佐藤修幸×松本陽一(6)
共通意識が育む絆
- 佐藤
- 6番シードさんでは、劇団の恒例行事って何かあります?最終稽古終わったら、稽古打ち上げって行きますか?例えばボクラ団義さんだと、稽古打ち上げに必ず行くんですけども、その前にみんなで円陣組むんです。主宰の久保田くんが、「最終稽古終わりましたけど、初日まで間が空きます。芝居は本当に集中しなきゃダメで、羽目を外して飲むなんて以ての外ですよ!」って言うと、劇団員達がみんな賛同して「あったりまえじゃないですか!」「ふざけんじゃないよ!気緩んでいる奴ら!」みたいなエチュードが始まるんです。
- 松本
- ほうほう、そんな恒例があるんだ。
- 佐藤
- 「そりゃそうです!真剣にやらないやつ、ふざけてますよ!」って盛り上がってから、「じゃ、飲み屋取ってあるんで!」で、全員コケる(笑)。
- 松本
- へえー面白い。
- 佐藤
- それは展開を知っているゲストも含めて全員コケるんですよ。初めて出るゲストは置いてけぼりで、「何これ!?」ってなる。久保田くんは、そろそろいい加減やりたくないなーって思ってるんですって。だって10年以上全現場でやっているから。ただ僕なんて、特にサークル出身だからそれがすっごく楽しみなんです。
- 松本
- うちは無いかなー、そういうの。
- 佐藤
- 究極にプロ意識でやるとしたら、無いほうがいいですよ(笑)。
- 松本
- そうね(笑)。
- 佐藤
- ただ、ちょっとしたフレーズとかだったらあった方がいい。人間だから、それによって情が湧くじゃないですか。
- 松本
- DMFやENGでは全裸以外に何かあるんですか?
- 佐藤
- DMFは全裸のイメージになっちゃいますね(笑)。DMFの時は本番が終わった後に僕が最後の挨拶をするんですけど、その時に「それでは私、この辺でドロンさせていただきます。」って締めるのが恒例でした。それくらいかな。ポップン さんも、最初に必ず同じ曲が掛かるじゃないですか。
- 松本
- そうか。
- 佐藤
- 僕はあれ、大好きです。ただ、それをずっと続けていくと、いつか飽きる日も来るのかもしれませんけどね。前説の用語“お互いをつなぐ絆”みたいなものがあるだと思うんですよ。 も、毎回一緒でしょ。すごい若い時から一緒にやっている劇団だと、そういう小さいところに
- 松本
- はははは。
- 佐藤
- DMFって劇団だったけど、結構個人主義だったんですよ。今もみんな、ホント別々にやっているでしょ。福地くんは『ツツシニウム』、中野は『隣のきのこちゃん』、 わかはは『演劇人』っていうプロデュースユニットを以前やっていた。宮城は宮城で個人で活動しているし。だから劇団員ではなくてメンバーって言ってました。
- 松本
- うちも時間を経ていくと、それぞれ個があってそれが集合体であるというような劇団を目指したいなと思うようになりました。
- 佐藤
- いや、そっちの方が絶対いいです。UDA☆MAPさんとかもやっているじゃないですか。今、時代はどんどんそっちにシフトしてきている気がします。
もっと三国志を語りたい
- 松本
- なるほどね。ちょっと一息入れていいですか?
- 佐藤
- どうぞどうぞ。
- 松本
- 今、1時間ちょっと過ぎたところです。全然3時間くらい喋れますよ。
- 佐藤
- 喋れますよね。
- 松本
- でも、今日はケツがあるから(笑)。
- 佐藤
- 僕、相当三国志の話題を我慢したから、三国志の話をしたくてしょうがない。
- 松本
- 3000文字は覚悟してたんですけどね。
- 佐藤
- いや、全然足りないですよ。
- スタッフ
- だいぶ抑えていることはすごく分かりました。3000文字って5分ぐらいですから、あっという間です。前説でも熱が入ると5分過ぎますよね?
- 佐藤
- 確かに。だから最初は5分前にでているんですけど、回が進むと7分前、8分前に出たりもしてるんですよ。三国志は、今の時代にもビジネス書とかになってるくらい、すごくいいです。僕も最初は横山光輝の漫画を読んで、吉川英治の小説を読んで、ゲームをやって、最終的には三国志正史。正史にまで辿り着いちゃうともうダメです、三国志廃人です。
- スタッフ
- 廃人!(笑)記述が一行しかなかったりするって聞きましたよ。
- 佐藤
- 僕の大好きな武将が一行しか書いてないんですよ!「何とかの誰それ、どこどこにて没」って。他にも、名前しか出てこない奴がDV旦那で、嫁をすごいバッキバキにシバいて降格になった、とか。
- 佐藤
- そんな細かいところまで正史だと載ってるんですよ。
- 松本
- 史実としてですか。
- 佐藤
- 史実として。
- スタッフ
- へぇ~!当時のドキュメンタリー監督みたいな、記録を残す係の人が立派だったんでしょうね。
- 佐藤
- そうかもしれない。ただやっぱり、『三国志演義』を書いた人が蜀の国の人間だから、蜀が贔屓されてるんですよ。
- 松本
- 詳しくない僕からすると、人名だけじゃなく国名も若干難しいから、魏ってどこだっけ?みたいになりがちです。
- 佐藤
- そこはしょうがないですね。
- 松本
- この間、「三国志に関してちょっと雰囲気だけ知りたいです」って言った時の表情の変わり方が凄くて、「あ、ヤベー事聞いちゃった、やる気スイッチ押しちゃった」って思いましたね。
ぼくのすきなもの
- 佐藤
- 僕は、好きになると、本当にずっと好きなんですよ。ものを好きになる段階として、まず最初は表面から入るじゃないですか。
- 松本
- はい。
- 佐藤
- 表面から入っていって、ドンドン深いとこ入っていって、その次がもう、好きすぎて読まなくても良くなるんですよね。
- 松本
- え?どういうことですか?
