高橋明日香×松本陽一(7)
「あすまい」はアイドルじゃない
- 松本
- どっちの話を先にしようかな。「あすまい」の話を先にしようか。アイドルの肩書きはなくなったけど、芸人の肩書きが乗ってきた(笑)。
- 高橋
- ウハハハハ(笑)。いろんなもの、乗ってきますね。
- 松本
- あのー、あれは多分…、詳しいことは知らないんですけど、仲良いからなんかやろうよって始まったの?
- 高橋
- そうですね。今出舞と出会ったきっかけは『ナナフレ』での舞台共演ですよ。
- 松本
- ああそうか。
- 高橋
- でもその頃は全然仲良くなくて。喋っても無かったです。あの子もなんか忙しそうで、稽古以外では特に接点があったわけじゃなくて。その後、アリスインアリスのイベントに今出がゲストで出てくれた時があって、
めっちゃ喋りが面白いなって思ってました。すごい会話が弾むんです。アリスインアリスって、わりとボケボケな子が多かったんで、ザクザクツッコんでくる人はいなかったから、今出と話した時、「あぁ、新感覚」って。
- 松本
- 関西出身だっけ?
- 高橋
- そうなんです。喋りがうまい。自由にツッコんでくるし。ゲスト出演をきっかけに、アリスインアリス&フレンズとして、今出が入る話になり、一緒にやっていくうちに、会話が面白いなって思って。二人で何かできるのかね?イベントなのか何か分からないけれど。じゃあ、ちょっと何かやってみたいね、ってなったのがきっかけでした。いざ何するのかは思い浮かばなかったんです。何をするにもけっこういろんな人が動かないといけなかったから。じゃあ試しにクラウドファンディングでCDデビューしてみないかと。
- 松本
- ほほう。
- 高橋
- これで誰も支援してくれなかったら、きっとそこまでで、期待もされていない。ちょっとそれでお試ししてみよう、と決めたんです。
- 松本
- ある意味、一度終わったアイドルが戻って来るって感じですか?
- 高橋
- あすまいをやるにあたって、私、アイドルとしてやるんだったらやりません、って言ったんですよ。
私はもう終わらせたので、この歳になって再び始める気はなかったです。アイドルって見られるような活動しかしないんだったら、やりたくないっていうのははっきり伝えて、じゃあそうじゃない、と。2人でいろんな可能性を試してみるのが、あすまいなんだ、と。
- 松本
- あの、ちょっと話が逸れるんですけど、最近そういうの多いなって思って。エリザベス・マリーさんが“踊ってみた動画”みたいなのを上げていて。あれ結構な豪華キャストじゃないですか。
- 高橋
- 豪華ですよね。
- 松本
- あの、変な話、事務所とか大丈夫なの?って不安になるくらいに。でも、「大丈夫です、みなさん有志で参加してます。」って。役者さん発信とか、あとはSNSの時代っていうのもあるんですけど、ある意味気軽に発信できたりするようになったんで、それこそパッと思いつきで始められるような文化、というと大げさだけど、最近そういうのが増えたかなって。
- 高橋
- そうですね。
- 松本
- あすまいもそのひとつかな、みたいな。
- 高橋
- うーん、確かに。
- 松本
- で、クラウドファンディングをしてみた、と。
- 高橋
- CDデビューっていう形で募ったら、みなさん凄い支援してくれて。あっという間に資金が集まったんですよ。本当にありがたいね、って言って、逆にこれだけ支援してくれる人がいるんだってことが分かったので、活動していこうってなって。やっぱ、ライブだけじゃなくていろんな事していきたいって始まったから、他の事もやろうよってなって、そこから漫才が生まれたんです。
- 松本
- そこからあの、例の…
- 高橋
- ええ(笑)
- 松本
- 地上波進出を…。
- 高橋
- そうです(笑)
- 松本
- 芸人という新たな肩書きで。
- 高橋
- そうなんですよ。
まず漫才をやったんです。PKPという今出の所属事務所のイベントで、あすまいのお披露目をすることが決まった時に、ライブもダンスもトークもやって、ちょっと他に何かできないかなってやったんですよ。二人共ツッコんだりして笑い取るの得意だったんで。漫才とかどう?って言って、何それちょっと面白そう、みたいな。
- 松本
- あのー、女優さんでもタレントでもアイドルでも、ちょっとコントっぽいことは、MCの中でもやってるでしょ、でも漫才ってハードル高くないですか。なかなか女性二人でマイク前でやろうって人居ないと思うんですけど。
- 高橋
- 新しい事に挑戦していかないといけないから。私はわりとワクワクしてるんですよ、どんなものが生まれるのか。超緊張したし、漫才って難しいんだなってのも分かったけど、お客さんは喜んでくれたんですね。こういうの見てみたかった、って言ってくれた方もいて。私のあすまいとしての理想は、『水曜どうでしょう』みたいな番組を二人でやりたいって目標を立てたんです、当初。
- 松本
- あー、『パパパパパフィー』みたいな?
