今年一年を振り返っています。
さあ、今年の天王山がやってきました。
9月
UDA☆MAP10周年「新宿アタッカーズseason3〜孤島の洋館殺人事件〜」
宇田川美樹がプロデュースするユニットUDA☆MAPも10周年。まさにその祭りにふさわしい超豪華ゲストが集結しました。
まずはそのキャスト表を見た時に宇田川さんに真っ先に言ったのは「2時間では絶対おさまらない。休憩ありの2時間半にしてくれ」これだけの女優陣が集まり、10周年で色々盛り込んでいったらまず2hには入らないなと直感で思いました。そして休憩ありで書き始めたのですが、出来上がってみたら本編2時間50分休憩10分の合計3時間のガチガチ超大作になりましたてへ。千秋楽はマチネが終わり、休憩0分ですぐ集合して円陣を組んでソワレへという凄まじいスケジュールでした。出演者は「あれ、デジャブ?世界はループしてる?」とか言ってました笑。脚本家松本よ。全セクションに謝れ笑。
この新アタは人気のシリーズもの。江戸時代とミステリーとグズグズコメディがまさにいい塩梅で混ざり込んでるアニメみたいな世界観が、やっぱ描いてて、見ていて楽しくなります。主演の三姉妹、宇田川さん、石井陽菜さん、若林倫香さん。このシリーズものは代替わりシステムで、同じキャラを代替わりしながら進んできました。三女夢或は今回から若林さん。これまで福田真夕さんがやっていた乳首かゆいでお馴染みの獏露の親分は七海とろろさんに代替わりしました。初代次女琵輪を演じていた高橋明日香さんが別の役で、しかも容疑者役で、最後は真犯人で、戻ってくるのもなんか面白い縁ですね。シーズン2から琵輪役の石井さんがお休みの時にあすぴーに琵輪の代役をやってもらったのは楽しかった笑。
ミステリー部分はいつも唸るほど苦労します。新アタは毎回ネタ帳が二冊になります(普通の作品はだいたい一冊)。真犯人があすぴー演じるキャロライン留とは最初から決めていたのですが、容疑者7人いるとマジでしんどかった。せいぜい5人だなと思った。または絶対犯人じゃないだろ的な、モブ的な容疑者(金田一君だといるよね)が必要なんだと思った。7人全員にドラマがあったら、そりゃあもう3時間になりますわな。感想で「松本さんはコロナ対策で休憩が入るのをいいことに、好きなだけ書き切った」みたいなのを頂戴しまして、はい、まさしくその通りです。
舞台美術もここ数年やってないスケール!そしてあんな巨大セットを出演者だけで、しかもほとんど女性の座組でやるという鬼畜の所業。稽古場では「ゲネプロ(本番直前の通しリハーサル)やろうぜ!」を合言葉に、相当な時間を場面転換に割いた気がします。そして分量といい、物語尺といい、演出家としては常に「押して」いる気持ちで毎日稽古したなあ。だいたい本番直前になるとその時計は元に戻るんだけど、今回はずっと最終日まで、いや、初日まで、この感覚でした。よく場当たり(劇場でのテクリハ)は戦場だなんて言いますが、マジで戦場でした。キャストスタッフに感謝。
しかしキャストは豪華でしたし、真摯でしたし、素晴らしい座組でした。第一回のUDA☆MAPに出ていただいた大竹えりさん、第二回からの中川えりかさんというベテランから、石井さん、栞菜さんといった沼田世代(今作った造語「沼田⭐︎フォーエバー」)、そして新木さん、結城さんと言った若手まで(二人は場面転換で凄まじい働きをしてくれました)が切磋琢磨するよき現場だった。
真犯人の高橋明日香さん。台本は稽古しながら書き進めるパターンで、実は本人にだけ最初から「犯人だよ」と伝えてました。他の人は新着台本が配られるたび「誰々が怪しい」などと推理を巡らせます。実はそんなキャストの様子をリサーチしながら「ふむふむ、お客さんはこういう推理思考になるのか」」など思いながら参考にしていました。でも最初からずっと留さんは真犯人人気ナンバーワンでした笑。そして後半に差し掛かったある日、もう隠せないと思って「そうです、真犯人は留です」と皆に伝えました。全く予想してなかった人もいて、的中させた人もいて、その反応は楽しかったですね。そういう犯人クイズの間あすぴーはずっと「犯人は私」と稽古場で思いながら隠していたわけです。ごめんよ。
しかし最後は留さんと水野さん演じるマチルダさんの愛の物語にしたかったので、それはうまくいったかなと思います。それぞれの思惑が本当に交錯するので、稽古場では質問の嵐でした。やっぱミステリーは難しい。
栞菜さん演じる歴史学者の梵著が大好きすぎて、続編登場を匂わすラストにしてしまいました。コミカルなのにミステリアス。そして実はFBI的な幕府最高機密方だったというオチです。ほんと続編に出る前からスピンオフが書きたいキャラですわ。
振付は新アタ2から引き続き松本稽古さん。メインテーマは、シリーズの振り(前回の)と新しい振りの融合が面白かった。同じ振りというのもシリーズものの醍醐味なんだなと思いました(その辺のチョイスはお任せしてました)。
中アクト(いまだいい名称決まらず)は平義隆さんの書き下ろし楽曲「花火」。この曲のデモを聞いて、ラストシーンや花火師辰次の物語が生まれました。このアクトの終わりごろ、死んだマチルダとその手を握る留、そして他の人物たちが儚い花火を作る。あそこは絶品に好きです。人って、ダンスって、花火を表現できるんだな(もっと細く言えば散り際の儚さ)と感動。
とにかくハードな公演で、コロナもそうですが、怪我なく事故なく終わったことに安堵感がすごかった。
でも10周年の花火はあげられたんじゃないかなと思っています。
そしてこの大変な年に3作品のプロデュース作品を送り出した宇田川さんのバイタリティはシンプルにすごいんじゃなかろうか。
新アタシリーズはまだまだ続きます(の予定)。少なくともシーズン5までの構想はある。三姉妹の出生の秘密はいい加減描いていかないと怒られそうですね笑。
さて振り返りはあと1作品!大晦日に書きます。
次回はいよいよ今年ラストの公演「ザ・ボイスアクター〜アニメーション&オンライン〜」です。