【ネタバレ注意】対談中、過去作品のストーリーの核心に触れる部分がございます。ご了承の上お読みください。
久保田唱×松本陽一(5)
名前の好みは変わらない!?
- 松本
- 名前は結構こだわるタイプなんですね。
- 久保田
- そうですね。
- 松本
- さっき、物語を書く順番、みたいな話があったじゃないですか。
- 久保田
- はい。
- 松本
-
僕たぶん、久保田さんと近いんですけど、タイトルがあって、登場人物をざっと、ストーリーを考えながら決めて。それから書き出す前に名前を付けるんです。まあ、当然脚本だとそうですよね。
でも、前に話してもらった人が僕と真逆で、名前を付けるのがすごい苦手で、嫌で一番最後にしたい、って言っていて。
- 久保田
- へえ。
- 松本
- タイトルも最後に付けたいタイプで、全く逆の人もいるんだって思って。
- 久保田
- でもなんか気持ちは分かると言えば分かりますね。こいつのセリフが書きたいんだけど、名前考えてるだけで時間が経っちゃうのが嫌で。
- 松本
- あー、あります、あります(笑)。
- 久保田
- 名前なんてなんだっていいんだよ!と思いながら、なんでもよくないから考えるっていう。
- 松本
- 数が増えてくるとしんどくなりますよね。
- 久保田
- そうなんですよね。
- 松本
- 名づけ親も名づけすぎると。
- 久保田
- 後から振り返ってみると、名前の好き嫌いの傾向がはっきりと分かれてて、同じ名前を何回も使っちゃったりしてて。
- 松本
- いや、僕もそうです。
- 久保田
- あ、この名前また出てきてる、みたいな。
- 松本
- 僕はどうやら、女の子だと「はるか」が好きらしいです。
- 久保田
- へえー。
- 松本
-
遥か彼方の「遥」が。
あのー、ちょうど9月にやった、沖野君にも出てもらった『Life is Numbers』のヒロインが遥っていうんです。その後10月に、13年前に書いた『テンリロ☆インディアン』の再演をやったんですけど、宇田川さんが演じたあばずれのホステス役が、遥だったんですよ(笑)。
- 久保田
- ハハハ(笑)。
- 松本
- えー、1か月後に同じ名前で全然違う雰囲気だから。
- 久保田
- やっぱりそういうことありますよね。
- 松本
- で、名前変えたんです。
- 久保田
- あー、変えました?
- 松本
- うーん。ちょっとお客さんの印象が強すぎるだろうと思って。
- 久保田
- 僕が今Re:call』っていう作品を別のプロデュースでやるんですけど、その舞台が実はどっちも1992年なんです。まあ『ロストマンブルース』は結局現代なんですけど、1992年の話題が結構よく出てくるシナリオで、それに出てくるキーポイントとなるキャラクターの名前が同じだったと気付いて。 演出をやってる『ロストマンブルース』って、一昨年書いた作品なんです。で、年明け に、ボクラ団義の第1回公演でやってた『
- 松本
- へえー。
- 久保田
- 「桜」と「晴海」って名前が全く同じで。しかも出方も似たようなもんなんで、あーあ、って(笑)。稽古始まりながら、あーあ、って(笑)。
- 松本
- (笑)。それはもう忘れてたってことですよね。
- 久保田
- そうですね、忘れてましたね。忘れてたし、むしろ今回のリライトをやるにあたっていろんなもの見て、あ、同じだ!って気付いた。こいつはまずいな、って思うんですけど、どっちも名前の理由が物語に書かれていて。
- 松本
- あー、なるほど。
- 久保田
- で、あんまり変えられないので。
- 松本
- じゃあ、これ連続で観たら、この「あーあ」感が(笑)。
- 久保田
- はい。9年前に書いたやつと、2年前に書いたやつで(笑)。
- 松本
- 1992年に何かこだわりがあるんですか?
- 久保田
-
1992年は尾崎豊が亡くなった年で、どっちの作品にもその話題が出てくるんです。
僕は尾崎世代じゃないんですけど、父親がよく聞いていて、ギターの弾き語りもしていたので思い入れがあったんです。当時の話題を取り入れるのに、やりやすいなって。
そうしたらたまたま1992年だったんです。その時はまさか、『ロストマンブルース』と『Re:call』を並んでやるとは思っていなかったですから。名前が一緒なのは気づかなかったんですけど、どっちも1992年だなとは思っていて。でも名前が似通っていてこいつはマズイと(笑)。
再演で気づくこと・変わること
- 松本
- 『Re:call』の話が出たので…。去年 も同じプロデュースでやっていますよね。なんか…幻的な作品を。
- 久保田
- 『レプリカ』という作品をやりました。劇団を作る前の作品なんです。養成所でやっていた頃に、自分で脚本を書いて演出したものです。
- 松本
- じゃあ幻のデビュー作じゃないですか。
- 久保田
- いや、実はその前に同じ養成所で違う作品をやっていて。
- 松本
- そっちは再来年くらいに…(笑)
- 久保田
- (笑)。だから、『レプリカ』は“ほぼ”処女作。
- 松本
- 『Re:call』はボクラ団義の第一回なんですね。
- 久保田
- 資料を見返してみると、同じ年 の1月と12月に約1年空いてやっていて、特に書いた時期で言うと完全に1年経っているんですね。とは言え、同じ年にやっているので、 感慨と思い入れがありますね。
- 松本
- 若かりし頃の作品をやるというのは、どうですか?
- 久保田
-
いや、見れたもんじゃないですね(笑)。これ、このまま出来る訳ないよ、って思いました。
リライト作業って人によってやり方が違うと思うんですけど、つい最近書いたものであれば前のものを引っ張り出して、タイトルを今年版に変えて、頭から問題のあるセリフを直したり出来ると思うんです。
- 松本
- 再演の直しですね。
- 久保田
- はい。でも『レプリカ』の場合は、白紙からスタートしました(笑)。昔のものは参考程度に隣に置いておくだけで。ほぼほぼ変えたので残っているセリフ少ないんじゃないかな。
- 松本
- ほぼ新作(笑)。
- 久保田
- シーンの順番も違いますし。
- 松本
- でも大きい骨格は同じですよね。いわゆる原作的に。でも、僕のリライト作業も、“10年前の松本さん”の作品を今の松本が脚色し直すみたいな。ちょっと別人感がある。
- 久保田
- そうですね。僕もこんなに変わるか、って思ってます。脚本だけじゃなくて、演出も違いますね。10代・20代の時にやっている「さぁここでパフォーマンスだ!」ってダンスパフォーマンスの入っているところは、「無くていい」ってバッサリ(笑)。
- 松本
- そういう機会があって楽しかったですか?しんどかったですか?
- 久保田
- 最終的には楽しかったです。作り直せて、出来た作品を見て、ああ良かったなと思っていますし、でも『Re:call』に関しては1月末が本番なので、これからまた諸々変えていくと思いますので、正直まだ大変だなぁって思っているところがありますね。
(つづく)