サカキバラダイスケ×松本陽一(10)
海外と言葉の壁
- サカキバラ
- この前、そのアリスインプロジェクトの鈴木さんと、海外に行ってきたんです。台湾と香港とタイに行ってきて、それぞれの小劇場とかライブハウスを見てきたんです。で、台湾って意外に小劇場があるんですよね。
- 松本
- へぇー。
- サカキバラ
- 台北だけでたぶん10個以上あるんです。そうすると、ほぼそれって大阪と一緒?っていう。
- 松本
- ああ、日本でいうと。
- サカキバラ
- 規模感ですけど。ってことは、上手いことやれば台北でやれないこともないのかなぁ、と。そうすると、台湾・日本公演とか、台湾・東京・大阪公演とか楽しそうじゃないですか。
- 松本
- つまり、台湾に劇場を持つということですか?
- サカキバラ
- んー、かもしれないですね。でも違うかもしれない。
- 松本
- シアターKASSAIの次は、シアターTAIWANですか。
- サカキバラ
- んふふ(笑)。どこかと提携をするってことかもしれないですし、ちょっとわからないですけど。台北は興味ありますね。
- 松本
- 僕は海外公演は…無くはないんですけど、ちょっと現実的に…まぁ無いですね。無いと言うかそれどころではない(苦笑)。
- サカキバラ
- あはは。それはたぶん、ベースとして、やっぱり演劇って言葉の壁がすごく大きいんですよ。
- 松本
- そうですね。
- サカキバラ
- そこをそもそもクリアすべきなのかどうか、っていう問題があって、演劇ってかなりその時代時代に沿っているんです、良くも悪くも。でも、実際に明後日からここで大正時代の話 が始まるわけですけど、その大正時代が何かと言うと、平成を生きる松本陽一もしくはその松本陽一が作った脚本から演者さんが想像した大正時代、なわけです。
- 松本
- はい。
- サカキバラ
- なので絶対に現代性っていうのが入ってくる。
- 松本
- 確かに。
- サカキバラ
- 時代だったりとか文化の根幹となる一番大きなところって、やっぱり文字・言葉なんで、そこを乗り越えて演目を作っていくことにどんな意味があるのか、どれだけ意味があるのかっていうのは考えなきゃいけないですね。それもあって、ノンバーバル っていうものをちょっとやってみたいなって今思っているんですよ。
- 松本
- 海外でノンバーバルをやるっていうのは?
- サカキバラ
- 挑戦してみたいっちゃあ、挑戦してみたいですね、そこに関しては。でも、どういう携わり方になるんでしょうね。きっと今みたいな形ではないと思います。
- 松本
- 今みたいな?
- サカキバラ
- そう、自分の才覚で切っていく形ではなく、もうちょっと引いたところでの取り組みになるのかなって。
- 松本
- 分かりやすい言葉で言うと、ゼネラルプロデューサーとかそういうことですか。
- サカキバラ
- そういうことかもしれないですね。
- 松本
- もっとチームで、って。
- サカキバラ
- だと思います。
面白いことができるかどうか
- 松本
- 僕はまだね、日本の都道府県を巡りたいレベルですね。
- サカキバラ
- それはすごくいい試みですよね。
- 松本
- あのー、さっきのエッジが立った企画っていう意味合いで僕らも日々考えてるんです。その中で、本当にエッジが立ちすぎて劇団員に止められてるんですけど、47都道府県公演をやろうかなって。全県巡りをしてみたいんですよ。
- サカキバラ
- いいと思います。
- 松本
- 一度に全部はやれないから、まず関東・上越ブロックみたいな。
- サカキバラ
- はいはい。
- 松本
- そういうようなことを、ちょっと夢物語みたいな話をして、大変だからってやめてるんですけど。
- サカキバラ
- んふふ。
- 松本
- でもいろんな土地の新しさっていうのに、興行面というよりは作家とか劇団代表とか、舞台をやっている人間として僕は興味があるんです。その延長には台湾とかもすごくあると思います。ですが、まずはまだ見ぬ日本人に出会いたいってところかもしれませんね。
- サカキバラ
- うんうん。そうですよね。劇団公演じゃない形にするなら、少しはやりやすいかも。
- 松本
- そうですね。
- サカキバラ
- えーと全部パッケージ化すればいいのかな。例えば「天気と戦う女」のテクニカルを全部パッケージ化して、椎名くんとトムさんで回る。
- 松本
- 一人芝居にしちゃうってこと?
- サカキバラ
- いやいや、そこにその土地の人を加える。
- 松本
- ああ、土地の人たちがやるのね。軽トラック1台で全部乗せて回って。でもなんか、チャレンジャーでありたいというか、今『Dプロジェクト』という企画で、大きなチャレンジをしていて。
- サカキバラ
- そうですね。あれはものすごく面白い試みですね。
- 松本
- それもやっぱり、面白いことがしたいとか、発想はそこからなんですよね。
- サカキバラ
- ねー。
- 松本
- サカキバラさんは、すごくロジカルにいろいろ考えて、経営という言葉もついてくるようなこともやってらっしゃいますけど、ベースはやっぱりそこなんだろうなぁ。
- サカキバラ
- ですねー。面白くなかったらここにはいないと思います。一番初めに戻るんですけど、お金だけで言えばコンビニでバイトしてたほうがよっぽど儲かるじゃないですか、この世界って。あとはどれだけ自分が面白いことをやっていけるか、と、その環境作りをしていけるか、っていうところに終着するんじゃないですかね。
- 松本
- 最後にひとつ聞いていいですか?
- サカキバラ
- はい。
- 松本
- 今までで一番面白かった瞬間って何ですか?
- サカキバラ
- 一番…面白かった瞬間。
- 松本
- 何かの途中の一夜でもいいですし、何かが出来上がった瞬間でもいいし。
- サカキバラ
- うーん…
- 松本
- スナフキンが、一番満足したとかテンションが上がったとか。
- サカキバラ
- ううーん、なんだろうなぁ。ちょっとスッと答えられないんですけど、
- 松本
- はい。
- サカキバラ
- ボクの悪いところはですね、こういうことを言いながら結構引いた目で見てることなんです。だから、面白いというのは、その状況が面白いのであって自分自身のテンションが上がるっていう形では、あんまりないんです。
- 松本
- なるほどね。
- サカキバラ
- おおー、なんか楽しいことになったー!っていう、そういう見方ですね。
- 松本
- ゲーマーなんですね。
- サカキバラ
- んふふ(笑)、そうかもしれないですね。そういうのが先にあるんでしょうね。
- 松本
- 企んでる時が一番おもしろい?
- サカキバラ
- そうですね、それは間違いないです。
- 松本
- 分かりました。ありがとうございました。
- サカキバラ
- いえいえ、こちらこそありがとうございました。
【スタッフ後記】
サカキバラさん、どうもありがとうございました。
シャイなサカキバラさんは、顔出しNGとのことで、わざわざサイ(シャイだから?)のかぶりものをご持参くださったのですが、かぶった様子があまりにも異様なので、丁重にお断りいたしました(笑)
せっかくなので試しにかぶっていただいた写真を貼っておきます。
(おしまい)