エリザベス・マリー×松本陽一(9)
こだわり・楽しい・評価
- 松本
- 結構喋ったね。最終章は何だろうな~。そうそう、これ聞きたかったんだ。「あなたのバイタリティー」について。
- リズ
- バイタリティー?
- 松本
- 『TRUSH!』の現場で、ご飯も食べずにずっとやってたじゃないですか。でも、時間が無いから追い込んでるって訳でもなく、自然にそうなってる感じなのかな?って。
- リズ
- 特に『TRUSH!』はそういう感じでしたね。私、A型なので、完成させないと気が済まないタイプではある。
- 松本
- ある意味、几帳面というか、真面目な部分がすごくあるんですよね。
- リズ
- あはは。
- 松本
- だから“ラテンと真面目の同居”なのかな。最初に出てきた“ラテンと内気の同居”みたいに。その2面性は、あると思んですよ。
- リズ
- 真面目な部分というか、几帳面なんですよね。だから、振りがついて動画を撮って、その動画をすごく細かく見るんですよ。ここは自分が思い描いてた画と違うな、って思ったら、まずそこを直さないと次に進まないんです。
- 松本
- それは、気が済まないから?
- リズ
- ここをどうにかしないと、後々影響が出るだろう、と自分で思っちゃうんですよね。効率の悪いことが嫌いなんです。例えば、鍋物を作るとしたら、先に炊飯器でお米を炊きます、後は時間のかかるものを先に火にかけます、っていうように、料理を作る時もいかに効率よく作るか、って考えるのが好き。後になって変更が出ると、役者さんにも負担だし、私も負担だし、っていうのが過去の経験ですね。負担をなるべく少なくするために、やっぱり頭から調整をしていって、「これに間に合わせたいんだったら、尺が足りない。」「じゃあ、この振りをカットするしかない」ってやっていければ、それは苦ではないんです。振付を作っている段階で、実はその作業が一番好き。ある程度、7割8割完成して、じゃあビデオ撮ってみて、調整して、「あ!ここをこうしたら良くなる!」って見えた時が一番気持ちいい。
- 松本
- へぇ~。
- リズ
- 『TRUSH!』はその瞬間が多かったです。大体出来て、チェックして、更にもうちょっと良くできる。あとは、私が振付だけでなくキャストとしても出ていたからなんですけど、本番に入ってからも日々変えていける、日々良くできる、っていうのが嬉しかった。
- 松本
- そうですよね。振付師さんだと来る日が限られていて、時間も限られている。
- リズ
- やっぱり限られてきちゃって、限界値が出てくるんですけど、キャストで入っている分、千秋楽までより良く出来ちゃう、っていうのが、ありがたかったです。
- 松本
- 疲れたリズさんを見たことないんですよ。
- リズ
- あ~、そうかも。
- 松本
- そのパワーの源は何だろう?こだわり?
- リズ
- こだわり、と、
- 松本
- あと、楽しい?
- リズ
- 楽しい、と、評価、ですね。
- 松本
- 評価?
- リズ
- 自分の評価はこれで上がる、って信じています。
- 松本
- そういう対価を得られるって考え方なのね。
- リズ
- それはあるかもしれない。あと、多分、なんだかんだ仕切り屋なんですよ。だから、自分の意思で仕切る側に立って、人に指示してるっていう自分が、
- 松本
- 好きなんだ。小学校のモー娘。から始まっている振付師の役割が。
- リズ
- 多分ですけど、そうなんだと思うんです。『TRUSH!』でいうと、そういう自分が好きであって、そういう位置を与えてくれた松本さんと、なるべく同じ方向を歩みたい、っていうのがやっぱりありました。答えになってるかな?バイタリティ……、力の源……。定番ですけど、家で良く寝てましたね、あはは(笑)。
天才との差を感じる時間が辛い
- 松本
- もう1つ聞きたいんですが、振付でも女優でも、辛い作業とか嫌いな時間帯って何ですか?
