※2017年9月5日、都内某所にて
図師光博×松本陽一(9)
白を目指して
- 図師
- ん~、でも、なんか、聞いていて良い部分ではあるなって思ったのが、僕、車でいうとニュートラルで居たいんですよ。さっきの踏まれても、なんともないとか。何事もニュートラルで居たいんですよ。……それは良い部分でも悪い部分でもあるとは思いますけど、役者だったら本当は良いじゃないですか。
- 松本
- うん、良いと思いますよ。
- 図師
- ね、どっちでも行けるよっていう状態だし、究極言えば、どこにも属しません、と。そっちに呼ばれれば、僕はそっちに行くし。なんのしがらみもないですよ、っていうものすごいニュートラルなところに居たいんですよね。
- 松本
- それはメンタル面で?役作りの面で?
- 図師
- う~ん、両方ですね。メンタルでもそうだし、役でもそうですし。稽古場でもそうです。
- 松本
- うんうん。
- 図師
- だから、僕はあんまり稽古場で、これやってやろう!とかって無いです。
- 松本
- うちの土屋くん(6番シード土屋兼久さん)がDプロジェクト(劇団発映画)の撮影の時に、映画って(撮影時間が)長いじゃないですか。
- 図師
- はいはい。
- 松本
- いかにニュートラルで待つか、っていう技術を学んだって言ってましたね。いつでも行けるし、力んでいない状態を長い時間キープするのが上手くなったって。
- 図師
- う~ん、なるほど。はぁ~(感心)。
- 松本
- それはなかなかなもんだなと。それはメンタリティじゃないですか。でも、稽古場でも似たようなことありますよね。
- 図師
- ありますね。松本さんが言ってくれたことに対して、そういう部分が多少ある、できてるって思う部分もあるし。なんかね~、役者って難しいですよね。
- 松本
- うん。
- 図師
- 何か色があったほうが良いと思う部分もあるけど、あんまありすぎると邪魔になる時もあるし、……だからやっぱ真っ白がいいなぁって思うし。
- 松本
- (少し考えて)……真っ白を目指しているのかもしれないですね、道として。逆じゃないですか普通。白に色をつけていくみたいな。例えば、初舞台は白いキャンバス、みたいなことを言ったりするじゃないですか。
- 図師
- ……あぁ……確かに……。
- 松本
- 図師くんは、白を目指し続けて、色を抜いていってる作業をしてるんじゃない?
- 図師
- ああでも、そうかも。
- 松本
- 話をまとめていくと。
- 図師
- でもたまにやってること違いますよね。
- 松本
- だからまだ白にはなりきれてない。
- 図師
- ああ~。
- 松本
- 白にする試行錯誤をしているんじゃないかな。
- 図師
- なるほどなぁ~。
- 松本
- そういう道もある気がする。面白いね。
- 図師
- でも、言われたら、そうかなって思っちゃいます。
- 松本
- これ、白になった後が面白いね。どうするのか。
- 図師
- 灰になって死んじゃうんじゃないですかね、はっはっはっはっ。
- 松本
- 白は終わりではないでしょ。始まりでしょ?
- 図師
- あ、そっか。始まりか。そっか、そこ…目指して…んのか。
- 松本
- 例えば、沖野くん(企画演劇集団ボクラ団義沖野晃司さん)でもいいし、宇田川さん(6番シード宇田川美樹さん)でもいいし、小沢さん(6番シード小沢和之さん)でもいいんだけど、もう白にはなり得ないでしょ。
- 図師
- え、僕って、(白になれる)可能性あるんですか!?
- 松本
- なんかなり得る気がしたから、今思いついたんだよね。
- 図師
- あー、じゃあ良かった。…そうですね。…そっかぁ…。だったらまだ、チャンスは……。
- 松本
- なんだろね。うーん、チャンスというか…。
- 図師
- だから、どう思われてるのかな~って。
- 松本
- 白が始まりって話もしましたけど、例えば白にならないと、いっぱし(の役者)ではないってことではなくて、そういう究道、芸の道を究める道順が、人と違う“白”っていう面白さ。完全ニュートラル化を目指すっていうね。
- 図師
- ふっふふふ。
- 松本
- 究極はバイプレイヤー(脇役)のほうだと思うんですけどね。
- 図師
- そういう意味ではそうですよね。
- 松本
- 野球でいうと6番が似合う。
- 図師
- ああー、4番になりたいんですけどね。
- 松本
- ははっ。
- 図師
- すごくまとまった話になりましたね。白になりたいって、そう願ってる部分はあるのかも。昔から、いっつも表情や感情をバレたくないっていうのもそうかもしれないし……。
- 松本
- その(白になろうとする)プロセス自体を、見ているお客さんも、周りの人も面白がってくれてるんだと思うんですね。
- 図師
- そうですね。白か……だから俺、白いTシャツばっかり着てるのかな。ふははははは。
- 松本
- バイプレイヤーのようで、バイプレイヤーじゃない。カメレオンのようでカメレオンでない。この感じは、今の言葉でまとまったような気がする。
- 図師
- うん、がんばろ。ふふふ。でも、意外に話せるもんですね。
- 松本
- 意外に話せるもんでしょ
- 図師
- (この対談企画、)すごい企画立てましたよね。
- 松本
- 楽しいんですよ。
- 図師
- 楽しいですねぇ。
- 松本
- (インタビューを)読んでる側も、ちょっと食い込んだ話とか知らないから改まってこんなに長く話すこととか、媒体がないんですよ。
- 図師
- そうですね。パンフレットのインタビューとかだと、どうしてもその時の作品の話とかになっちゃうから。
- 松本
- だからできるだけ関係ないタイミングで呼ぶのがいい。一緒にやってる時に話すと今の芝居の話をしちゃうのと、役者と演出家って関係ができちゃってるから、多分そんなに面白くならない。
- 図師
- ですよね。今日は面白かったです。
- 松本
- 終わりにしましょうか。ありがとうございました。
- 図師
- ありがとうございました。
【スタッフ後記】
図師さん、どうもありがとうございました。
対談終了後、スタッフのわがままで、公園内のブランコに乗っていただきました。
松本には「それ、いる??」と突っ込まれましたが、図師さん似合うんじゃないかなあ、と思って(笑)

なにこれ(笑)

シュールな笑顔

お疲れ様でした!
(おしまい)