図師光博×松本陽一(1)
図師は図師だよね
- 松本
- ちょ、近いっすねえ。
- 図師
- わっはははは!
ちょっと、ある程度の距離作ってみましょうよ。
- 松本
- これ、結構緊張するでしょ。
- 図師
- します。僕もう2日前ぐらいから緊張してますから。
- 松本
- (笑)
- 図師
- だって、 結構な人たちが続いて、なんで僕なんだろうっていう。
- 松本
- 最初にこの企画を思いついたときに、僕の中で出てましたよ、図師さんの名前が。
- 図師
- そう、Twitterで書いてくれてたじゃないですか。あれ、めっちゃ嬉しくて。
- 松本
- 多分ね、何か聞きたい、ちょっと謎がある人がよかったんですよ。
- 図師
- 僕、謎あります?
- 松本
- あります。あります。
- 図師
- (笑)
- 松本
- いきなりその話からしますか?
- 図師
- いや、自分のことってどう思われてんのかよく分かんないじゃないですか。
- 松本
- あのねぇ、図師さんは良く分かんないんですよ。
- 図師
- へぇー。
- 松本
- なんて言えばいいのかなあ。役者さんってタイプあるでしょ。
- 図師
- ありますね。
- 松本
- なんか、はまらないんですよね。
- 図師
- え、それはいい意味ですか?(笑)
- 松本
- どっちなんだろう(笑)
- 図師
- わはははは!悪い意味だったら…
- 松本
- なんならちょっとダメ出し気味なのかも。
- 図師
- (大笑)
- 松本
- なんか、よくある俳優論で言うと、役を自分に寄せる人と、なり切る人とがあるじゃないですか。
- 図師
- 役に自分を持っていく人ですね。
- 松本
- 例えば椎名くん はカメレオンって言われるじゃないですか。
- 図師
- はいはい。
- 松本
- 宇田川さん なんかは最近、自分に寄せるというか、やっぱり宇田川さんが強いんで。
- 図師
- なるほど。
- 松本
- 例えば沖野くん とかも、いい言い方をするとすごく存在が強くて、ちょっと悪い言い方をするとどれを見ても沖野くんに見えちゃうとか。やっぱりそれって役者さんにはジレンマだと思うんですよ。
- 図師
- ああ。
- 松本
- 図師くんね、これね、 はまらないんですよ。
- 図師
- ははははは!(笑)あー、そうなんですね。
- 松本
- 最初に出演してもらった『ふたりカオス』 の時は、異なる超コメディの役と、超シリアスな役だったでしょ。
- 図師
- ええ、そうでした。
- 松本
- バイプレイヤー のように見えていたから、最初はそう思ってたんですよ。でも、最終的には寄せてくるんですよね、自分に。
- 図師
- あー、なるほど。
- 松本
- だから、なんか、“図師”っていうものが強い、その理由が分かんなくて。
- 図師
- あー、でも、言われるんですよね。「図師は図師だよね」って。
- 松本
- ですよね。言われるでしょ。
- 図師
- ちょくちょくありますね。
- 松本
- そういう風にしたがってるかっていうと、そうでもないでしょ?
- 図師
- ええ。僕は正直あまりそう思っていない。
- 松本
- そう思われたくない?
- 図師
- 思われたくもないし、違うと思っ…てはいます。自分は役によってしか考えてないから。まあ実際、役者って、自分がどう思っていようが、見られていたらそれが答えじゃないですか。
- 松本
- はいはい。
- 図師
- だから、「あー、そう思われちゃってるんだ」とは思うんです。でも正直自分としては全然不本意だし(笑)。
- 松本
- あー、不本意なんですね。
- 図師
- そうですね。あんまり“図師”だね、って言われても…。ただ、最近、30過ぎてぐらいから、悪くないかな、とも思う部分もありますね。
- 松本
- 自分は図師さんの芝居をしょっちゅう観てるわけじゃないですけど、その気配はする(笑)。
- 図師
- (笑)
でも作品にもよりますけどね。役によるというか。正直、この前やった『メトロノウム』 みたいに超どシリアスな作品だと、ほとんど出さないので、
- 松本
- “図師”を?
- 図師
- “図師”を。なので、お客さんからは新鮮に観てもらえたんですけど。
コメディになると正直「図師は図師だよね」は言われますね(笑)。
- 松本
- あー。“図師ワールド”ね。
- 図師
- “図師ワールド”とは言われますね。僕はね、全然そう思ってないんです(笑)。
- 松本
- ですよね。
- 図師
- はい。
- 松本
- そこに僕の謎がちょっとあって。
世界を広げたいとかはあるにしても“ワールド”を武器にしている人もいますよね。
例えば、ビジュアルも含めてですけど、劇団ボブジャックシアターの ことりくんとか、蜂巣 くんは、ある程度“ワールド”押しじゃないですか。そこで、シリアスな演技をすれば、お客さんの評価もいい。だけど、図師さんはそういうのとも違うし。
- 図師
- あ、違うんですね?
- 松本
- うん。
- 図師
- それは、演出家としていいんですか、悪いんですか?(笑)
- 松本
- うーん。あのね、芝居の内容にもよるんですけど、次に図師さんとやるときに、その謎にちょっと迫ってみたいな、とは思うんですよ。
- 図師
- へえー。
- 松本
- だから、僕らが一番最近やった、って言っても今まで『ふたりカオス』と『Life is Numbers』 の2回しかやってないんですけど、
- 図師
- そうなんですよ。意外とやってないんですよね(笑)。
- 松本
- 意外にやってない(笑)。
前回の『Life is Numbers』の時のコンビニ店員役も、“図師ワールド”って言われちゃうんだろうけど。
- 図師
- まあ、そうですね。自分でもあれはどちらかっていうと 近いな、って思いますね。
- 松本
- だけど、それをイメージしてキャスティングして、やってもらったかって言うと、そうではなくて。やってるうちになんか、どんどん“図師ワールド”になっていった感があって。
- 図師
- あ~。
- 松本
- だけど、図師さんのアプローチとして、安易に自分に寄せてるわけではないんですよね。
- 図師
- そうですね。
- 松本
- 『図師』という個が強い、なんか蜂巣君のような強さではなくて、なんか最後にそこへ持っていってる感があって(笑)。
- 図師
- あー。それは演出家として、作家としてはどうなんですか?(笑)
- 松本
- 僕は、良いところと悪いところがあると思うんですよ。
- 図師
- なるほど。
- 松本
- 最後にお客さんに「“図師”だよね」って思われるのが、いいのか悪いのかみたいな。
- 図師
- いや、もうね、やっぱ役者としては悔しい部分ではありますよね。
- 松本
- 悔しい部分なんだね、やっぱね。
- 図師
- だから極端な役だと楽なんですよ。
- 松本
- 例えば?
- 図師
- 例えば、全然しゃべらないとか、しゃべるのが苦手だとか、コミュニケーション能力が低い人とか。要は自分とちょっと遠いと、距離があるから、あんまり 言われないんです。でも、若干自分に近いキャラクターをやると、たぶん勝手に寄せちゃってるんだと思うんですよね。
- 松本
- うーん。
- 図師
- まあ、寄っちゃってるのか、寄せちゃってるのか分かんないんですけど。それは確かに感じますね。
(つづく)