※2019年3月1日、都内某所にて
佐藤修幸×松本陽一(9)
聞き上手はモテる
- 佐藤
- 話すエネルギーをひょっとしたら端折ってるかもしれないですね。聞き上手な人の方が必要とされるんですよ。
- 松本
- そうですね。聞き上手は難しいですよ。僕も、そんなに上手くないと自分では思ってます。
- 佐藤
- おっさんになればなるほど、気が付くと自分の自慢話をしてるんですよ。
- 松本
- うん(笑)。
- 佐藤
- 俺だって、プロデューサーになって、社長になって、頑張ってんですよ!みたいなことを話し始めちゃう。
- 松本
- 最近僕も、酒に酔うと自慢話してたなーって後から思うんですよ。
- 佐藤
- だって、6番シードさんは25年続いてるんでしょ?
- 松本
- そう、25年。
- 佐藤
- 25年続いて、奇跡みたいにめちゃくちゃすごいってことを、ちょっとは言いたいじゃないですか。毎年2~3回公演をやるのも、そこに毎回台本を書くのも大変ですよ。僕には絶対無理ですもん。
- 松本
- 自分の話をしたくなっている時間が長くなっている自分に、すごく反省するんですよ。
- 佐藤
- おじさんは頑張って結果出したから、その結果を承認して欲しいんですよね。でもそれは我慢ですよ。我慢すればするほど、もっとでかい見返りが10年後に来るんです。
- 松本
- ちょっと今、勉強になったかもしれないです。なぜそうなるかっていうと、若い子とかが気を使ってあんまり入ってきてくれない感じの時に、こっちから強く発信しなきゃ、喋んなきゃ、ってなった結果、自分のことを話しちゃうのかもしれない。
- 佐藤
- あー、確かに。
- 松本
- その時に、のぶさんのようにちょっと隙を作るというか…
- 佐藤
- 松本さんは、別に隙があるわけじゃないですけど、天性の親しみやすさがありますよ。
- 松本
- ベビーフェイスですか?(笑)
- 佐藤
- へへへ(笑)。それも多分あるし、オラついてないんですよね、松本さんって。
- 松本
- あー、オラついてないというか、ちょっと年取ったなっていう感じは、一緒に仕事をする子との年齢差が広がったってことかもしれない。
- 佐藤
- 年齢はあるかもしれませんね。でも、言うべきことは言うじゃないですか。言わないと生き残れないから。そこのバランスが凄く好きですね。
- 松本
- 聞き上手にはなりたいな、とは思いますね。
- 佐藤
- 僕は、自分のことを聞き上手とは全然思ってないですけど、聞き上手はモテますよ。大学の先輩が女の子にモテるにはどうしたらいいかをずっと考えている人で、僕も一緒に話していたんですね。そのまとめ、“モテる110箇条”っていうのが、僕のブログだったと思うんですけど、書いてあるんですよ。今、誰も見ていないと思うんですけど。その“モテる110箇条”の中に、聞き上手も有ります。
- 松本
- ふーん、そうなんだ。
- 佐藤
- 110あると細分化しすぎて、“トイレに行くときは宿題を出す”ってのがあるんですけど。
- 松本
- 何ですか、それ(笑)。
- 佐藤
- 僕が大学生だった当時は、携帯なんてなかったから、一緒に飲みに行った時に僕がそのままトイレに行ったら、その子は暇を持て余すじゃないですか。今は携帯があるから大丈夫ですけど。
- 松本
- あー、確かに。
- 佐藤
- だから、「そう言えば、この前のアレ凄く気になってるんだけどさー、アレ何だったの?チョット考えといて」って言ってからトイレ行くんです。そうすると、僕がトイレ行っている間に…
- 松本
- 考えてるから、間が持つのか。
- 佐藤
- 戻ってきて「それでどう?」って会話に戻るんです。
- 松本
- チャラいな~(笑)。
- 佐藤
- 言い始めたの、僕じゃないですからね!?その先輩とのディベートで出てきたんです。僕、その先輩をすごく好きだったんですよ。モテたい!って話ばっかりしていた先輩ではあるんですけど、会話が上手くてこの人とずっと話していたいなって思うんですよ。大企業でちゃんと働いて、出世して子供3人育ててるから、やっぱり僕が好きになった人も生き残るんですよ。
- 松本
- いつの時代も、モテたいってモチベーションは強い力になるんですね。
- 佐藤
- そうですね。
廃れない産業に学ぶ
- 佐藤
- 役者の初期衝動も同じじゃないですか?あと、承認されたいっていう思い。家庭環境がそんなによくない人が役者になりがちですね。
- 松本
- まあ、多いっちゃ多いですね。
- 佐藤
- それはモテたいじゃなくて、自分を見て欲しいっていう思いですよね。僕も結構そうだったかな~。
- 松本
- 突き詰めれば、最近良く使う言葉で“承認欲求”。
- 佐藤
- そう、承認欲求。これも手強いですよね。一説には、得られる快感みたいなものがそれこそSEXより承認欲求の方が上らしいですよ。
- 松本
- SNSで“いいね”付く方が快感が大きいって事ですか?
