今年一年振り返り⑨「モーニングコール屋」

今年一年を振り返っています。あと2作品!

10月19日〜23日
オハ劇「モーニングコール屋」
コフレリオ新宿

オハ劇さんは、右近直之さんと愉快な仲間たちが、その名の通り朝に公演やイベントを打っている団体さんで、今年2回「稽古初日」という、朝台本を配ってその場で読み合わせをするという企画に呼ばれまして(前回記事のバスケットボールダイアリーズもそこで久々にお披露目した)、そのご縁でオハ劇さんが初めてやる劇場公演に携わることとなりました。今回の振り返りで何度が書いてますが、新たな出会いを大事にという年初の目標がまた実現しました。

3本の短編のオムニバス公演で、私は1作目の「スヌーズ彼氏」の脚本・演出と、2作品目の「MORNING COLLER LEGENDS(脚本・麻王)」の演出を担当しました。3作品目はワハハ本舗の我善導さんの「アサノオト、カン、キノウタ」で、モーニングコールをテーマにした三作品です。

「スヌーズ彼氏」
新作書き下ろし。朝が壊滅的に起きれない女性が、スヌーズ彼氏という目覚ましアプリで朝起きれるようになり、仕事に恋に奮闘するというお仕事系ラブコメディ。はらみかさん主演。
何かの公演の楽屋で、役者さんに「モーニングコールってやったことある?してもらったことある?」と聞いたところ、意外とある人が多くて、そのエピソードにヒントを得て書き下ろした作品です。昨今のテレビドラマのような、シンプルでキュートなラブコメになったと思います。仕事と恋に奮闘する女子ってやつです。はらみかさん恋愛ものあまりやったことなかったみたいで、恋愛台詞地味に苦戦してましたね笑。

「MORNING COLLER LEGENDS」


映像作家の麻王さんの脚本。演出を担当しました。このホンね、やばいのよ、最初読んだ時、マジ引き受けなきゃ良かったって思いました笑。
あらすじも書きずらい笑。決して起きない女性を起こす為に、モーニングコーラーという、まあ特殊部隊というか、マーベルというか、な面々が彼女を起こそうと試みるが…。という、ジャンルはなんだろ、SFおバカコメディって感じかな。
間違いなく、僕は書かない世界観で、僕が演出したことない世界観でした。だからチャレンジ精神ですごく楽しめました。普通演出だけの仕事だとそんなにプレッシャーないんだけど、この作品は初日に緊張したな。とにかくおバカを全力で突き抜けようとキャストと細部までこだわったなー。そして超絶カッコいいオープニングアクトは、コージさんがすべて構成してくれました。あと数日で稽古終わりの段階で「軽い感じでオープニングアクト的なことやるとカッコいい、からのおバカがいいと思うんです」と提案され、いいですね!と応えたのですが、楽曲からダンスから、キャラ紹介の小道具まで全部用意してくれて、かつ…

めっちゃ尺ある!!!

全然軽くないよ!!!

正直間に合わないんじゃないかと思いました。がっつり踊ってるやん。

この作品に出てた織田あいかさん、3話の一人8役もツボで、面白い女優さんでした。インド人の役ツボ。

そして、昨日ちょうどオハ劇さんの新しい企画「ファーストテイク」で、書き下ろしの「エンドクレジット」という10分の短編を、まさにファーストテイクという感じで、一発本番で上演されました。これも面白い企画でしたね。

オハ劇さん、右近さんは「面白がる力」を大事にされていて、それは僕も通じるところがあるので、参加して楽しい団体さんです。来年もなんかありそうです。

あと1作!大晦日に残ったな笑。

次回は、12月
劇団6番シード「火消しの辰と瓦版屋の娘」です。お楽しみに!

今年一年振り返り⑧「バスケットボールダイアリーズ」「ホームセンターズピリオド」

今年一年を振り返っています。

9月17日〜25日
feathers stage「ショートストーリーズ」

私脚本の短編2作の上演。私は「バスケットボールダイアリーズ」の演出。「ホームセンターズピリオド」は劇団東京都鈴木区の鈴木智晴氏の演出でした。

どちらも短編の中ではとても気に入っている作品で、ホームセンターのほうは、昨年(だったかな?)扇田さん演出で上演されましたね。バスケのほうは、振り返り③の記事で書いた6バンjackNGで上演予定(演出扇田さん、主演宇田川ですげえ楽しみだった)でしたが延期となったので久々の上演でした。

