今年一年振り返り③「ペーパーカンパニーゴーストカンパニー」

今年一年を振り返っています。

10月
BE WOOD LIVE主催
「ペーパーカンパニーゴーストカンパニー」

6番シードで2回、OILAGEという東西の役者を集めたユニットで1回上演され、大阪公演も何度かやっている初期松本の代表作の再演です。初演が劇団10周年の演目だったので、ええと、約20年前のホンになるのか。20年前!!あれ、15周年だったかな?記憶が曖昧、ちょっと調べますね。

調べました。

あ、やっぱりあってました!2003年の10周年記念公演、劇場は東京芸術劇場ですね。おお、歴史あるホンだなあ。

この演目を劇団員であり、女優であり、舞台プロデューサーでもある宇田川美樹が「ぜひまた上演したい」ということで実現しました。今作は宇田川はPに徹しているので、冠もUDA☆MAPではないんですね。

まずはその宇田川のキャスティングが素晴らしかった。主人公は妻を亡くしてちょっとやさぐれている新聞記者、陵(藤堂瞬)とその死んでしまった妻の幽霊・春子(高橋明日香)。宇田川が「とにかく身長差が大事」と熱弁をふるっていたのですが、まさしくその通りで、ラストシーンのコントラストたるや。他にも宇田川は結構身長(つまり見栄え)にこだわってましたね。図師くんやダイラくんのスーツ男子とか、クシダさん演じるデスク(副編集長みたいなポジ)とかわのをとやさん演じる局長との対比など。

そして作品の要である、幽霊が見える記者、楓役に栞菜さん。この栞菜が非常に素晴らしかった!過去宇田川や椎名が演じてきたスーパーハードな役ですが、栞菜さんの持つコミカルさにしなやかさとかドSな感じ?とかが加わって素晴らしいトップ下でした(サッカー例え)。

基本的にみんな良かったので役者褒めちぎり振り返りになりそうですが笑、主演の藤堂瞬の大人の色気、ヒロイン高橋明日香の最後の涙で泣かなかった人いないんじゃないかな。この演目はやっぱりラストシーンが決め手と言いますか、最後の陵と春子の別れのシーンですね。あらゆる手を使って陵に気持ちを伝える春子。しかし陵には声も聞こえなければ姿も見えない。そこで起こる奇跡…。これは初演の時に「天に召される別れって舞台では難しいなあ。ほんと映画みたいにCGで消えてくれないかな」と大いに悩んだ結果思いついたのが「腕の中に抱かれて消える」だったのです。あのシーンがあるから今でも上演し続けられている普遍的な物語になったんじゃないかなあと思ってます。

稽古は基本サッカー戦術の落とし込みのような様相でした笑。この人上がったら君はポジションチェンジ、役割も当然変わるから臨機応変にね、といった具合です。その中で図師くんがとてもいい仕事をしてたなあ。ボランチのポジションなのですが、周りを見ながら自分の位置を取り(それは舞台の立ち位置という意味よりもそのシーンの役の立ち位置といった意味合いが強い)、前に出て行く結城や栞菜のフォローに入り、そしてすきあらば自分で点を取りに行くという素晴らしい匠の仕事をしていました。
オオダイラ君にはよく稽古場で「ポンコツ!」って怒ってましたね笑。そういえばOILAGEの時もベテラン俳優さんがポンコツ呼ばれてたなあ笑。この脚本は超高速で「え」「あ」「楓」「そんな」「おい」といった3文字以内のセリフが20行続くような超高速パス回しなのです。ダイラ君演じる記者菱沼はそういうセリフも多く、セリフが抜けたら「ボールロスト!」なんて言ってました。ダイラ君もイケメンからコメディ班まで幅広い役者だなあと思っています。同じようにクシダさんも相当の素振りを行ったんじゃないかな。元々不器用ではない俳優さん達をもってしてもこのホンはえぐかった。

ベテラン陣の存在感はやっぱりすごいです。局長役のかわのをとやさん、ホームレスの幽霊、二郎さん役の佐藤正宏さん。小劇場でご両名が揃う舞台なんてそうそう無いと思います。それでお二人ともストイックなんですよね。お二人の背中は若いキャストには得難い経験だったと思います。

あとは出番はピンポイントだったけど、抗議する人権団体のリーダーを演じた阿部博明は地味にいい仕事をしましたね。決して悪役と思わず演じてほしい、世の中に普通にいる人で演じてほしい、とだけお願いしましたが、絶妙なリアリティだったと思います。

総じてキャストの印象ばかり書いてしまいましたが、当初宇田川は「毎年やっていきたい演目」と言っていました。しかし終わってみると「来年同じクオリティ、それを超えるクオリティを出せる役者が簡単には見つからない」という理由で毎年公演は断念したそうです。それくらいこのキャストはハマっていて、そして屈強でした。とはいえ何年か後にはまた上演できるのではないかと思っています。幽霊が見える見えない、死んだ妻の幽霊と夫との別れ、などベタ要素かなり強いのですが、だからこそ普遍的にお客様の心に響くのかもしれません。
このホンを別の人の演出で見てみたい、とも思ったのですが、これだけの高速感のある脚本は、演出で新味をそうそう出せるものではないんだろうなあとも思ってます。

個人的には公演中止となった公演の次の公演だったので、落ち込んでいたところから、作品や座組みに力をもらって、やっぱ演劇っていいなあと思わせてくれる公演でした。

さて、これにて今年の公演振り返りは終わりなのですが、次回、公演中止(延期)となった「袴DE☆アンビシャス」と「12人の私と路地裏のセナ」をネタバレにならないよう少しだけ振り返ります。

トムコラム