サカキバラダイスケ×松本陽一(8)

※2017年4月13日、シアターKASSAIにて

サカキバラダイスケ×松本陽一(8)

この先どうなる?小劇場演劇業界

サカキバラ
小劇場演劇業界と言うのが存在しているのかは、非常に微妙なところではありますよね。
松本
はい。
サカキバラ
業界として成り立ってるほど、お金が回っているわけではないので、これを業界と言って良いのか何なのか、ボクには定かでないんですが、
松本
はい。
サカキバラ
演劇の主体が劇団だった時代から、プロデュースであったりとか事務所さんの自主公演が増えてきた段階で、そういう形(稽古時間が短く、エントリークラスの人が活躍しづらい公演)になるのが必然といえば必然になってきちゃって。プロデュース公演は1本単位でしか物事を考えないので、
松本
そうですね。
サカキバラ
人を育てるとか、そういう概念がほぼないんですよ。それは将来的に長期スパンで考えていく時にどうなのか。さっき言ったみたいに12本だったら100人呼べる人達が24本で100人ずつ呼べるかって言ったら、絶対そういうふうにならないし、出演本数が増えたら、疲弊します。
松本
そりゃそうですね。
サカキバラ
その辺りも含めて総合的に考えていくと、今の形がどんどん進んでいって行き過ぎると問題かもしれないな、とちょっと思っていたりします。
松本
そうですよねぇ。この先どうなると思いますか?小劇場演劇業界があるとしたら。

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サカキバラ
うーん、どうなんでしょうね。
松本
ちょっと近い未来くらいから。
サカキバラ
まず、すごくシンプルな話で言うと…、例えば30年後は、結構衰退していると思います。
松本
うーん。これまでの話を聞くと衰退のイメージはありますよね。もうちょっと近未来は?5年後とか…10年後。
サカキバラ
5年後10年後はあまり変わらない気がしますね。その辺一連は、元・王子小劇場芸術監督の玉山さんが言っていることがけっこう慧眼だなと。玉山さんはけっこうあっち方向の人なんで…
松本
あっちって、どっちですか?
サカキバラ
あっちっていうのは…アゴラ(こまばアゴラ劇場)とか、ザ・演劇!って感じの。
松本
あ〜、はいはい。
サカキバラ
その方向の人なんで、観点がボクとは違うところもあるんですけど、大局観でいうとやっぱり非常に鋭い意見なんです。演劇の担い手と、見る人とが両方いなくなっていく。今の層が高齢化して、年々居なくなっていく。30年後にどうなるかっていうと、全体の人口が減っていて、新しく演劇に流入していく人の絶対数も少ない。
松本
うーん。
サカキバラ
これはすごく重要な指摘ですね。
松本
でもそれって日本全体の話と言ってもいいですよね。高齢化社会ですし。
サカキバラ
そうです。
松本
演劇界もその例に違わず。
サカキバラ
違わないですね。それは間違いないです。
松本
僕はまぁちょっと楽観主義者というか、当事者だったりするので、なんとなくこうかな?っていう感覚値の話なんですけど、僕も今プロデュース公演の仕事が増えて、1本単位でやることもあります。人が育たないっていうのはいろんなものが衰退しますよね。それでいうと、(演劇の未来は)完全に衰退だと思うんですよ。そうすると、単純にお客さんは離れちゃう。そこで、衰退じゃなく復活は何だろうっていったら、劇団に戻るんじゃないの?とは思ってますね。
サカキバラ
それはあると思いますよ。

劇団とプロデュース公演

サカキバラ
団体への揺り戻しは絶対に起こると思いますね。なんて言ったらいいのかな、ある意味でのコミュニティ部分が強くなっていくんだろうなと。
松本
それはお客さんも含めてですか?
サカキバラ
含めてですね。昔の劇団の方ってそうだと思いますよ。第三舞台とかショーマとか夢の遊眠社とか。あの当時やってた方達は、今でも第一線でやってらっしゃってて、大きくなった演出家さんの芝居に、また出演したりすることもありますし。
松本
うん、うん。
サカキバラ
プロデュース公演って、昔やってた人を使うって考え方が無いんです。その時売れてる人で、なおかつ、実力がある人を起用するっていう考えになる。でも、そうではなくて、その時に動員数が無かったり人気が無かったりしても、昔一緒にやっていた彼が非常に良かったからまた一緒にやりたい、っていうのは、どっちかっていうと劇団の考え方ですよね。
松本
うん。例えば、(西田)シャトナーさんが手がける、ベースとしては商業(演劇)の規模の芝居に、保村大和さん(解散した劇団・惑星ピスタチオのメンバー)がよく出てらっしゃる、…っていうのは、そういうことなんですかね。
サカキバラ
ですね。保村さんは人気も実力もある方ですけど。
松本
揺り戻しは近い未来あるかなって思ってますね。それが劇的な解決材料にはならないというか、ちょっとした懐古主義のようなところもあるんですが。ただ、プロデュースをやってるプロデューサーさんとかも、ある意味劇団システムの良さに気付いてるんですよね。半分精神面みたいになってくるんですけど。プロデュース公演として、売れている女優さんや事務所さんの意向を反映したキャスティング、演目選びをやったような環境に、例えば僕みたいな人が顔を出していって、ちょっと熱い言葉を若い俳優に言ったりするとグンと良くなったりするんです。

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サカキバラ
はい、はい。
松本
セクションに関わらず、劇団の良い部分の、ある意味のアナログ感だったり、劇団的なエッセンスが作品や座組に良い影響を与えるってことをいろんな方が知ったんだと思います。それは、半分は仕組みで作れるけど、半分は今言ったような精神論で。だからなんかそういうものも織り交ぜながらプロデュースをやったら、より良い作品になるんじゃないかな、みたいなことを考えてる方はけっこういらっしゃるんじゃないかな。
サカキバラ
それは、けっこう多いんじゃないかなと思います。
松本
ただこれも小さな一歩…小さなというか、さっき言ったようにこれが全ての大きな解決ではないので、ちょっと揺り戻した…、揺れ戻った先がどうなるかはちょっと僕もまだ分からないですね。
サカキバラ
うーん。
松本
それがさっきの10年ちょっと過ぎたくらいなのかな、とか。分かんないですけど。
サカキバラ
あの、劇団的団体が強くなるっていうのは絶対にあって、それは…営業コストの問題だったりもすると思うんです。
松本
営業コスト!?
サカキバラ
例えばで言うと、今の6番シードはそうでもないですけど、昔、「演出家松本陽一」の出始めみたいな時期に技術的なというか、製作コスト削減的な意味も含めてワンシチュエーションのコメディをたくさんやったじゃないですか。
松本
はい。
サカキバラ
ノンストップ・ワンシチュエーションコメディの旗手みたいな、そういう売り出し方をしていったんですよね。団体っていうのはそういうことが出来るんです。例えば、アガリスク(エンターテイメント)さんは、すごく複雑なシチュエーションコメディをやるわけですけど、そういった「シチュエーションコメディをバリバリやってます!!」という団体として押し出していくみたいな。
松本
カラーというか。
サカキバラ
そう、カラーですね。そういうことが出来るっていうのは、プロデュース団体だと無いんですよ。

(つづく)