今年一年振り返りラスト「おとこのはなし」

大晦日になってもうた。今年一年を振り返っています。
振り返りラスト!

11月
土矢兼久一人芝居「おとこのはなし」
木星劇場

元劇団員の土矢兼久君が、20周年記念と無期限休業前のラスト公演ということで、演出を担当しました。彼のラストかと思って稽古場に行ったら、難易度の高い脚本にメラメラと挑むある意味若い役者がいて、本当に辞めるんかなって思ったのが最初の話笑。

オカモト國ヒコさん脚本。とある死んでしまったホームレスが、死んだ後に自分の人生を振り返る物語。上演時間60分。当然一人芝居ですから、膨大な台詞量です。かつ、その人物は60歳オーバーくらいの年齢。40代の土矢には挑戦しかない演目です。最後にこの演目を選んだ土矢は立派です。演出は、この物語には聞き役の人がいて、それを観客にどう感じさせるか、の一点くらいで、稽古場は落語の稽古?みたいに私来る、土矢やる、私アドバイスする、みたいな感じでした。でもさすがに長く一緒にやってきただけあって、なんのストレスもなく作品や演技の話し合いが出来る感じは、ちょっと嬉しくもありましたね。

稽古場で、もう何年ぶりだろうか、前代表の久間勝彦さんとお会いし、まさか鞄がかぶってるとか同窓会的な懐かしさもありました。

さっき物語の中に聞き役の人がいて、と書きましたが、一番最後の最後、その存在を客席に振りました。最後の数行だけ土矢兼久は、観客に目線を置いて、物語を去っていきます。20年の歴史に関わってきた人間として、この演出がプレゼントとも違うけど、彼は様々な作品でお客様の記憶に残ったことでしょう。一旦なのかどうなのかは分かりませんが、お疲れ様でした土屋。君の未来に幸あらんことを。

2023年の振り返りはこれで終わりです。皆様良いお年をお迎えください。
来年もどうぞご贔屓に。
松本プロデュースVol.3「FOUR.」よろしくね!

今年一年振り返り⑦「屋根裏のバーニャカウダー」

今年一年振り返りもあと2作品!

10月
劇団6番シード結成30周年記念公演第2弾
「屋根裏のバーニャカウダー」
シアタートップス

まずは、私ら世代はシアタートップスでついにやれた!っていう憧れの劇場でした。三谷幸喜さんの東京サンシャインボーイズとか、僕はラッパ屋さんかな。その後一回名前が変わってお笑いの劇場になり(その時劇団員の増野が芸人として立っている!)再びトップスの名に戻ったのでした。初めて下見させてもらった時に、舞台に奈落(床下)があるのを知り、早速今回の屋根裏部屋というシチュエーションを思いつきました。トップス良く観てるぽいお客様の感想を読んだのですが、どうやらけっこうな頻度で奈落ハケ舞台があるらしい。みんな考えること同じなんすね。

4月のコルコネで、テンポ感というか、無駄のない展開というか、をかなりやれた気がしたので、この脚本は少し遊びというか、どーでもいいようなシーンも入れたいなあと思って挑んだのですが、それはそれで難しいですね〜。しいてあげれば「古今東西非嫡出子あるある」のシーンですが、それも脱線したシーンのつもりで書いてはないですしね。ゆるく面白い、は難しいなあ。

この公演の主演は、コルコネの劇団員トークショーイベントでじゃんけんで決まるという狂気の沙汰でしたが笑、わりと前から藤堂と小沢のW主演みたいなイメージがあり、じゃんけん藤堂が勝ったので、マジで良かったです!言い出しっぺでコルコネ主演の宇田川さんが勝ったりしたもんなら、全力で止めてたと思います笑。じゃんけん選抜の裏側でした。

親子ものと言っても、父と子って実は難しいのかも。だって話さないんですよ、男同士なんて。これは脚本書き始めてからはたと気づきました。会話してくれよと。舞台は会話してなんぼやと。母と息子、父と娘の物語が多いのは、そういう側面もあるのかも知れないですね。