- 佐藤
- じゃないですか?だからみんなInstagramとかやってるんじゃないですかね。みんな「いいね!」をもらうことに必死になって、繁殖しなくなっちゃうかもしれない。SNSに人間が滅ぼされるかもしれない。ヤバイですよね。
- 松本
- のぶさんの言葉を借りれば、“神の領域のSNS”ですからね。承認の話は、深く掘ったら面白い気がするんですよね。
- 佐藤
- そうですね。
- 松本
- またどっかの機会で。
- 佐藤
- お客様の楽しみ方も、昔はみんな同じものを見ているからそこに同調する、みたいな感じがありましたけど、今は全然違いますもんね。「僕は、この団体が好きで、この人たちに頑張って欲しい」とか、役者個々人が頑張ってるのをシンプルに自分に照らし合わせて応援したいとか。なんか楽しみ方に変化があるな、と。
- 松本
- 単純に、物語の面白さをライブで楽しむっていうのが大前提にあったとして、演劇ってそこにプラスされている楽しみ方は、何通りかあると思うんです。
- 佐藤
- はいはい。
- 松本
- 凄く今パッケージに(なっていて)、今、演劇が伸びている理由の一つであるとは思いますね。
- 佐藤
- そうですね。これだけネットが普及してSNSも氾濫しているけど、やっぱり生って凄い事で、めちゃくちゃ感動しますからね。僕の中には、演劇は絶対娯楽であるべきだ、と言う考え方があって、メッセージ性凄く強い作品とか、娯楽じゃない作品も否定しないですけど、男だし少年寄りだから、娯楽として求めるんですよ。だから、パチンコとか水商売とかも、僕は全然、下だとは思わない。逆に、人間にとって、風俗の方が原始的で必要なものじゃないですか。
- 松本
- 絶対廃れない産業ですよね。
- 佐藤
- だって、この世界で最初に出来た職業とも言われてますから。
- 松本
- へー!
- 佐藤
- 一説によると、語り部か、風俗嬢らしいです。語り部って役者ですからね。だから、そのくらい必要なんですよ。パチンコとかも、今は叩かれたりしますけど、何兆円産業な訳でしょ。僕もパチスロが好きですし、「コレ、何でやってて気持ちいいんだろう?」って思うんです。絶対に人を惹きつける何かが間違いなくそこにはあるんですよ。それを芝居に活かしてもいいじゃないですか。間の使い方とか近いですよ。時代劇でよくあるように、誰かを切ったとして、「ズバッ、ギャー!」ってなるより、「ズバッ、……………ギャー!」ってなる方が気持ちいいですよね。あれはパチンコの大当たりの演出とかで。
- 松本
- 「デレレレ…デレッ…チャッチャラー!」
- 佐藤
- 単純なことですけど、気持ち良いから。そういう学びも全然ありだと思います。同じように、水商売から学ぶこともあってもいいと思いますけどね。この間、生まれて初めてキャバクラに行ったんですけど、僕は合わなかったですね。何が楽しいんですかね、キャバクラって。
- 松本
- 僕もね、何回か連れて行ってもらいましたけど、何が楽しいんですかね?だってお金払ってこっちが話さなきゃいけないんでしょ。お金貰うんなら、まだ気を使いますけど、何で払って喋らないといけないのか…。
- 佐藤
- 初めて行ったから知らないことだらけだったんですけど、あれって15分くらいで隣の席の女の子が入れ替わっちゃうんですよね。
- 松本
- あ、そういう仕組みの店だったんだ。
- 佐藤
- そうだったんです。僕は最初、隣に可愛い子が来たから、「よし分かった、この子と喋ればいいんだ。じゃあこの子の事をとにかく知ろう」と、話をして、「僕はこういう仕事をしていて、まあそんなに有名ではないかもしれないけど…」とか語っていたら、時間が来たからと「わー!」とか言って抱きつかれて。
- 松本
- 「またねー」っていなくなる。
- 佐藤
- そう、名刺を渡されて、俺の思いは?って。
- 松本
- 次の人が来て、また1からやる。
- 佐藤
- これなんなの?って思って。ずっと同じ人と話すには指名料が必要なんですよね。そんなのもう、嫌ですよ。指名したくない(笑)。
- 松本
- お互い、キャバクラは向いてないってことですね。対談の締めっぽくないけど、いいんじゃないですかね(笑)。
- 佐藤
- あはは(笑)。ありがとうございました。
- 松本
- ありがとうございました。…じゃあ、次のツイキャスの準備しましょうか!
(6バンジャックNGの立上げ報告ツイキャスの支度を始める)
(おしまい)