図師光博×松本陽一(5)

※2017年9月5日、都内某所にて

図師光博×松本陽一(5)

自主映画~ウケる衝撃にハマる

松本
その芸人さんには、ただ付きまとってたんですか?それとも弟子入りみたいなこと?
図師
いや、これがねー。僕、東京に出てきて、養成所みたいなところにちょっと入ってたんですけど。
松本
何の?
図師
芸能プロダクションの。
松本
じゃあ、上京するときに、もう役者というかこっちの道を目指して?
図師
そうです。地元で仲間内で自主映画を撮ってたんです。
松本
それは何歳の頃?
図師
19歳とか20歳とか、大学時代です。大学の授業に行かずに仲間内で映画撮ってたんです。僕は全然撮る気なかったんですけど、幼馴染の友達が手伝ってって言うから出たんですよ。それを自主映画祭に送ったら、そのコメディ作品がそこそこウケたんですよ。
松本
ほぉー。
図師
で、その客席を見て、「あ、ウケてる!」って(笑)。
松本
自分の演技にお客さんが笑う体験を初めてしたわけですね。
図師
あれは結構衝撃的ですよね。
松本
でも面白いきっかけですね、それ。
図師
それで、ハマっちゃって、映画撮りまくって、その何人かで「みんなで上京しよう」って言って。みんなバラバラで。僕は役者なんですけど、CM制作会社に入ったやつもいるし、劇団に入ったやつもいるし、5~6人いたんですよ。まあ、今残ってるのは2人ぐらいですけど(笑)。
松本
ほぉ、面白いなあ。
図師
みんなてんでバラバラで10年後か何年後にまたみんなで集まろうね、って話をして。

松本
作ろうね、みたいな。
図師
ええ。まあ、その10年はもう過ぎてるんですけど(笑)。
松本
(笑)
図師
でも、僕、上京するときに養成所に入ってたんですけど、まあ正直つまんないわけですよね。
松本
養成所が?
図師
ええ。刺激がないというか、面白くないなあと思ってやめました。でも、やめた瞬間、何もないわけですよ。
松本
そうですね。
図師
何のアテもないんですよ。
松本
その養成所はあれですか?いわゆる、
図師
いわゆる、ですよ。『ザ・養成所』。
松本
あの、半分金儲けみたいな。
図師
半分どころか、ほぼ金儲けですよ、あれは(笑)。
松本
芸能界とつながっていられるかもしれない権、ってやつ?
図師
あれは、どうなんですかね?その話すると、また話がそれてっちゃいますけど(笑)。
松本
(笑)
図師
それも感じ取ってしまい、お金払ってるだけだなあ、って。(事務所には)所属できねえだろこれ、みたいな。
松本
うん。

原体験は付き人

図師
それで、すぐやめちゃったんですよ。その後、何もないときに、ちょっとしたつながりで舞台出ない?って言われて、出たんです。友達の劇団だったかな、ちょっとあんまり覚えてないんですけど。
で、そこで出会った女優さんが、僕の今の先輩となる芸人さん、コントグループがあるんですけど、そことつながってたんですよ。その公演中に僕がコメディ好きだってことを察したんでしょうね、その方が。「今度私の知り合いで単独ライブがあるから手伝わない?」って誘ってくれたんです。
松本
ちょっと聞いていいですか、そのグループ名を。
図師
あ、フラミンゴさんです。
今は3人ではそんなに活動してないです。みんな3人バラバラで、役者さんやったり、作家さんやったり、CMにバンバン出ていたりとか。
松本
へえー。
図師
当時、多分、東京のグループでも群を抜くぐらい単独ライブをしてたんです。
松本
そうなんですか。
図師
で、今は無き銀座小劇場って会場でやったんです。
松本
懐かしい!僕も立ったことありますけど(笑)。
図師
あ、ほんとですか!?
その時に、ゲネかなんかやってたんですよ。「初めまして~どうも~」って。それが、めちゃくちゃ適当なんですよ。声も低いし(笑)。
松本
適当??
図師
適当なんですよ。なんか、ふぁ~~~~ってやって。それ見て「えーっ?」って思って。でも、客がドンと入ると……、
松本
はい。
図師
死ぬほどウケるんですよ。
松本
あー。
図師
やってることが全然違うんですよ。
松本
もう、芸人さんのリハーサルのあれですね。
図師
あれですよ。あれを目の当たりにして。
図師
それで、まず、うまいなって。うまいというか、すごいな、と思って。これだけ人を笑わせられて、芝居も上手。(一方で僕には)何もない。学ぶならこの人たち!って思って(笑)。そっからもう、単独ライブは全部手伝う。僕がトラックに乗り、
松本
ほう!
図師
パンチカーペットを引き、
松本
へぇ!
図師
黒子になり。
松本
自ら修行に行ったわけですね。
図師
そうです。場面転換で僕がボックスを出す、とかっていうのを何公演かずーっとやってて。
松本
すごいですね。ほんと、付き人みたいなもんですね。

図師
まあ、言ってしまえばそうですね。
舞台袖でずーっと観てたんですよ。だから僕のやってる芝居は、ほぼほぼそこの人たちからパクってますね。
松本
なるほどー。
図師
舞台上でやっているものに関しては、そこで培われたものなんです。ずーっとそこで手伝いをやったときに、(フラミンゴさんの)3人のうちの作家さんが舞台をやるってことになって、その時に僕を呼んでくれたんですよ。
松本
はい。
図師
それが結構コメディだったんですけど、いざ演出を受けたら、まあー、何にもできない(笑)。
松本
あれだけ観てたのに(笑)。
図師
あれだけ観てたのに(笑)。ずーっと僕だけシゴかれるっていう。
松本
あー、最近ならちょっとないぐらいストイックな弟子入り生活感が(笑)。
図師
まあ、勝手に僕が付きまとってたところはありますけれど。
松本
図師さんにそんな原体験があるとは思わなかった。
図師
あ、ほんとですか?ただ、教えてもらってないですから。
松本
その付きまとっていたっていうか(笑)、付き人やってたのはいつ頃ですか?
図師
でも最近までですよ、20…
松本
あ、そうなんだ。
図師
あの舞台いつだっけな(笑)。26…27…。
松本
今おいくつでしたっけ?
図師
36です。
松本
じゃあ、10年前ぐらい。
図師
そうですかねぇ。それぐらいまでは、結構そうやってお手伝いしたりとか。そこから舞台をやりだして、事務所にも入ったりして。だから培ってるものは僕の中では全部その時期の体験からだな、とは思ってますけどね。
松本
なるほど。

(つづく)