30周年記念公演ということもあり、今まであんまりやってなかった形でもあり、劇団員を家族側にして、ゲストさんを物語でもゲスト側にしました。藤堂と椎名の夫婦、高宗の妹とか良かったんじゃないかな。3人にはとにかく芝居芝居しない芝居を追求しました。バーニャカウダーが小沢さん演じる亡き父親に変わるという大技もあるんだけど、すうっと物語を始めて、すうっと終われないかな、みたいなイメージはありました。大人の芝居というか。トップスで若い頃に観たラッパ屋さんの幻影があったかもですね笑。

サブキャラが濃かったな。まずは来夢来人のママ舞川さんですよ。コメディショーから続いてでしたが、この人なんかスイッチ入ってるよ。
そして、チャオソーレの社員で唯一幽霊?の樋口が見える存在の澄華あまねさん。ほとんどコメディはやったことがないと言ってたと思うので、おめでとうございます、コメディエンヌ大開花です。元宝塚の身体能力のポテンシャルを全身で笑いに振るとああなるんですね。いやーお見事です。またコメディやりたいですね。
僕は普段と言うか、ずっと小沢さんには厳しいと言うか、辛口というか、で長い付き合いなのですが、今回の小沢さんは良かったな。ようやく、というと変ですが、大人の男の色気が出たような気がします。外食チェーン店の経営者の品格があり、でも隠し子とかいるダメな男。プロローグのト書きに「にへらっと笑う」というのがあるんですが、それはそういう人生が見えないと笑えないのです。藤堂とのコンビも良かったと思います。

日替わりゲストさんも華を添えて頂きましま。総勢16名!
日替わりMVPコンビは…夢麻呂さんと渡邉結衣さんコンビですかね。ずっと観ていたい親子でした。

千秋楽に、30周年の最後なので、ダブルコールで舞台挨拶させて頂こうと出ていったら、ファン有志の方からバラの花束を頂きました。そして舞台監督の澤井さんからおめでとうの横断幕が。なんのひねりもないですが、めちゃくちゃ嬉しかったです。ありがとうございます。


その時話した言葉を、今後の活動の私のど真ん中に置いて頑張っていこうと思いました。

「毎公演、毎ステージ、毎分毎秒、面白い物語を作ります」

頑張ります。

次回は振り返りラスト
土矢兼久一人芝居「おとこのはなし」
です。お楽しみに!
松本プロデュースVol.3「FOUR.」もよろしくね!

今年一年振り返り⑥「ザ・コメディショーSecond」

今年一年を振り返っています。やばい、1日でも落としたら、年内間に合わない。とはいえ焦らずにね、丁寧に振り返りたいと思います。

前回、いっこ飛ばして9月の「まなつの銀河にゆきのふるほし」を振り返ったので、ひとつ戻って、

8月
松本プロデュースvol.2
「ザ・コメディショーSecond」
下北沢亭

私がやりたい人とやりたい企画をやる「松本プロデュース」の第二弾です。春先に、やりたいっ!と急に火がついて、そこから丸山正吾君と平山よっちさんを呼び出して、コロナが5類になったこともあり、久々にお酒を飲みながら企画を語りオファーをしました。その時は互いのスケジュールの良き時にということで、来年にもなりそうだったのですが、8月が行けそうだということで、わりと早い実現となりました。そして女優陣は若林倫香さんと舞川みやこさん。けっこうな回数ご一緒してきたお二人。若林さんにはラブレターの気持ちで、絶対一人芝居やってほしいなと思いました。舞川さんはとにかく真面目でストイックなタイプの人なので、これまでコメディは苦労されてるイメージでしたが、この地獄のカリキュラム松本プロデュースで開花してもらえるんじゃないかと思いました。そして実際すごかった。バズった。各作品ごとに振り返ります。

☆幕開き四人芝居「いきなりクライマックス」
コメディショーはこの軽くて短い感じのまさに前説的なお芝居からスタートする感じがいいですね。作中の小道具は全部私が作って、その製作動画を劇団のYouTubeでアップしています(今後も増える予定)。

☆鬼畜!ダンスレッスン!
今公演で多分一番大変だった演目。そもそもホンが上がったのが5日前くらいで(色々悩んで遅くなってしまいましたてへ)、そこから同じ曲のダンス(シュリクラテーマ曲を使わせてもらいました)が少しずつバージョンアップしていくという振付をよっちさんが付けてくれたのですが、稽古場で舞川さんの頭から煙が。トップバッターの芝居のカロリーじゃねえのですよ。稽古場がリアルに鬼畜状態でした。よっちさんにホンマ感謝です。

