- やっぱちょっとありますよね。なるべく作品を大事にしたいですけど、 う~ん、ってなることもあります。
- 扇田
- それはやっぱプロデューサーと揉めますよね。主演を誰にするかで揉めたりしません?
- 細川
- 基本は「はい」って言いますよね。
- 扇田
- 「はい」って言うんですけど、でも絶対こっちの人を主演にしたほうが作品のクオリティが上がるって時、あるじゃないですか。
- 一同
- (笑)
- 扇田
- ありますよね?
え、ちょっと待って!
- 佐藤
- やばいやばい(笑)
- 扇田
- 待って待って、なんで黙るんですか!
- 細川
- あります!
- 扇田
- ありますよね!
- 細川
- STAP細胞はありま~す!
- 一同
- (笑)
- 扇田
- ありますよね。でもそこは 何とかしましょう!ってなるじゃないですか。
- 細川
- それがね~あのね~ 。あの~、お客さんに喝破される時があるんですよね。
- 佐藤
- ウチ は悪いですけどそういうのないですよ。
- 一同
- (笑)
(つづく)