図師光博×松本陽一(5)
自主映画~ウケる衝撃にハマる
- 松本
- その芸人さんには、ただ付きまとってたんですか?それとも弟子入りみたいなこと?
- 図師
- いや、これがねー。僕、東京に出てきて、養成所みたいなところにちょっと入ってたんですけど。
- 松本
- 何の?
- 図師
- 芸能プロダクションの。
- 松本
- じゃあ、上京するときに、もう役者というかこっちの道を目指して?
- 図師
- そうです。地元で仲間内で自主映画を撮ってたんです。
- 松本
- それは何歳の頃?
- 図師
- 19歳とか20歳とか、大学時代です。大学の授業に行かずに仲間内で映画撮ってたんです。僕は全然撮る気なかったんですけど、幼馴染の友達が手伝ってって言うから出たんですよ。それを自主映画祭に送ったら、そのコメディ作品がそこそこウケたんですよ。
- 松本
- ほぉー。
- 図師
- で、その客席を見て、「あ、ウケてる!」って(笑)。
- 松本
- 自分の演技にお客さんが笑う体験を初めてしたわけですね。
- 図師
- あれは結構衝撃的ですよね。
- 松本
- でも面白いきっかけですね、それ。
- 図師
- それで、ハマっちゃって、映画撮りまくって、その何人かで「みんなで上京しよう」って言って。みんなバラバラで。僕は役者なんですけど、CM制作会社に入ったやつもいるし、劇団に入ったやつもいるし、5~6人いたんですよ。まあ、今残ってるのは2人ぐらいですけど(笑)。
- 松本
- ほぉ、面白いなあ。
- 図師
- みんなてんでバラバラで10年後か何年後にまたみんなで集まろうね、って話をして。
- 松本
- 作ろうね、みたいな。
- 図師
- ええ。まあ、その10年はもう過ぎてるんですけど(笑)。
- 松本
- (笑)
- 図師
- でも、僕、上京するときに養成所に入ってたんですけど、まあ正直つまんないわけですよね。
- 松本
- 養成所が?
- 図師
- ええ。刺激がないというか、面白くないなあと思ってやめました。でも、やめた瞬間、何もないわけですよ。
- 松本
- そうですね。
- 図師
- 何のアテもないんですよ。
- 松本
- その養成所はあれですか?いわゆる、
- 図師
- いわゆる、ですよ。『ザ・養成所』。
- 松本
- あの、半分金儲けみたいな。
- 図師
- 半分どころか、ほぼ金儲けですよ、あれは(笑)。
- 松本
- 芸能界とつながっていられるかもしれない権、ってやつ?
- 図師
- あれは、どうなんですかね?その話すると、また話がそれてっちゃいますけど(笑)。
- 松本
- (笑)
- 図師
- それも感じ取ってしまい、お金払ってるだけだなあ、って。 所属できねえだろこれ、みたいな。
- 松本
- うん。
原体験は付き人
- 図師
- それで、すぐやめちゃったんですよ。その後、何もないときに、ちょっとしたつながりで舞台出ない?って言われて、出たんです。友達の劇団だったかな、ちょっとあんまり覚えてないんですけど。
で、そこで出会った女優さんが、僕の今の先輩となる芸人さん、コントグループがあるんですけど、そことつながってたんですよ。その公演中に僕がコメディ好きだってことを察したんでしょうね、その方が。「今度私の知り合いで単独ライブがあるから手伝わない?」って誘ってくれたんです。
- 松本
- ちょっと聞いていいですか、そのグループ名を。
- 図師
- あ、フラミンゴさんです。
今は3人ではそんなに活動してないです。みんな3人バラバラで、役者さんやったり、作家さんやったり、CMにバンバン出ていたりとか。
- 松本
- へえー。
- 図師
- 当時、多分、東京のグループでも群を抜くぐらい単独ライブをしてたんです。
- 松本
- そうなんですか。
- 図師
- で、今は無き銀座小劇場って会場でやったんです。
- 松本
- 懐かしい!僕も立ったことありますけど(笑)。
- 図師
- あ、ほんとですか!?
その時に、ゲネかなんかやってたんですよ。「初めまして~どうも~」って。それが、めちゃくちゃ適当なんですよ。声も低いし(笑)。
- 松本
- 適当??
- 図師
- 適当なんですよ。なんか、ふぁ~~~~ってやって。それ見て「えーっ?」って思って。でも、客がドンと入ると……、
- 松本
- はい。
- 図師
- 死ぬほどウケるんですよ。
- 松本
- あー。
- 図師
- やってることが全然違うんですよ。
- 松本
- もう、芸人さんのリハーサルのあれですね。
- 図師
- あれですよ。あれを目の当たりにして。
- 図師
- それで、まず、うまいなって。うまいというか、すごいな、と思って。これだけ人を笑わせられて、芝居も上手。 何もない。学ぶならこの人たち!って思って(笑)。そっからもう、単独ライブは全部手伝う。僕がトラックに乗り、
- 松本
- ほう!
- 図師
- パンチカーペットを引き、
- 松本
- へぇ!
- 図師
- 黒子になり。
- 松本
- 自ら修行に行ったわけですね。
- 図師
- そうです。場面転換で僕がボックスを出す、とかっていうのを何公演かずーっとやってて。
- 松本
- すごいですね。ほんと、付き人みたいなもんですね。
- 図師
- まあ、言ってしまえばそうですね。
舞台袖でずーっと観てたんですよ。だから僕のやってる芝居は、ほぼほぼそこの人たちからパクってますね。
- 松本
- なるほどー。
- 図師
- 舞台上でやっているものに関しては、そこで培われたものなんです。ずーっとそこで手伝いをやったときに、 3人のうちの作家さんが舞台をやるってことになって、その時に僕を呼んでくれたんですよ。
- 松本
- はい。
- 図師
- それが結構コメディだったんですけど、いざ演出を受けたら、まあー、何にもできない(笑)。
- 松本
- あれだけ観てたのに(笑)。
- 図師
- あれだけ観てたのに(笑)。ずーっと僕だけシゴかれるっていう。
- 松本
- あー、最近ならちょっとないぐらいストイックな弟子入り生活感が(笑)。
- 図師
- まあ、勝手に僕が付きまとってたところはありますけれど。
- 松本
- 図師さんにそんな原体験があるとは思わなかった。
- 図師
- あ、ほんとですか?ただ、教えてもらってないですから。
- 松本
- その付きまとっていたっていうか(笑)、付き人やってたのはいつ頃ですか?
- 図師
- でも最近までですよ、20…
- 松本
- あ、そうなんだ。
- 図師
- あの舞台いつだっけな(笑)。26…27…。
- 松本
- 今おいくつでしたっけ?
- 図師
- 36です。
- 松本
- じゃあ、10年前ぐらい。
- 図師
- そうですかねぇ。それぐらいまでは、結構そうやってお手伝いしたりとか。そこから舞台をやりだして、事務所にも入ったりして。だから培ってるものは僕の中では全部その時期の体験からだな、とは思ってますけどね。
- 松本
- なるほど。
(つづく)