☆ガチャガチャ倶楽部
若林倫香一人芝居。舞台上に可愛い女の子とガチャガチャの機械があるだけの一人芝居って面白そうだな、から着想しました。でもガチャガチャに一ミリの興味もなかったので、実際ガチャステーションとか行って、いろんなガチャガチャを引きましたが、まったくハマりませんでした笑。宇田川さんがガチャガチャの機械を持っているのでお借りして、構造を研究し、5打目までは計算して出せることが分かりました。6打目がグレーゾーンで、ここに置いたらある程度の確率で出てくるけど100%ではない、という結論に。お芝居の小道具は100%じゃないと役者さんが大変なことになってしまいます。ただどうしても100にならなかったので、若林さんにはこのパターンになったらこういう芝居を、といくつかの指示を出していました。実際ウォーズマンが出た回は狙いではなく、その100にならなかった確率の回です。まあ逆にそういう時ってウケるんですけどね笑。若林さんは顔芸に磨きがかかってますね。女優さんに言う言葉ではないですね。あのガチャ引く前のダンス?は彼女のアイデアです。彼女の変人センス、好き。

☆落語風演劇「柳の下に」
よっちさん演じる若手落語家が落語の練習をするうちに現実と落語がリンクするというお話。第一回でも図師さんで同じテイストの芝居をやったのですが、今回は怪談風に。
今回のコメディショーをよっちさんとやりたいと思った大きな理由に、以前舞台で見たよっちさんの落語がすこぐ達者だったからというのがあります。ご本人は「台詞が覚えられるかな」とか言ってましたが、稽古初日にそこそこ外してくる強者でした。この落語風演劇はコメディショー名物みたいになるかもですね。

☆「道里塚教授の渋滞学」
丸山正吾一人芝居。これはね、丸ちゃんの完全優勝ですよ。15分の物語で5000字!余白ゼロのお経のような脚本なのです。自分で書いといてなんなんですが、これ本当に人間は覚えられるのかなとか思ったりもしました。丸山は入れてきましたねえ。そして凄まじいスピードでまくしたてる。教授の大学の学生が渋滞によって起きてしまった悲劇を推理しながら、かつ渋滞から脱線しながら語っていく物語なのですが、もうなんか講談とかの芸の域に達してましたね。お見事でした。ちなみに参考にしたのは西成活裕さんの「渋滞学」という書籍で、西成教授はこないだひるおび出てました。ゆるやかな坂道が一番渋滞が起こりやすいんですよ。そんなことで?とか思うかも知れませんが本当らしいです。

☆ロキソニンフラペチーノ
これもお気に入りの作品だなあ!あれ、今年の俺アカ脚本賞はコメセカか?
水産系の会社で働くOL二人が、近所のスタバ的カフェで愚痴を言い合い、お互いをディスり合う日々を、まるでループものように描いた物語なんだそりゃ笑。ちなみに水産系の会社は書き始めてからノリで思い浮かびました。
舞川×若林だったのですが、そしてこの演目が一番最初に稽古を始めて、すごい時間取ったのですが、相当な難易度だったようです。二人は何度も心が折れてました。
ループものって、役者さんほんとしんどいんだね。台詞がちょっとずつ変わる。今どこってなる。一個前や一個先のループの台詞言っちゃう。みたいな。昔アリスさんでナナフレって作品をやったんだけど、千秋楽までみんな袖で台本確認してたもんな。
でも僕は大好きです。ホンのクオリティも良かったと思う。これも俺アカの短編部門候補作だな。

☆保健室のジョージ
もう舞川優勝でしょう。保健室のルミ先生をやってもらったのですが、登場して「蒸し、暑いわ」で爆笑ってなんだよ。あのキャラは稽古初日から舞川さんが持ってきたもので、僕はそれを見て、その声を聞いて、この人は次のフェーズに行ったなと思いました。そしたら屋根裏のバーニャカウダーであのママですよ。今脂乗ってますね舞川さん。
この演目も第一回にもあって、一応続編です(ルミ先生以外は前回キャラ)。4人の大の大人が学園コメディをやったら面白いな、その一点です。次回があったら、やっぱり入れたい演目ですね。