- 佐藤
- 三国志について全部理解して、理解し終わったから今はどんどん忘れていってるところです。ただもう三国志の深いところは何なのかは、考え尽くした後なんです。昔の名残で言えますけど、細かい武将の名前なんて、忘れていってるんですよ。ただ、一緒に居た時間が長かったから、三国志が遠くに行ってどこで何をしていようと僕は良いんです。もう三国志のことは分かったから。
- 松本
- そこでも、“時間”の理論になるんですね。他にもありますか?
- 佐藤
- 音楽だと電気グルーヴ。漫画は『寄生獣』と『ジョジョの奇妙な冒険』、『銃夢 』。僕ね、16歳の時に人生で好きな漫画ベスト3を決めたんです。
- 松本
- 変わってないですか?
- 佐藤
- 変わってないです。後から、これも好きっての思う漫画はありましたけど。まあこれね、自慢ですけど、僕が好きなモノってずっと残るんですよ。
- 松本
- ほうほうほう。
- 佐藤
- まず『銃夢』。ハリウッド映画の『アリータ:バトル・エンジェル』ですよ。
- 松本
- あれの元なんですか。銃の夢って書くんですね。
- 佐藤
- 木城ゆきとさんって方が書いた漫画で、30年くらい前からやっている漫画 なんですよ。2000年にハリウッドから声がかかって映画化することになったんです。その時点で、「ほら、銃夢面白いから当然じゃん?」って思ってましたね。
- 松本
- 僕、よく仕事で漫画喫茶に行くんで、『寄生獣』は読みましたよ。
- 佐藤
- 本当ですか。ぜひ『銃夢』も読んだほうがいいですよ。僕ね、少年漫画のテコ入れ回が嫌なんですよ。
- 松本
- テコ入れ回?
- 佐藤
- ベジータは絶対死なないし、主人公は勝つ、っていう展開。それを覆しているのが『銃夢』と『寄生獣』。これはこうやりたい!っていうのが前に出ているんですよ。圧倒的に物語を作る実力、画力とか構成力がすっごいあるんです。『ジョジョ』はやっぱり少年誌なんで、どうしても守らなければならいけないラインが存在するんですよ。『ジョジョ』は読みました?
- 松本
- 早い段階に。
- 佐藤
- 第1部ですか?2部?3部?
- 松本
- 2部くらい。空条承太郎の辺りでもう見てない。
- 佐藤
- 例えば3部だと、アブドゥルっていう奴が、あっさり死んじゃうんですよ。
- 松本
- もう分からんですね(笑)。でも、そういう印象はありますよ。やっぱり独特な画風の荒木飛呂彦先生じゃないですか。
- 佐藤
- 「あ!え?」っていう展開が印象的だったんですよ。三国志も、そこから入ったんです。前に飲んだ時にも酔っ払って言いましたっけ?すごく出来た人格の劉備が兄で、むちゃくちゃ強い関羽と張飛が弟っていう三兄弟なんですよ。この3人が主人公なんですけど、張飛は酔っ払って部下をぶん殴って、その部下に寝首かかれて死んじゃうです。クズみたいな死に方ですよね。
- 松本
- すごい主人公ですね。
- 佐藤
- それに怒った劉備が、夷陵の戦いっていう…関羽が死んだことにより起こった戦いで、呉と戦争してボロ負けするんです。さらに、悲しくなっちゃって病気になった劉備は白帝城で死んじゃうんです。ブチ切れて、他国に攻め込んで、ボロ負けして、それで病気で死んじゃうのが主人公ですよ。「後のことは、諸葛亮に任せるって」って死んじゃって、次主人公が諸葛亮になる…あ、やばいな、ズレてきた。今は、三国志の話じゃないや(笑)。
- 松本
- 何だっけ。好きになったものは必ず売れる説だ。
- 佐藤
- 『寄生獣』も最近映画になったでしょ。あれは別にどうでもいいんです、「やっと分かったか」「遅い遅い」みたいな。『ジョジョ』も今はアニメ化してますしね。漫画だけじゃなく、僕が好きな人ってなんか残るんですよ。まぁ、宮城も残りましたしね。ただ、僕の好きなものが残る説は、なんの論理的な話でもなくてただの自慢です(笑)。
(つづく)