このバスケットボールダイアリーズはね、えぐいハイテンションの芝居なのですよ。ずっと絶叫しながら喧嘩してるような、この座組ほとんどの方は初めてご一緒する女優さん達だったのですが、ホント大変だったと思います。

物語は、弱小実業団女子バスケチーム「だいありダイアリーズ」の試合の、ハーフタイムだけを4試合分描くというトリッキーな構成のグズグズコメディ。主人公のキャプテン陸がイカれテンションのキャラで、舞台2作目だったかな、の公野舞華さんは相当な難易度だったと思いますが、だんだんと頼もしいキャプテン感が出てくるんですよね。後にも先にもこんなトリッキーな主役ってないと思いますよ笑。完全Wキャストで、もうひとチームの陸は小見川千明さん、この方は面白い個性を持ってて、なかなかはっちゃけたキャプテンを作ってくれました。

つまり2チームあった訳ですが、通常のWチーム上演以上に、チームカラーに違いが出て面白かったですね。全然違うチームになった。マネージャー役の高宗歩未と冨永さくらさんなんてまるで違うアプローチだったし、その差を生かした演出にもしたかな。

「ホームセンターズピリオド」は盟友鈴木智晴氏の演出。直接演出してる現場を見た訳ではありませんが、ストーリーラインに丁寧で、キャストのポテンシャルを活かす演出だったのではないかと想像しました。脚本家としてとても満足です。この物語って初演した当時よりも月日を重ねて、再演を重ねて、より良くなってる気がする。作品が勝手に育っているというか。この物語のラストで、同級生で自殺願望のあった小学校教師が、実は煉炭を使って体育館で子供達を殺そうとしていたという事実がわかるのです。そしてその動機が、生徒達が先生をいじめていたということも明らかになります。文字で書くと相当えぐいですよね。でもこの告白の台詞も、初演の時よりもはるかに今日的というか、響くセリフになっていて、そういう部分もこの物語は育っているのかも知れませんね。

今年は短編づいてるんだよなあ。松本プロデュースに始まり、CUBEも、そして次の「モーニングコール屋」も。
毎年30日の夜に、今年一年の俺作品を俺が表彰する完全俺企画「俺アカデミー賞」というのをやっているのですが、今年は短編部門を作ろうかしら。

次回は10月
オハ劇「モーニングコール屋」
です。お楽しみに。

今年一年振り返り⑦「12人の私と路地裏のセナ」

今年一年を振り返っています。

8月10日〜16日
劇団6番シード第74回公演
「12人の私と路地裏のセナ」
中野テアトルBONBON

リベンジの夏第二弾!(リベンジの夏とは前回記事参照)

コロナはなんで夏に増えるんでしょう。3年連続だから絶対なんか科学的理由があると思うんだよな。という訳で、ええと、7波でしたっけ?また猛威をふるい始めていました。勘弁してよ。心が、心がもたないのよ。

と、リベンジ公演がまた中止になったらそれこそもう立ち直れないぞ、いろんな意味でな、とリベンジ第一弾も一緒にやった演出助手の増野君と話していた矢先、

私がコロナ陽性になってしまいました。

今回の稽古は、昨年通し稽古まで行った段階で中止となり、全キャスト続投ということもあって、2週間の集中稽古で本番に向かうスケジュールでした。その半分くらいを療養に当てなければならなくなりました。しかし、増野君が、そしてキャスト皆さんが頑張ってくれた!その間、昨年の通し動画を見ながら、増野君が現場を切り盛りして、とても順調に稽古が進みました。私が復帰した時は、昨年の通し稽古より先の位置にキャストがいて、さらなる高みを目指そうとしていました。

主演の樋口は昨年の骨折が治ってから、タップダンスの自主トレを重ねていました。ここで作品の話をすると、この物語は、12人の人格者を持った田島という男が、セナという女性と出会い、1日限りのタップダンスショーを開くという、ちょっとファンタジックなヒューマンドラマ。人格者が実在の人物だった、セナは本当は…などなど、複雑な多重構造になっていて、昨年の稽古は、それはもうじっくりとキャストさんと私で、キャスト同士で、考察を重ねたような作品です。リベンジワンの袴DEもそうでしたが、その昨年の時間というのが確実に力になっていて、しかもそれを一定期間寝かせておいた熟成感というか、それがさらに作品の深みとなっていくのです。中止やリベンジ公演はもちろん2度とやりたくありませんが、よかった点があるとすれば、確実にこの「長期熟成」をあげますね。