という訳で、今回も大大大濃厚なコメディショーになりました。この松本プロデュースはお客さまの評判も大変良いですし、そして業界と言いますか、演劇、役者界隈でも、話題になってきて嬉しい。それは「激烈ハード」「みんな2度とやりたくないと言う」という褒め言葉笑。

ここで告知です。松本プロデュース第3回が決定しました!
今回は「ザ・コメディショー」ではなく、長編舞台です。
四人の俳優が、うるう年に4つの物語と4つの登場人物に挑むタイトルずばり「FOUR.」です。うるう年の2月29日に開幕です。
石部雄一、椎名亜音、エリザベス・マリー、永石匠の4人と新たな演劇にチャレンジします。
「演劇を、浴びろ!」
お楽しみに!

松本プロデュースVol.3「FOUR.」公演情報はこちら

次回は、
10月
劇団6番シード結成30周年記念公演第二弾
「屋根裏のバーニャカウダー」
です。お楽しみに!

今年一年振り返り⑤「正典・まなつの銀河にゆきのふるほし」

ちょっと順番入れ替わるのですが、今日ちょうどイベントに参加してきたので、記憶も熱いうちに。

9月
Studio K’s
「正典・まなつの銀河にゆきのふるほし」
シアターKASSAI
脚本・麻草郁

演出を担当しました。初演、真説(再演)から続いて3回目の演出でした。最初にホンを見てびっくり!前回とここまで変わる?ってくらいシーン構成やキャラクターイメージなんかも変わってて、でも今日イベントで麻草さんから理由聞いて納得。こういうのもアフターイベントの良さだよね。今日何人かのキャストと久しぶりに会って同窓会感あったんだけど、まだ3ヶ月しか経ってないんだね。誰かが「1年前みたい」と言っていたが、まさにそんな感じ。和気藹々と良きイベントでした。

今回の一番の変更は脚本もあるのですが、劇場です。過去2回六行会ホールでやっていて、今回は小劇場シアターKASSAI。イベントでも質問されましたが、まずロケットどうするねん問題ですよ。最後みんなの希望を乗せて飛び立つロケットは肝中の肝。初演はプロジェクターでロケットから観た地球まで投影してました。そこで思い出したのが、その地球を投影してくれた映像さんの言葉。

「観客の想像に、映像はかないませんよ」

さあ今こそ、その金言を実行する時とばかりに、8つの椅子を駆使して、未来の教室、ロケット、地下へ繋がるエレベーターなど、様々なシーンを作りました。

イベントでも盛り上がってましたが、PGX先生に自我が芽生えていく改変は今回が初(でしたよね麻草さん)。堅物ロボットに血が流れるはわし好きなやつ。もりしまさんのお芝居もとても良かったです今日のイベントはダメだったです笑。

私が好きなのは、陽向菜友さん演じた生徒会長遥の葬儀のシーン。これも今回初じゃないかな。最初はこのシーンが浮いてしまうんじゃないかと思ったのですが逆に印象に残るシーンになりました。展開の早さと、リアリティというか、人間の生々しさが正典版の良さかも知れません。

宇宙服を着た奏が、もうだいぶ身体が悪くなってしまった光と会話するシーン。これは初演からずっとある名シーンですよね。宮里莉羅さん演じる光が真っ直ぐでいいんだよなあ。それで奏演じる前田美咲さんが感極まった通し稽古があって「それでいいです。辛いけど毎回受け止めて」と伝えました。私はその後のシーンの演出がとても気に入っていて、これまではそこでいつも悲しい、切ない系の音楽を流してたと思うのですが、今回はそこに次のシーンの宇宙へ飛び立つ希望のある音楽を重ねました。光の想いは悲しみじゃないぞという感じで良い掛け算になったと思います。
キャラクター的には、天音さんが演じた習志野文かな。正典MVPは天音さんに。

パンフに私も麻草さんも書いたのですが、気候変動で十万年後の壊れてしまった地球がこんなに手触り肌触りを持って感じることが出来る時代になるとは、再演の頃だって思いもしませんでした。これからも再演し続けてほしい作品なのかも知れません。

次回は、8月に戻って
松本プロデュースvol.2
「ザ・コメディショーSecond」
です。お楽しみに!