- 高橋
- あー、そう!大泉洋さんって、俳優として活動してらっしゃる方じゃないですか。軸は俳優だけどいろんなことをやってらっしゃる。歌手もやってるし。なんかそういう感じの活動にしたいなって。軸は二人ともブレない。女優としてやりたいけど、面白いことが多分できるから、いろんな可能性を、何ができるか試していこうってなって漫才をやったら、たまたま今の『お願い!ランキング』のコント枠に入れるって話になって。急遽だったんです、本当に。
- 松本
- 僕、テレビ見てびっくりしましたよ。「7組の芸人さん達です!」って、完全に芸人さんになってて。
- 高橋
- そう、芸人さんなんです。私達も、「いいんですか?むしろコントやったことありませんけど。」って言って。でも、やるとしたらやっぱ自己満足じゃダメじゃないですか。誰かに見てもらって初めて成り立つ職業だから、ここは思い切って挑戦しようよ、って周りがすごい言ってくれて、どう芽が出るか分からないし、チャンスが来たんだから怯えてないで挑戦していこうっていう。初めてなのは誰もが分かってるから、体当たりで挑戦して。それで、インターネット番組の予選で勝ち抜いて、今、地上波に乗れたっていうところなんですけど。
お笑いは全力で
- 松本
- 漫才、面白かったですよ。あの、ヨゴレ感が。
- 高橋
- ありがとうございます。
- 松本
- いわゆる、どつき芸というか、ヨゴレ感とかいうか、あーヨゴレってあんまりいうと可哀想ですけど、
- 高橋
- いや、いいんです。
- 松本
- かわいい二人がひどい顔をしてビンタしている、っていうのが、僕はインパクトがあって好きでしたけどね。
- 高橋
- あー、よかったです。
- 松本
僕は勝ちだと思ってました。
負けちゃったけどね。
- 高橋
- 笑いが取れただけでよかったです。
- 松本
- あの路線で行くといいと思いますよ。
- 高橋
- あはは(笑)。「あすまい」の 。
- 松本
- 僕はお笑いが好きなので、評論家みたいな話し方になっちゃうけど、どつき芸は結構歴史ある芸風なので。
- 高橋
- はい。
- 松本
- だから、ネタはなんでもはまるし、かわいい子がやるギャップもあるから、結構話題になる気がするんですけどね。
- 高橋
- 本当にプロの方達とやってるので、中途半端な気持ちじゃ出来ないっていうのが一番根底にあって。
- 松本
- やっぱりあれですか、スタジオでちょっと「この若い姉ちゃん達かわいいから出られたんでしょ?」って目で見られたりする?
- 高橋
- 浮いてますね、完全に。スタッフさん達も「違う子達が来た」「どう来るんだろう?」みたいな感じの目があって、芸人さん達も「何、この人達」「人気だけで上がってきたんでしょ」感が否めない訳ですよ。
- 松本
- あー、それはそうだよね。
- 高橋
- 無名ですから、芸人でもないですから。そういう人達を納得させるだけのものを見せなきゃいけないじゃないですか。
- 高橋
- だから、やれることは全力でやろうって。
- 松本
- あの顔は全力でしたよ。
- 高橋
- そうそうそう(笑)。
- 松本
- 「おしっこ、ジャー!」ってやってて。
- 高橋
- やってましたねー。記憶無いですねー(笑)。
- 松本
- あはは(笑)。そっか、そういう志持ってやらないと。
- 高橋
- 失礼ですからね。
- 松本
- そうだね、失礼だね。
- 高橋
- 役者から芸人になる方もいらっしゃる中で、私は今役者として8年目で、キャリアを積んできてる。その自信は持ちつつ、今まで勝負してきた場所は違うけれど、自分の培ってきたものを全部出そうっていう気持ちでやってました。
- 松本
- ある意味、運命に翻弄されるじゃないけど、ヒストリーを辿ると面白いですね。コントの話だって、次のステップに進むって考えたタイミングに、ちょうど来たチャンスだった。
- 高橋
- 本当にそうです。
- 松本
- アイドルという肩書きが終わりと思ったら、まさか芸人という話が来るとは思いもしなかっただろうし。
- 高橋
- 巡り合わせというか、本当に運だなと思います。私が自分で掴もうとしても掴めないチャンスだから、周りが持ってきてくれたチャンスだから。これは無駄には出来ない。
- 松本
- あとは、キャリアの蓄積ですかね。どんな仕事でも言えると思いますけど、いろんな人と会ったりとか、あそこで良い芝居や良い関係を築いてるから次がある、とかね。
- 高橋
- 今、本当に色んな人が手を差し伸べてくれていて、松本さんも台本を書いてみたいって仰ってくれたじゃないですか。
- 松本
- あぁ、あすまいの ね。
- 高橋
- そういう感じで手を差し伸べてくれる方が周りに多くて、本当に今までやってきて良かった!って心から思ってます。
- 松本
- それは嬉しいですよね。
- 高橋
- はい。
- 松本
- 人のそれっていうのが、一番価値があることなんじゃないかなあって思います。応援したいって人が現れるのはそういう縁だと思いますね。それをちょうど感じられたり、そういう環境になったりしてるんですかね。
- 高橋
- そうですね。
(つづく)