今年一年を振り返っています。
7月
UDA☆MAP
「Dressing Room」
下北沢亭
いきなり直球ですが、この演目は好きですね。宇田川Pが「二人芝居で長く続けられるものを作りたい」という話からこの物語が生まれました。もう一つ、2脚のアンティークな机と椅子があって、そこから場所は時代なんかも考えました。そうやって生まれた二人芝居×3作のオムニバス。紫水館という古びた劇場の楽屋が舞台で、そこに集った女優たちを描きました。時代をバックトゥーザフューチャーのように、現代、ちょっと未来(ほぼ現代ですが)、この紫水感が出来たばかりの大正時代(よく考えたら重要文化財レベルの建築物)と変わっていく形でした。全体を通してあんまりリンクリンクせず、ほんのりとだけ繋がってるくらいがいいなと、十銭銅貨一枚だけを3作品を通して登場させました。この辺りの塩梅は撮影をしてくださった山岸謙太郎監督が「絶妙」と誉めてくれました。今までオムニバス縦に繋がる系を色々やってきた自負があるので、ふたりカオスとか、最後の1フィートとか、だから今回は絶妙な塩梅にこだわりました。あと「タイラー夫人の憂鬱」という劇中劇ですね。1話ではその古典劇のオーディション。2話はまさに上演中。3話はこの翻訳劇が日本で初めて上演される頃。ここからは各話ごとに。
第一話
「セリフを、合わせろっ!」
森岡悠×大滝紗緒里
大物演出家の舞台オーディションにやってきた子役からの女優と、楽屋で生配信なんかしてるバラドル。まさに水と油の二人の漫才のような掛け合いを、森岡さん大滝さん若い二人がお見事にやってくれましたね。特に大滝君のコメディ班は初めてだったのですが、本人お笑い好きらしく(稽古終わり頃に知った)、ポテンシャルと探究心が高かったですね〜。知的ボケ怪人って感じ。あ、令和ロマンみたい。いや〜ナイスコンビでした。
第二話
「下手舞台袖の幽霊」
那海×栞菜
脚本家としてはこの話が今年書いた短編で一番お気に入りかも。那海さん演じる元朝ドラ女優と、栞菜さん演じる同じ事務所のバーター女優の本番中の楽屋での掛け合い。気だるい緩い感じから始まって、劇場の停電を経て、なんだか不思議な心の繋がりが生まれるというちょっと寓話っぽい話。那海さんの中御所(大御所じゃなく中)のわがまま女優感と、それをいなしながらも振り回され最後は熱くなっていく栞菜さんの後輩女優。いいバランスといいキャッチボールでしたね。幕が開いて第一声まで2分近く二人がメイクしてるだけの無言劇は毎度観てて面白かった。
第三話
「文明開『花』の音がする」
真野未華×小林亜実
時は大正時代。この紫水館という劇場ができたばかりの頃。まだ女優という職業への理解は薄く、差別的な扱いを受けることもあった。そんな時代でひたむきにお芝居に向き合う二人。一人は演劇学校の優等生で財閥の生まれの澄子(真野未華)。もう一人は夫と娘を村に残し、特待生としてやってきた貧乏な律(小林亜実)。価値観の違う二人がぶつかり合いながら「タイラー夫人の憂鬱」の上演に向かうが…。という物語。難易度は鬼高い脚本だと思います。それだけにやりがいもとてもあっただろうと思います。真野さん小林さんどちらも相当苦労してましたが、鬼気迫る演技で圧倒してくれました。小林さんの超長台詞は、松本脚本史上最長だと思います多分。
この演目は最初に書いた通り、宇田川Pも再演を重ねて行きたいと話してましたので、いろんな女優さんといろんなコンビでまた観ることができるんじゃないかと思います。6人の実力もありますが、順調すぎる稽古で、相当な数の通し稽古をやれました。通常の2倍以上かな。仕上がって尚稽古する重みや深みはある意味とても勉強になりました。
次回は、
8月
松本プロデュース
「ザ・コメディショーSecond」
です。お楽しみに!