今年一年振り返り④「Dressing Room」

今年一年を振り返っています。

7月
UDA☆MAP
「Dressing Room」
下北沢亭

いきなり直球ですが、この演目は好きですね。宇田川Pが「二人芝居で長く続けられるものを作りたい」という話からこの物語が生まれました。もう一つ、2脚のアンティークな机と椅子があって、そこから場所は時代なんかも考えました。そうやって生まれた二人芝居×3作のオムニバス。紫水館という古びた劇場の楽屋が舞台で、そこに集った女優たちを描きました。時代をバックトゥーザフューチャーのように、現代、ちょっと未来(ほぼ現代ですが)、この紫水感が出来たばかりの大正時代(よく考えたら重要文化財レベルの建築物)と変わっていく形でした。全体を通してあんまりリンクリンクせず、ほんのりとだけ繋がってるくらいがいいなと、十銭銅貨一枚だけを3作品を通して登場させました。この辺りの塩梅は撮影をしてくださった山岸謙太郎監督が「絶妙」と誉めてくれました。今までオムニバス縦に繋がる系を色々やってきた自負があるので、ふたりカオスとか、最後の1フィートとか、だから今回は絶妙な塩梅にこだわりました。あと「タイラー夫人の憂鬱」という劇中劇ですね。1話ではその古典劇のオーディション。2話はまさに上演中。3話はこの翻訳劇が日本で初めて上演される頃。ここからは各話ごとに。

第一話
「セリフを、合わせろっ!」
森岡悠×大滝紗緒里
大物演出家の舞台オーディションにやってきた子役からの女優と、楽屋で生配信なんかしてるバラドル。まさに水と油の二人の漫才のような掛け合いを、森岡さん大滝さん若い二人がお見事にやってくれましたね。特に大滝君のコメディ班は初めてだったのですが、本人お笑い好きらしく(稽古終わり頃に知った)、ポテンシャルと探究心が高かったですね〜。知的ボケ怪人って感じ。あ、令和ロマンみたい。いや〜ナイスコンビでした。

第二話
「下手舞台袖の幽霊」
那海×栞菜
脚本家としてはこの話が今年書いた短編で一番お気に入りかも。那海さん演じる元朝ドラ女優と、栞菜さん演じる同じ事務所のバーター女優の本番中の楽屋での掛け合い。気だるい緩い感じから始まって、劇場の停電を経て、なんだか不思議な心の繋がりが生まれるというちょっと寓話っぽい話。那海さんの中御所(大御所じゃなく中)のわがまま女優感と、それをいなしながらも振り回され最後は熱くなっていく栞菜さんの後輩女優。いいバランスといいキャッチボールでしたね。幕が開いて第一声まで2分近く二人がメイクしてるだけの無言劇は毎度観てて面白かった。

第三話
「文明開『花』の音がする」
真野未華×小林亜実
時は大正時代。この紫水館という劇場ができたばかりの頃。まだ女優という職業への理解は薄く、差別的な扱いを受けることもあった。そんな時代でひたむきにお芝居に向き合う二人。一人は演劇学校の優等生で財閥の生まれの澄子(真野未華)。もう一人は夫と娘を村に残し、特待生としてやってきた貧乏な律(小林亜実)。価値観の違う二人がぶつかり合いながら「タイラー夫人の憂鬱」の上演に向かうが…。という物語。難易度は鬼高い脚本だと思います。それだけにやりがいもとてもあっただろうと思います。真野さん小林さんどちらも相当苦労してましたが、鬼気迫る演技で圧倒してくれました。小林さんの超長台詞は、松本脚本史上最長だと思います多分。

この演目は最初に書いた通り、宇田川Pも再演を重ねて行きたいと話してましたので、いろんな女優さんといろんなコンビでまた観ることができるんじゃないかと思います。6人の実力もありますが、順調すぎる稽古で、相当な数の通し稽古をやれました。通常の2倍以上かな。仕上がって尚稽古する重みや深みはある意味とても勉強になりました。

次回は、
8月
松本プロデュース
「ザ・コメディショーSecond」
です。お楽しみに!

松本プロデュースVol.3「FOUR.」もよろしくね!