そうそう、この作品のメイキングは昨年から撮影しており、昨年の稽古の様子から中止となった日、そして今年私がリモートで顔合わせに参加した様子など、かなりのドキュメンタリーになるんじゃないかと思ってます。2月ごろ発売だったかな?お楽しみに。

脚本としては、今までにないアプローチと世界観の世界を、とにかくあまり計算せず、左脳よりは右脳で書いたような、そんな作品になりました。ネタ帳の最初のページは、思いついたままの小説調になっていて、その雰囲気をそのまま戯曲にしたいと思ったものです。なったかな。

演出としては、美術青木さんのアイデアの照明タワーが、絵作りの新しい扉を開いた!と感動しました。このタワーには一応ルールをつけて、人格者達の脳内会議(と呼んでいた)のシーンにだけつけました。つまり、合間に謎めいて入る人格者たちの実在のシーンには入れないようにルール付けしました。1シーンだけ例外で、走行する車の流れる街灯的な感じで使いました。照明タワーは今後もいろんな作品で活躍できるポテンシャルを持ってますね。

この作品も1年以上かけて無事幕を下ろしたのですが、不思議な手触りの、独特な位置づけの作品になりました。まるで絵本の中から生まれて、そして絵本の中に消えていったような。そんな物語です。

次回は9月
「バスケットボールダイアリーズ」「ホームセンターズピリオド」です。お楽しみに。

今年一年振り返り⑥「袴DE☆アンビシャス!」

今年一年を振り返っています。

7月13日〜18日
UDA☆MAP vol.11
「袴DE☆アンビシャス!」
池袋BIG TREE THEATER

リベンジの夏第一弾!
8月の12セナとこの作品は昨年公演中止となっており、2連続でリベンジ公演があるという今後も一生ないであろう(ないでほしい)ラインナップの夏を過ごしました。その第一弾。

昨年、2公演だけ上演してコロナで中止となった公演です。主催の宇田川美樹も、私も、キャストのみんなも期するものがあったと思います。全キャストが同じとはならなかったのですが、新しいキャストと共に、再び「スカッピー」に挑む日々が始まりました!

時は大正。貧乏な家の出の女学生カヲル(若林倫香)は、満月の夜に動き出した学校の銅像、杏美林ウメノ(宇田川美樹)と共に、伝説のスポーツ「スカッピー」でオリンピックを目指すが…。

といったあらすじで、まさに少年ジャンプのどスポ根もの。近年のUDA☆MAPは少年ジャンプ味が年々強くなってる気がする。という訳で劇中でその「スカッピー」というスポーツ競技をやるのです。演劇というよりスポーツ観戦というくらいガチでやりました。

スカッピーのルールを超簡単に説明すると、羽子板、薙刀、タンバリン、大きな団扇を使って紙風船を台の上にいるカナメというキーパー役に渡す。すると攻撃チャンスとなり「わっしょいわっしょい」と声が続いている間にセンターサークルで紙風船を割れば得点、というポートボールとカバディと格闘技を混ぜたようなスポーツです。

これ全部オリジナルでルールも全部私とキャスト達で作り上げたのですが(改めて考えてもすごいことですよね笑)、本当に面白い競技になっていて、サスケが陸上種目になるみたいなニュースもあったし、マジでオリンピック競技にならないかなと思っている。

これを舞台でガッツリ2試合(1公演でね)やる訳です。何が大変ってボールが紙風船なのでかなりの不確定要素がある状態で、本番の舞台上で試合をやる訳です。もちろん筋書きがあり(その段取りを覚えるのも大変なのですが)、結末は決まっているのですが、この不確定要素がかなりのライブ感とキャストの躍動感につながったと思っています。何度でも言いますが、

これは、マジで、キャストは、大変です。鬼です。
お前が書いたんや。

しかし昨年作り上げた部分も大きく、キャストはその流れをおさらいしつつ、さらにパワーアップした感がありました。もう普通にスカッピーのアスリートみたいになってた。一度、最初の試合のシーンで「みんなうますぎる」ってダメ出しをしたような気がする。ボールがえぐいくらいのテクニックで回るのよ。初めての試合って設定なのに。
それくらい、仕上がりまくりました。

