久保田唱×松本陽一(8)

※2016年12月3日、都内某所にて

久保田唱×松本陽一(8)

喫茶店にやたらと詳しい

久保田
(おもむろに立ち上がり)そういえば、ビール買って来てますけど、飲みますか(笑)?
松本
ちょっとこのタイミングで開けますか!
久保田
(缶ビールを取って来て配る)
松本
(プシュッ!)
久保田
(プシュッ!)
松本
(乾杯しながら)ほぼ初めてですか、一緒に飲む機会というのは。唯一、『クジカンキカク』(2014年9月)の楽屋打ち上げくらいですよね。
久保田
ええと、僕が覚えてるのは『クジカンキカク』の終演直後に舞台上で乾杯した時です。皆さん結構飲まれてましたよね。その後、楽屋でも打ち上げをして。それ以来ですね。

松本
ゆっくりお話ししたのは、あの時くらいですよね。ゆっくり、と言えるものだったかはわかりませんけど。
久保田
僕も早めに帰っちゃいましたから、ゆっくりお話しするのはその時以来ですね。
松本
お酒って、好きですか?
久保田
僕はお酒好きですね。
松本
じゃあ、稽古が終わったら飲みに行くほうですか?
久保田
稽古終わりは半々ですかね。夜は脚本を書かないって先程言いましたけど、21時に稽古が終わると、やろうと思えば22時くらいから1時くらいまで仕事できるじゃないですか。
松本
あー、はいはい。
久保田
今日は頑張ろうと思って、書ける日と書けない日と。
松本
基本的には夜に書かない派なんですよね?
久保田
そうです。朝起きて、シャキッとした状態でやったほうがいいですね。
松本
僕も絶賛午前中派なんです。午前中が一番の稼ぎ時で、午後は停滞しちゃう。
久保田
1日時間があると停滞しちゃうのは、午後な感じがします。
松本
13時~16時はページが進んだ記憶が無いですね。16時~19時くらいはまた良い時間になってくるんですよ。
久保田
あー、わかります。やっぱりみんなそうなんですね。
松本
大事な会議を午後にやってもダメだ、みたいな話もあるでしょ。
久保田
間の時間でやっちゃうと、どうも調子悪いんですよね。
松本
夕方くらいから少し戻って来るんですよね。
久保田
そうなんですよ。2時間で大体これくらい書けるはずだっていう量があって、朝の9時、10時からやって13時までに結構良い感じで書けるから、このまま行ったら今日どれだけ書けるんだろう!って思うけれど、13時以降は全く書けないですね。また時間経つとちょっと書けて。
松本
1日に書ける分量の限界とか分かってくるじゃないですか。(作品中の)分で換算するとどれくらいですか?直前に追い込まれてとかじゃなくて、通常フローで。
久保田
そうですね…でも…多分…30分とかじゃないですか?
松本
やっぱそうですよね。最高に良い日とかでも…
久保田
その良い時を参考にしちゃうから、いけるんじゃないかって思っちゃうんですけど、2時間15分位の作品を5日間くらいで仕上げた時があって。
松本
それはすごいですね。
久保田
去年ある作品を5日くらいで書いたんです。でも、書き直し書き直しでしたね。僕はB5の縦書きで書いてるので、A4で書く人とは量が違ってくるんですけど。全体で130~140ページくらいの作品だったんですが、その中で40ページくらい使ってないページがありましたからね。結構書きましたね5日間で。最後の1日で、確か80ページくらい書いてます。
松本
その時は、神ってましたね!それは締め切りが来てたから?
久保田
そうですね。もうやるしかねーや!って朝の9時からその日の0時を超えた午前4時まで書き続けて。
松本
20時間くらい。
久保田
そう20時間くらい。で、他に何もしなければ良いんですけど、確かその日現場に行って何かの撮影があった日で。幸い僕はそんなに口を出さなくて良いやつだったんですけど。僕はただただ机に向かって台本を9時から。あの時100ページくらいかなぁ。
松本
僕も、あれですね。なんとなく、ちゃんと頑張ろうと思うのは15分くらいなんですよ。本当にそれでうまく行っちゃえば、2時間ものって一週間くらいで書けるわけじゃないですか。現実はそういかないんですけど。
久保田
僕、その時の思い出というか記憶があるから、行ける時は行けるはずと思って最近作業するんですけど全然ダメで。やっぱりあの時は、なんかちょっと違ってたんでしょうね。それこそ、急いで書いてしまって結局書き直した例が、さっき話した、ラストシーンで止めたっていうやつだったりします。
松本
ある程度必要な時間ってあるんですよね、全く書けない日も含めて。
久保田
そうなんですよ。書けない日、重要なんですよね。例えば書く場所の話なんですけど、松本さんは漫画喫茶って行きますか?
松本
前は使ってましたけど、やめました。
久保田
僕も最近は、誘惑が多いので行くのやめましたけど、行く時はオープン席にしてます。個室ではなく。
松本
見える化、ですね。
久保田
他人に自分を見張らせるっていう。喫茶店で書くのも同じ理由だと思うんですけど。
正直過去のことを思い返してみても漫画喫茶に入ってついつい漫画を読み始めて、最近こんなのが流行ってるんだ、って読んで1ページも進んでないや、いや、書こうとしてないじゃないか!って(笑)。

松本
なんなら読破しちゃって(笑)。
久保田
あの日が意外と大切だったりしますよね。それがあるから書けるみたいな。
松本
書けないで止まってる時って、そんなに長くはないんだけど、辛いから止めるみたいな、そして漫画に手を出す。長時間居るには体勢がしんどくなったりして、喫茶店の限界ってあるじゃないですか。だから、ちょっとゴロンと横になれるっていうので漫画喫茶を使ったりしてましたね。そういう時、久保田さんはどうしてます?
久保田
喫茶店を一日でハシゴしたりしますね。
松本
喫茶店って1件あたりどれくらいですか。僕は2時間くらい。
久保田
僕はもうちょっと居る時もありますね。3~4時間、…4時間居ますねぇ。
松本
最近僕は近所のファミレスが主戦場になりつつある。ドリンクバーで、お客さんが少ない時間に行くんですけど。
久保田
コンセントが使えたり、ドリンクバーがあってっていうのもあって、ファミレスも一時期は使ってたんですけど、深夜営業をやらなくなっちゃったりで、使わなくなりました。
決まった喫茶店がいくつかあって、それこそ自分の住んでる街界隈の喫茶店はすごく詳しいです。
松本
そうですよね!
久保田
どこにどれぐらい喫茶店があって、コンセントがあるとか。すっごい詳しいです。
松本
すっごい詳しくなりますよね!こういう話いいですね、すごく。脚本家あるある話のひとつ(笑)。

(つづく)