「Life is Numbers」の脚本演出家トークショーで語り切れなかったことをつらつらと書いてみようと思います。
トークショーで一番お気に入りのシーンは何ですか?と質問されて環奈と九藤のラスト
「結婚しようか」
「何でこのタイミンングなのか分からないですね。いいよ」
を挙げましたが、初演の時に実はすごく悩んで、最後まで環奈がプロポーズし続けて九藤がいいよと言うバージョンですが、九藤がプロポーズするバージョンも存在したのです。
環奈「素敵な映像ね」
九藤「結婚しよっか」
環奈「ん〜何でこのタイミングか分からないですね。いいよ」
というバージョン。稽古場でやってもらって、ミスターライナバこと初演出演者松本稽古さんにジャッジしてもらったのですが、計測不能にどっちもいいとなって、結局今のバージョンになりました。このシーンの心理はもう何か理屈じゃないんだよね。
他にも好きなシーンや台詞はいっぱいあるなあ。遥(剛)がロックアイスを買いに来るシーンも好き。拓実(七菜子)を描かずに病気の進行を描くという脚本家的な目線もありますし、財布忘れて次回でいいと言われる感じとか。後半の悲しい流れにスイッチを入れる良いシーンかなと思います。
これはバリバリ脚本家目線なのですが、四谷(五十嵐)が「やるぞ、銀行強盗」と決意するシーン。とにかくすれ違いの連続がその台詞を言わせるのですが、そのすれ違いをコツコツ積み上げたなあと。四葉は一芽と仲良くなり、教授に彼氏と間違えられ、そして一芽に渡した乱数表のプログラムがクラッキングに悪用されたと知る。その一芽もネットの悪戯プログラムに騙されていて、四谷(五十嵐)も二乃宮(二階堂)を思って自省した時に起こる事件。物語冒頭で「銀行強盗でもやろうかな」と始まる四谷(五十嵐)が本当に決意するまでを丁寧に積み上げられたかなと思います。
その後びっくりするくらい雑な計画で結果オーロラビジョンの停電に成功するのですが、そのリアリティとコメディの塩梅とかもね。コメディリリーフで愛すべき彼らがいい仕事するというね。これはお手本にした映画「ラブアクチュアリー」で最後に子供が空港のゲートを通るのに、職員達がロックスターが全裸で歌ってるテレビを思わず見ちゃう隙に、というバタフライエフェクトを参考にしました。空港職員が目を逸らすかよ、みたいなツッコミを入れようと思えば入れられるんだけど、ロックスターが全裸で踊るまでのドラマがしっかりあるから許されるんですよね。ちょっとだけ嘘感もロマンチックには必要なんだな。たぶん。
演出的に気に入ってるのは、遥(剛)が「数字増やすぞ」と交通調査アルバイトに出るも上下線事故で車が一台も通らず、そのチェッカーのゼロを見て病院へ駆けつけるというシーン。初演にはない演出で、遥(剛)がチェッカーを見るタイミングでマスターが店の黒板にゼロを書くというもの。五味さんを演じた遊佐さん、十和さんを演じた内海さん、どちらも情緒?のあるゼロの書き方をしてくれました。
トークショーで一番語れなかったのは男女逆転(全員じゃないが)の2バージョン公演についてですかね。まず余命宣告された主人公が女性(初演はクローバーの拓実)だと印象が全然変わりますね。ヒロインポジも女性が男性になってこれも全然印象変わる。どっちも泣けるけど。両バージョンで変更したのはバッティングセンターとゲームセンターのシーンんのみ。そしてクローバーは拓実がわざと空振りするんだけど、ハートは剛が病院行きをかけてUFOキャッチャーをやるけど失敗という流れ。あとは最後に拓実(七菜子)の死を伝えらた後に泣く遥と剛。遥はすぐに大声を出して泣いたのに対し、剛は先に膝から崩れ、そして絞り出すような泣き声でした。このシーンは水崎綾さん、石渡真修君の気持ちに寄り添おうと、暗転のタイミングなどを変えました。
男女逆転で面白いかったのは、坂上(坂下)夫婦ですかね。クローバーの坂上夫婦は姉さん女房でライター業をやりながら主夫を頑張る今どき?な夫婦となりました。この作品にはこういう時代性はよく合う感じがしますね。今後は同性婚カップルとか出てもいいかもね。
クローバーとハートで結構性別が変わったのですが、やはり主人公から関係性を作っていくので、ハートで言うと、女性が主人公だから心臓弁膜症のカフェ店員は男性がいいな、するとオーナーは女性にしてみようか、といった具合。クローバーのロック歌手を宇田川さんにやってもらいたくて、そうなると同級生はクシダさん演じた一澄さんで女性となり、つまり夫は南沢さん演じた主夫の二平さんとなった訳です。
男女逆転で一番この人じゃないと成立しないぞと思ったのが、はらみかさんが演じたコンビニ店員借金200万の五十嵐滝子です。はらみかさんならやってくれると自信満々のオファーをし、新年イベントで読んでもらって勝ちを確信しました。はらみかさんは「クズ役枠で呼ばれる」と冗談交じりに語ってますが、そんなことはないよ。今後もクズ枠で呼ぶかもしれんけど。
主題歌作詞秘話はトークショーで語りましたが、本当に初演の呪縛というか評価というか、それを超えられないとしたらここかなと思いました。素敵な楽曲デモが来たのですが、作詞は悩みに悩んで、結局ストレートな歌詞で最後「グバラブ〜!」という台詞になりましたが、ダメなら「大好き〜!」とか本当に素直な二人の気持ちを歌にしようと思いました。今配信準備中です。もう少々お待ちください。
という訳で、久々に公演直後に振り返り的な文章を書きました。この作品映画にしたいなあ。映画にしたい。その時は自分で監督したいな。夢を言葉にして頑張ってみます。
アーカイブ視聴、ネット通販は25日までです。お見逃しなく!
クローバーside(5月6日13時回・終演後イベント「劇団員トークショー」付き)