今年一年振り返り①「星の少年と月の姫」

今年一年を振り返っています。

1月12日〜16日
ILLUMINUS「星の少年と月の姫」
シアターKASSAI
演出

毎年書くけどね、これ今年か〜。

演出を担当しました。初めての団体さんILLUMINUSさんで人気を博した作品の再演とのこと。こういうので演出として呼ばれるのって、プレッシャーもありますが、楽しみの方が強いですね。評判を得た作品をさらに面白くするにはどうすればいいんだろうというワクワク感。プレッシャーよりワクワクが勝つ。私の場合特に「演出のみ」の仕事はとても楽しいし、絶好調のことが多い笑。脚本(新作)となるともう、ワクワクをしんどさが軽々と上回っていくので。

という訳で、絶好調モードで稽古を始めた私。女優のみの座組でほとんどが初めましての方々。久々のガールズ現場でちょっと調子を戻すのに時間がかかりました。絶好調じゃなかったんかい!

僕は演出だけの時は、あえて最初は脚本を雑に読むようにしています。それはそれくらいの感覚が観客の最初の印象と近いんじゃないかと思うからです。つまり読めてなかった部分は、観客が最初に観た時はそれくらいの感覚なんじゃないかという理論。その後演者さんと一緒に丁寧に読み込み、どんどん深掘りしていって、最後にまた視点を観客に戻す、そんな演出を心がけています。

脚本は初演は演出もされていた吉田武寛さん。この本はなかなかに深く読み込み甲斐のあるホンでした。

花火大会の夜に演劇部の部員が水難事故に遭う。調査に入った心理カウンセラーは、演劇部が上演するはずだった「星の少年と月の姫」という物語に興味を示すが…。

といったあらすじで、劇中劇を繰り広げながら事件の謎に迫る構成の物語。ミステリー要素、劇中劇のファンタジー要素、そして演劇部の青春要素、といった感じで多層構造がこの作品の魅力でしょうね。

またどこかで再演されることもあるかもなのでラストのネタバレは伏せておきます。

演出としては劇中劇のファンタジー部分を作り、その後事件の謎に迫るミステリー要素に進み、最後に演劇部の青春感(残酷な部分も含め)を乗せていったように思います。

ファンタジーと言えば、シンプルな舞台セットだったので、あの光るキューブは発明レベルの小道具でした。あれは水に入れると光るパーティグッズで、カクテルグラスに入れたりして飾るものみたい。確か振付の松本稽古さんに「祈るように手を開いたらぽわって光らないかな」といった無理難題をふったところ「こんなんありますよ」とググってくれて出てきた品物だったと思います。安いです。30個で1500円とか。買って試してみるとどうやら人間の汗にも反応して光るぞとなり、部長役の須山さんがパッと手を開いたらキューブが光り、床に落とすと光が消える、という演出をやりました。よく役者さんで「手汗がやばい」という人がいますが、この現場においては重宝されました笑。

他にも劇中劇に銀河鉄道が出てくるので床にばらまいて星屑のように見せたり。これはキューブの水に反応する部分に湿らせたバンドエイドを貼って、ずっと光ってるようにした演出助手増野くんのアイデアです。途中からもう光るキューブ祭りのようになり、ラストシーンでは演劇部員それぞれの想いの代償のような意味合いで使いました。

そうそう、ラストシーンと言えば主人公の白石まゆみさんと草場愛さんが○○に乗ってる絵を光が包んで終わるのですが、ブラックアウトならぬホワイトアウトがついにやれました。映画とかではよくありますが、演劇では無理かと思ってましたが、機材の発達か、ついにやれたなあと感動しました。本当は真っ白になって、その後暗転してるんですけどね。

逆に人力でアナログなこともたくさんやりました。シンプルな舞台セットを逆手に取って、風、水、穴、などを人が演じる「演劇部メソッド」これは面白かったな。困ったら「演劇部でなんとかして」となんでも人でやってみるという笑。穴は流石にダメだろうと思ったら、案外良かった笑。

主人公の二人の超早着替えは衣装さんも「過去最高速度の依頼です」と苦笑してました。結果、舞台上で一気に左右から引く一瞬早替えとなり、カッコ良かったです。いろんな無茶な依頼をいろんな叡智で叶えてくれてるんですね。感謝。

そんなこんなで、演出としては非常に良い仕事が出来た作品かなと思っています。そうだ、急遽ピンチヒッターで出演となった嶋谷さんは大変そうでしたね。それを座組の皆が支え、とても良い座組みだったと思います。

上演記録サイト

星の少年と月の姫

次回は、
松本プロデュース「ザ・コメディショー」です。お楽しみに!

トムコラム