- リズ
- 嫌いな時間は……まあ、 降りてこない時は一番嫌ですよね。
- 松本
- そうですよね。さっき、演出してる姿が楽しそうって言ってくれたけど、それは脚本を書くのが死ぬほどしんどいからなんですよ。
- リズ
- あ~、そうなんだ。
- 松本
- 細川 さん も、全く同じ事を言ってましたよ。脚本は地獄のような苦しさで、演出は楽しくてしょうがない、みたいな。創作には、そういうのがあるんじゃないですかね。
- リズ
- ありますね。でも、私、振付する能力に関しては天才タイプではないんです。踊る方は天才タイプだったかもしれないけど(笑)。私の所属しているダンスカンパニー『CHAiroiPLIN』の代表・スズキ拓朗さんは、本当に天才タイプなんです。彼はその場で考えてその場でつけるっていう人なんですけど、それが私にはできないんですよ。だから、振付のアイデアが降りてこない時も苦しいんですけど、何より苦しいのは、現場での変更や、ちょっと方向性が違うからこの振りじゃないなって思った時に、でも今日中に振付をしなくちゃいけない場合が一番苦しいんです。
- 松本
- その瞬間、天才の人は出来ちゃうんだ。
- リズ
- そう、天才だったら出来ちゃうんですよ。私の中で、振付天才って呼んでいるのはスズキ拓朗さんと、今『傭兵~』に出ている後藤健流くん なんですよ。
- 松本
- おぉ、彼も天才なんだ。
- リズ
- 健流くんもその場で振りを付けるタイプ。今もそうなのかは分からないんですけど、昔ご一緒させていただいた時がそうでした。何でそんなアイデアが降りてくるんだろう、そして特に変更がないんだろう、っていうのが驚きでした。
- 松本
- それでもうバシッと行けちゃうんだ。
- リズ
- それが健君の凄く尊敬しているところです。私には無いもので、だから一番苦しいのは現場ですね。
- 松本
- 現場で上手くスッと出ない時で、その日のうちに仕上げなきゃいけないやつは辛い、と。
- リズ
- それが辛いっていうのは、さっき人の上に立つのが好きっていう話をしたんですけど、人の上に立つには面子が保てなくなる瞬間なんですよ。
- 松本
- あ、そうか。
- リズ
- 現場のみんなが私のアイデア待ちになっている状態、っていうのが、もうプレッシャーで。
- 松本
- それは“A型優等生あるある”だね。
- リズ
- もう無茶苦茶苦しいんです!「もうこれ以上今日は付けられない」っていうのが、どれだけ屈辱か。
- 松本
- プライドも高い?
- リズ
- そういう意味では、プライドも高いです。逆に、お芝居には苦手意識が高いんですよ。だから、凄い頑張ってたりするんですけど、ダンスは元々のプライドが邪魔しているところがやっぱりあって、「出来て当然じゃない?」「振りは作れて当然」って感覚が自分の中にある。だから、中野裕理ちゃん みたいな天才タイプとは、また違うんです。
- 松本
- あ~、中野裕理も天才タイプだね。
- リズ
- 完全に天才タイプですね。彼女と比べてしまうと、やっぱりネガティブな部分が出てしまいますね。
いつか自分を許容できる日が
- 松本
- これ、次のステップとして、将来あると思いますよ。A型の、段取りが上手で、上に立つのが好き、みたいな、僕と近いところがあるじゃないですか。
- リズ
- ありますね。
- 松本
- 似たような苦労としては、僕の場合は脚本が書けなくて、役者が待っているけど続きを持って来れなかった日のしんどさだと思うんです。
- リズ
- めっちゃ分かる~。
- 松本
- それは今でもありますけど、僕の経験した中で言うと、もっとキャリア積んだら、スッと抜けて無くなる瞬間とか、もっとおおらかになる瞬間がいつか来る。
- リズ
- 楽に出来る時が来る。
- 松本
- 出来なくても「あ~、出来な~い」って言ったら、若い子が助けてくれる、みたいな瞬間があったりとか。
- リズ
- そういう自分を許せるようになる時が……、
- 松本
- 自分を許容する力ですかね。
- リズ
- 未だに「振付:エリザベス・マリー」ってなっているんだったら、基本は私が振付全部やるべきだと思っちゃうし、アシスタント連れてくることもあるけど、アシスタントに「ここ振付しておいて」って頼んだこともない。
- 松本
- なるほど。
- リズ
- 唯一『TRUSH!』だけです。
- 松本
- あれはチーム制でしたね。
- リズ
- そう、『TRUSH!』はチームでやろうって思って。だから振付が楽だったのもありました。私には、ヒップホップは付けられないし、バレエもタップも付けられないので、それはもう各々のプロフェッショナルを私が連れてきたから、そこはその人に任せる。だから、良い意味で任せられた楽さがありましたね。『TRUSH!』は、すごく楽に振付も出来たから、全部の現場がそういう風にできるようになれたらいいんですけどね。
- 松本
- でも、そう遠くない将来そうなると思いますよ。
- リズ
- そうですか?何か今日、人生相談やってもらったみたいな感じ。
- 松本
- ははは(笑)。人生相談で、締めてみます?
- リズ
- 今、スランプなのでちょっと楽になったかも。ふふふ(笑)。
【スタッフ後記】
リズさん、どうもありがとうございました。
今回の対談は文字で伝えるのが難しい部分も多かったのですが、いかがでしたでしょうか?
お詫びに(?)『TRUSH!』のグランドフィナーレと、スタッフも思わず嫉妬してしまった珠玉の1枚を載せておきます。
「TRUSH!」アクト動画その⑦ファイナル アルタマルタの祭り~グランドフィナーレ~
いい雰囲気すぎる!(笑)
お疲れ様でした!
(おしまい)