だんだん各チームが本当のスポーツチームのチームワークみたいになっていくんですよね。攻撃手であるクルネ(小林亜実)やノゾミ(鶴田葵)が的確にポジションを指示したりね。前回骨折で別役になっていた稲葉麻由子も躍動しておりました。
最強敵チーム「チームデンジャラス」のリーダー、ツルギ役の松本稽古さんの無双っぷりは凄かったな。

さらに今回は吊り技(宙吊り)など演劇的演出も増やし、舞台監督さんの手は(人力であげていたので)大変なのことになりました。その舞台監督さんは千秋楽に粋な横断幕を垂らしてくれました。これは感動。ありがとうございました。


最終試合が終わる前の最後のダイジェスト演出がすごい好きなのよ。両チーム円陣で吼えてから、ここはダイジェスト演出なのでボールはある体でパフォーマンスするのですが、そのエネルギーたるや。
あと最後にツルギと生徒会長ユイ(堀有里)ががっきと握手するシーン。はい、沢山の感想に合ったように、そうです、スラダンのアレです。 

こんなにすごい熱量の舞台はなかなかないし、簡単にはやれないんじゃないかな。2年越しとなりましたが、無事終わることが出来ました。わかんないですが、4年に1度オリンピックイヤーに再演するっていうのも面白いかも知れないですね。そうやって競技人口をコツコツ増やしていこう笑。

次回は8月、
「12人の私と路地裏のセナ」
リベンジの夏第二弾です。

今年一年振り返り⑤「また逢おうあの空の下で」

今年一年を振り返っています。

7月4日、5日
Re:piod PROJECT「また逢おうあの空の下で」
浅草花劇場

栗生みな、遠藤瑠香による二人芝居。第一部1時間の芝居、第二部は歌のライブという構成の公演で、第一部の脚本・演出を担当しました。

栗生みなは元劇団員で、遠藤さんもかなり初期のアリスインデッドリースクールでご一緒してからだから、結構歴史ある女優さん。その二人と久々に芝居が作れたのは楽しかったですね。
ある日、栗生から(正確にはマネージャーさんから)「ナナステシリーズのスピンオフ作品を書き下ろして演出してほしい」と連絡がありました。栗生とは映画ディープロジック以来くらいで、最近は配信ですごい活躍してるんだなくらいで疎遠になっていました。後に本人から聞いたのですが「ヒューマンドラマなら松本さん」と直々にラブコールしてくれたようです。シンプルに久しぶりだなあというのと、依頼の内容が面白かったのと、今年は新しい出会いと過去にお世話になった人に恩返しを大事にしたいと年初の目標に書いたので、二つ返事で引き受けました。

とはいえ、ナナステシリーズ知らない、というところから始まりまして、シリーズの世界観に、栗生が言っていた「ヒューマンドラマ」を足していくことになります。
ざっくり知らない方向けに説明しますと、栗生演じる「りいの」という役がナナステシリーズにずっと出ているキャラで、ざっくり言えば「不老不死」のキャラクターで、いろんな時代に出会ったざっくり言えば妹の子孫的な女の子と、世界を歌で救えないかと葛藤する世界観ですざっくり。

本来はS Fベースのナナステなんですが、今回選ばれた世界が「昭和」で「ヒューマンドラマ」なので、私は「激動の時代を生きた二人の女性の物語」に全振りしました。
昭和33年、東京タワー完成の年から始まり、高度成長期、バブル期を経て、1999年に終わる昭和オムニバスストーリー。写真のビジュアルの髪型が古い感じなのはそのためです。栗生演じるりいのは不老不死、つまり歳を取らない設定で、遠藤さん演じる明日歌は普通の人、つまり歳を取る設定なので、これどちらも演じるの激ムズのやつです。遠藤さんは確か、16歳で始まって58歳で終わるんじゃなかったかな。そしてラストシーンは明日歌が死んで終わるので、S Fゼロどころか、鬼すごヒューマンドラマとなりました。でも、二人の人生をきっちり描けたかなと思います。

浅草花やしきの中にある劇場で、人生初花やしきに入りました。いわゆる乗り打ちという入った日に幕が開くスケジュールで、スタッフさんは凄かったな。いつそんな照明作ったの?って感じで幕が開きました。2階席3階席もあって面白い劇場でした。

昔、東大の安田講堂で芝居をやったことがあるんですが、こういう普段やらない場所、やらない形の公演は刺激的でいいですね。

やべ、ペース上げないとあと5作あった!次回は、

UDA☆MAP「袴DE☆アンビシャス!」です。