佐藤修幸×松本陽一(4)
落ち着く声
- 松本
- 僕もね、最近、酔ったらもうツイートしないことにしています。
- 佐藤
- テレビでも色々騒がれてますしね。気をつけないとやばいです。…というか、SNS自体が人間の手に余るツールなんです。神の所業ですよ、あれ。
- 松本
- Twitterが?
- 佐藤
- だって、ナントカカントカって言ったら、それが全世界に伝わっちゃうわけでしょ。そんなのもう神様じゃないですか。それが「コンニチハ」とかだったらまだいいけども、本当に人間の手に余るツールを全員使えるわけですよ、まじでやばいです。でもそれは今、どんどんいろんな人と繋がれて、宣伝という用途ではものすごくいい。でもそれって考えてやらないと。本名出していたら、なおさらですしね。
- 松本
- なんか悪いこと言われたりした事あります?
- 佐藤
- いや、僕は、ありがたいことにあんまり無いですね。ただやっぱり、ゼロではなくて。最近 会社にしましたけど、会社にする前はほとんど自分1人で手作業で行う感じだったんで、チケットを郵送する作業なんかも…
- 松本
- あー、予約した人全員にね。
- 佐藤
- そういった事前作業もそうだし、本番中の席がどうたらみたいな意見もね。いろいろこっちの不備があった時にネットで書かれたり、直接言われたりしましたよ。
- 松本
- いわゆるクレームみたいなやつ?
- 佐藤
- そうですね。ただ僕、そういう対応はかなりやってるんです。昔、とある会社の事故受付のバイトをやってたんです。自動車事故を起した人が電話してくる窓口なんですけど。
- 松本
- CMでやってるような?
- 佐藤
- そうそう、守秘義務があるからどこの会社かは言えないですけど。だから僕、事故にあった人からの電話を聞き続ける、すごい所で働いてました。大体テンパってるか怒っているか、泣いているか。
- 松本
- そうでしょうね。
- 佐藤
- そういった人を落ち着ける仕事をしていました。
- 松本
- 何年やってました?
- 佐藤
- 8年くらい。役者さんの紹介で始めたんです。僕ね、その会社で表彰されたんですよ。「聞いていると落ち着く」って。
- 松本
- あのねー、のぶさんの声は、それはちょっとあると思いますよ。
- 佐藤
- 本当ですか!まあちょっと…フフフ。ありがとうございます!今、誉められるターンかな、もっと誉めてもらってもいいんですよ。
- 松本
- 柔らかい声ですよね。役者さんとしても、いわゆる製作者、プロデューサーとしても、人にとても良い音がする。
- 佐藤
- ありがとうございます。発声って、大きい声と小さい声があるんだけど、通る声で安定してるんです、音が。それは心がけてますね。
- 松本
- 僕が今日聞きたかったことの1つでもあるんですけど、のぶさんって凄く信念があって強そうに見えるんですけど、でも、柔らかいんですよ。その謎が何なのか知りたかったんです。
- 佐藤
- あー、そうですかね。
- 松本
- 強さとか圧を与えないといけない瞬間って演出家やプロデューサーにはあると思うんですよ。のぶさんは強めの態度や語気なのに柔らかいな、って思うのは声なのかもしれないですね。
- 佐藤
- そうなんですね。昨日、ある人と飲んで話したんですけど「なんか優しそうですね」みたいに言われて、でも、話せば話すほど、俺優しくねーなーって思って、そう伝えたんですけど、もしかしたら声なのかな…。
- 松本
- まあ、声は要因の1つにすぎないかもしれない。ちょっと謎めいていてまだわからないですけど、優しくなさそうとか、きつそうというか、そういう一面があるのに柔らかいんですよ。
プロデューサーとしての現実
- 佐藤
- 優しい…ですかねぇ?究極まで優しかったら、いや、普通に優しい人でも、まずプロデューサー業ってできないですよ。
- 松本
- 一般論のイメージとしてもそうだと思いますよ、やはりタフじゃないと出来ない仕事ではある。
- 佐藤
- メンタルを守るのはもう最優先事項ですね。はははは。
- 松本
- 己のね。
- 佐藤
- 数あるプロデューサーがみんなメンタルをやられて倒れていく中、自分の、「俺はやられないぞ。俺は最後に死ぬ。戦場で大将は死なないんだ!」みたいな思いはありますね。役者は、やっぱみんな思う所ありながら活動を続けてるんで、長く続けば続くほど、舞台の収益からお金を払っていければみんな満足しますけど、そんなの流石に無理じゃないですか…。こんなこと載せて大丈夫かな(笑)?そんな中でやっていて、バランスを取って行くとなると…
- 松本
- 例えば「安いギャラで頑張ってもらっている」っていう呵責なんかもあります?
- 佐藤
- なるべく払うようにしています。…けど、やっぱりどうしても若手の子までは行き届かないですよね。実際、自分もそうで、僕は30歳で初めてノルマのない舞台に出たぐらいだったんで。それは本当は良くないんですよね。僕は続けるって意識があったから、続けてきましたけど、普通に考えたら絶対に無理だし。
- 松本
- この対談企画で掘っていきたい話題は沢山あって、今の話題もその1つ。以前の対談でサカキバラさんとやった時に、役者のギャラについて「演劇界に残された最後のフロンティア部分」って仰っていたんです。
- 佐藤
- 理想は、みんな最低限1ヶ月暮らせるように支払いたいんですけど…
- 松本
- 理想はね。実際、それは…無理なこと?
- 佐藤
- いや無理とは言わないですよ。僕は実現させようとしているんです。ほぼほぼ満席にするってことは最低条件。それがほとんど出来ないで死んでいくんです。それが出来たとしてもグッズが売れないとダメ。グッズが売れてもまだちょっときつい。
- 松本
- それでもですよね。
- 佐藤
- それでもですねー。まあ、四人芝居のように人数が少ない公演で全部埋まれば、役者にめっちゃ払うこともできますけど。
- 松本
- まあね。
- 佐藤
- どうあっても、こっちのプロモーション不足なんですよ。今ある、できる材料でやるしかないから、何を言っても愚痴になっちゃうんですけど。
(つづく)